1 さて、アマリキヤは王位を得るやいなや、ニーファイの民に反感を抱くようにレーマン人の心をあおり始めた。彼は幾人かの者たちを任じて、方々の塔からレーマン人に向かってニーファイ人の悪口を言わせた。
2 このようにして、彼はニーファイ人に反感を抱くように彼らの心をあおった。そして、さばきつかさの統治第十九年の末に、彼はそれまで自分の企てを成し遂げていたので、すなわちすでにレーマン人を治める王になっていたので、全地と全地のすべての人、すなわちレーマン人だけでなくニーファイ人をも支配しようとした。
3 彼はレーマン人の心をかたくなにし、思いをくらまし、彼らの怒りをかき立てるのに成功して、自分の企てを成し遂げたので、ニーファイ人に対して戦いに出て行くために大軍を召集した。
4 彼は自分の民がおびただしい数であったので、ニーファイ人を打ち負かして奴隷にしようと決意した。
5 そのため彼は、ゾーラム人の中から①連隊長を任命した。ゾーラム人がニーファイ人の戦う力と、彼らが身を隠す場所と、方々の町の最も弱い箇所を最もよく知っていたので、軍隊の連隊長に任命したのであった。
6 そして彼らは、それぞれ軍隊を率いて、ゼラヘムラの地を指して荒れ野の中を進んだ。
7 さて、アマリキヤがこのように欺瞞と偽りによって権力を手に入れていた間、一方でモロナイは、主なる神に忠実であるように民の心を①備えさせていた。
8 また彼は、ニーファイ人の軍隊を強化し、小さいとりで、すなわち身を隠す場所を幾つも築き、軍隊を囲む土手を造り、また軍隊を囲む石垣も築いて、ニーファイ人の方々の町と方々の地の境、まことに国の周囲一帯を囲った。
9 また彼は、防御の最も弱いとりでにさらに多くの兵を配備した。このようにして彼は、ニーファイ人の所有する地の防備を固め、強化した。
10 このように彼は、ニーファイ人の自由と土地、妻子、平和を①維持する備えをして、彼らが主なる神のために生きることができるように、また敵からクリスチャンの大義と呼ばれているものを保つことができるようにした。
11 モロナイは屈強で勢いのある人であり、完全な①理解力を備えた人であり、また流血を喜ばない人であった。そして、自分の国が自由であり、同胞が束縛や奴隷の状態にないことを喜びとした人であった。
12 まことに彼は、神が民に授けてくださった多くの特権と祝福について、神への感謝で胸をいっぱいにした人であり、民の①幸いと安全のために大いに働いた人であった。
13 また彼は、確固としてキリストを信じた人であり、血を流してでも、自分の民と、自分の権利と、自分の国と、自分の宗教を守ると固く①誓っていた。
14 ニーファイ人は、必要であれば血を流してでも敵に対して自衛するように教えられていた。さらに、自分から①危害を加えないように、また敵に立ち向かうのでなければ、すなわち自分の命を守るためでなければ、決して剣を振り上げないようにとも教えられていた。
15 そのようにすれば、神は自分たちをこの地で栄えさせてくださると、彼らは信じていた。言い換えれば、神の戒めを忠実に守るならば、神は自分たちをこの地で栄えさせてくださり、また自分たちの直面する危険に応じて、逃れるように、あるいは戦争の準備をするように警告してくださると、彼らは信じていた。
16 また、神は敵を防ぐためにどこへ行けばよいかを自分たちに知らせてくださり、そのとおりにすれば主は自分たちを救ってくださることも、彼らは信じていた。これはモロナイが信じていたことであり、彼は心の中でそのことに誇りを感じていた。すなわち、①血を流すことではなく、善を行うこと、民を守ること、神の戒めを守ること、罪悪に立ち向かうことに誇りを感じていた。
17 まことに、まことに、わたしはあなたがたに言う。もし過去、現在、未来のすべての人がモロナイのようであれば、見よ、地獄の力でさえもとこしえにくじかれてしまい、また①悪魔は決して人の子らの心を支配する力を持たないであろう。
18 見よ、モロナイは、モーサヤの息子アンモンや、モーサヤのほかの息子たち、またアルマとアルマの息子たちのような人であった。彼らは皆、神の人であったからである。
19 さて見よ、ヒラマンと彼の同僚たちも、モロナイに劣らず民のためによく働いた。彼らは神の言葉を宣べ伝え、また彼らの言葉を聴くすべての人に悔い改めのためのバプテスマを施した。
20 そのために彼らは出て行った。そして人々は、彼らの言葉のために①謙遜になったので、主から豊かに②恵みを授けられた。したがって四年の間、ニーファイ人の中には戦争も争いもなかった。
21 しかし、前に述べたように、第十九年の末に、ニーファイ人の中は平和であったにもかかわらず、彼らは不本意ながら同胞のレーマン人と戦わざるを得なくなった。
22 要するに、甚だ不本意ではあったが、レーマン人との戦争が長年の間絶えなかった。
23 ニーファイ人は血を流すことは喜ばなかったので、レーマン人に対して武器を取るのを①つらく思った。それだけではない。神にお会いする用意ができていない多くの同胞を、自分たちがこの世から永遠の世に送り込むことになるのをつらく思った。
24 それでも、彼らは命を捨てるわけにはいかなかった。命を捨てれば、①妻や子供たちが、かつて同胞であった者たちの野蛮なむごい仕打ちによって虐殺されることになるからである。その同胞はニーファイ人の教会から②離反し、彼らのもとを去り、レーマン人に加わって彼らを滅ぼそうとしていた。
25 まことにニーファイ人は、神の戒めを守る者がいるかぎり、その同胞がニーファイ人の血を流すことを喜ぶのに耐えられなかった。それは、主の戒めを守るかぎりニーファイ人はその地で栄えるであろうという、主の約束があったからである。