1さて、アルマは彼らにこれらの言葉を語り終えると、地に腰を下ろした。次いでアミュレクが立ち上がり、彼らを教え始めた。
2「わたしの同胞よ、今わたしたちはキリストが神の御子であると教えたが、わたしが思うに、そのキリストの来臨についてこれまで述べられてきたことを、あなたがたが知らないはずはない。あなたがたがわたしたちから背いて去る前に、これらのことがあなたがたに十分教えられていたことを、わたしは知っている。
3あなたがたは苦難に遭っているので、どうしたらよいか教えてほしいとわたしの愛する兄弟に頼み、わたしの兄弟はあなたがたに心の備えをさせるために、多少のことを述べてきた。また彼は、信仰と忍耐をあなたがたに勧めた。
4まことに、御言葉を心に植えるほどの信仰を持ち、その御言葉の良さを試してみるように、あなたがたに勧めた。
5そしてわたしたちは、その御言葉が神の御子の内にあるのかどうか、キリストが将来降臨されるのかどうかという大きな疑問が、あなたがたの心の中にあることが分かった。
6また、あなたがたも見たように、わたしの兄弟は、その御言葉がキリストの内にあって救いに至らせるものであることを、多くの例を引きながらあなたがたに立証した。
7わたしの兄弟は、贖いが神の御子を通して与えられるというゼノスの言葉と、またゼノクの言葉を参照した。また、モーセも引き合いに出して、これらのことが真実であることを立証した。
8さて見よ、わたしも、これらのことが真実であることをあなたがたに証しよう。見よ、あなたがたに言う。将来キリストは、御自分の民の背きを御自身に負うために人の子らの中に来られ、世の罪を贖われる。わたしはこのことを知っている。主なる神がそう言われたからである。
9贖罪が行われることは必要である。というのは、永遠の神の偉大な計画によって贖罪が行われなければならず、そうでなければ、全人類が滅びるのは避けられないからである。まことに、すべての人はかたくなになっており、堕落し、迷った状態にあるので、贖罪によらなければ必ず滅びる。贖罪は必ず行われなければならない。
10大いなる最後の犠牲が必要である。それは、人を犠牲にすることでも、獣や鳥類を犠牲にすることでもない。人の犠牲であってはならず、無限にして永遠の犠牲でなければならない。
11さて、自分の血をささげてほかの人の罪を贖うことができる人など、だれ一人いない。さて、ある人が人を殺した場合、見よ、わたしたちの公正な法律は、その人の兄弟の命を奪おうとするだろうか。そのようなことはないと、わたしはあなたがたに言う。
12そうではなく、法律は人を殺した当人の命を要求する。したがって、無限の贖罪でなくては世の罪を十分に贖うことはできない。
13それゆえ、大いなる最後の犠牲が必要である。そのときに、血を流すことは終わるであろうし、また、やめなければならない。それで、モーセの律法が成就するのである。まことに、モーセの律法は一点一画に至るまでことごとく成就し、むなしくなるものは何一つない。
14見よ、これが律法の目的そのものであり、すべての部分がこの大いなる最後の犠牲を指し示している。そして、この大いなる最後の犠牲となるのが神の御子であるので、まことに、これは無限にして永遠の犠牲である。
15このように神の御子は、その御名を信じるすべての人に救いをもたらされる。この最後の犠牲の目的は、憐れみの心を成し遂げることであり、この憐れみは正義に打ち勝ち、また人々が悔い改めを生じる信仰を持てるようにするその道を設けるのである。
16このように、憐れみは正義の要求を満たし、これらの人々を腕に包み込んで保護する。一方、悔い改めを生じる信仰を少しも働かせない人は、正義を要求するすべての律法にこたえなければならない。したがって、偉大な永遠の贖いの計画は、悔い改めを生じる信仰のある人のためにだけ備えられている。
17それゆえ、神がわたしの同胞であるあなたがたに、あなたがたが悔い改めを生じる信仰を働かせて、神の聖なる御名を呼び始め、神の憐れみを得られるようにしてくださいますように。
18まことに、神に憐れみを叫び求めなさい。なぜなら、神は人を救う力を備えておられるからである。
19まことに、へりくだって、神に祈り続けなさい。
20牧場にいるときには、まことに、すべての家畜の群れについて神に叫び求めなさい。
21家にいるときには、まことに、あなたがたの家のすべての者について、朝も昼も晩も神に叫び求めなさい。
22まことに、敵の力を防ぐことができるように、神に叫び求めなさい。
23まことに、あらゆる義の敵である悪魔を防ぐことができるように、神に叫び求めなさい。
