1 さて、①アミュレクがアモナイハの地に住む人々に説いた②言葉は、次のとおりである。
2 「わたしはアミュレクである。わたしはギドーナの子であり、ギドーナはイシマエルの子、イシマエルはアミナダイの子孫である。このアミナダイは、神殿の壁に神の指で書き記された言葉を解き明かした、あのアミナダイである。
3 そして、アミナダイはニーファイの子孫であり、ニーファイはエルサレムの地から来たリーハイの子、リーハイは①マナセの子孫、マナセは兄たちの手によってエジプトに②売られた③ヨセフの子である。
4 そして見よ、わたしも、わたしを知っているすべての人の中では少なからず信望を得ている者であり、まことに見よ、わたしには多くの親族と①友人がいる。わたしはまた勤勉に働いて大きな富も得た。
5 それでもわたしは、主の道と、主の①奥義と、驚くべき力については、まだ多くのことを知らない。いや、わたしはこれらのことについて多くを知らないと言ったが、しかし見よ、それは間違いである。わたしはすでに、主の奥義と、まことにこの民の命を守るために現された主の驚くべき力を、多く見てきたからである。
6 それでもわたしは、心をかたくなにした。幾度となく①呼ばれたが、わたしは②聞こうとしなかった。だからわたしは、これらのことについて知っていながら、知りたいと思わなかった。そこでわたしは、悪い心のまま、さばきつかさの統治第十年のこの七月の四日まで、神に背き続けた。
7 そしてわたしが、ごく身近な親族に会おうとして出かけたときに、見よ、①主の天使がわたしに現れてこう言った。『アミュレクよ、あなたは主の預言者に食べ物を与えなければならないので、家へ戻りなさい。その預言者は聖なる人であり、神の選ばれた人である。その人は、この民の罪のために、幾日もの間②断食をして飢えている。あなたは彼を自分の家に③迎え、食べ物を与えなさい。そうすれば、彼はあなたとあなたの家族を祝福し、主の祝福があなたとあなたの家族のうえにとどまるであろう。』
8 そこでわたしは、その天使の声に従い、我が家へ向かった。そして、我が家へ帰る途中で、天使がわたしに『自分の家に迎えよ』と言ったその①人に会った。その人こそ、これまであなたがたに神にかかわる事柄について語ってこられた、この方である。
9 天使は、この方が①聖なる人であるとわたしに言った。それでわたしは、この方が聖なる人であることを知っている。神の天使がそう言ったからである。
10 わたしはまた、この方が証されたことが真実であることを知っている。見よ、わたしはあなたがたに言う。主が生きておられるように確かに、主は御自分の①天使を遣わして、これらのことをわたしに明らかにしてくださった。この方アルマがわたしの家に②住んでおられたときに、天使がこれを明らかにしたのである。
11 見よ、この方はわたしの家族を①祝福された。わたしと、女たち、子供たち、わたしの父、わたしの親族、すなわちわたしの一族全員を祝福されたので、この方の告げられた言葉のとおりに、主の祝福がわたしたちのうえにとどまった。」
12 さて、アミュレクがこれらの言葉を語り終えると、人々は、自分たちが責めを受けている事柄について証する証人が①一人にとどまらなかったので、またその証人たちがその内にある預言の霊によって将来起こることも証したので、驚いた。
13 それでも彼らの中には、この二人を問い詰めようと考えた者たちがいた。これらの者は、狡猾な①策略によって二人の言葉じりをとらえ、彼らに不利な証拠を見つけ、彼らをさばきつかさたちに引き渡して法律によって裁いてもらい、自分たちが彼らについて見せかけることができた、あるいは証明できた罪科に応じて彼らを殺すか、あるいは投獄するかしようとした。
14 さて、この二人を滅ぼそうとしたのは①法律家たちであった。法律家とは、人々が裁判のときに、すなわち人々がさばきつかさの前で犯罪の審理を受けるときに、彼らに雇われて、または任命されて法律を取り扱う者たちであった。
15 この法律家たちは、民のあらゆる策略と悪知恵に通じていた。そして、それによって彼らはその職業を巧みにこなしていた。
