1さて、アマリキヤおよび彼とともに荒れ野へ逃げて行った者たちの記録に戻ろう。見よ、アマリキヤは、自分に従う者たちを連れてニーファイの地へ上って行き、レーマン人の中に行って、レーマン人を扇動してニーファイの民に対して怒らせた。そのため、レーマン人の王は国中至る所に、すなわち自分のすべての民の中に、ニーファイ人との戦いに出るためもう一度集まるようにという布告を出した。
2そして、その布告が彼らの中に出されると、彼らはひどく恐れた。王の気持ちを損ねるのを恐れるとともに、ニーファイ人と戦うために出て行けば命を失うことになるのではないかと恐れたのであった。そこで彼らは、正確に言えば彼らの大半は、王の命令に従おうとしなかった。
3そして王は、彼らが従おうとしないので怒った。そして王は、自分の軍隊の中の、命令に従順な者たちに対する指揮権をアマリキヤに与え、行って強制的に彼らに武器を取らせるように彼に命じた。
4さて見よ、これはアマリキヤの願っていたことであった。アマリキヤは悪を行うのに非常に巧みな男であったので、レーマン人の王を王位から退ける計画を心の中で練っていた。
5彼はレーマン人の中の、王を支持する者たちに対する指揮権を得たので、次に、従わない者たちの歓心を買おうとした。そこで彼は、オナイダと呼ばれている所へ進んで行った。レーマン人は皆、そこへ逃げていたからである。彼らは軍隊がやって来るのを知ると、自分たちを滅ぼすために来たのだと思い、オナイダ、すなわち武器の場所へ逃げたのである。
6そして彼らは、ニーファイ人と戦わされることのないようにしようと固く決意していたので、一人の男を任命して自分たちを治める王とし、また指揮官としていた。
7そして彼らは、戦う準備をして、アンテパスと呼ばれている山の頂上に集まっていた。
8ところで、王の命令に従って彼らと戦うことは、アマリキヤの本意ではなかった。しかし見よ、彼の目的はレーマン人の軍隊の歓心を買い、自分が彼らの長の地位に就き、王を退位させて、自分が王位を手に入れることであった。
9見よ、そこで彼は、自分の軍隊にアンテパス山に近い谷で天幕を張らせた。
10そして夜になると、彼は密使をアンテパス山に派遣し、その名をレホンタイという、山上にいる者たちの指揮官に、会談したいので山のふもとに下りて来るように求めた。
11さて、レホンタイはその伝言を受けても、山のふもとに下りて来ようとはしなかった。そこでアマリキヤは再度伝言を送って、下りて来るように彼に求めた。それでもレホンタイは下りて来ようとしなかった。そこで彼は、三度目の伝言を送った。
12さて、アマリキヤは、レホンタイを山から下りて来させることができないのを知ると、自分から山を登って行き、レホンタイの宿営の近くまで行った。そして彼は、四度目の伝言をレホンタイに送り、下りて来るように、また衛兵を連れて来るように求めた。
13そして、レホンタイが衛兵とともにアマリキヤのところに下りて来たとき、アマリキヤは彼に、夜の間に軍隊を率いて下りて来て、王が自分に指揮権を与えてくれた宿営中の兵を包囲するように求めた。また、もしレホンタイが自分(アマリキヤ)を全軍の副指揮官にしてくれるならば、その兵をレホンタイの手に引き渡してもいいと言った。
14そこでレホンタイは、兵を率いて下りて来て、アマリキヤの兵を包囲した。このようにアマリキヤの兵は、夜が明けて目を覚ます前にレホンタイの軍隊に包囲されたのであった。
15さて、アマリキヤの兵は、自分たちが包囲されているのを見ると、滅ぼされることのないように同胞に合流させてもらいたいとアマリキヤに懇願した。これはまさにアマリキヤが願っていたことであった。
16そこで彼は、王の命令に背いて兵を引き渡した。これは王を退位させるという企てを成し遂げるために、アマリキヤが願っていたことであった。
17ところで、レーマン人の中では、総指揮官が殺されることがあれば、副指揮官を総指揮官に任命するというのが習わしであった。
