1さて、二日二晩たってから、彼らは死者を葬るために造っておいた墓に王の遺体を運んで、まさに葬ろうとしていた。
2そのとき、王妃はアンモンの名声を聞いていたので、人を遣わして、アンモンに自分のところに来てほしいと告げた。
3そこでアンモンは、命じられたとおりに王妃のもとへ行き、自分が何をすることを望んでいるのか知りたいと言った。
4すると、王妃は彼に言った。「夫の僕たちは、あなたが聖なる神の預言者であり、あなたには神の御名によって多くの力ある業を行う力があると、わたしに教えてくれました。
5もしそうであれば、入ってわたしの夫に会ってほしいのです。夫は二日二晩の間、床に伏したままです。夫はまだ死んでいないと言う者もいれば、もう死んでいて悪臭を放っているので墓に葬らなければならないと言う者もいます。しかし、わたしが見たところ、においはありません。」
6さて、これはアンモンが望んでいたことであった。アンモンは、ラモーナイ王が神の力の下にあることを知っていたからである。アンモンは、王の心から不信仰という暗黒の覆いが取り除かれつつあること、そしてその心を照らす光、神の栄光の光であり神の慈しみの驚くべき光であるこの光が、まことに、王自身の中に大きな喜びを注ぎ込んで暗黒の雲が消え去り、永遠の命の光が王自身の中にともされたことを知っていた。まことに、アンモンはこれが王の肉体に打ち勝って、王が神によって意識を失っていたことを知っていたのである。
7したがって、王妃が彼に求めたことは、彼がただ一つ願っていたことであった。そこで、彼は王妃から求められるままに、王に会うために入って行った。そして、彼は王を見ると、王がまだ死んでいないことが分かった。
8そこで彼は王妃に、「王は亡くなっていません。神によって眠っているので、明日、再び起き上がります。ですから王を葬ってはなりません」と言った。
9そしてアンモンは王妃に、「このことをお信じになりますか」と尋ねた。すると、王妃は彼に、「あなたの言葉とわたしたちの僕たちの言葉のほかに何の証拠もありませんが、あなたの言ったとおりになると信じます」と答えた。
10そこで、アンモンは王妃に言った。「お妃様は信仰が非常に深いので幸いです。お妃様、わたしは申し上げます。ニーファイ人のすべての民の中にさえ、これほどの深い信仰はありませんでした。」
11さて、王妃はそのときから、王が起き上がるとアンモンが告げた翌日のその時刻まで、夫の床のそばで起きていた。
12そして王は、アンモンの言葉のとおりに起き上がった。そして王は、起き上がると、王妃に向かって手を伸ばして言った。「神の御名がほめたたえられるように。また、あなたは幸いである。
13あなたが生きているように確かに、見よ、わたしは贖い主を見た。贖い主は将来おいでになり、一人の女からお生まれになり、御名を信じるすべての人を贖われる。」王はこれらの言葉を言い終えると、胸がいっぱいになり、喜びのあまり再び倒れてしまった。すると、王妃も御霊に強く感じて倒れた。
14アンモンは、罪悪と言い伝えのためにこれまでニーファイ人の中に、すなわち神のすべての民の中にひどい嘆きをもたらしてきた同胞のレーマン人に、自分の祈りに応じて主の御霊が注がれたのを見て、ひざまずいた。そして、その心を注ぎ出して祈り、神が自分の同胞のために行ってくださったことについて神に感謝した。それから、彼もまた喜びのあまり力を失ってしまった。このように、彼らは三人とも地に倒れたのであった。
15さて、王の僕たちは彼らが倒れたのを見ると、主への畏れが生じていたので、彼らもまた神に叫び求めた。以前に王の前に立って、アンモンの大きな力について王に証言したのは、この僕たちであった。
16そして彼らは、力の限り主の名を呼び、ついに一人のレーマン人の女を除いて、全員が地に倒れてしまった。この女は名をエービシといい、父の驚くべき示現のために、何年も前からすでに主に帰依していた。
17このようにして、エービシは主に帰依していたので、ほかの者たちにはそのことを知られてはいなかったものの、ラモーナイの僕たちが皆、地に倒れ、また自分の主である王妃も王も、またアンモンまでが地に倒れて横たわっているのを見ると、それが神の力であることを知った。そして、この機会に彼らの中に起こったことを知らせてこの有様を見せれば、人々は神の力を信じるようになるであろうと思ったので、エービシは家から家へと走り回って、人々にそのことを知らせた。
