1 さて、モロナイは国の総督であるパホーランに再び手紙を書いた。彼が書いた言葉は次のとおりである。「わたしはゼラヘムラの町にいる①大さばきつかさであり国の総督であるパホーランと、またこの戦争の諸事を統轄し取り仕切るためにこの民によって選ばれたすべての方々にあてて、この手紙を記します。
2 さてまことに、これらの方々に語って非難したいことが少々あります。まことに、あなたがた自身御存じのように、あなたがたは兵を集め、彼らを剣と三日月刀とあらゆる武器で武装させ、またレーマン人がわたしたちの国に入って来る所に派遣して彼らと戦わせる、そのような職に任命されています。
3 そこでまことに、あなたがたに申しますが、わたし自身もわたしの兵も、ヒラマンも彼の兵も、とてもひどい苦難を受けてきました。飢えや渇き、疲労、そのほかあらゆる苦難を味わってきました。
4 しかしまことに、わたしたちの受けたのがこれだけであれば、わたしたちはつぶやかず、不平も言わなかったでしょう。
5 ところがまことに、わたしたちの民の受けた殺戮はひどく、すでに数千人が剣に倒れています。もしわたしたちの軍隊に十分な援兵と援助を与えてくれていたら、このようにはならなかったかもしれません。まことに、あなたがたはわたしたちのことをないがしろにしています。
6 今まことに、わたしたちは、このように甚だしくないがしろにされた理由を知りたいと思います。あなたがたが無頓着な状態にある理由を知りたいと思います。
7 敵があなたがたの周囲で死の業を繰り広げているのに、あなたがたは考えもなくぼんやりとした状態で座に着いていられると思うのですか。まことにその間に、彼らはあなたがたの同胞を何千人も殺しているのです。
8 まことに、あなたがたの同胞はあなたがたの保護を頼りにし、自分たちを救う地位にあなたがたを任じました。まことに、自分たちのもとに軍隊を派遣して自分たちを強化し、数千の人々が剣に倒されるのを救える、そのような地位にあなたがたを任じたのです。
9 しかしまことに、それだけではありません。あなたがたは彼らに食糧を送りませんでした。それでも、多くの人はこの民の幸いを深く望んでいたので、戦いに出て血を流し、命を失いました。彼らは①飢え死にしそうになりながらも、このようにしたのです。あなたがたが彼らを甚だひどく軽視したからです。
10 愛する兄弟たち、あなたがたは愛されるようにすべきであり、またこの民の幸いと自由のために、もっと熱心に務めるべきでした。しかしまことに、あなたがたは彼らに心を配らなかったので、将来数千人の血が、報復を求めてあなたがたの頭に降りかかることでしょう。まことに、彼らの嘆願と彼らの苦しみを、すべて神は御存じだからです。
11 まことに、あなたがたは、これからも自分は座に着いていることができ、神の深い慈しみのおかげで何もすることなく神によって救われると考えることができるでしょうか。まことに、そのように考えているのであれば、それはむなしいことです。
12 非常に多くの同胞が殺されたのは彼らの悪のためであると、あなたがたは①思っているのですか。あなたがたに申します。もしそのように考えているのであれば、それはむなしいことです。あなたがたに申しますが、剣で殺された人々は大勢おり、まことに、あなたがたはそのために罪の宣告を受けるでしょう。
13 主は御自分の罰と裁きを悪人に下せるように、①義人が殺されるのをそのままにしておかれます。したがって、あなたがたは、義人が殺されても捨てられたと思うには及びません。まことに、彼らは主なる神の安息に入るのです。
14 さてまことに、ここであなたがたに申しますが、わたしは神の裁きが一部の人々のひどい怠慢のために、すなわち、わたしたちの政府の怠慢のために、また同胞である殺された者たちを彼らが甚だひどく軽視したために、この民に下るのではないかと非常に懸念しています。
15 わたしたちの国の指導者から始まった①悪がなければ、わたしたちは敵を防ぐことができ、わたしたちを支配する権力を決して彼らに得させなかったでしょう。
16 まことに、もしわたしたち自身の中に起きた①内戦がなかったならば、またわたしたち自身の中にあれほど多くの流血を引き起こした②王政党の者たちがいなければ、またわたしたちの中に争いのあったときに、これまで行ってきたようにわたしたちが力を合わせていたならば、また王政党の者たちがわたしたちを支配する権力と権能を得ようと望まなかったならば、また彼らがわたしたちに対して武器を取って、非常に多くの流血をわたしたちの中に引き起こすことなく、自由の大義に誠実であり、わたしたちと結束し、敵と戦っていたならば、そしてわたしたちが主の力をもって敵と戦っていたならば、わたしたちは敵を追い散らしていたでしょう。主の御言葉のとおりにそれは成るからです。
17 しかしまことに、今レーマン人はわたしたちの土地を占領し、わたしたちに攻め寄せています。彼らはわたしたちの民を剣で殺し、まことに女や子供さえも殺し、また女と子供を捕らえて連れて行き、あらゆる苦難を彼らに負わせています。これは権力と権威を求めている者たち、すなわちあの王政党の者たちのひどい悪事のせいです。
18 しかしわたしは、このことをどうしてくどくどと言えましょうか。あなたがたも権威を求めていないとは言い切れないからです。あなたがたも国賊でないとは言い切れません。
