1千九百十八年十月三日、わたしは自分の部屋にいて聖文に思いをはせ、
2世の贖いのために神の御子が払われた大いなる贖いの犠牲と、
3贖い主のこの世への来臨に当たって御父と御子が示された大きな驚くべき愛について深く考えていた。
4この贖い主の贖罪によって、また福音の諸原則に従うことによって、人類は救われるのである。
5このように考えていたところ、わたしは、主が十字架上で亡くなられた後に福音が宣べ伝えられたポントやガラテヤ、カパドキヤ、そのほかアジヤの各地に離散している初期の聖徒たちにあてた、使徒ペテロの文書をまた思い出した。
6わたしは『聖書』を開いて、ペテロの第一の手紙の第三章と第四章を読んだ。そして、読んでいたときに、次の聖句にかつてないほど深く胸を打たれた。
7「キリストも、わたしたちを神のみもとに導くため、自らは正しい方であるのに、正しくない者たちのために、一度罪のゆえに苦しまれた。そして、肉においては殺されたが、霊においては生かされたのである。
8その霊において彼は、獄にいる霊たちのところへ行って教えを説かれた。
9この霊たちは、昔ノアの時代に箱舟が造られていた間、神が寛容をもって待っておられたのに従わなかった者である。その箱舟に乗り込み、水によって救われたのは、わずかに八名だけであった。」(ペテロの第一の手紙第三章十八-二十節)
10「死人にさえ福音が宣べ伝えられたのは、彼らは肉においては人間として裁きを受けるが、霊においては神のように生きるためである。」(ペテロの第一の手紙第四章六節)
11書き記されているこれらのことを深く考えていると、わたしの理解の目が開かれ、主の御霊がわたしのうえにとどまった。そして、死者が小さな者も大いなる者もともに群れを成しているのが見えた。
12非常に多くの正しい者の霊が、一つの場所に集まっていた。彼らは死すべき世に住んでいた間、イエスの証に忠実であった者たちであり、
13神の御子の大いなる犠牲のひながたとして犠牲をささげ、また贖い主の名によって艱難を受けた者たちである。
14これらの者は皆、父なる神とその独り子イエス・キリストの恵みにより、栄光ある復活の望みを確固として持って死すべき世を去ったのである。
15わたしは彼らが喜びと楽しみに満たされ、解放の日が近づいたので、ともに喜んでいるのを見た。
16彼らは集まって、神の御子が霊界に来て死の縄目からの贖いを宣言されるのを待っていた。
17彼らの眠れるちりは、骨が本来の骨と連なり、その上を筋と肉が覆って、その完全な造りに回復されるのであった。彼らが満ちみちる喜びを受けるために、霊と体が決して再び分離することのないように結び合わされるのである。
18この大群衆が死の鎖からの解放の時を喜び、語り合いながら待っていると、神の御子が現れて、忠実であった囚われ人に自由を宣言された。
19また、そこにおいて神の御子は、永遠の福音と復活の教義、堕落からの人類の贖い、および悔い改めを条件とする個人の罪からの贖いについて彼らに宣べ伝えられた。
20しかし、悪人のところへは、御子は行かれなかった。また、神を敬わない者や、肉体にあるときに自らを汚して悔い改めなかった者の中では、御子の声は発せられず、
21昔の預言者たちの証と警告を拒んだ不従順な者は、御子の臨在を目にすることも、御子の顔を仰ぎ見ることもなかった。
22これらの者のいる所では暗闇が支配していた。しかし、義人の間には平安があった。
23そして、聖徒たちは彼らの贖いを喜び、ひざまずき、神の御子を贖い主、および死と地獄の鎖からの解放者として受け入れた。
24彼らの顔は光を放ち、主の前から発する輝きが彼らのうえにとどまった。そして、彼らは主の聖なる名を賛美した。
25わたしは不思議に思った。というのは、救い主がユダヤ人とイスラエルの家の者たちの間での働きにおよそ三年を費やして、彼らに永遠の福音を教え、彼らを招いて悔い改めさせようとされたが、
26それでも、救い主が大いなる力と権能をもってその力ある業と数々の奇跡を行い、真理を宣言されたにもかかわらず、その御声に聞き従い、救い主の前にいることを喜び、その御手から救いを受けた者はほんのわずかであったことを、わたしは知っていたからである。
27しかし、死者の中での救い主の働きは、十字架上の死と復活の間の短い時間に限られていた。
28わたしは、神の御子は昔ノアの時代に神が寛容をもって待っておられたのに従わなかった獄にいる霊たちに宣べ伝えられた、というペテロの言葉を不思議に思った。神の御子は、どのようにしてそのような短い時間内にその霊たちに宣べ伝え、彼らの中で必要な働きを成し遂げることがおできになったのであろうか。
29不思議に思っていると、わたしの目は開かれ、わたしの理解は活気づけられた。そして、わたしは、主が悪人や真理を拒んだ不従順な者を教えるために彼らの中へ自ら行かれたのではないことを知った。
30見よ、主は義人の中から軍勢を組織し、力と権能をまとった使者たちを任じて、暗闇の中にいる者たち、すなわちすべての人の霊のもとへ行って福音の光を伝えるように彼らに命じられた。このようにして、福音が死者に宣べ伝えられたのである。
