1さて、第十九年の十一月十日に、レーマン人の軍隊がアモナイハの地に近づいて来るのが見えた。
2見よ、すでにその町は再建されており、モロナイは町の境の近くに軍隊を配備していた。そして彼らは、レーマン人の矢と石を避けるために、周囲に土を盛り上げておいた。見よ、レーマン人は石と矢で戦ったからである。
3見よ、わたしはアモナイハの町が再建されたと述べたが、町は一部分再建されたと言い直そう。レーマン人は、民の罪悪のためにその町がかつて滅ぼされたことがあるので、再びそこが容易に自分たちのえじきになるであろうと思ったのである。
4しかし見よ、彼らの期待は何と大きく外れたことか。見よ、ニーファイ人は自分たちの周囲に土手を築き上げており、それが非常に高かったので、レーマン人はニーファイ人に石を投げても矢を射ても効果を上げることができず、また入り口からでなければ彼らを攻めることができなかったのである。
5このとき、レーマン人の連隊長たちは、ニーファイ人が防御の場所を備えるに当たって知恵を働かせたことに非常に驚いた。
6レーマン人の指揮官たちは、自分たちの人数が非常に多かったので、これまでと同じように当然ニーファイ人を攻めることができると思っていた。また、レーマン人も盾と胸当てを装備し、さらに皮の衣、まことに裸を覆う非常に厚い衣を着ていた。
7このように装備を整えていたので、レーマン人は、自分たちの意のままに容易に同胞を打ち負かして、彼らに奴隷のくびきをかけることができる、そうでなければ彼らを殺し、虐殺できると思っていた。
8しかし見よ、まったく驚いたことに、ニーファイ人はこれまでリーハイの子孫の中にまったく知られていなかった方法で、レーマン人に対する備えをしていた。ニーファイ人はモロナイの指示に従って、レーマン人と戦う備えをしていたのである。
9そして、レーマン人、いやアマリキヤ人はニーファイ人の戦いの備え方に非常に驚いた。
10さて、もしアマリキヤ王が軍隊を率いてニーファイの地から下って来ていたら、恐らく彼はレーマン人にアモナイハの町でニーファイ人を攻撃させていたことであろう。見よ、彼は自分の民の血など気にもかけなかったからである。
11しかし見よ、アマリキヤ自身は戦うために下って来てはいなかった。見よ、彼の連隊長たちは、アモナイハの町であえてニーファイ人を攻撃しようとしなかった。モロナイがニーファイ人の中の諸事の管理体制を変えていたからである。そのため、レーマン人はニーファイ人が避難する場所を設けていたことに期待を裏切られ、彼らを攻めることができなかった。
12そこで彼らは荒れ野へ退き、軍隊を率いてノアの地へ向かって進軍した。そこがニーファイ人を攻める次の最適地だと思ったからである。
13彼らはモロナイがすでに国中のすべての町で防備を固めていたこと、すなわち防御のとりでを築いていたことを知らなかった。そのため、彼らは固い決意をもってノアの地へ進軍した。実に、彼らの連隊長たちは前に進み出て、その町の民を滅ぼすと誓ったのであった。
14しかし見よ、驚いたことに、これまで弱い所であったノアの町は、モロナイの働きによって今や堅固になっており、アモナイハの町の堅固さをしのぐほどになっていた。
15さて見よ、これはモロナイの知恵によるものであった。モロナイは、彼らがアモナイハの町に驚くであろうと思い、またこれまでノアの町がその地でいちばん弱い所であったので、彼らはそこへ進軍して戦おうとするであろうと思ったからである。そして、それは彼の望みどおりになった。
16見よ、すでにモロナイはリーハイを、その町の兵を指揮する司令官に任命していた。このリーハイはシドン川の東の谷でレーマン人と戦ったあのリーハイである。
17さて見よ、レーマン人はリーハイがその町で指揮を執っていることを知ると、またもや意気消沈した。彼らはリーハイを非常に恐れていたのである。それでも、彼らの連隊長たちはその町を攻撃すると固く誓っていたので、それぞれの軍隊を率いて攻め寄せた。
18見よ、周囲に築き上げられた土手は高く、堀は深かったので、レーマン人は入り口による以外、ほかの道からニーファイ人の防御のとりでに入ることはできなかった。
19このように、ニーファイ人は入り口以外の所からとりでに入ろうとして登って来る者たちに、上から石を投げつけ、矢を射て全員を殺してしまおうと備えをしていた。
20また彼らは、ニーファイ人の中でも最も強い兵の一団を置いて、入り口からニーファイ人の防御地に入って来ようとするすべての者を、剣と石投げで打ち倒そうと待ち構えていた。このように彼らは、レーマン人に対して自衛する備えをしていた。
21さて、レーマン人の隊長たちは、それぞれの軍隊を入り口の前に率いて行き、ニーファイ人の防御地に入ろうとしてニーファイ人と戦い始めた。しかし見よ、彼らは何度も撃退され、おびただしい数の死者を出した。
22彼らはその通路でニーファイ人に勝てないことを知ると、次に、土手を掘り崩してニーファイ人の軍隊に近づく道を開き、対等に戦う機会を得ようとした。しかし見よ、その最中に彼らは石を投げつけられ、矢を射られて倒された。そのため、土手を掘り崩して堀を埋める代わりに、死者や負傷者の体で多少堀が埋められることになった。
23このように、ニーファイ人はあらゆる点で敵に勝っていた。また、このようにレーマン人はニーファイ人を滅ぼそうと試みたが、とうとう彼らの連隊長たちは全員殺されてしまった。そして、千人を越えるレーマン人が殺された。一方、ニーファイ人で殺された者はただの一人もいなかった。
24しかし、負傷者がおよそ五十人いた。それは通路でレーマン人の矢が当たった者たちである。彼らは盾と胸当てとかぶとで保護されていたので、負傷した箇所は足で、その多くが重傷であった。
25さて、レーマン人は、連隊長たちが全員殺されたのを知ると、荒れ野へ逃げて行った。そして彼らはニーファイの地へ引き返し、生まれはニーファイ人でありながら今は王となっているアマリキヤに、自分たちの被った大きな損害について報告した。
26そこで彼は、自分の民をひどく怒った。ニーファイ人を支配するという望みを達せられず、ニーファイ人に奴隷のくびきをかけることができなかったからである。
27まことに、彼はひどく怒り、神とモロナイをのろい、必ずモロナイの血を飲むと誓った。それは、モロナイが神の命じられたことを守って、民を保護する備えをしたからである。
28さて一方、ニーファイの民は、主がたぐいない力で自分たちを敵の手から救ってくださったことを、主なる神に感謝した。
29このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第十九年が終わった。
30そして、彼らの中には引き続き平和があり、また彼らが神の言葉に注意を払い、勤勉であったために、教会は非常に大きな繁栄を見た。神の言葉はヒラマンとシブロン、コリアントン、アンモン、彼の同僚たち、および悔い改めのためのバプテスマを受けて神の聖なる位によって聖任され、民の中で教えを説くように遣わされたすべての人により、彼らに告げ知らされたのである。