18そこでアマリキヤは、部下の一人を使って、少しずつレホンタイに毒を盛らせた。そのために彼は死んでしまった。
19さて、レホンタイが死ぬと、レーマン人はアマリキヤを自分たちの指揮官、自分たちの総司令官に任命した。
20そして、アマリキヤは(自分の望みを達したので)軍隊を率いてニーファイの地へ、すなわち首府であるニーファイの町へ向かった。
21すると王は、衛兵を伴い、彼を迎えるために出て来た。王は、アマリキヤが自分の命令を果たし、ニーファイ人に向かって戦いに出るために、これほどの大軍を集めてきたのだと思ったからである。
22ところが見よ、王が迎えようとして出て来ると、アマリキヤは部下を先に行かせて王を迎えさせた。彼の部下は王の前に出ると、王が偉大であるために王を敬うかのように王の前にひれ伏した。
23そこで王は、手を差し伸べて彼らを立たせようとした。そうすることがレーマン人の習わしであり、平和のしるしであった。彼らはこの習わしをニーファイ人から取り入れたのであった。
24そして、王が最初の者を地から立たせたとき、見よ、その男は王の心臓を突き刺したので、王は地に倒れた。
25これを見て、王の僕たちは逃げ出した。そこで、アマリキヤの部下たちは叫んだ。
26「見よ、王の僕たちが王の心臓を突き刺し、王を倒して逃げた。さあ、来て確かめてみよ。」
27そこで、アマリキヤは自分の兵に、行って、王に何事が起こったのか見るように命じた。そして、彼らがその場に着いて、血まみれになって倒れている王を見つけたとき、アマリキヤは怒ったふりをして、「王を愛していた者は皆行って、王の僕たちを追いかけて殺せ」と言った。
28そこで、王を愛していた者たちは皆、この言葉を聞くと、王の僕たちの後を追いかけた。
29王の僕たちは軍隊が自分たちを追って来るのを見て、またもやおびえ、荒れ野へ逃げ込んだ。そして、ゼラヘムラの地へ行って、アンモンの民に加わった。
30一方、彼らを追いかけた軍隊は、追跡が無駄に終わって戻って来た。このようにして、アマリキヤは欺瞞によって民の信用を得た。
31そして、その翌日、彼は軍隊を率いてニーファイの町に入り、町を支配下に置いた。
32さて、王妃は王が殺されたことを聞くと—というのは、アマリキヤはすでに使者を遣わして、王が王の僕たちによって殺されたことと、自分が軍隊を率いて彼らを追いかけたが、そのかいがなく彼らを取り逃がしてしまったことを、王妃に知らせておいたからである—
33したがって、王妃はこの知らせを受けると、アマリキヤに使者を送って、その町の民の命を助けてくれるように求めた。また王妃は、彼に自分のもとに来てほしいと伝え、さらに王の死について立証する証人たちを一緒に連れて来てほしいと告げた。
34そこでアマリキヤは、王を殺したその部下、および一緒にいたすべての者を連れて王妃のもとへ、王妃の座している所へ入って行った。そして、彼らは皆、王が王自身の僕たちによって殺されたことを王妃に証言し、また、「彼らは逃げました。このことは彼らに対する証拠にならないでしょうか」と言った。このようにして、彼らは王の死について王妃の問いに十分に答えたのであった。
35そして、アマリキヤは王妃の歓心を買うように努め、王妃を妻にした。このようにして、彼は欺瞞により、また悪賢い部下たちの助けによって王位を得、全地の至る所で、レーマン人のすべての民の中で王と認められた。このレーマン人の民は、レーマン人とレムエル人、イシマエル人、それにニーファイの統治からその当時に至るまでのニーファイ人のすべての離反者から成っていた。
36これらの離反者たちは、ニーファイ人と同じ教えと同じ知識を得ていた。また、同じように主について知る教えを受けていた。にもかかわらず、不思議な話であるが、離反後間もなく、レーマン人よりもかたくなで悔い改めない者、また彼らよりも野蛮で邪悪、残忍な者となってしまい、レーマン人の言い伝えを受け入れ、怠惰やあらゆる好色に身を任せ、主なる神をすっかり忘れてしまったのである。