1さて見みよ、アンモンの民たみがジェルションの地ちに定てい住じゅうした後のち、またレーマン人じんがその地ちから追おい払はらわれ、レーマン人じんの死し体たいがその地ちの民たみによって葬ほうむられた後のち、

2レーマン人じんの死し体たいはおびただしい数かずであったので数かぞえられることなく、ニーファイ人じんの死し者しゃも数かぞえられなかったが、その地ちの民たみが彼かれらの死し者しゃを葬ほうむった後のち、そして断だん食じきと喪もと祈いのりの日ひ々びが終おわった後のち、（ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい十六年ねんには）全ぜん地ちに平へい和わが続つづくようになった。

3そして民たみは、主しゅの戒いましめを守まもるように努つとめ、またモーセの律りっ法ぽうに従したがって神かみの儀ぎ式しきを厳げん密みつに守まもった。彼かれらはモーセの律りっ法ぽうが成じょう就じゅするまで、その律りっ法ぽうを守まもるように教おしえられていたからである。

4このように、ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい十六年ねんには、一年ねん間かん、国こく民みんの間あいだにまったく不ふ和わがなかった。

5そして、さばきつかさの統とう治ち第だい十七年ねんの初はじめも、引ひき続つづき平へい和わであった。

6ところが、第だい十七年ねんの末すえに、ゼラヘムラの地ちに一人ひとりの男おとこがやって来きた。その男おとこは反はんキリストであった。彼かれは預よ言げん者しゃたちがキリストの来らい臨りんについて語かたった預よ言げんに反はん対たいして、民たみに教おしえを説とき始はじめた。

7このときには、人ひとの信しん条じょうを禁きん止しする法ほう律りつはなかった。人ひと々びとを不ふ平びょう等どうな立たち場ばに置おく法ほう律りつがあることは、まったく神かみの戒いましめに反はんしていたからである。

8聖せい文ぶんには、「あなたがたの仕つかえる者ものを、今日きょう、選えらびなさい」とある。

9そこで、もし人ひとが神かみに仕つかえたいと思おもうならば、神かみに仕つかえる特とっ権けんがあった。いや、その人ひとが神かみを信しんじるならば、神かみに仕つかえる特とっ権けんがあった。しかし、たとえ人ひとが神かみを信しんじなくても、その人ひとを罰ばっする法ほう律りつはなかった。

10しかし、人ひと殺ごろしをすれば、その人ひとは死し刑けいに処しょせられた。また、略りゃく奪だつする者ものも罰ばっせられ、盗ぬすむ者ものも罰ばっせられ、姦かん淫いんを行おこなう者ものも罰ばっせられた。まことに、すべてこのような悪あく事じを行おこなう者ものは罰ばっせられた。

11人ひと々びとは罪ざい科かに応おうじて裁さばかれるという法ほう律りつがあったからである。にもかかわらず、人ひとの信しん教きょうに反はん対たいする法ほう律りつはなかった。したがって、人ひとは自じ分ぶんの行おこなった犯はん罪ざいについてだけ罰ばっせられたので、すべての人ひとが平びょう等どうな立たち場ばにあった。

12そして、名な前まえをコリホルというこの反はんキリストは、（法ほう律りつは彼かれをまったく拘こう束そくできなかったので）キリストはいないと民たみに教おしえを説とき始はじめた。そして、彼かれは次つぎのように述のべた。

13「おお、愚おろかでむなしい希き望ぼうの下もとに縛しばられている人ひと々びとよ、あなたがたはどうしてこのような愚おろかなことに束そく縛ばくされているのか。あなたがたはどうしてキリストを待まち望のぞんでいるのか。だれも将しょう来らい起おこることを知しることはできない。

14見みよ、あなたがたが預よ言げんと呼よび、聖せいなる預よ言げん者しゃから伝つたえられたと言いっているこれらのことは、見みよ、あなたがたの先せん祖ぞの愚おろかな言いい伝つたえである。

15あなたがたはどのようにしてそれが確たしかであると分わかるのか。見みよ、あなたがたはまだ見みていない物もの事ごとを知しることはできない。だから、将しょう来らいキリストが現あらわれるということを前まえもって知しることはできないのである。