31選ばれた使者たちは、主の恵みの日を告げ知らせ、束縛されている囚われ人、すなわち、自分の罪を悔い改めて福音を受け入れるすべての人に自由を宣言するために出て行った。
32このようにして、真理を知らずに罪のうちに死んだ者や、預言者たちを拒んで背きのうちに死んだ者に、福音が宣べ伝えられた。
33これらの者は、神を信じる信仰、罪の悔い改め、罪の赦しのための身代わりのバプテスマ、按手による聖霊の賜物について教えを受けた。
34またこのほかに、肉においては人間として裁きを受けるが、霊においては神のように生きるための資格を得るうえで知っておく必要のある、福音のすべての原則が教えられた。
35そしてこのように、神の御子の十字架上での犠牲によって贖いが行われたことが、死者の間に、すなわち、小さな者にも大いなる者にも、不義な者にも忠実な者にも知らされたのである。
36このようにして、わたしたちの贖い主は、霊の世界に滞在しておられる間、肉において贖い主のことを証した忠実な預言者たちの霊を教え、備えるのに、その時間を費やされたということが知らされたのである。
37それは、この預言者たちの霊が、背反と戒めに対する背きのゆえに贖い主御自身が行くことのできなかった、すべての死者に贖いの知らせを伝えて、彼らも贖い主の僕たちの働きによって御言葉を聞けるようにするためであった。
38この義人の大群衆の中に集まった偉大な力ある者たちの中に、日の老いたる者であって、すべての者の先祖である父祖アダムがおり、
39また、わたしたちの栄光ある母エバも、様々な時代に生きてまことの生ける神を礼拝した多くの忠実な娘たちとともにいた。
40最初の殉教者アベルも、またその弟で、父アダムに生き写しであった、力ある者たちの一人であるセツもいた。
41洪水について警告を与えたノア、偉大な大祭司セム、忠実な者の先祖アブラハム、イサク、ヤコブ、およびイスラエルの偉大な立法者モーセ、
42それに、イザヤもそこにいた。このイザヤは、贖い主が油を注がれて、打ち砕かれた心を持つ者を癒し、囚われ人に自由を宣言し、縛られていた者に獄が開かれることを宣言される、と預言によって言明した人である。
43さらに、枯れた骨のある大いなる谷を示現によって見せられ、それらの骨が死者の復活の時に肉をまとって再び出て来て生けるものとなるのを見たエゼキエル、
44末日に神の王国が設立されて、それが決して再び滅ぼされることも、ほかの民に渡されることもないのを予見して告げたダニエル、
45変貌の山でモーセとともにいたエライアス、
46それに、エリヤが来ることを証した預言者マラキもそこにいた。モロナイも預言者ジョセフ・スミスに、このエリヤについて語り、彼は主の大いなる恐るべき日が来る前に訪れると宣言した。
47預言者エリヤは先祖に与えられた約束を子孫の心に植えることになっていた。
48これは、主の来臨の時に全地がのろいをもって打たれて、ことごとく荒廃することのないように、時満ちる神権時代に、主の神殿で死者の贖いと親子の結び固めのために大いなる業が行われることをあらかじめ示すものである。
49これらすべての者と、さらに多くの者、すなわち、ニーファイ人の中に住んで神の御子の来臨について証した預言者たちが、その大群集の中に交じって解放を待っていた。
50死者は、その霊が体から長い間離れていることを一つの束縛と考えたからである。
51この預言者たちを主は教え、彼らに力を与えて、彼らが、主が死者の中から復活された後に出て来て、御父の王国に入り、そこで不死不滅と永遠の命を冠として受け、
52主から約束を受けたようにその後も働きを続け、主を愛する者たちのために取っておかれたすべての祝福にあずかる者となるようにされた。
53預言者ジョセフ・スミスや、わたしの父ハイラム・スミス、ブリガム・ヤング、ジョン・テーラー、ウィルフォード・ウッドラフ、そのほか選ばれた霊たちも霊界にいた。彼らは、大いなる末日の業の基を据える務めに携わるために、時満ちる時代に来るようにとどめられていた者である。
54神殿を建て、そこで死者の贖いのために儀式を執行することも、その大いなる末日の業に含まれるのである。
55わたしは、彼らもまた神の教会で治める者となるように初めに選ばれた、高潔で偉大な者たちの中にいるのを見た。
56まことに、彼らは生まれる前に、ほかの多くの者とともに、霊の世界において最初の教えを受け、主の定められたときに出て行って人々の霊の救いのために主のぶどう園で働く準備をしたのである。
57わたしは、この神権時代の忠実な長老たちが、死すべき世を去っても彼らの働きを続け、死者の霊たちの大いなる世界において暗闇と罪の束縛の下にいる者たちの間で、悔い改めと神の独り子の犠牲による贖いの福音を宣べ伝えているのを見た。
58悔い改める死者は、神の宮の儀式に従うことによって贖われるであろう。
59彼らは自分の背きの代価を支払い、洗われて清くなった後、その行いに応じて報いを受けるであろう。彼らは救いを受け継ぐ者だからである。
60このように、死者の贖いの示現がわたしに示された。そして、わたしは証する。わたしたちの主であり救い主であるイエス・キリストの祝福によって、わたしはこの証が真実であることを知っている。まことにそのとおりである。アーメン。