1「わが子よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。わたしはあなたに誓う。あなたは神の戒めを守るかぎり地に栄えるであろう。
2あなたはわたしと同じように、わたしたちの先祖が囚われの身にあったことを思い起こしてもらいたい。わたしたちの先祖は奴隷の状態にあり、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神のほかにはだれも彼らを救い出せなかった。そして神は、確かに苦難の中にいる彼らを救い出された。
3おお、わが子ヒラマンよ、見よ、あなたは若い。だから、わたしの言葉を聞いて、わたしに学ぶように勧める。神に頼る者はだれであろうと、試練や災難や苦難の中にあって支えられ、また終わりの日に高く上げられるということをわたしは知っているからである。
4しかし、わたしがそれを自分独りで知ったと思ってもらいたくない。物質的なものからではなく、霊的なものから知ったのであり、肉の思いからではなく、神から知らされたのである。
5見よ、わたしはあなたに言う。わたしは神から生まれていなかったならば、これらのことを知ることはなかったであろう。しかし、神は聖なる天使の口を通して、これらのことをわたしに知らせてくださった。わたし自身はまったくふさわしくなかったにもかかわらず、そうしてくださった。
6わたしはかつてモーサヤの息子たちと一緒に歩き回って、神の教会を滅ぼそうとしていた。ところが見よ、神は、聖なる天使を遣わして、道の途中でわたしたちを止められた。
7見よ、その天使はわたしたちに語りかけたが、それはまるで雷の音のようであった。そして、大地全体がわたしたちの足もとで揺れ動き、わたしたちは皆、地に伏した。主への畏れを覚えたからである。
8ところが見よ、その声がわたしに、『起きなさい』と言った。そこでわたしは起き上がって立ち、その天使を見た。
9すると、天使はわたしに、『たとえあなた自身が滅ぼされようとも、これ以上、神の教会を滅ぼそうとしてはならない』と言った。
10そして、わたしは地に倒れた。そして三日三晩、口を利くことができず、手足を動かすこともできなかった。
11天使はわたしにもっと多くのことを語り、仲間はそれを聞いたが、わたしには聞こえなかった。わたしは、『たとえあなた自身が滅ぼされようとも、これ以上、神の教会を滅ぼそうとしてはならない』という言葉を聞いたときに、自分は滅ぼされるのではないかというひどい恐れと驚きに打たれて地に倒れ、それ以上は何も聞こえなかったからである。
12しかしわたしは、永遠の苦痛に責めさいなまれた。わたしはきわめてひどい苦しみを受け、自分のすべての罪に責めさいなまれた。
13まことに、わたしは自分のあらゆる罪と不義を思い出し、そのために地獄の苦しみを味わった。わたしは自分が神に逆らってきたことと、神の聖なる戒めを守っていなかったことを知ったのである。
14また、わたしは神の子供たちを大勢殺した。いや、彼らを惑わして滅びに至らせた。要するに、わたしの罪悪が非常に大きかったので、神の御前に行くことを考えるだけで、わたしは言いようのない恐怖に責めさいなまれた。
15おお、そのときにわたしが思ったのは、自分が追放されて霊と肉体がともになくなってしまえば、神の御前に立たされて自分の行いを裁かれることはないだろうということであった。
16さて、三日三晩、わたしはまさに罰の定めを受けた者の苦痛に責めさいなまれた。
17そして苦痛に責めさいなまれていたときに、わたしは自分の多くの罪を思い出してひどく苦しみながら、見よ、かつて父がイエス・キリストという御方の来臨について民に預言するのを聞いたことを思い出した。イエス・キリストは神の御子であり、世の罪を贖うために来られるというのである。
18心にこの思いがはっきりと浮かんできたとき、わたしは心の中で、『おお、神の御子イエスよ、苦汁の中におり、永遠の死の鎖に縛られているわたしを憐れんでください』と叫んだ。
19さて見よ、このことを思ったとき、わたしはもはや苦痛を忘れることができた。まことに、わたしは二度と罪を思い出して苦しむことがなくなった。
20おお、何という喜びであったことか。何という驚くべき光をわたしは見たことか。まことに、わたしは前に感じた苦痛と同じほどの大きな喜びに満たされたのである。
21わが子よ、まことに、あなたに言うが、わたしはほかにあり得ないほど激しく、またつらい苦痛を味わった。また息子よ、わたしは言う。それとは反対に、わたしはほかにあり得ないほど麗しく、また快い喜びを味わった。
22思うに、ちょうどわたしたちの先祖リーハイが見たように、わたしも神が御座に着き、神を賛美しほめたたえる様子で群れ集まる無数の天使たちに取り囲まれておられるのを見た思いがした。そして、わたしはそこに行きたいと切に望んだ。
23すると見よ、わたしの手足は再び力を取り戻した。そこでわたしは立ち上がり、自分が神から生まれたことを民に言明した。
24また、そのときからまさに現在まで、わたしは絶えず働き続け、人々を悔い改めに導き、わたしが味わった非常な喜びを味わわせ、彼らも神から生まれ、聖霊に満たされるようにしてきた。
25そして、見よ、おお、わが子よ、今主はわたしの労苦の結ぶ実によって非常に大きな喜びをわたしに与えてくださっている。
26主がわたしに告げてくださった御言葉のために、見よ、多くの人が神から生まれ、わたしの味わったように味わい、わたしが見たように目の当たりに見た。そのために彼らは、わたしが述べてきたこれらのことを、わたしが今知っているように知っている。わたしが今知っていることは、神から出たものである。
27そしてわたしは、あらゆる試練と災難の下で、またあらゆる苦難の中で支えられてきた。まことに、神は牢から、また束縛から、死からわたしを救い出してくださった。わたしは神を信頼している。神はこれからもわたしを救い出してくださるであろう。
28わたしは、神が終わりの日にわたしをよみがえらせ、栄光のうちに御自身とともに住めるようにしてくださることを知っている。わたしは神をとこしえにほめたたえよう。神はわたしたちの先祖をエジプトから導き出してくださったからである。神はエジプト人を紅海の中にのみ込ませ、御自分の力によって、わたしたちの先祖を約束の地に導かれた。また神は、何度も奴隷と束縛の状態から先祖を救い出してくださった。
29神はまた、エルサレムの地からわたしたちの先祖を連れ出してくださった。また、永遠の力によって、今日に至るまで何度も奴隷と束縛の状態から先祖を救い出してくださった。わたしは先祖が囚われの身にあったことをいつも思い起こすようにしてきた。あなたもわたしと同じように、先祖が囚われの身にあったことを思い起こすようにしなければならない。
30しかし見よ、わが子よ、それだけではない。神の戒めを守るかぎり地に栄えることを、わたしが知っているように、あなたも知らなければならない。また、神の戒めを守らなければ神の御前から絶たれるということも、あなたは知らなければならない。これは神の御言葉による。」