1さて、モーサヤ王は善の戦いに従事し、神の前をまっすぐに歩み、自分に代わって統治する者をだれも残すことなく、世のすべての人の行く道を行ったが、世を去る前に法律を制定し、民がそれを承認した。したがって、ニーファイの民を治めるさばきつかさの統治の第一年以降、民はモーサヤ王の定めた法律に従わなければならなかった。
2さて、アルマがさばきつかさの職に就いて治めた最初の年に、裁判を受けるために、彼の前に連れ出された一人の男がいた。その男は体が大きく、力が強いことで名高かった。
3彼は人々の中を巡り歩いて、自分で神の言葉と称したことを彼らに宣べ伝え、教会に圧迫を加え、また、祭司と教師は皆、人望を得るはずであって、自分の手で働く必要はなく、人々によって生活を支えられて当然であると宣言した。
4彼はまた、全人類は終わりの日に救われるので、人は恐れる必要もおののく必要もない、むしろ頭を上げて喜ぶがよい、主がすべての人を造られ、すでにすべての人を贖っておられ、結局すべての人が永遠の命を得るからであると、人々に公言した。
5さて、彼はこれらのことを多く教えたので、多くの者が彼の言葉を信じ、彼の生活を支え、金銭を彼に贈るようになった。
6そこで彼は、高慢な心で高ぶり始め、非常に高価な衣服を身に着けるようになり、自分の説き教えることにかなう教会を設立するようにさえなった。
7そして彼は、自分の言葉を信じる者たちに説教するために出かけて行く途中で、神の教会に属する者、すなわち教会の教師の一人に出会った。そこで彼はその人と激しく論争し、教会の人々を惑わそうとした。しかし、その人は彼に反論し、神の言葉をもって彼を諭した。
8さて、その人の名はギデオンという。かつて、神の手に使われる者となって、リムハイの民を奴隷の状態から救い出した人である。
9さて、ギデオンが神の言葉をもって彼に反論したので、彼はギデオンに対して腹を立て、剣を抜いてギデオンに打ちかかった。ところが、ギデオンは年を取っていたので、その男が切りかかってくるのに抗することができず、剣によって殺されてしまった。
10それで、ギデオンを殺したその男は教会の人々に捕らえられて、アルマの前に連れて行かれ、彼の犯した罪科に従って裁判されることになった。
11そこで彼は、アルマの前に立つと非常に大胆に自己弁護をした。
12しかし、アルマは彼に言った。「見よ、この民の中で偽善売教が起こったのは、これが初めてである。見よ、あなたは偽善売教の罪を犯しただけでなく、剣によってそれを強要しようとした。この民の中で偽善売教が行われれば、民は完全に滅びてしまうであろう。
13また、あなたは義人、まことに、この民の中で多くの善を行ってきた人の血を流したので、もしわたしたちがあなたを赦したならば、彼の血が報復を求めてわたしたちに降りかかるであろう。
14したがって、わたしたちの最後の王モーサヤから与えられた法律により、あなたに死刑を宣告する。この法律はこの民によって承認されたものであるから、この民はこの法律に従わなければならない。」
15そして、人々は彼を捕らえた。彼の名はニーホルといった。そして人々は、彼をマンタイの丘の頂上に運んで行った。そこにおいて彼は、自分が民に教えてきたことが神の言葉に反するものであったことを、天地の間で白状させられた、いや、自分から認めた。そして、彼は不名誉な最期を遂げた。
16にもかかわらず、偽善売教が国中に広まるのはやまなかった。俗世のむなしいものを非常に好む者が大勢いたからである。彼らは出て行って偽りの教義を宣べ伝えた。富と誉れを得ようとして、このように行ったのであった。
17それでも、偽りを言う者は罰せられるので、彼らは法律を恐れて、あえて公然とは偽りを言わなかった。それで、自分の信条に従って教えを説いているふりをした。法律は、人の信条については、だれをも罰する力を持たなかったからである。
