1 さて，モーサヤ王おうの法ほう律りつでは，法ほう律りつのさばきつかさであるすべての者もの，すなわち，さばきつかさとして任にん命めいされている者ものたちは，彼かれらの前まえに連つれて来こられた者ものたちを裁さい判ばんするために働はたらいた時じ間かんに応おうじて，俸ほう給きゅうを受うけることになっていた。

2 そこで，もしある人ひとがほかの人ひとに借しゃっ金きんをしてそれを返かえさないならば，その人ひとはさばきつかさに訴うったえられた。すると，さばきつかさは職しょっ権けんを行こう使しし，役やく人にんたちを遣つかわしてその人ひとを自じ分ぶんの前まえに連つれて来こさせた。そして，さばきつかさはその人ひとを法ほう律りつと，その人ひとに対たいして提てい出しゅつされた証しょう拠こによって裁さい判ばんした。その結けっ果か，その人ひとは強きょう制せい的てきに借しゃっ金きんを払はらわされるか，強きょう制せい的てきに持もち物ものを取とり上あげられるか，または盗ぬす人びとや強ごう盗とうとして強きょう制せい的てきに民たみの中なかから追おい出だされた。

3 また，さばきつかさは自じ分ぶんの働はたらいた時じ間かんに応おうじて俸ほう給きゅうを受うけた。すなわち，一日にちについて金きん一セナイン，または銀ぎん一セヌムを受うけた。銀ぎん一セヌムは金きん一セナインに相そう当とうする。これは，定さだめられた法ほう律りつによる。

4 さて，ニーファイ人じんの各かく種しゅの金きん貨かと銀ぎん貨かの名めい称しょうは，その価か値ちに従したがって挙あげると次つぎのとおりである。この名めい称しょうはニーファイ人じんが付つけたものである。彼かれらはエルサレムにいたユダヤ人じんの方ほう法ほうでは計けい算さんしていなかった。また，ユダヤ人じんの方ほう法ほうで量はかることもしなかった。彼かれらはモーサヤ王おうが確かく立りつしたさばきつかさの治ち世せいに至いたるまで，民たみの意い向こうと状じょう況きょうに応おうじて，時じ代だいごとに貨か幣へい単たん位いと度ど量りょう法ほうを変かえてきたのである。

5 さて，その貨か幣へい単たん位いは次つぎのとおりである。すなわち，金きん一セナイン，金きん一セオン，金きん一シュム，金きん一リムナ。

6 銀ぎん一セヌム，銀ぎん一アムノル，銀ぎん一エズロム，銀ぎん一オンタイがあり，

7 銀ぎん一セヌムは金きん一セナインに等ひとしく，どちらも大おお麦むぎ一升ます，または各かく種しゅの穀こく物もつ一升ます分ぶんに相そう当とうした。

8 さて，金きん一セオンの額がくはセナインの二倍ばいの価か値ちがあり，

9 また，金きん一シュムはセオンの二倍ばいの価か値ちがあり，

10 また，金きん一リムナは，一セナインと一セオンと一シュムを合あわせた価か値ちがあった。

11 また，銀ぎん一アムノルは二セヌムに等ひとしく，

12 また，銀ぎん一エズロムは四セヌムに等ひとしく，

13 また，銀ぎん一オンタイは，一セヌムと一アムノルと一エズロムを合あわせたものに等ひとしかった。

14 さて，貨か幣へい単たん位いの小ちいさいものの価か値ちは次つぎのとおりである。

15 一シブロンは一セヌムの半はん分ぶんである。したがって，一シブロンは大おお麦むぎ半はん升ます分ぶんに相そう当とうする。

16 また，一シブルムは一シブロンの半はん分ぶんであり，

17 そして，一レアは一シブルムの半はん分ぶんである。

18 さて，これがニーファイ人じんの貨か幣へい評ひょう価かによる数かずの取とり方かたである。

19 また，金きん一アンテオンは三シブロンに等ひとしい。

20 さて，さばきつかさたちは利り益えきを得えることを唯ゆい一いつの目もく的てきとしており，自じ分ぶんたちの働はたらきに応おうじて俸ほう給きゅうを受うけたので，騒そう動どうを起おこすように，またあらゆる争あらそいと悪あく事じを行おこなうように人ひと々びとを扇せん動どうした。それは，自じ分ぶんたちがさらに多おおくの働はたらきができるように，そして，自じ分ぶんたちの前まえに持もち出だされる訴そ訟しょうによって金きん銭せんを得えられるようにするためであった。そこで，彼かれらは人ひと々びとを扇せん動どうしてアルマとアミュレクに逆さからわせたのである。