16あなたがたは将しょう来らいを見み通とおして、自じ分ぶんたちの罪つみが赦ゆるされるのが分わかると言いう。しかし見みよ、それは精せい神しんがおかしくなっている結けっ果かである。このような精せい神しんの錯さく乱らんは、実じっ際さいにはないことを信しんじるように惑まどわす、あなたがたの先せん祖ぞの言いい伝つたえのために生しょうじたものである。」

17コリホルはこのようなことをほかにも多おおく民たみに語かたり、人ひと々びとの罪つみのために行おこなわれる贖しょく罪ざいなどあり得えないこと、人ひとは皆みな、この世よの生しょう涯がいを善よく暮くらすも悪わるく暮くらすも、その人ひとの対たい処しょの仕し方かた次し第だいであるから、人ひとは皆みな自じ分ぶんの素そ質しつに応おうじて栄さかえ、自じ分ぶんの力ちからに応おうじて勝しょう利りを得えること、また人ひとがすることはどんなことも決けっして罪つみにならないことを民たみに告つげた。

18彼かれは民たみにこのように説といて、多おおくの人ひとの心こころを惑まどわし、平へい然ぜんと悪あく事じを犯おかさせ、まことに、多おおくの男だん女じょを惑まどわしてみだらな行おこないをさせた。そして、人ひとが死しねばそれで終おわりである、と民たみに語かたった。

19またこの男おとこは、かつてレーマン人じんであったアンモンの民たみの中なかでこのことを教おしえようとして、ジェルションの地ちへも行いった。

20しかし見みよ、アンモンの民たみは多おおくのニーファイ人じんよりも賢けん明めいであった。彼かれらはコリホルを捕とらえて縛しばり、その民たみの大だい祭さい司しであるアンモンの前まえに連つれて行いった。

21そこでアンモンは、彼かれをその地ちから連つれ出ださせた。そこで彼かれはギデオンの地ちへ行いき、その地ちの民たみにも教おしえを説とき始はじめた。しかし、ここでもあまり成せい果かは上あがらなかった。彼かれは捕とらえられて縛しばられ、その地ちの大だい祭さい司しと大だいさばきつかさの前まえに連つれて行いかれたからである。

22そこで、大だい祭さい司しはコリホルに、「なぜあなたは方ほう々ぼう歩あるき回まわって主しゅの道みちを曲まげようとしているのか。なぜキリストは現あらわれるはずがないとこの民たみに教おしえて、彼かれらの喜よろこびを妨さまたげるのか。なぜ聖せいなる預よ言げん者しゃたちのすべての預よ言げんに逆さからって語かたるのか」と尋たずねた。

23この大だい祭さい司しの名なはギドーナであった。コリホルはギドーナに答こたえた。「その訳わけは、わたしがあなたがたの先せん祖ぞの愚おろかな言いい伝つたえをこの民たみに教おしえていないからであり、また昔むかしの祭さい司したちによって設もうけられた愚おろかな儀ぎ式しきと勤つとめに自じ分ぶん自じ身しんを縛しばりつけるように、この民たみに教おしえていないからである。昔むかしの祭さい司したちは民たみを支し配はいする権けん力りょくと権けん能のうを奪うばい取とり、民たみがその頭あたまを上あげることなくあなたの言こと葉ばに従したがうようにするために、民たみを無む知ちの中なかにとどめておこうとして、それらの儀ぎ式しきと勤つとめを設もうけたのだ。

24あなたがたは、この民たみは自じ由ゆうの民たみであると言いう。見みよ、わたしに言いわせれば、この民たみは奴ど隷れいの状じょう態たいにある。あなたがたは昔むかしの預よ言げんは真しん実じつであると言いう。見みよ、それらが真しん実じつであることはあなたがたには分わからない、とわたしは言いおう。

25あなたがたは、この民たみは親おやの背そむきのために罪つみのある堕だ落らくした民たみになっていると言いう。見みよ、子こは親おやのために罪つみを負おわない、とわたしは言いおう。

26またあなたがたは、将しょう来らいキリストが来くるとも言いっている。しかし見みよ、将しょう来らいキリストが来くることはあなたがたには決けっして分わからない、とわたしは言いう。あなたがたはまた、キリストが世よの罪つみのために殺ころされるとも言いっている。

