1さて、ヒラマンと彼の同僚たちの言葉に聞き従おうとしない者たちは皆、同胞に対抗するために集まった。
2そして見よ、彼らはひどく怒って、同胞を殺そうと決意した。
3このように同胞に対して怒った者たちの首謀者は、大きな強い男で、その名をアマリキヤといった。
4アマリキヤは王になることを望んでおり、また、怒りを抱いた者たちも、彼が王になることを願った。これらの者たちはその大半が国の下級さばきつかさであり、権力を得ようとしていた。
5彼らは、もし自分を支持して王に立ててくれれば民の指導者にしようという、アマリキヤの甘言に乗ったのである。
6このようにして、ヒラマンと彼の同僚たちが教えを説いたにもかかわらず、また、教会をつかさどる大祭司であった彼らの、教会に対する非常に深い配慮があったにもかかわらず、これらの者たちはアマリキヤに惑わされて離反してしまった。
7そして、アマリキヤのへつらいの言葉を信じた者が教会の中に大勢おり、彼らは教会から離反してしまった。ニーファイの民はレーマン人に対して大勝利を収め、主の手によって解放されたことで大きな喜びを得たにもかかわらず、このように彼らの状態は非常に不安定で危険であった。
8以上のことから、人の子らが主なる神を忘れるのがどれほど早く、また罪悪を行うことや悪しき者に惑わされることがどれほど早いかが分かる。
9さらに、一人の非常に悪い人間が、人の子らの中に大きな悪事を引き起こす原因になることがあるということも分かる。
10また、わたしたちの知っているように、アマリキヤは狡猾な策略に通じた男であり、多くのへつらいの言葉に長じた男であったので、多くの人の心を惑わして悪いことを行わせ、また神の教会を滅ぼさせようとし、さらに神がニーファイ人に与えられた自由の基、すなわち神が義人のために地の面に送られた祝福である自由の基を損なわせようとした。
11さて、ニーファイ人の軍隊の総司令官であったモロナイは、これらの離反について聞き、アマリキヤのことを怒った。
12そして、自分の衣を裂いて、その一片を取り、それに「我々の神と宗教、自由、平和、妻子のために」と書いて、竿の先にしっかりとくくり付けた。
13それから、彼は自分のかぶとと胸当てと盾をしっかりと身に着け、よろいを腰にまとい、先端に裂いた衣を付けた竿を取って(彼はそれを自由の旗と呼んだ)、地にひれ伏し、そしてクリスチャンの一団が残ってその地を所有しているかぎり、自分の同胞に自由の祝福をとどめてくださるようにと、熱烈に神に祈った。
14神の教会に属しているキリストのまことの信者は皆、教会に属していない者たちからクリスチャンと呼ばれていた。
15教会に属している人々は忠実であった。キリストのまことの信者であった人々は皆、将来来られるキリストを信じていたので、呼ばれるままにキリストの名、すなわちクリスチャンという名を喜んで受けた。
16したがって、このときモロナイは、クリスチャンの大義と国の自由に神の恵みがあるようにと祈ったのであった。
17さて、彼はその心を神に注ぎ出してから、デソレションの地の南の全地を、要するに、北方も南方も含めた全地を、選ばれた地、自由の地と名付けた。
18そして、彼は言った。「わたしたちはキリストの御名を受けているためにさげすまれるが、わたしたちが自分の背きによって自分の身に災いを招くまでは、決して神はわたしたちが踏みにじられ、滅ぼされるのをお許しにならない。」
19モロナイはこの言葉を述べてから、民の中に出て行き、裂いた衣の一片に書いた文字がすべての人に見えるように、その裂いた衣を空中で打ち振り、大声で叫んで言った。
20「見よ、この地にこの旗を立てて守ろうとする者たちは皆、主の力をもって出て来なさい。そして、主なる神から祝福を頂けるように、自分たちの権利と宗教を守るという聖約を交わそうではないか。」
21さて、モロナイがこの言葉を宣言したところ、見よ、人々は腰によろいをまとって走ってやって来て、主なる神を捨てないしるしとして、すなわち聖約として自分たちの衣を裂いた。言い換えれば、もし神の戒めに背くならば、すなわち律法に背いてキリストの名を受けるのを恥とするならば、自分たちが衣を裂いたように、主が自分たちを裂かれてもよいということであった。
22これが彼らの交わした聖約である。そして彼らは、自分たちの衣をモロナイの足もとに投げ出して言った。「わたしたちは神と聖約します。わたしたちはもし戒めに背くならば、北方の地の同胞のように滅ぼされるでしょう。まことに、もし戒めに背くならば、わたしたちが衣をあなたの足もとに投げ出し、踏みつけられるに任せるように、神がわたしたちを敵の足もとに投げ出されますよう。」