21 それで，ゼーズロムはアミュレクに質しつ問もんを始はじめ，「わたしが尋たずねる少すこしの質しつ問もんに答こたえてもらえるだろうか」と言いった。ゼーズロムは善よいことを損そこなうために悪あく魔まの策さく略りゃくに長ちょうじていた男おとこであったので，アミュレクに，「わたしが質しつ問もんすることに答こたえてもらえるだろうか」と尋たずねたのである。

22 そこで，アミュレクは彼かれに，「もしそれがわたしの内うちにある主しゅの御み霊たまにかなうならば答こたえる。わたしは主しゅの御み霊たまにかなわないことは何なにも言いわない」と答こたえた。するとゼーズロムは彼かれに，「見みよ，ここに銀ぎん六オンタイがある。あなたが至し高こう者しゃの実じつ在ざいを否ひ定ていするならば，わたしはこれをすべてあなたに進しん呈ていしよう」と言いった。

23 そこでアミュレクは言いった。「おお，地じ獄ごくの子こよ，なぜわたしをそそのかすのか。義ぎ人じんはこのような誘ゆう惑わくに決けっして屈くっしないことを，あなたは知しっているではないか。

24 あなたは神かみがおられないと信しんじているのか。いや，わたしはあなたに言いうが，あなたは神かみがおられることを知しっている。しかし，あなたは神かみよりもその金かねの方ほうを愛あいしている。

25 さて，あなたは神かみの御み前まえでわたしに偽いつわりを言いった。あなたはわたしに，『この大たい枚まいの六オンタイを見みなさい。これを進しん呈ていしよう』と言いったが，あなたは心こころの中なかでは，それをわたしに渡わたすまいと考かんがえている。あなたの望のぞみはただ，わたしにまことの生いける神かみを否ひ定ていさせて，わたしを滅ほろぼす口こう実じつを得えることであった。さて見みよ，あなたはこの大おおきな悪あく事じのために報むくいを受うけるであろう。」

26 そこで，ゼーズロムがまた彼かれに，「あなたはまことの生いける神かみがいると言いうのか」と問とうた。

27 そこでアミュレクは，「そのとおり，まことの生いける神かみがおられる」と答こたえた。

28 そこでゼーズロムが，「神かみは何なん人にんもいるのか」と問とうので，

29 彼かれは，「そうではない」と答こたえた。

30 またゼーズロムが重かさねて，「どうしてあなたは，これらのことを知しっているのか」と問とうので，

31 彼かれは，「天てん使しがわたしにそれを知しらせてくれた」と答こたえた。

32 そして，ゼーズロムがまた，「将しょう来らい来くるというのはだれか。神かみの子こなのか」と問とうので，

33 彼かれは「そのとおり」と答こたえた。

34 ゼーズロムはまた，「神かみの子こは，自じ分ぶんの民たみを罪つみがあるまま救すくうのか」と言いった。そこで，アミュレクは答こたえて言いった。「わたしはあなたに，そうではないと言いおう。神かみの御おん子こは御ご自じ分ぶんの御み言こと葉ばを否ひ定ていし得えないからである。」

35 ここで，ゼーズロムは人ひと々びとに向むかって言いった。「あなたがたはこれらのことをしっかり覚おぼえていてほしい。この男おとこは，神かみはただ一人ひとりであると言いった。しかし，神かみの子こは将しょう来らい来くるが，自じ分ぶんの民たみを救すくわないとこの男おとこは言いう。まるで，この男おとこは神かみに命めいじる権けん能のうを持もっているかのようだ。」

36 さて，アミュレクはまた彼かれに言いった。「見みよ，あなたは偽いつわりを言いっている。神かみの御おん子こが御ご自じ分ぶんの民たみを罪つみのあるまま救すくわれないとわたしが言いったことで，わたしが神かみに命めいじる権けん能のうを持もっているかのように語かたったとあなたは言いう。