24あなたがたの畑の収穫が豊かであるように、作物について神に叫び求めなさい。
25あなたがたの牧場の家畜が増えるように、家畜の群れについて叫び求めなさい。
26しかし、これだけではない。あなたがたは自分の部屋でも、人目に触れない場所でも、荒れ野でも、あなたがたの心を注ぎ出さなければならない。
27また、声に出して主に叫び求めないときでも、あなたがたの幸いと、あなたがたの周りの人々の幸いを気遣う気持ちを心に満たし、それが絶えず主への祈りになるようにしなさい。
28さて見よ、わたしの愛する同胞よ、あなたがたに言う。これですべてであると思ってはならない。これらのことをすべて行っても、もし乏しい人や着る物のない人を追い払ったり、病気の人や苦しんでいる人を見舞わなかったり、自分には持ち物がありながら、それを必要としている人々に分け与えなかったりするならば、あなたがたに言うが、もしあなたがたがこれらのことのどれも行うことがなければ、見よ、あなたがたの祈りはむなしく、何の役にも立たない。あなたがたは信仰を否定する偽善者と同じである。
29したがって、もし愛を示すことを覚えていなければ、あなたがたは精錬する者たちが(価値のないものとして)捨てて、人が足で踏みつけるかすのようなものである。
30さて、わたしの同胞よ、あなたがたはすでに多くの証拠を得ており、聖文がこれらのことを立証しているのも知っているので、進み出て悔い改めの実を結んでもらいたい。
31まことに、進み出て、もはや心をかたくなにしないでほしい。見よ、今があなたがたの救いの時であり、救いの日である。したがって、あなたがたが悔い改めて心をかたくなにしなければ、偉大な贖いの計画はすぐにあなたがたに効果を及ぼすであろう。
32見よ、現世は人が神にお会いする用意をする時期である。まことに、現世の生涯は、人が各自の務めを果たす時期である。
33さて、前に話したように、あなたがたにはすでに非常に多くの証拠があるので、最後まで悔い改めの日を引き延ばすことのないように切に勧める。永遠に備えるためにわたしたちに与えられている現世の生涯を終えると、見よ、もしわたしたちが現世にいる間に時間を有益に用いなければ、後から暗闇の夜がやって来る。そして、そこでは何の働きもできない。
34あなたがたはその恐ろしい危機に陥るときに、『わたしは悔い改めて神に立ち返ろう』と言うことはできない。あなたがたはこのように言うことはできない。なぜならば、現世を去るときにあなたがたの肉体を所有しているその同じ霊が、あの永遠の世で、あなたがたの肉体を所有する力を持つからである。
35見よ、もし死ぬときまで悔い改めの日を引き延ばしたならば、見よ、あなたがたはすでに悪魔の霊の支配を受けるようになっているので、悪魔はあなたがたに自分のものであるという印を押す。したがって、主の御霊はもはや退き去って、あなたがたの内に決して宿ることはなく、悪魔があなたがたを支配するすべての力を得る。これが悪人の最後の状態である。
36わたしはこのことを知っている。主は清くない宮に住まず、義人の心に住むと言われたからである。主はまた、義人は主の王国で座に着いて二度とそこを去ることがなく、義人の衣は小羊の血によって白くされるとも言われた。
37さて、わたしの愛する同胞よ、わたしはあなたがたがこれらのことを思い出すように、また神を畏れて自分の救いを達成するように、さらに、キリストの来臨を二度と否定することのないように願っている。
38また、あなたがたがこれから二度と聖霊に逆らうことなく、聖霊を受け、キリストの御名を受けるように、そして地に伏すほどにへりくだり、どこにいても霊とまことをもって神を礼拝するように、さらに、神が授けてくださる多くの憐れみと祝福を日々感謝しながら生活するように、わたしは願っている。
39また、わたしの同胞よ、悪魔の誘惑に惑わされることなく、悪魔に打ち負かされることなく、終わりの日に悪魔の手下になることのないように、絶えず祈りに心を配ることを、あなたがたに勧める。見よ、悪魔はあなたがたに決して良いものを報いとして与えないからである。
40わたしの愛する同胞よ、忍耐するように、そしてあらゆる苦難に耐えるように、あなたがたに勧める。また、ひどく貧乏だからということであなたがたを追い出した者のような罪人にならないために、彼らをののしることのないように勧める。
41むしろあなたがたは忍耐し、いつの日かあらゆる苦難を離れて休めるという確固とした望みをもってそれらの苦難に耐えるように、あなたがたに勧める。」