23そこでモロナイは、彼らに言った。「見よ、わたしたちはヤコブの子孫の残りの者である。また、わたしたちは兄弟に衣をずたずたに裂かれた、ヨセフの子孫の残りの者である。見よ、わたしたちは神の戒めを守るのを忘れないようにしよう。さもなければ、わたしたちの衣は同胞によって裂かれ、わたしたちは牢に入れられるであろう。あるいは売られたり、殺されたりするであろう。
24わたしたちはヨセフの残りの者として自由を保とう。ヤコブが死ぬ前に語った言葉を覚えておこう。見よ、ヤコブはヨセフの衣の切れ端が保存されており、朽ちていないのを見て言った。『息子の衣のこの切れ端が保存されてきたように、息子の子孫の一部の者は神の御手によって守られ、神御自身のみもとに受け入れられるであろう。しかし、ヨセフの子孫の残りの者は、彼の衣のほかの部分のように滅びてしまう。
25さて見よ、これはわたしにとって悲しいことだが、息子の子孫の一部の者が神のみもとに受け入れられるので、わたしはその息子のために喜ぶ。』
26見よ、ヤコブはこのように語った。
27ヨセフの衣のように滅びてしまうヨセフの残りの者とは、わたしたちから離反した者たちではないと、だれに分かるであろうか。わたしたちがキリストの信仰をもってしっかりと立たなければ、それはわたしたち自身にさえ当てはまるであろう。」
28さて、モロナイはこれらの言葉を語り終えると出て行き、また離反のあったすべての地方へ使者を送って、アマリキヤと、すでに離反してアマリキヤ人と呼ばれている者たちとに立ち向かって、自分たちの自由を守りたいと望むすべての人を集めた。
29さて、アマリキヤは、モロナイの民がアマリキヤ人よりも多いのを見て、また自分の民が自分たちの行ってきたことの正当性に疑いを抱いているのを知ると、目的を達せられなくなるのを恐れて、その民の中で行くことを望んだ者たちを連れてニーファイの地へ向かった。
30しかしモロナイは、レーマン人がこれ以上の兵力を持つことは望ましくないと思ったので、アマリキヤの民の合流を阻むか、そうでなければ彼らを捕らえて連れ戻し、アマリキヤを殺してしまおうと思った。まことに、アマリキヤがレーマン人を扇動してニーファイ人に対して怒りを抱かせ、ニーファイ人を攻めるように仕向けることを知っていたからである。モロナイは、アマリキヤが自分の目的を達するためにこのようにするのを知っていた。
31そこでモロナイは、すでに集まって武装し、平和を守るという聖約を交わしている自分の軍隊を率いて行くのがよいと思った。このようにして彼は、荒れ野でアマリキヤの進路を断つために、軍隊を率いて、天幕を携えて荒れ野に進軍した。
32そして彼は、自分の望むままに行い、荒れ野に進軍し、アマリキヤの軍隊の前に立ちはだかった。
33そこでアマリキヤは、少数の兵とともに逃げ去った。そして、残りの者たちはモロナイの手に引き渡されて、ゼラヘムラの地へ連れ戻された。
34さて、モロナイは大さばきつかさたちと民の声とによって任命されていたので、ニーファイ人の軍隊については自分の意のままにこれを組織することも、軍隊に対する権威を行使することもできる権限を持っていた。
35そこでモロナイは、アマリキヤ人の中の、自由政体を守るために自由の大義を支持するという誓いを立てようとしなかった者をすべて殺させた。しかし、自由の誓いを拒否した者はごくわずかであった。
36そして彼は、ニーファイ人が所有していた全地にあるすべての塔の上に自由の旗を掲げさせた。モロナイはこのようにニーファイ人の中に自由の旗を掲げさせた。
37そしてニーファイ人は、再び国内に平和を保つようになった。このようにして、彼らはさばきつかさの統治第十九年の終わりごろまで国内に平和を保った。
38また、ヒラマンと大祭司たちも、教会内の秩序を保った。そして、四年の間、教会の中には大いに平安と喜びがあった。
39そして、死んだ人が大勢いたが、彼らは主イエス・キリストによって贖われることを固く信じていたので、喜びながらこの世を去った。
40またある季節になると、この地によく熱病が起こったので、それにかかって死んだ人々もいた。しかし、熱病で死んだ人はそれほど多くはなかった。多くの草根木皮の効能が著しかったからである。これらの草根木皮は、特有な気候の下で人がかかりやすい病気を原因から取り除くために、神が用意してくださったものであった。
41さらに、老衰で死んだ人も多かった。キリストを信じながら死んだ人々は、今キリストにあって幸いを得ていると確信できる。