1さて、さばきつかさの統治第五年の初めに、民の中に争いが起こった。これは、アムリサイという男のために起こったものである。この男は非常に狡猾な男、まことに、俗世の知恵に関していえば賢い男であり、かつて剣でギデオンを殺し、法律によって死刑にされた男の教団に属していた。
2さて、このアムリサイは、悪知恵によって多くの人を引き寄せて自分につかせた。そして、その人数が非常に多かったので、彼らは大いに勢力を増し、アムリサイを立てて民を治める王にしようとし始めた。
3さて、これは教会の人々にとっても、また、アムリサイの説得に引き寄せられなかったすべての人にとっても、憂慮すべきことであった。法律によれば、このようなことは民の声によって決めなければならないということを、彼らは知っていたからである。
4したがって、もし民の支持を得るようなことになれば、アムリサイは邪悪な男であったので、教会の権利と特権を民から奪うつもりであった。神の教会を滅ぼすことが彼の目的であったからである。
5さて、人々は国の至る所で各々思いのままに、アムリサイに味方する者と反対する者が分かれて集まり、そこには、ひどい論争と驚くほどの争いが見られた。
6このようにして、彼らは集まってこの件について投票し、その投票をさばきつかさたちの前に置いた。
7そして、民の声はアムリサイに反対であったので、彼は民を治める王になれなかった。
8さてこれは、彼に反対であった人々には大いに喜ばしいことであった。しかし、アムリサイは自分に好意を寄せる者たちを扇動し、自分に好意を寄せない人々に対して怒りを抱かせた。
9そして、彼らは集まり、アムリサイを自分たちの王に任じた。
10さて、アムリサイは彼らを治める王になると、同胞に対して武器を取るように彼らに命じた。彼は民を自分に従わせようとして、このように行ったのである。
11ところで、アムリサイの民はアムリサイの名で区別されて、アムリサイ人と呼ばれ、残りの者はニーファイ人、すなわち神の民と呼ばれた。
12ニーファイ人はアムリサイ人の意図を知って、彼らと戦いを交える用意をした。まことに、彼らは剣と三日月刀、弓と矢、また石と石投げ、そのほかあらゆる武器で武装した。
13このように、彼らはアムリサイ人が攻めて来たときのために、彼らと戦いを交える用意をした。また、人数に応じて隊長と大隊長、連隊長が任命された。
14また、アムリサイもあらゆる武器で自分の兵を武装させ、自分の民をつかさどる統率官と指揮官を任命し、同胞と戦う指揮を執らせた。
15そしてアムリサイ人は、ゼラヘムラの地のそばを流れるシドン川の東にあるアムナイフの丘にやって来て、そこでニーファイ人と戦いを始めた。
16さて、アルマはニーファイの民の大さばきつかさであり、総督であったので、自分の民とともに、すなわち隊長や連隊長たちとともに、まことに軍隊を率いて、戦うためにアムリサイ人に向かって行った。
17そして、彼らはシドン川の東の丘でアムリサイ人を殺し始めた。しかし、アムリサイ人が非常な力でニーファイ人と戦ったので、多くのニーファイ人がアムリサイ人の前に倒れた。
18それでも、主がニーファイ人の手を強くされたので、彼らはアムリサイ人を大勢殺し、アムリサイ人は彼らの前から逃げ始めた。
19そこで、ニーファイ人は終日アムリサイ人を追撃し、多くの者を殺したので、アムリサイ人の戦死者は一万二千五百三十二人に及び、またニーファイ人の戦死者も六千五百六十二人に及んだ。
20そしてアルマは、もはやアムリサイ人を追撃できなくなると、民にギデオンの谷で天幕を張らせた。この谷は、ニーホルの手によって剣で殺されたあのギデオンにちなんで名付けられた所である。この谷で、ニーファイ人はその夜天幕を張った。
21また、アルマは密偵を遣わしてアムリサイ人の残りの者を追わせ、彼らの計画と陰謀を知ろうとした。そうすることによって、彼らに対する防備を固め、自分の民が滅びるのを防ごうとしたのである。
22さて、アムリサイ人の宿営をうかがうために遣わされたのは、ゼラム、アムノル、マンタイ、リムハーという名の者たちであった。これらの者たちは、アムリサイ人の宿営をうかがうために、自分たちの兵を連れて出かけた。
23さて、その翌日、彼らは大いに驚き、またひどく恐れて、ニーファイ人の宿営に大急ぎで帰って来て言った。
24「まことに、わたしたちはアムリサイ人の軍を追って行きましたが、何とも驚いたことに、ニーファイの地へ行く途中の、ゼラヘムラの地の上に当たるマイノンの地で、レーマン人の大軍を見ました。まことに、アムリサイ人は彼らと連合しています。
25そして、彼らはその地でわたしたちの同胞を襲い、同胞は家畜の群れと妻子を連れて、彼らの前をわたしたちの町を目指して逃げています。急がなければ彼らはわたしたちの町を占領し、わたしたちの父と妻子たちを殺してしまうことでしょう。」
26そこでニーファイの民は天幕を携え、ギデオンの谷を出て、自分たちの町であるゼラヘムラの町へ向かった。
27そして見よ、彼らがシドン川を渡っていたときに、まるで海の砂のようにおびただしいレーマン人とアムリサイ人が、彼らを滅ぼそうと襲いかかって来た。
28にもかかわらず、ニーファイ人は主の手によって強くされ、また彼らが敵の手から救い出されるようにと主に熱烈に祈ったので、主は彼らの嘆願を聞いて強くしてくださり、レーマン人とアムリサイ人は彼らの前に倒れた。
29さて、アルマはアムリサイと一対一で、剣で戦った。彼らは互いに激しく戦った。
30そして、神の人であったアルマは、強い信仰に鼓舞され、叫んで言った。「おお、主よ、わたしを憐れんで命を助け、わたしがあなたの御手に使われる者となってこの民を救い、守ることができるようにしてください。」
31さて、アルマはこのように言い終えると、再びアムリサイと戦った。そして、アルマは強くされたので、剣でアムリサイを殺した。
32彼はまたレーマン人の王とも戦った。しかし、レーマン人の王はアルマの前から逃げ帰り、自分の衛兵を出してアルマと戦わせた。
33しかし、アルマは自分の衛兵とともにレーマン人の王の衛兵と戦い、ついに彼らを殺し、また追い返した。
34このようにして、彼はその地の、いや、シドン川の西の岸の妨げとなるものを一掃し、殺されたレーマン人の死体をシドンの水に投げ込んだ。そうすることによって、彼の民が川を渡り、シドン川の西側でレーマン人およびアムリサイ人と戦う場所を得られるようにしたのである。
35さて、彼らが全員川を渡り終えると、レーマン人とアムリサイ人は数え切れないほど大勢であったにもかかわらず、彼らの前から逃げ始めた。
36そして、レーマン人とアムリサイ人は、ニーファイ人の前から、境の地のはるか向こう、西と北の荒れ野へと逃げ出したので、ニーファイ人は力の限り彼らを追撃して殺した。
37まことに、彼らは至る所で戦いを交え、殺され、追われ、西へ北へと散らされて、ついにハーモンツという荒れ野に行き着いた。そこは飢えた猛獣が群れを成して住んでいる荒れ野の一部であった。
38そして多くの者は、負傷していたためにその荒れ野で死に、それらの獣や空を飛ぶはげたかに食われてしまった。後に、彼らの骨が探し出されて、地上に積み上げられた。