27このようにしてあなたがたは、先せん祖ぞの愚おろかな言いい伝つたえによって、あなたがたの望のぞむままにこの民たみを惑まどわしている。そしてあなたがたは、この民たみの労ろう苦くで飽あきるほどに食たべようと、まるで奴ど隷れいででもあるかのように民たみを抑よく圧あつしている。そのため、民たみはあえて勇ゆう気きを奮ふるって頭あたまを上あげようとせず、またあえて自じ分ぶんたちの権けん利りと特とっ権けんを享きょう受じゅしようともしない。

28まことにこの民たみは、祭さい司したちを怒いからせるのを恐おそれて、自じ分ぶん自じ身しんのものもあえて使つかおうとしない。この祭さい司したちは自じ分ぶんたちの望のぞむままに民たみにくびきをかけ、また自じ分ぶんたちの言いい伝つたえと幻げん想そうと気きまぐれと空くう想そうと偽いつわりの奥おく義ぎによって、もし民たみが祭さい司したちの言こと葉ばのとおりに行おこなわなければ、民たみは神かみと呼よばれる未み知ちの存そん在ざい者しゃを怒いからせることになると民たみに信しんじ込こませた。しかし、彼かれらの言いう神かみは、いまだかつて人ひとが見みたこともなく知しってもおらず、過か去こにも現げん在ざいにも未み来らいにも決けっして存そん在ざいしない者ものである。」

29さて、大だい祭さい司しと大だいさばきつかさは、コリホルの心こころがかたくなであるのを見みると、また彼かれが神かみさえもののしろうとするのを見みると、彼かれの言こと葉ばにまったく応おうじることなく、彼かれを縛しばらせて役やく人にんの手てに引ひき渡わたし、ゼラヘムラの地ちへ送おくった。それは、彼かれをアルマと全ぜん地ちの総そう督とくである大だいさばきつかさの前まえに引ひき出だすためであった。

30さてコリホルは、アルマと大だいさばきつかさの前まえに引ひき出だされても、ギデオンの地ちで語かたったように語かたり、不ふ敬けいな言こと葉ばを吐はき続つづけた。

31また彼かれは、アルマの前まえで大たい言げん壮そう語ごし、祭さい司したちと教きょう師したちをののしり、彼かれらは民たみの労ろう苦くによって飽あきるほど食たべるために先せん祖ぞの愚おろかな言いい伝つたえで民たみを惑まどわしていると言いって彼かれらを非ひ難なんした。

32そこで、アルマは彼かれに言いった。「あなたは我われ々われが民たみの労ろう苦くで飽あきるほど食たべるようなことはしていないことを知しっている。見みよ、わたしは、民たみに神かみの御み言こと葉ばを告つげ知しらせるために何なん度ども国くにの方ほう々ぼうを旅たびしたが、さばきつかさの統とう治ちの初はじめから今いまに至いたるまで、自じ分ぶんの手てで働はたらいて生せい活かつの糧かてを得えてきた。

33またわたしは、教きょう会かいで多おおくの務つとめを果はたしてきたが、これまで自じ分ぶんの働はたらきに対たいして一セナインも報ほう酬しゅうを受うけたことはなかった。わたしの同胞はらからも、さばきつかさの職しょくを務つとめる者もののほかは皆みなそうである。そして、さばきつかさの職しょくにある者ものも、法ほう律りつに定さだめられたとおり、務つとめた時じ間かんの分ぶんの報ほう酬しゅうを受うけるだけである。

34では、もし教きょう会かいでの働はたらきに対たいして何なにも報ほう酬しゅうを受うけないとすれば、我われ々われは、真しん理りを告つげ知しらせて同胞はらからの喜よろこぶのを見みて喜よろこびとするほかに、どのような得とくがあって教きょう会かいで働はたらくのであろうか。

35また、あなた自じ身しん、我われ々われが何なんの報ほう酬しゅうも受うけていないことを知しっているのに、どうして我われ々われが利りを得えるためにこの民たみに教おしえを説といていると言いうのか。また、あなたは、この民たみの心こころの中なかにこのような喜よろこびが満みちているのは、我われ々われがこの民たみを欺あざむいているためだとでも思おもっているのか。」