18そこで人々は、王の宮殿に集まり始めた。そして、大勢の人がそこにやって来ると、驚いたことに、王と王妃と彼らの僕たちが地に倒れていた。彼らは皆、死んだようにそこに横たわっていた。また、人々はアンモンも見たが、見よ、その人はニーファイ人であった。
19そこで人々は、互いにつぶやき始めた。そして、ある者たちは、王がこのニーファイ人にこの地に住むことを許したので、彼ら、すなわち王と王の家に属するすべての者に大きな災いが及んだのだと言った。
20しかし、別の者たちは彼らをたしなめて、「王はセブスの泉で家畜の群れを追い散らされた僕たちを殺したために、この災いを王の家に属するすべての者に招いてしまったのだ」と言った。
21しかし、こう言った者たちも、セブスの泉のそばに立っていて王の家畜の群れを追い散らした者たちからとがめられた。これらの者たちは、アンモンがセブスの泉で王の家畜の群れを守ったときに仲間を何人も殺したことで、アンモンに怒りを抱いていたからである。
22そして、その中に、アンモンの剣によって兄弟を殺された者がいた。その男はアンモンのことを非常に怒っていたので、剣を抜くと前に進み出て、その剣でアンモンを殺そうとした。そして、アンモンを殺そうとして剣を振り上げたところ、見よ、その男は倒れて死んでしまった。
23これでわたしたちは、だれもアンモンを殺せないことが分かる。主が彼の父モーサヤに、「わたしは彼の命を救おう。あなたの信仰に応じてそれは彼に起こる」と言われ、モーサヤが主にアンモンのことをお任せしたからである。
24さて、大勢の人は、アンモンを殺そうとして剣を振り上げた男が倒れて死んだのを見て、皆恐れを抱き、アンモンにも、倒れているほかの者にも、あえて手を伸ばして触れようとはしなかった。そして彼らは、この大きな力の元は何であろうか、これらのことは皆どのような意味があるのか、と思い始めた。
25さて、彼らの中には、アンモンが大霊であると言う者が多かったが、大霊から遣わされたのだと言う者もいた。
26しかし、その両者をたしなめて、アンモンは自分たちを苦しめるためにニーファイ人から遣わされた怪物であると言う別の者たちもいた。
27またある者たちは、アンモンは自分たちが罪悪を犯したので、自分たちを苦しめるために大霊から遣わされた者であり、大霊はいつもニーファイ人についていて、自分たちの手から彼らを救い出してきたとも言った。これらの者たちは、自分たちの同胞であるレーマン人を大勢滅ぼしてきたのはこの大霊であると言った。
28このようにして、彼らの中で非常に激しい争いが起こった。そして、彼らがそのように言い争っていたときに、その大勢の人を集めたはしためがやって来た。その女は大勢の人が言い争っているのを見ると、ひどく嘆いて涙を流した。
29そしてその女は、王妃のそばに行くと、王妃を地から起き上がらせようとでもするかのように、その手を取った。すると、その女が王妃の手に触れた途端、王妃は起きて立ち上がり、大声で叫んだ。「おお、恐ろしい地獄からわたしを救われた、祝福に満ちたイエス様。おお、祝福に満ちた神様。この民に憐れみをおかけください。」
30そして、王妃はこのように言うと、喜びに満たされて両手を組み、人々の理解できない多くの言葉を語った。そして、語り終えて、ラモーナイ王の手を取ると、見よ、王も起きて立ち上がった。
31そして、王は民の間に争いがあるのを知ると、すぐに出て行って彼らをたしなめ、アンモンから聞いた言葉を彼らに教え始めた。すると、王の言葉を聞いた人々は皆信じて、主に帰依した。
32しかし、王の言葉を聞こうとしない者たちもたくさんいて、彼らは立ち去った。
33そして、アンモンも起き上がると、彼らに教えを授け、ラモーナイの僕たちも皆同じようにした。彼らは皆すでにその心が改まっており、もう二度と悪を行いたいとは思わなかったので、そのことを口をそろえて人々に告げた。
34そして見よ、多くの僕たちが天使を見、また天使と話をしたと告げた。このように、彼らは神と神の義にかかわることを人々に述べたのである。
35そして、彼らの言葉を信じた人々は大勢いて、信じた人々は皆バプテスマを受け、義にかなった民となり、自分たちの中に教会を設けた。
36このようにして、主の業がレーマン人の中に始まり、主は彼らに主の御霊を注がれた。このことから、主の腕が、悔い改めて主の名を信じるすべての人に伸べられることが分かるのである。