37 わたしはもう一いち度どあなたに言いう。神かみの御おん子こは人ひと々びとを罪つみのあるまま救すくうことはおできにならない。わたしは神かみの御おん子この御み言こと葉ばを否ひ定ていすることはできない。神かみの御おん子こは，清きよくない者ものは決けっして天てんの王おう国こくを受うけ継つぐことができないと言いわれた。天てんの王おう国こくを受うけ継つがなければ，どうして救すくわれるであろうか。だから，あなたがたは罪つみのあるまま救すくわれることはできないのである。」

38 さて，ゼーズロムはまた彼かれに，「神かみの子こはまことの永えい遠えんの父ちちであるのか」と尋たずねた。

39 そこでアミュレクは彼かれに答こたえた。「そのとおり。神かみの御おん子こは，天てん地ちとその中なかにある万ばん物ぶつのまことの永えい遠えんの父ちちである。神かみの御おん子こは初はじめであり終おわりであり，最さい初しょであり最さい後ごである。

40 また，神かみの御おん子こは御ご自じ分ぶんの民たみを贖あがなうために，将しょう来らいこの世よに来こられ，御ご自じ分ぶんの御み名なを信しんじる人ひと々びとの背そむきを負おわれる。これらの人ひと々びとは永えい遠えんの命いのちを得える人ひと々びとであり，これ以い外がいの人ひと々びとに救すくいは与あたえられない。

41 したがって，悪あく人にんはあたかも贖あがないがなかったかのような有あり様さまであり，ただ死しの縄なわ目めからの解かい放ほうだけがある。見みよ，すべての人ひとが死し者しゃの中なかからよみがえって神かみの御み前まえに立たち，自じ分ぶんの行おこないに応おうじて裁さばかれる日ひが来くるからである。

42 さて，肉にく体たいの死しと呼よばれる死しがある。そして，キリストの死しは将しょう来らいこの肉にく体たいの死しの縄なわ目めを解とき，すべての人ひとがこの肉にく体たいの死しからよみがえる。

43 霊れいと体からだは再ふたたび結けつ合ごうして完かん全ぜんな形かたちになり，手て足あしも関かん節せつも，ちょうど今いまのわたしたちのような，その本ほん来らいの造つくりに回かい復ふくされる。そして，わたしたちは今いま持もっている知ち識しきを保たもったまま，神かみの御み前まえに連つれ出だされて立たち，自じ分ぶんのすべての罪つみをはっきりと思おもい出だす。

44 さて，この復ふっ活かつは，老おいた人ひとにも若わかい人ひとにも，束そく縛ばくされた人ひとにも自じ由ゆうな人ひとにも，男おとこにも女おんなにも，悪あく人にんにも義ぎ人じんにも，すべての人ひとに与あたえられる。そして，髪かみの毛け一ひと筋すじさえも失うしなわれることはなく，すべてのものが今いまあるような，その完かん全ぜんな造つくりに，すなわち体からだに回かい復ふくされる。それから，自じ分ぶんの行おこないが善よいか，それとも悪わるいか，行おこないに応おうじて裁さばかれるために，一つの永えい遠えんの神かみである御おん子こなるキリストと御おん父ちちなる神かみと聖せいなる御み霊たまとの法ほう廷ていに連つれ出だされ，罪つみの有う無むを問とわれる。

45 さて見みよ，わたしは死しすべき体からだの死しについて，また死しすべき体からだの復ふっ活かつについてあなたに語かたってきた。わたしはあなたに言いう。この死しすべき体からだは不ふ死し不ふ滅めつの体からだによみがえる。死しから，すなわち第だい一の死しから命いのちに移うつり，すべての人ひとがもう死しぬことはあり得えない。彼かれらの霊れいは体からだと結けつ合ごうして，決けっして分ぶん離りしない。このように相あい合がっしたものは，霊れい的てきな，不ふ死し不ふ滅めつのものとなり，彼かれらはもはや朽くちることがない。」

46 さて，アミュレクがこれらの言こと葉ばを語かたり終おえると，人ひと々びとはまた驚おどろき，ゼーズロムもおののき始はじめた。このようにして，アミュレクの話はなしは終おわった。すなわち，わたしが書かき記しるした言こと葉ばはこれだけである。