1さて、アルマはギデオンの地から南方のマンタイの地へ向かって旅をしていたとき、見よ、思いがけず、ゼラヘムラの地を指して旅をしていたモーサヤの息子たちに出会った。
2モーサヤのこの息子たちは、天使が初めてアルマに現れたときにアルマとともにいた人々である。そのため、アルマは自分の仲間に会えたことでひとかたならず喜んだ。しかも、彼らがなおも主にあって兄弟であったので、その喜びはいっそう深かった。さらに、彼らは正しい理解力を備えた人々であり、また神の言葉を知るために聖文を熱心に調べてきたので、すでに真理を深く知るようになっていた。
3そればかりではない。彼らはしばしば祈り、また断食もしたので、預言の霊と啓示の霊を受けていた。そして、教えるときには、神の力と権能をもって教えた。
4そして彼らは、それまで十四年間レーマン人の中で神の言葉を教えて、多くの人に真理を知らせるのに大きな成功を収めていた。まことに、彼らの言葉の力によって、多くの人が神の聖壇の前に導かれ、神の名を呼び、神の前で自分たちの罪を告白した。
5さて、彼らが旅をしていた間の状況は次のとおりである。彼らは多くの苦難に遭い、飢えや渇き、疲労、多くの霊的な労苦など、肉体的にも精神的にもひどく苦しんだ。
6さて、彼らの旅は次のとおりであった。彼らの父モーサヤが彼らに王位を譲りたいと思い、また民も同じ思いを抱いていたが、彼らは王位を受けることを辞退し、さばきつかさの統治の第一年に、父に別れを告げて出かけた。
7彼らは、譲位の話があったにもかかわらずゼラヘムラの地を去ったのである。彼らは自分たちの剣と槍、弓、矢、石投げを持って行った。荒れ野で食べ物を手に入れるためであった。
8このように、彼らはすでに選んでおいた人々とともに荒れ野に旅立ち、レーマン人に神の言葉を宣べ伝えるためにニーファイの地へ上って行った。
9そして、彼らは荒れ野の中を幾日も旅をした。また彼らは、主が御霊の一部を授けて自分たちに伴わせてくださり、またとどめてくださることを願って、大いに断食し、大いに祈った。それは、彼らが神の手に使われる者となり、できれば自分たちの同胞であるレーマン人に真理を知らせ、彼らの先祖の正しくない言い伝えが不純であることを知らせるためであった。
10そこで主は彼らに御霊を下し、「慰めを得なさい」と言われた。そこで彼らは慰めを得た。
11主はまた彼らに、「あなたがたの同胞であるレーマン人の中へ行き、わたしの言葉を確立しなさい。しかし、あなたがたはわたしにあって彼らに良い模範を示せるように、長い苦しみと苦難の中で忍耐強くありなさい。そうすれば、わたしはあなたがたをわたしの手に使われる者として多くの人を救おう」と言われた。
12そこで、モーサヤの息子たちと、一緒にいた人々は、レーマン人のところへ行って彼らに神の言葉を告げ知らせる勇気を得た。
13そこで彼らは、レーマン人の地の境に着くと、主が刈り入れの後に自分たちを再会させてくださることに信頼を寄せ、各々別れて次々に去って行った。彼らは自分たちが取りかかった業が大変なものであると考えていた。
14そして確かに、それは大変なものであった。彼らは、野蛮でかたくなで残忍な民に神の言葉を宣べ伝えようとしていたからである。その民は、ニーファイ人を殺したり、ニーファイ人のものを盗んだり、奪ったりすることを喜びとしていた。また彼らは、富、すなわち金銀や宝石に執着しており、しかも彼らは、これらのものを手に入れるのに自分の手で働くことなく、殺人や略奪によって手に入れようとしていた。
15このように、彼らは非常に怠惰な民であり、その中の多くの者は偶像を礼拝していた。そして、彼らの先祖の言い伝えのために、神ののろいが彼らに下っていた。それでも、悔い改めを条件として、主の約束が彼らに与えられていたのである。
16したがって、モーサヤの息子たちは、恐らく彼らを悔い改めさせることができると思い、また恐らく彼らに贖いの計画を知らせることができると思って、その業に着手したのであった。
17そこで彼らは、各々別れて、自分に与えられた神の言葉と力をもって、独りでレーマン人の中へ入って行った。
18さて、アンモンは彼らの指導者であったので、いや、彼らに必要なものを与え、各々の職に応じて彼らに祝福を授け、彼らに神の言葉を告げた後、すなわち自分の出発に先立って彼らに祝福を授けた後、彼らのもとを去った。このようにして、彼らはそれぞれ別れて全地に旅立った。
19そして、アンモンはイシマエルの地へ行った。そこは、レーマン人となったイシマエルの息子にちなんで名付けられた地である。
20アンモンがイシマエルの地へ入ったところ、レーマン人は彼を捕らえて縛った。レーマン人は、自分たちの手に落ちたニーファイ人を皆縛って、王の前に連れて行くのを習わしとしていたからである。そして、捕らえたニーファイ人を殺すか、束縛の身に置くか、牢に入れるか、それともその地から追い出すか、それは王の意のまま、思いのままに任されていた。
