1さて、アルマが人々に語り終えた後、多くの人がアルマの言葉を信じ、悔い改めて聖文を調べ始めた。
2しかし大半の人々は、アルマとアミュレクを殺してしまいたいと思っていた。アルマがゼーズロムにあからさまに語ったことで、彼らはアルマに怒りを抱いたからである。彼らはまた、アミュレクが自分たちに偽りを言い、自分たちの法律と、法律家と、さばきつかさをののしったと言った。
3彼らは、アルマとアミュレクのことを怒った。そして、二人が彼らの悪事をあからさまに証言したので、二人をひそかに殺してしまおうとした。
4しかし、結局彼らはそうせずに、二人を捕らえ、丈夫な縄で縛って、その地の大さばきつかさの前に連れて行った。
5そして、人々は進み出て、二人について不利な証言をした。彼らは二人が法律とその地の法律家たち、さばきつかさたち、またその地にいるすべての人をののしり、さらに、唯一の神がおられてその御子を人々の中に遣わされるが、御子は人々を救われないと述べたと証言した。人々はアルマとアミュレクについてこのように多くの不利な証言をした。これはその地の大さばきつかさの前で行われた。
6そこでゼーズロムは、告げられた言葉に驚くとともに、自分の虚言によって人々の思いがくらまされたのを知った。そのため、彼は自分の罪を自覚して心をひどく苦しめ始めた。まことに、彼は地獄の苦しみに包まれ始めたのである。
7そしてゼーズロムは、人々に向かって叫び、「見よ、わたしには罪がある。この方々は神の御前に染みがない」と言った。そして彼は、そのときから二人の弁護を始めた。しかし、人々は彼をののしり、「おまえも悪魔に取りつかれたのか」と言って、彼につばきを吐きかけて、彼を追い出した。また、アルマとアミュレクの語った言葉を信じた人々も全員追い出された。人々はこれらの人を追い出したうえ、追手を出してこれらの人に石を投げつけさせた。
8また彼らは、追い出された人々の妻子たちを集めて、神の言葉を信じている者たちと信じるように教えられた者たちを火の中に投げ込ませた。さらに彼らは、神の言葉を信じる者たちが持っていた聖文の載っている記録を持ち出し、それも火の中に投げ込んで、焼き捨ててしまった。
9そして彼らは、アルマとアミュレクを引き出すと、二人を殉教の場へ運んで行き、火で焼かれている人々の死ぬ様子を見せた。
10するとアミュレクは、火で焼かれている女や子供たちの苦しみを見て自分も苦痛を感じ、アルマに向かって、「この痛ましい有様をどうして見ていられましょうか。わたしたちの手を伸べ、わたしたちの内にある神の力を行使して、彼らを炎から救い出しましょう」と言った。
11しかし、アルマは彼に言った。「御霊が、手を伸べてはならないとわたしを制されます。まことに、主はこの人々を栄光のうちに御自分のみもとに受け入れられるからです。主は彼らがこのことを行うのを、すなわち人々が心のかたくななままにこの人々にこのことを行うのを黙認しておられます。それは、主が怒って彼らに下される罰が公正なものとなるためです。罪のない者の血は彼らを責める証拠となり、終わりの日に彼らを非難して激しく叫ぶことでしょう。」
12すると、アミュレクはアルマに、「まことに、彼らは恐らくわたしたちも火あぶりにするでしょう」と言った。
13そこで、アルマは言った。「主の御心のままであるように。しかしまことに、わたしたちの務めはまだ終わっていないので、彼らがわたしたちを火あぶりにすることはないでしょう。」
14さて、火の中に投げ込まれた人々の体と、また彼らとともに火の中に投げ込まれた記録が焼けてしまうと、その地の大さばきつかさが縛られたままのアルマとアミュレクの前にやって来て立ち、手で二人の頬を打って言った。「おまえたちはこれを見てもなお、この民に、火と硫黄の池に投げ込まれるとまた説くつもりか。
15見よ、おまえたちが分かったように、おまえたちには、火に投げ込まれた者たちを救い出す力はない。彼らはおまえたちと同じ信仰を持っていたが、神は彼らを救わなかったではないか。」それから、このさばきつかさはまた二人の頬を打ち、「おまえたちは何と弁解するのか」と言った。
