1さて、ゼーズロムは、アミュレクを滅ぼすための偽りと欺きをアミュレクに見破られ、彼の言葉に沈黙してしまうとともに、自分の罪を自覚して震えおののき始めた。アルマはその様子を見ると、口を開いてゼーズロムに語り、アミュレクの言葉を確認し、さらに多くのことを説き始めた。すなわち、アミュレクよりもさらに詳しく聖文を説き明かし始めた。
2さて、アルマがゼーズロムに語った言葉は、取り巻いていた人々にも聞こえた。群衆は大勢であった。アルマは次のように語った。
3「ゼーズロムよ、あなたの偽りと悪巧みは見破られている。あなたは人に偽りを言っただけでなく、神にも偽りを言ったのだ。見よ、神はあなたの思いをすべて御存じである。そして、あなたも分かっているように、あなたの思いは神の御霊によってわたしたちに知らされている。
4あなたも分かっているように、わたしたちは、あなたのはかりごとが悪魔の狡猾さによって非常に狡猾であって、この民を偽り欺いて彼らにわたしたちに対する反感を抱かせ、わたしたちをののしり、追い出させるのに有効であることを知っている。
5これはあなたの敵のはかりごとであって、彼はあなたの中で力を行使してきたのである。さて、わたしがあなたに告げることは、すべての人に告げることでもある。あなたがたはそのことを覚えておいてほしい。
6見よ、わたしはあなたがた全員に言う。これはこの民を捕らえるために敵対する者の仕掛けたわなであり、これによって彼は、あなたがたを自分に服従させ、鎖であなたがたを縛り、束縛の力によってあなたがたに鎖をかけたまま、永遠の滅びに陥れようとしたのである。」
7さて、アルマがこれらの言葉を語り終えると、ゼーズロムはさらにひどくおののき始めた。彼はますます神の力を感じ、またアルマとアミュレクが自分のことを知っていると分かったからである。彼は、二人が自分の心の思いと意図を知っていることに気づいた。彼ら二人は、預言の霊によってこれらのことが分かるように、力を与えられたのである。
8そこでゼーズロムは、神の王国についてもっと多く知ろうとして、熱心に彼らに尋ね、アルマにこう言った。「アミュレクが死者の復活について語り、すべての人は正しい者も正しくない者も死者の中からよみがえり、ともに行いに応じて裁かれるために神の御前に引き出されて立つと言ったのは、どういう意味ですか。」
9そこでアルマは、このことを次のように詳しく述べて彼に言った。「神の奥義を知ることは多くの人に許されている。しかしこれらの人々は、神が人の子らに授けておられるだけの御言葉しか伝えてはならないという、厳しい命令を受けている。神の御言葉は、人の子らが神に寄せる注意力と熱意の度合いに応じて与えられる。
10したがって、心をかたくなにする者はわずかな御言葉しか受けないが、心をかたくなにしない者は、さらに多くの御言葉を与えられて、ついに神の奥義が十分に分かるようになるまで、奥義を知ることが許される。
11また、心をかたくなにする者はわずかな御言葉しか与えられず、ついに神の奥義をまったく知らない有様となる。その後、これらの者は悪魔に捕らえられて、悪魔の意のままに滅びに引き込まれる。地獄の鎖とはこのことを意味する。
12そしてアミュレクは、死と、この死すべき状態から不死不滅の状態によみがえることと、行いに応じて裁かれるために神の法廷に連れ出されることについて分かりやすく話した。
13したがって、もしわたしたちの心がかたくなであり、まことに、わたしたちが御言葉に対して心をかたくなにして、御言葉がわたしたちの中に見いだされないようになれば、そのとき、わたしたちの状態は恐ろしいものになるであろう。そのとき、わたしたちは罪に定められるからである。
14わたしたちの言葉がわたしたちを罪に定め、まことに、行いもすべてわたしたちを罪に定めるので、わたしたちは染みのない者とは認められない。また、わたしたちの思いもわたしたちを罪に定める。そして、このような恐ろしい状態の中で、わたしたちはあえて神を仰ぎ見ようとはしないであろう。そして、神の御前から隠れるために、岩や山に自分の上に落ちてくるように命じることができれば、喜んでそうするであろう。
15しかし、それはできない。わたしたちは出て来て、栄光と力、威勢、尊厳、主権を帯びておられる神の御前に立ち、永遠の恥辱を感じながら、神の裁きがすべて公正であること、神がすべての業を公正に進めておられること、神が人の子らに対して憐れみに富んでおられること、神が御名を信じて悔い改めにふさわしい実を結ぶあらゆる人を救う一切の権威を持っておられることを、認めなければならない。
16さて見よ、わたしはあなたに言う。そのときに死がやって来る。第二の死、すなわち霊の死がやって来る。それは、肉体の死に関して罪のあるまま死ぬ者が霊の死をも受ける時である。まことにその人は、義にかかわることについて死ぬのである。
17それは、彼らの受ける苦痛が、炎がとこしえにいつまでも立ち上る、火と硫黄の池のようになる時である。またそれは、彼らがサタンの力と束縛によって鎖をかけられて、永遠の滅びに至る時である。それは、サタンが意のままに彼らを従わせてしまったからである。
18またあなたに言う。そのとき、彼らはあたかも贖いがなかったかのようになるであろう。彼らは神の正義によれば、贖いを受けることができないからである。また彼らは、もはや朽ちることがないので、死ぬこともできない。」