18また、盗みを働く者は罰せられるので、彼らは法律を恐れて、あえて盗みをしなかった。彼らは奪い取ることもしなかったし、人も殺さなかった。人を殺す者は死刑に処せられたからである。
19しかし、神の教会に加わっていない者たちは、神の教会に属してキリストの名を受けた人々を迫害し始めた。
20まことに彼らは、神の教会に属する人々を迫害し、あらゆる言葉で苦しめ悩ました。これは、教会の人々が謙遜であり、彼らの目に高ぶりがなく、また金を出さず、代価を払わないで、互いに神の言葉を教え合っていたからである。
21さて、教会の人々の中には厳しい律法があり、教会に属している人は、教会に属していない人を苦しめてはならない、また互いに苦しめ合ってはならないとされていた。
22にもかかわらず、彼らの中には高ぶり、相手と激しく論争して殴り合いさえするようになった者が大勢いた。まことに、彼らは互いにこぶしで殴り合った。
23さて、これはアルマの統治第二年にあったことで、教会がひどい苦しみに遭う原因となり、まことに、ひどい試練を受ける原因となった。
24それは、多くの者の心がかたくなであったからである。そして、これらの者の名が消されたため、彼らはもはや神の民の中で思い出されることはなかった。また、多くの者が自ら神の民のもとを去った。
25さて、これは信仰にしっかりと立っている人々にとって大きな試練であった。にもかかわらず、彼らは確固として動かずに神の戒めを守り、また自分たちに加えられる迫害に辛抱強く耐えた。
26そして祭司たちが、神の言葉を民に告げるために仕事を休めば、民もまた神の言葉を聞くために仕事を休んだ。そして、祭司たちが彼らに神の言葉を告げ終えると、彼らは皆、再び自分たちの仕事に戻り、熱心に働いた。教えを説く者は聞く者よりも偉いわけではなく、教える者は学ぶ者よりも偉いわけではないので、祭司は自分自身を自分の話を聞く者よりも優れているとは思わなかった。このように、彼らは皆、平等であった。そして、彼らは皆、各々自分の力に応じて働いた。
27また彼らは、各々自分の持っている分に応じて、貧しい者や乏しい者、病気の者、苦しんでいる者に自分の持ち物を分け与えた。彼らは高価な衣服を身に着けてはいなかったが、その装いはこざっぱりして麗しかった。
28このように、彼らは教会の諸事を整えた。また、あらゆる迫害にもかかわらず、彼らはまた引き続き平和を保つようになった。
29さて、教会員は堅実であったので、非常に物持ちになり、自分たちが必要としたすべてのものを豊かに持つようになった。すなわち、大小の家畜の群れや、あらゆる若い肥えた家畜、それに穀物や金や銀や貴重な品々、また絹や、より糸で織った亜麻布、あらゆる丈夫で素朴な織物、これらのものを豊かに持つようになった。
30このようにして、彼らは裕福な暮らしの中で、着る物のない者や飢えている者、渇いている者、病気の者、栄養の足りない者を追い払うことがなかった。また、彼らは富に執着することもなかった。そのため、老いた者にも若い者にも、束縛された者にも自由な者にも、男にも女にも、また教会員であるなしの区別なく、助けの必要な人々については人を偏り見ることなく、すべての人に物を惜しまなかった。
31このように彼らは栄え、教会に属していない者たちよりもはるかに裕福になった。
32それは、教会に属していない者が魔術や偶像礼拝にふけり、あるいは怠惰に浸り、また無駄話やねたみや争いにふけり、高価な衣服を身に着け、高慢な目で高ぶり、迫害し、さらには偽りを言い、盗み、強盗をし、みだらな行いをし、人を殺し、そのほかあらゆる悪事を行ったからである。しかし、法律に背いた者にはすべて、できるかぎりその法律が適用された。
33そして、法律に背いた者には、その法律が適用され、すべての者が自分の行ったことに応じて処罰されたので、彼らは前よりも穏やかになり、あえて公然とこのような悪事を行おうとしなかった。そのため、さばきつかさの統治第五年まで、ニーファイの民の中は十分に平和が保たれていた。