1さて、モロナイは戦争の準備をし、レーマン人から民を守る準備を整えるのをやめなかった。彼はさばきつかさの統治第二十年の初めに、軍隊に命じて、ニーファイ人が所有していた全地の至る所ですべての町の周囲に土を盛り上げて土塁を築く作業を開始させた。
2彼はまた、町を囲むこれらの土手の上に木材を、すなわち人の背丈ほどの高さの木材の建造物を築かせた。
3そして、町を囲むこれらの木材の建造物の上に、先端のとがった杭で柵を造らせた。この杭は丈夫で、丈が高かった。
4また彼は、この柵を見下ろすやぐらを建てさせ、そのやぐらの上に防御の場所を造らせて、レーマン人の石や矢がそこにいる人々に当たらないようにした。
5また、ニーファイ人の兵たちは自分たちの思うままに、また力の及ぶかぎり、そのやぐらの上から石を投げつけ、町の防壁に近づこうとする者を殺せるように備えをした。
6このように、モロナイは全地のすべての町の周囲にとりでを築いて、敵の来襲に備えた。
7そしてモロナイは、軍隊を東の荒れ野に行かせた。そこで、彼らは出て行って、東の荒れ野にいたすべてのレーマン人を、ゼラヘムラの地の南にある彼らの土地へ追い払った。
8ニーファイの地は、東の海からまっすぐ西の海に及んでいた。
9さて、モロナイは、彼らの所有地の北方にある東の荒れ野からすべてのレーマン人を追い払うと、ゼラヘムラの地とその周辺の地に住む者たちを東の荒れ野に行かせ、海岸に近い地方までやって、その地に住まわせた。
10彼はまた、南方の彼らの領土の境に軍隊を配置して、軍隊と民が敵の手から守られるように幾つものとりでを築かせた。
11このようにして、彼は東の荒れ野のレーマン人のとりでをすべて断ち切り、また西の方でも同様にして、ニーファイ人とレーマン人の間の境界線上をとりでで固めた。この境界線はゼラヘムラの地とニーファイの地の間にあり、西の海からシドン川の源の付近を走っていた。ニーファイ人はその北方の全地を、すなわち、バウンティフルの地の北方にある全地を自分たちの好むままに所有した。
12このようにして、モロナイは自分の軍隊をもって、すなわち、彼の働きによって守りが与えられると確信して日々増え続ける軍隊をもって、レーマン人の兵力と勢力をニーファイ人の所有地から断ち切り、レーマン人がニーファイ人の所有地でまったく権力を振るえなくしようと努めた。
13そしてニーファイ人は、一つの町の建設を始め、その町の名をモロナイと呼んだ。それは東の海の近くで、レーマン人の領土の境界線に近い南の方にあった。
14彼らはまた、モロナイの町とアロンの町の間に、アロンの町の境とモロナイの町の境に接して一つの町の建設を始めた。そして彼らは、その町の名、すなわちその地の名をニーファイハと呼んだ。
15彼らはまた、同じ年に北の方で多くの町を築き始めた。その代表的なものはリーハイと名付けた町で、北の方の海岸に近い所にあった。
16このようにして、第二十年が終わった。
17また、ニーファイの民のさばきつかさの統治第二十一年の初めに、ニーファイの民はこのように繁栄していた。
18彼らは非常に栄え、豊かになり、また増えて、その地で強くなった。
19以上のことから、主が人の子らに言われた御言葉をすべて成就されるに当たって、主の計らいが皆どれほど憐れみ深く、公正であるかが分かる。また、主がリーハイに言われた御言葉が今このときでさえ実証されていることを、わたしたちは知ることができるのである。主の言われた御言葉は次のとおりである。
20「あなたとあなたの子孫とは幸いである。彼らは祝福を受けるであろう。彼らはわたしの命令を守るかぎり地に栄える。しかし、わたしの命令を守らなければ主の前から絶たれるということを覚えておきなさい。」
21そして今わたしたちは、この約束がニーファイの民に実証されていることを知っている。彼らの中に口論や争い、殺人、略奪、偶像礼拝、みだらな行い、忌まわしい行いがあって、それらが彼らに戦争と滅亡を招いたからである。
22しかし、主の命令を忠実に守っていた人々はいつも救い出された。一方、邪悪な同胞は何千人も奴隷の状態に陥ったり、剣で殺されたり、不信仰に陥ってレーマン人と混じり合ったりした。
23しかし見よ、ニーファイの時代からこのかた、ニーファイの民にとって、モロナイの時代、すなわちさばきつかさの統治第二十一年当時以上に幸せな時はかつて一度もなかった。