36するとコリホルはアルマに、「そのとおり」と答こたえた。

37そこで、アルマは彼かれに、「あなたは神かみがましますことを信しんじるか」と尋たずねた。

38すると彼かれは、「いや」と答こたえた。

39また、アルマは彼かれに言いった。「あなたは神かみがましますことをまたもや否ひ定ていし、キリストも否ひ定ていするのか。見みよ、あなたに言いう。わたしは神かみのましますことと、将しょう来らいキリストが来こられることを知しっている。

40あなたは何なんの証しょう拠こがあって神かみは実じつ在ざいせず、またキリストは来こられないと言いうのか。あなたの言こと葉ばのほかには何なに一ひとつ証しょう拠こがないと、わたしはあなたに告つげる。

41しかし見みよ、わたしはすべての事じ物ぶつをもって、これらのことが真しん実じつであると証あかしする。また、これらのことが真しん実じつであることを証あかしするすべての事じ物ぶつがあなたにもあるのである。それでもあなたは、これらのことを否ひ定ていするつもりか。あなたはこれらのことが真しん実じつであることを信しんじるか。

42見みよ、わたしは、あなたが信しんじていることを知しっている。ところがあなたは偽いつわりを言いう霊れいに取とりつかれている。あなたが自じ分ぶんに神かみの御み霊たまが宿やどらないように遠とおざけてしまったので、悪あく魔まがあなたを支し配はいする力ちからを持もったのである。そして、悪あく魔まは神かみの子こたちを滅ほろぼすために様さま々ざまな策さく略りゃくを働はたらかせ、あなたを方ほう々ぼうに行いかせるのである。」

43すると、コリホルはアルマに、「もしあなたが、神かみのいることを確かく信しんさせるしるしをわたしに見みせ、まことに、神かみに力ちからのあることを示しめしてくれるなら、あなたの言こと葉ばが真しん実じつであることを納なっ得とくするだろう」と言いった。

44しかし、アルマは彼かれに言いった。「あなたはすでに数かず々かずのしるしを十じゅう分ぶんに持もっている。あなたは神かみを試こころみようとするのか。あなたの同胞はらからであるこのすべての人ひとの証あかしと、すべての聖せいなる預よ言げん者しゃたちの証あかしがあるのに、あなたは『しるしを見みせてくれ』と言いうのか。あなたの前まえに聖せい文ぶんが置おいてある。まことに、万ばん物ぶつは神かみがましますことを示しめしている。まことに、大だい地ちも、大だい地ちの面おもてにある万ばん物ぶつも、大だい地ちの運うん動どうも、また各おの々おの整せい然ぜんと運うん行こうしているすべての惑わく星せいも、それらのすべてが至し高こう全ぜん権けんの創そう造ぞう主ぬしがましますことを証あかししている。

45それでも、あなたは方ほう々ぼうを歩あるき回まわってこの民たみの心こころを惑まどわし、神かみは実じつ在ざいしないと彼かれらに証あかしするつもりか。また、あなたはそれでも、このように証あかしするすべてのものに逆さからって否ひ定ていするつもりか。」するとコリホルは、「そのとおり。しるしを見みせてくれないかぎり、わたしは否ひ定ていする」と答こたえた。

46そこでアルマは彼かれに言いった。「まことに、あなたの心こころがかたくなであって、なおも真しん理りの霊れいに逆さからって霊れいの滅ほろびを招まねこうとしていることを、見みよ、わたしは嘆なげかわしく思おもう。

47しかし見みよ、あなたが仲なか立だちになって、あなたの偽いつわりとへつらいの言こと葉ばにより多おおくの人ひとを滅ほろびに至いたらせるよりは、むしろあなた自じ身しんが滅ほろびる方ほうがよい。したがって、もしあなたがもう一いち度ど否ひ定ていするならば、まことに神かみはあなたを打うたれるであろう。あなたは物ものが言いえなくなり、二に度どと口くちを開ひらくことができず、もはやこの民たみを欺あざむくことができなくなるであろう。」

48ところが、コリホルはアルマに、「わたしは神かみの存そん在ざいを否ひ定ていはしないが、神かみがいるとは信しんじない。だから、神かみがいることはあなたたちには分わからないと言いっているのだ。しるしを見みせてくれなければ、わたしは信しんじない」と言いった。