19さて、アルマがこれらの言葉を語り終えると、人々はことのほか驚いた。
20ところが、人々の中に高官の一人でアンテオナという人がいた。彼は進み出ると、アルマに言った。「人は死者の中からよみがえって、この死すべき状態から、決して死ぬことのできない不死不滅の状態に変えられるとあなたは言ったが、それはどういうことか。
21聖文には、神がエデンの園の東にケルビムと燃える剣を置いて、わたしたちの始祖が園に入って命の木の実を食べ、とこしえに生きることのないようにされたとあるが、それはどういう意味か。そうであるとすれば、わたしたちの始祖がとこしえに生きるという可能性がまったくないことになる。」
22そこで、アルマは彼に言った。「わたしは、それを説明しようと思っていた。わたしたちの知っているように、アダムは禁断の実を食べたことによって神の御言葉のとおりに堕落した。また、わたしたちの知っているように、アダムが堕落したことにより、全人類は迷い堕落した民となった。
23さて見よ、わたしはあなたに言う。もしそのときにアダムが命の木の実を食べることができたとすれば、死ぬことはなく、御言葉はむなしくなって、神は偽り者とされていたことであろう。なぜなら神は、『もし食べればあなたは必ず死ぬであろう』と言われたからである。
24そして、わたしたちの知っているように、現在、死が人類に及んでいる。まことに、アミュレクが語った死、つまり肉体の死が及んでいる。にもかかわらず、人が悔い改めることができるように、猶予期間が与えられた。したがって、この世の生涯は試しの状態、すなわち神にお会いする用意をする時期、わたしたちが前に語った死者の復活後に訪れるあの無窮の状態に対して用意をする時期となった。
25さて、もし世の初めから備えられていた贖いの計画がなかったならば、死者の復活はあり得なかったであろう。しかし、前に語った死者の復活をもたらす贖いの計画はすでに備えられていた。
26さて見よ、もしもわたしたちの始祖が行って命の木から食べることができたとすれば、準備の状態がまったくないので、始祖はとこしえに不幸な状態でいたことであろう。したがって、贖いの計画は挫折し、神の御言葉はむなしくなって、何も成就しなかったであろう。
27しかし見よ、実際はそのようにはならず、人々は死ななければならないこと、そして死後に裁きを受けなければならないことが定められた。その裁きとは、わたしたちが前に語ったあの裁きであり、すなわち終わりである。
28また、神はこれらのことが人に起こるように定められた後、見よ、御自分が人のために定められたことについて、人が知っておくのが望ましいと認められた。
29そこで神は天使たちを遣わして人々と語らせ、天使たちは人々に神の栄光を示した。
30すると人々は、そのときから神の御名を呼ぶようになった。そこで神は人々と語り、世の初めから備えられていた贖いの計画を人々に示された。これを神は、彼らの信仰と悔い改め、彼らの聖なる行いに応じて示された。
31そして、神は人々に数々の戒めを与えられた。人々がすでに現世にかかわることについての最初の戒めに背き、神々のように善悪をわきまえて行動する状態に自分自身を置いたため、すなわち、自分の意のまま、思いのままに、悪でも善でも行える状態に置かれたためである。
32そこで神は、贖いの計画を人々に示された後、悪を行ってはならないという戒めを彼らに与えられた。悪を行うことに対する罰は第二の死、すなわち義にかかわることについての永遠の死であった。このような者には、贖いの計画は何の力も及ぼさない。神の至善によれば、正義の働きが損なわれてはならないからである。
33しかし神は、御自分の御子の御名によって人々に勧めて言われた。(これが用意された贖いの計画である。)『もしあなたがたが悔い改めて、心をかたくなにしなければ、そのとき、わたしは独り子を通じてあなたがたに憐れみを示そう。
34それゆえ、悔い改めて、心をかたくなにしない者はだれであろうと、わたしの独り子を通じて憐れみを受け、罪の赦しを得る権利を持つ。これらの者はわたしの安息に入るであろう。
35しかし、心をかたくなにして、罪悪を行おうとする者はだれであろうと、見よ、わたしは怒って、その者をわたしの安息に入れないと誓う。』
36さて、わたしの同胞よ、見よ、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが心をかたくなにするならば、あなたがたは主の安息に入れないであろう。そこで、あなたがたの罪悪は神を怒らせ、ちょうど人々が最初、神の怒りを引き起こしたときのように、神はあなたがたに怒りを下される。まことに、最初の時と同じように、最後の時にも神の御言葉のとおりに怒りが下され、あなたがたは永遠の滅びに至るのである。したがって、あなたがたは神の御言葉のとおりに、最初の死と同じように最後の死も受ける。
37さて、わたしの同胞よ、わたしたちはこれらのことを知っており、これはほんとうのことであるので、主なるわたしたちの神がわたしたちに与えてくださったこれらの第二の戒めについて神を怒らせ、神の激しい怒りを招くことのないように、悔い改めて、心をかたくなにしないようにしようではないか。そして、神の御言葉のとおりに備えられている神の安息に入ろうではないか。」