24そして、さばきつかさの統治第二十二年が平穏に終わり、第二十三年も同様であった。
25さて、さばきつかさの統治第二十四年の初めも、リーハイの地とモリアントンの地について起こった争いがなければ、ニーファイの民の中には平和が続いたことであろう。このモリアントンの地はリーハイの地と境を接しており、両方とも、海岸に近い地方にあった。
26見よ、モリアントンの地を所有していた人々が、リーハイの地の一部について所有権を主張したのである。そのため、両者の間に激しい争いが起こり、モリアントンの民は同胞に対して武器を取り、剣で相手を殺そうとした。
27しかし見よ、リーハイの地を所有していた人々はモロナイの宿営に逃げ込んで、モロナイに助けを求めて訴えた。見よ、彼らに非がなかったからである。
28さて、モリアントンという名の男の指導下にあったモリアントンの民は、リーハイの民がモロナイの宿営に逃げ込んだことを知ると、モロナイの軍隊がやって来て自分たちは滅ぼされてしまうのではないかと非常に恐れた。
29そこでモリアントンは、大きな湖沼がたくさんある北方の地へ逃げて行って北方の地を占有しようとする思いを民の心に抱かせた。
30そして見よ、彼らはこの計画を実行しようとした。(これが成功していれば、悲しい事態が生じていたであろう。)しかし見よ、モリアントンは、ひどく怒りっぽい男であったので、はしための一人に腹を立て、なぐりかかってその女をひどく打ちたたいてしまった。
31そこでその女は、逃げ出してモロナイの宿営にやって来ると、その件について、また北方の地へ逃げようとしている彼らの企てについて、すべてのことをモロナイに告げた。
32さて見よ、バウンティフルの地にいる人々は、いや、モロナイは、バウンティフルの地にいる人々がモリアントンの言葉に聞き従って彼の民に加わり、そのために彼がその地の各所の支配権を得てニーファイの民の中に重大な結果をもたらし、ニーファイの民の自由を覆すことになるのではないかと懸念した。
33そこでモロナイは、モリアントンの民の行く手を遮って、彼らが北方の地へ逃げるのを阻止するために、装備を整えた軍隊を派遣した。
34さて、デソレションの地の境に達するまで、彼らはモリアントンの民の進路を断てなかった。それでも、海に近く北方の地に通じており、また西も東も海に近い地峡のそばで、彼らはモリアントンの民の進路を断つことができた。
35そして、モロナイによって派遣され、テアンクムという名の人によって率いられた軍隊は、モリアントンの民と相対した。ところが、モリアントンの民は(モリアントンの悪事とへつらいの言葉に感化されて)非常にかたくなになっていたので、両者の間で戦いが始まった。そして、その戦いでテアンクムはモリアントンを殺し、彼の軍隊を破って彼らを捕虜にし、モロナイの宿営に帰った。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第二十四年が終わった。
36モリアントンの民はこのようにして連れ戻された。そして彼らは、平和を守ると誓ってモリアントンの地へ返され、彼らとリーハイの民の間で和合が成立した。そして、リーハイの民も自分たちの土地へ戻った。
37さて、ニーファイの民が平和を取り戻したその同じ年に、二代目の大さばきつかさであったニーファイハが、神の前に完全に正しくさばきつかさの職を果たして亡くなった。
38ニーファイハは神の前に完全に正しい人であったが、アルマと彼の先祖たちが最も神聖であると見なしていた、数々の記録と品々をアルマから預かることは辞退していた。そこでアルマは、それらのものを息子ヒラマンに託していた。
39見よ、ニーファイハの息子が、父に代わってさばきつかさの職を務めるように任命された。まことに、彼は義にかなって裁判すること、民の平和と自由を守ること、民に彼らの主なる神を礼拝する神聖な特権を与えること、生涯神の大義を支持し、守ること、悪人にそれぞれの罪科に応じた罰を科すこと、これらのことを誓って、神聖な儀式により民の大さばきつかさ兼総督に任命された。
40見よ、この人の名はパホーランという。彼が父の座に着き、第二十四年の終わりにニーファイの民を治める彼の統治が始まった。