19 それとも、あなたがたがわたしたちのことを心にかけず、わたしたちに食糧を送らせず、またわたしたちの軍隊を強める兵も派遣させないのは、あなたがたが国の中央部にいて、周りが安全なためなのですか。
20 あなたがたは、主なる神の戒めを忘れたのですか。まことに、あなたがたは先祖が囚われの身にあったことを忘れたのですか。わたしたちが幾度も敵の手から救われたことを忘れたのですか。
21 それとも、わたしたちが座に着いているまま、主から与えられた手段を利用しないでいて、主がそれでもなおわたしたちを救ってくださると思っているのですか。
22 まことに、境の地の至る所で、何千もの人々が剣に倒れて傷つき、血を流しているのに、あなたがたは、何もせずに座している何千何万の者たちに囲まれたまま、自分も何もせずに座しているつもりですか。
23 あなたがたはただじっと座してこれらのことを見ていて、神があなたがたを罪のない者と見なしてくださるとでも思っているのですか。まことに、わたしはあなたがたに、そのようなことはないと申します。神がかつて、『まず器の①内側を清めなさい。それから器の外側も清めなさい』と言われたことを、忘れないようにしてほしいと思います。
24 ところで、あなたがこれまで行ってきたことを悔い改め、立ち上がって行動を起こし、わたしたちとヒラマンに食糧と兵を送り、ヒラマンがすでに取り返したわたしたちの国のあの地方を維持できるようにし、またわたしたちにもこの地方の領土の残りを取り返せるようにしてくれなければ、わたしたちはまず器の内側、すなわちわたしたちの政府の最高責任者を清め終えるまで、もはやレーマン人と戦わないのが得策でしょう。
25 あなたがわたしの手紙による要請を聞き届け、まことの①自由の精神をわたしに示し、わたしたちの軍隊を強化し堅固にする努力を払い、軍隊を養うための食糧を送ってくれなければ、まことに、わたしは自由党の者たちの一部を国のこの地方を守るために残し、また神の力と祝福を彼らに残してほかのいかなる力も彼らに及ばないようにしておきます。
26 彼らの深い信仰と艱難の中での忍耐のゆえに、ほかの力は彼らに及びません。
27 そして、わたしはあなたがたのもとへ行き、もしあなたがたの中に自由を求める者がいれば、まことに、自由の痕跡でも残っていれば、権力と権威を奪い取ることを願っている者たちが死に絶えるまで、わたしはあなたがたの中で謀反を扇動しましょう。
28 まことに、わたしは、あなたがたの権力もあなたがたの権威も恐れません。わたしが畏れるのはわたしの①神です。わたしが国の大義を守るために剣を取ることは、神の命じられたことにかなっています。わたしたちがこのように多大の損害を被ったのは、あなたがたの罪悪のためです。
29 まことに、もしあなたがたが自分たちの国と子供たちを守る努力を払わなければ、①罰の剣があなたがたのうえに迫る時が今や近づいています。やがてそれはあなたがたのうえに落ち、あなたがたを討ってことごとく滅ぼすことでしょう。
30 まことに、わたしはあなたがたからの援助を待っています。もしあなたがたがわたしたちの救援に必要なものを与えてくれなければ、わたしはあなたがたのもとへ、まことにゼラヘムラの地へ行って剣であなたがたを討ちます。したがってあなたがたは、この民が自由の大義を広めるのを妨げる力を二度と持てなくなるでしょう。
31 まことに、あなたがたが生きていて罪悪を募らせ、主の義にかなった民を滅ぼすことを、主は許されません。
32 まことに、レーマン人の憎悪のもとになったのは、彼らの先祖の言い伝えであり、それは、わたしたちから離反した者たちによって倍加されました。一方あなたがたの罪悪は、あなたがたが誉れと俗世のむなしいものに愛着して生じたものです。そうであるのにあなたがたは、主があなたがたの命を救い、レーマン人に対しては裁きを下されると考えられるでしょうか。
33 あなたがたは、自分たちが神の律法に背いていることを承知しています。また、神の律法を足の下に踏みつけていることも承知しています。まことに、主はわたしに、『もしあなたがたが総督に選んだ者たちが、自分の罪と不義を悔い改めなければ、あなたがたは上って行って彼らと戦いなさい』と言われます。
34 さてまことに、わたしモロナイは、以前に自分が交わした聖約に応じて、神の命じられたことを果たすように強く促されています。したがって、あなたがたが神の御言葉に従うこと、またあなたがたの食糧と兵をわたしとヒラマンのもとに速やかに送ることをわたしは願っています。
35 まことに、もしあなたがたがこうしてくださらなければ、わたしは速やかにあなたがたのもとへ行きます。まことに、わたしたちが飢えのために滅びるのを、神は許されないからです。したがって、たとえ剣によってであろうと、神はわたしたちにあなたがたの食糧をお与えくださるでしょう。今すぐに神の御言葉を実行に移すように手はずを整えてください。
36 まことに、わたしはあなたがたの司令官、モロナイです。わたしは①権力を求めず、むしろそれを引き倒そうとしています。わたしは世の誉れを求めず、むしろ神の栄光とわたしの国の自由と幸いとを求めています。これでわたしの手紙を結びます。」