1さて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第六年には、ゼラヘムラの地に争いも戦争もなかった。
2しかし、民は同胞を失い、大小の家畜の群れを失い、レーマン人によって足で踏みつけられ、荒らされて穀物畑を失ったので苦しんだ。
3すべての者が嘆き悲しんで当然なほど、彼らの受けた苦難はひどいものであった。そして彼らは、自分たちの悪事と忌まわしい行いのために神の裁きが下されたと思い、目覚めて自分たちの義務を思い起こした。
4そして彼らは、さらに完全に教会を確立する業に取りかかり、多くの人がシドンの水でバプテスマを受けて、神の教会に加えられた。彼らはアルマの手によってバプテスマを受けた。このアルマは、彼の父アルマの手によって、教会の人々を見守る大祭司に聖任されていた。
5さて、さばきつかさの統治第七年には、神の教会に加わった者、バプテスマを受けた者は、およそ三千五百人に上った。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第七年が終わり、その間は引き続き平和であった。
6さて、さばきつかさの統治第八年には、教会の人々は次第に高慢になり始めた。それは、彼らが勤勉であることによって得た非常に多くの富と織り目の細かい絹と、より糸で織った亜麻布と、大小の多くの家畜の群れと、金と銀、あらゆる貴重な品々のためであった。彼らはこれらのものに恵まれて非常に高価な衣服を身に着けるようになり、高慢な目をもって高ぶった。
7これは、アルマにとっても、またアルマから教会を見守る教師や祭司、長老の職に任じられた多くの人にとっても、ひどい苦痛の種であった。彼らの多くは、すでに悪が教会の人々の中に入り始めているのを見て、非常に嘆いた。
8教会の人々は高慢な目をもって高ぶり、富や俗世のむなしいものに執着するようになり、互いにあざけり合い、自分たちの思いと望みに添った考え方をしない者を迫害するようになってきた。アルマは、このような有様を見て、非常に憂い悲しんだ。
9このようにして、さばきつかさの統治第八年に、教会の人々の中にひどい争いが起こった。すなわち、ねたみ、争い、悪意、迫害、高慢があり、彼らの高慢は神の教会に属していない者の高慢よりもひどかった。
10このようにして、さばきつかさの統治第八年が終わった。教会員の悪事は、教会に属していない者たちにとって大きなつまずきの石となり、そのために教会の発展が鈍り始めた。
11そして第九年の初めに、アルマは教会員の悪事を見た。また、教会員の良くない手本のために信仰心のない者たちが次々と罪悪を犯し、民の滅亡が訪れようとしているのも見た。
12まことに彼は、人々の中にひどい不平等があり、一部の者たちが高慢になって高ぶり、ほかの者をさげすみ、乏しい者や着る物のない者、飢えている者、渇いている者、病気の者、苦しんでいる者に背を向けているのも見た。
13さてこれは、人々の中に憂いをもたらした大きな原因であったが、その一方で、ある人々はへりくだり、自分の持ち物を貧しい者や乏しい者に分け与え、飢えている者に食物を与えるなどして、助けを必要としている者を助けており、さらにあらゆる苦難に耐えていた。彼らは預言の霊の示すとおりに、将来来られるキリストを信じていたからである。
14また彼らは、キリストの来臨の日を待ち望んで、罪の赦しを保ち、イエス・キリストの御心と力と死の縄目からの解放とによって死者の復活がもたらされることを考えて、大きな喜びに満たされた。
15さて、アルマは神に従う謙遜な人々の受けている苦難と、ほかの者たちが彼らに加える迫害と、民のあらゆる不平等を見て、非常に嘆いたが、それでも主の御霊は彼から離れなかった。
16アルマは教会の長老たちの中から一人の賢明な人を選び、民の声によって彼に権限を授けて、彼がすでに定められている法律に添う法律を制定する権限と、また人々の悪と罪科とに応じてその法律を適用する権限を持てるようにした。
17さて、この人の名はニーファイハといって、大さばきつかさに任命された。そして、彼は人々を裁判し、また治めるために、さばきつかさの職に就いた。
18しかしアルマは、教会の大祭司としての職は彼に授けることなく、大祭司の職は自分で保有し、さばきつかさの職だけをニーファイハに譲った。
19彼がこのようにしたのは、彼自身が民の中に、すなわちニーファイの民の中に出て行って、人々に神の言葉を宣べ伝えて、彼らの義務を思い起こすように促すため、また人々の中にあるあらゆる高慢と悪巧みと争いを、神の言葉によって取り除くためである。それは、純粋な証をもって責めるほかに、人々を改心させる方法がないことを知っていたからである。
20このように、ニーファイの民のさばきつかさの統治第九年の初めに、アルマはニーファイハにさばきつかさの職を譲り、自分はひたすら神の聖なる位の大祭司の職に専念し、啓示と預言の霊に従って御言葉を証した。