16ところで、このさばきつかさはギデオンを殺したニーホルの教団に属し、同じ信仰を持っていた者である。
17さて、アルマとアミュレクはさばきつかさに何も答えなかった。そこで、彼はもう一度二人を打ち、役人に引き渡して牢に入れさせた。
18そして、二人が牢に入れられて三日後、ニーホルの教団に属している多くの法律家やさばきつかさ、祭司、教師たちがやって来て牢の中に入り、二人に会った。そして彼らは、二人に多くの事柄について質問したが、二人は何も答えなかった。
19そこで、あのさばきつかさが二人の前に立って、「なぜこの人々の質問に答えないのか。おまえたちを炎の中に投げ込ませる力がわたしにあることを、おまえたちは知らないのか」と言った。そして、彼は答えるように二人に命じたが、二人は答えなかった。
20そこで彼らは去って行った。ところが、彼らはまた翌日にやって来て、あのさばきつかさがまた二人の頬を打った。それから、ほかに多くの者たちも進み出て、二人を打って言った。「おまえたちはまた立ってこの民を裁き、我々の法律を非難するつもりか。おまえたちにそのような大きな力があるならば、なぜ自分自身を救わないのか。」
21そして、彼らは歯ぎしりをし、二人につばきを吐きかけながら、このようにたくさんのことを並べ立て、「我々は罰の定めを受けるとき、どのような有様なのか」と言った。
22また彼らはたくさんのことを、まことにこのようなことをいろいろと二人に言った。このように、彼らは幾日もの間二人をあざけった。そのうえ彼らは、二人を飢えさせるために食物を与えず、渇かせるために水も飲ませず、また、二人の着物をはぎ取って裸にした。このようにして二人は、丈夫な縄で縛られ、牢に閉じ込められていた。
23そして、二人がこのように幾日もの間苦しんだ後(ニーファイの民のさばきつかさの統治第十年の十月十二日に)、アモナイハの地の大さばきつかさと、多くの教師と法律家が、アルマとアミュレクが縄で縛られて閉じ込められていた牢に入って来た。
24そして、大さばきつかさは二人の前に立つと、二人をまた打ち、「もしおまえたちに神の力があるのであれば、この縄から自分自身を解き放て。そうすれば、おまえたちの言葉のとおりに主がこの民を滅ぼすということを、我々は信じよう」と言った。
25そして、ほかの者たちも、最後の一人に至るまで皆進み出て、大さばきつかさと同じことを言いながら二人を打った。ところが、最後の者が二人に言い終えたとき、神の力がアルマとアミュレクに下った。そこで、二人は起きて、立ち上がった。
26そして、アルマは叫んで言った。「おお、主よ、わたしたちはいつまでこのようなひどい苦しみに耐えればよろしいのでしょうか。おお、主よ、キリストを信じるわたしたちの信仰に応じて、自由になる力をわたしたちにお与えください。」そして二人は、自分たちを縛っていた縄を断ち切った。人々はそれを見ると、滅ぼされるのではないかという恐怖に襲われ、逃げ始めた。
27さて、彼らの恐れは非常に大きかったので、彼らは地に倒れ、牢の外側の出口までも逃げ出せなかった。そして、地が激しく揺れ動き、牢の壁が二つに裂けて崩れ落ち、アルマとアミュレクを打った大さばきつかさと法律家たち、祭司たち、教師たちは、崩れ落ちた壁に打たれて死んでしまった。
28そして、アルマとアミュレクは牢を出た。二人はキリストを信じる彼らの信仰に応じて主から力を授けられていたので、傷も負っていなかった。彼らは牢からすぐに出て来たが、彼らを縛っていた縄は解けていた。牢はすでに崩れ落ちており、牢の中にいた者は、アルマとアミュレクを除いてことごとく死んだ。そこで、二人はすぐに町に入って行った。
29そのとき、大きな物音を聞いた民が、その訳を知ろうとして群れを成して走って来た。そして彼らは、アルマとアミュレクが牢から出て来たのを目にし、また牢の壁が地に崩れ落ちているのを見ると、ひどい恐怖に襲われ、アルマとアミュレクの前から逃げた。それはまるで、やぎが子やぎを連れて二頭のライオンの前から逃げるのに似ていた。このように彼らは、アルマとアミュレクの前から逃げたのである。