49そこで、アルマは彼かれに、「あなたにしるしを示しめそう。あなたはわたしの言いうとおり物ものが言いえなくなるというのがそれである。わたしは神かみの御み名なによって言いう。あなたは物ものが言いえなくなり、今こん後ご二に度どと口くちを利きくことができないであろう」と言いった。

50アルマがこの言こと葉ばを言いい終おえると、アルマの言こと葉ばのように、コリホルは物ものが言いえなくなり、語かたることができなくなった。

51さて、大だいさばきつかさはこれを見みると、手てを差さし伸のべてコリホルに書かき示しめし、「あなたは神かみの力ちからを認みとめるか。あなたはだれにしるしを示しめすようにアルマに求もとめたのか。あなたにしるしを示しめすために、彼かれがほかの人ひと々びとを苦くるしめることを願ねがったか。見みよ、彼かれはもうすでにあなたにしるしを示しめした。それでもなおあなたは反はん論ろんするか」と告つげた。

52するとコリホルも、手てを差さし伸のべて書かき示しめし、言いった。「わたしは今いま、話はなすことができないので、物ものが言いえなくなったことを認みとめます。また、神かみの力ちからによるのでなければ、わたしにこのようなことが決けっして起おきないことも、わたしは知しっています。また、わたしは神かみがましますことを前まえから知しっていました。

53しかし見みよ、悪あく魔まがわたしを欺あざむいたのです。悪あく魔まは天てん使しの姿すがたでわたしに現あらわれて、『この民たみは皆みな、未み知ちの神かみを求もとめて迷まよっているので、行いって改かい心しんさせよ』と言いいました。また悪あく魔まはわたしに、『神かみはいない』と言いい、わたしが言いうべきことも教おしえてくれました。そこで、わたしは悪あく魔まの言こと葉ばを教おしえてきました。わたしは、悪あく魔まの言こと葉ばが肉にくの思おもいに快こころよいので、それを教おしえてきたのです。また、わたしはそれを教おしえてついに大おおきな成せい功こうを収おさめたので、自じ分ぶんでもそれが真しん実じつだとまったく信しんじるようになりました。このようなわけで、わたしは真しん理りに逆さからい、とうとうこの大おおきなのろいを招まねいてしまいました。」

54さて、コリホルはこのように言いうと、そののろいが取とり去さられるように神かみに祈いのってほしいとアルマに懇こん願がんした。

55しかし、アルマは彼かれに、「こののろいがあなたから取とり去さられると、あなたはまた、この民たみの心こころを惑まどわすようになるであろう。だから、主しゅが望のぞまれるとおりになるがよい」と言いった。

56そして、そののろいはコリホルから取とり去さられなかった。そして、彼かれは追おい出だされ、食たべ物ものを請こうて家いえ々いえを巡めぐるようになった。

57一いっ方ぽう、コリホルの身みに起おこったことは、すぐ全ぜん地ちに告つげ知しらされた。まことに、大だいさばきつかさが国くにのすべての人ひとに布ふ告こくを出だし、コリホルの言こと葉ばを信しんじた人ひと々びとに、同おなじ裁さばきを受うけることのないように速すみやかに悔くい改あらためなければならないと告つげたのである。

58そこで彼かれらは皆みな、コリホルの悪あく事じを認みとめ、再ふたたび主しゅに帰き依えするようになった。そして、これによってコリホルに倣ならった罪ざい悪あくは後あとを絶たった。コリホルは家いえ々いえを巡めぐり、食たべ物ものを請こうて命いのちをつないだ。

59さて、ニーファイ人じんから分わかれ、ゾーラムという名なの男おとこに率ひきいられて自じ分ぶんたちをゾーラム人じんと呼よぶようになった民たみがあったが、コリホルはその民たみの中なかを歩あるき回まわっていたときに、見みよ、突つき倒たおされて踏ふみつけられ、とうとう死しんでしまった。

60このことから、主しゅの道みちを曲まげる者ものの末まつ路ろが分わかる。また、悪あく魔まは終おわりの日ひには自じ分ぶんの子こらを助たすけようとせず、速すみやかに地じ獄ごくに引ひきずり込こむということも、わたしたちに分わかるのである。