16 さて、彼らはアミュレクに質問を始め、彼に言葉の混乱を起こさせようと、すなわち、彼の語る言葉に矛盾を生じさせようとした。
17 しかし彼らは、アミュレクに自分たちの企てが知れてしまったのを知らなかった。彼らが質問を始めたとき、アミュレクは彼らの思いを①見抜いて言った。「おお、②邪悪でよこしまな時代の人々よ、法律家たちと偽善者たちよ。あなたがたは悪魔の基を据えている。神の聖なる人々を捕らえるために、③わなと落とし穴を仕掛けている。
18 義人の道を①曲げるために策を巡らし、自分たちの頭に、この民が全滅するまで神の怒りを招こうとしている。
19 まことに、我々の最後の王モーサヤが王位を譲ろうとしたときに言ったことは、適切であった。モーサヤ王が王位を譲る相手がだれもいなかったので、この民は、民自身の声によって治められることになった。そのときに、もしこの民の声が罪悪を①選ぶ時が来れば、すなわちこの民が戒めに背く時が来れば、民の滅亡の機が熟しているとモーサヤ王が言ったが、実にそのとおりであった。
20 さて、わたしはあなたがたに言う。主があなたがたの罪悪を裁かれるのはふさわしいことである。主が御自分の①天使たちの声によってこの民に、『悔い改めよ。悔い改めよ。天の王国は近づいているからである』と叫ばれるのはふさわしいことである。
21 まことに、主が天使の声によって、『①わたしは公平と公正を手に携えて、わたしの民の中に降ろう』と叫ばれるのはふさわしいことである。
22 また、わたしはあなたがたに言う。もしも今、この地に住む義人の①祈りがなかったならば、あなたがたは完全な滅亡に見舞われていたことであろう。しかし、それはノアの時代の人々のように②洪水によるのではなく、飢饉と疫病と剣によったことであろう。
23 しかし、あなたがたが救われているのは、義人の①祈りによる。したがって、もしあなたがたが自分たちの中から義人を追い出すならば、そのときに主は手をとどめず、激しい怒りのうちに降って来て、あなたがたを責められるであろう。そのとき、あなたがたは飢饉と疫病と剣によって打たれるであろう。あなたがたが悔い改めなければ、その②時はすでに近い。」
24 そこで、民はますますアミュレクに腹を立て、「この男は我々の公正な法律と我々の選んだ賢い法律家をののしっている」と叫んだ。
25 しかし、アミュレクは手を伸ばし、さらに力強く彼らに叫んだ。「おお、邪悪でよこしまな時代の人々よ、なぜサタンはこのようにあなたがたの心をしっかりと捕らえたのか。なぜあなたがたはサタンに自分自身をゆだねようとするのか。サタンはあなたがたに告げられている御言葉を、あなたがたがその真実なままに理解しないように、あなたがたを支配する力を得て、あなたがたの目を①くらましている。
26 見よ、わたしはあなたがたの法律に逆らう証を述べたか。あなたがたは分かっていない。あなたがたは、わたしがあなたがたの法律をけなしたと言うが、わたしはそのようなことはしていない。むしろわたしは、あなたがたの法律を支持し、あなたがたが罪に定められることを語った。
27 見よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたの①法律家たちとさばきつかさたちの不義によって、この民の滅亡の基が据えられている。」
28 さて、アミュレクがこれらの言葉を語ったところ、人々は彼を非難して叫んだ。「我々には分かる。この男は悪魔の子だ。我々に①うそを言っている。この男は我々の法律をけなした。それなのに、法律をけなさなかったと言っている。
29 そのうえこの男は、我々の法律家とさばきつかさをののしった。」
30 そして法律家たちは、アミュレクを責めるためにこれらの事柄を覚えておくように、人々の心の中にそれを植え付けたのである。
31 その法律家たちの中に、ゼーズロムという名の者がいた。彼は法律家の中では最も有能な者の一人であり、民の中で多くの仕事を抱えていたので、アミュレクとアルマを①責めた中心人物であった。
32 この法律家たちの目的は、利益を得ることであり、彼らは自分の働きに応じて利益を得たのであった。