21このようにして、アンモンはイシマエルの地を治めている王の前に連れて行かれた。この王は名をラモーナイといって、イシマエルの子孫であった。
22王はアンモンに、この地にいてレーマン人の中で暮らしたいか、すなわち自分の民の中で暮らしたいかどうか尋ねた。
23そこでアンモンは王に、「はい。しばらくこの民の中で暮らしたいと思います。死ぬまでここに住むかもしれません」と答えた。
24そこでラモーナイ王は、アンモンのことを非常に気に入り、彼を縛っている縄を解かせた。そして、アンモンに自分の娘の一人を妻にめとらせようとした。
25しかしアンモンは、「そうではなく、王の僕になりたいのです」と言い、ラモーナイ王の僕になった。そして彼は、レーマン人の習わしに従って、ほかの僕たちの中に加えられてラモーナイ王の家畜の群れを守ることになった。
26そして彼は、三日間王に仕えた後、レーマン人である僕たちとともに、家畜の群れを水のある場所へ連れて行くことになった。その場所はセブスの泉と呼ばれた。レーマン人は皆、それぞれ家畜の群れをここに追って来て水を飲ませるのである。
27こうして、アンモンと王の僕たちが家畜の群れをこの水のある場所に追って行く途中、見よ、すでに家畜の群れに水を飲ませてしまったあるレーマン人の一団が立っていて、アンモンと王の僕たちが連れた家畜の群れを追い散らした。そして、彼らが追い散らしたために、家畜は方々に逃げ去ってしまった。
28すると、王の僕たちは、「我々の仲間は前に、この連中の悪事のために群れを追い散らされたので、王に殺されてしまった。我々も王に殺される」とつぶやき始めた。そして、「見よ、我々の群れはもう散ってしまった」と言いながら、激しく泣き始めた。
29彼らは殺されるのを恐れて泣いたのである。アンモンはこれを見ると喜びで胸がいっぱいになり、「王のためにこの家畜を元どおりにして、同僚であるこの僕たちにわたしの力を、すなわちわたしの内にある力を示し、同僚であるこの僕たちの信頼を得て、彼らにわたしの言葉を信じさせるようにしよう」と言った。
30さて、これはアンモンが自分の同僚と呼んだ者たちの悩む様子を見て、心に思ったことであった。
31そしてアンモンは、次のように言って彼らをなだめた。「同僚たち、元気を出してください。群れを捜しに行きましょう。群れを集めて水のある場所へ連れ戻しましょう。こうして王のために群れを守れば、王はわたしたちを殺さないでしょう。」
32そして、彼らは群れを捜しに行った。彼らはアンモンに従って大急ぎで走って行き、王の家畜の先に立って、群れを再び水のある場所に集めた。
33ところが、あの男たちが、アンモンたちの家畜の群れを追い散らそうとしてまた立っていた。そこでアンモンは同僚たちに、「群れが逃げ出さないように周りを囲んでいてください。わたしは行って、わたしたちの群れを散らすあの男たちと戦います」と言った。
34そこで彼らは、アンモンから指示されたとおりにした。一方、アンモンは進んで行くと、セブスの泉のそばに立っている者たちと戦う身構えをした。しかし、相手は少ない数ではなかった。
35そのため彼らは、独りでも思いのままにアンモンを殺せると思い、彼を恐れなかった。主がモーサヤに、レーマン人の手から彼の息子たちを救い出すと約束しておられたことを、彼らは知らなかったからである。彼らはまた、主のことをまったく知らなかったので、自分たちの同胞が滅びるのを喜びとしていた。そのために彼らは、王の家畜の群れを追い散らそうと待ち構えていたのである。
36そこでアンモンは、進み出て身構えると、石投げを使って彼らに石を投げ始めた。まことに、彼は大いなる力で彼らの中に石を投げた。このようにして、彼がその幾人かを殺したので、彼らはその力に驚き始めた。それでも、彼らは仲間の中の殺された者のために怒り、アンモンを必ず倒そうと心に決めた。そこで彼らは、石でアンモンを撃てないことを知ると、こん棒を持って近づき、彼を殺そうとした。
37しかし見よ、アンモンを打とうとしてこん棒を振り上げた者は、ことごとくアンモンの剣で腕を切り落とされた。アンモンが剣の刃で彼らの腕を打って、彼らが打ちかかってくるのを防いだからである。そのため彼らは驚いて、彼の前から逃げ始めた。彼らの数は少なくなかったが、アンモンはその腕の力によって彼らを退けたのである。
38ところで、石投げで倒れた者は六人であったが、アンモンは首謀者のほかは剣でだれも殺さず、自分に向かって腕を振り上げた者の腕を切り落としただけであった。それでも、その数は少なくなかった。
39アンモンは彼らを追い払うと、引き返して来た。そして彼らは群れに水を飲ませ、王の牧場に群れを連れ戻した。それから彼らは、アンモンを殺そうとした者たちの、剣で切り落とされた腕を持って王のもとへ行った。それらの腕は、彼らが行ったことの証拠として、王のもとに運ばれたのである。