1さて見よ、わたしニーファイは、兄たちが腹を立てたので、主なるわたしの神に切に叫び求めた。
2しかし見よ、わたしに対する兄たちの怒りは激しくなり、彼らはわたしの命を奪おうとした。
3まことに彼らは、わたしに向かってつぶやいて言った。「弟は我々を支配しようと思っている。我々は彼のためにひどい試練を受けてきた。見よ、もう弟の言葉で苦難を味わわなくても済むように、弟を殺してしまおう。我々は弟を支配者には決してさせない。この民を支配する権利は、兄の我々にある。」
4ところでわたしは、兄たちがわたしに対してつぶやいた言葉のすべてをこの版に載せることはしない。ただ、彼らがわたしの命を奪おうとしたと言えば十分である。
5さて、主はわたしニーファイに、彼らのもとを去って荒れ野へ逃げるように、またわたしとともに行きたい者も皆、そうするように警告された。
6そこでわたしニーファイは、自分の家族と、ゾーラムとその家族、兄サムとその家族、弟のヤコブとヨセフ、わたしの姉妹たち、そのほかわたしとともに行きたい者たち全員を連れて出た。わたしとともに行くことを望んだ者たちは皆、神の警告と啓示を信じる者たちであったので、わたしの言葉に聞き従った。
7わたしたちは天幕と持てるものをすべて携えて、幾日も荒れ野を旅した。そして、幾日も荒れ野を旅した後、わたしたちは天幕を張った。
8そして、わたしの民がその地をニーファイと呼ぶことを望んだので、わたしたちはその地をニーファイと名付けた。
9また、わたしとともにいた者たちは皆、自分たちをニーファイの民と呼ぶことにした。
10わたしたちはモーセの律法に従って、何事にも主の裁決と掟と戒めを守るように努めた。
11そして、主がわたしたちとともにおられた。わたしたちは種をまき、豊かに収穫して、非常に栄えた。またわたしたちは、大小の家畜の群れと、あらゆる動物を飼い始めた。
12わたしニーファイは、真鍮の版に刻まれた記録と、前にわたしがこの版に刻んだとおり、主の手によって父のために備えられた球、すなわち羅針盤も持って来た。
13そこでわたしたちは、非常に栄えて、その地で増え始めた。
14それでわたしニーファイは、ラバンの剣を取り、それに倣って多くの剣を造った。それは今やレーマン人と呼ばれている民が、わたしたちを襲って滅ぼすことのないようにするためであった。彼らがわたしとわたしの子供たちと、またわたしの民と称する者たちを憎んでいることを、わたしは知っていたからである。
15わたしは民に、建物を建てることを教え、また非常に豊富にあった木材や鉄や銅、また真鍮や鋼や金や銀や貴重なあらがねなど、あらゆる材料で物を造り出すことを教えた。
16また、わたしニーファイは神殿を建てた。ソロモンの神殿に倣って建てたが、その違いは、建てるのにそれほど多く貴重な品を使わなかったことである。そのような貴重な品がこの地になかったため、ソロモンの神殿と同じようには建てることができなかった。しかし、建築の様式はソロモンの神殿と同じで、その造りは非常に見事であった。
17そしてわたしニーファイは、民を勤勉に働かせ、また手を使って働くようにさせた。
18さて、民はわたしが彼らの王になることを望んだ。しかしわたしニーファイは、彼らには王がない方がよいと思った。それでも、わたしの力の及ぶかぎり彼らのために尽くした。
19見よ、主は兄たちについて、わたしが彼らを治める者になり教える者になると言われたが、その主の言葉はすでに成就していた。したがって、彼らがわたしの命を奪おうとしたときまで、わたしは主の命令どおりに彼らを治める者、教える者となっていたのである。
20それで、主がわたしに言われた、「あなたの言うことに聞き従わなければ、彼らは主の前から絶たれる」という御言葉は成就した。見よ、彼らは御前から絶たれてしまったのである。
21主はまた、彼らの罪悪のために、のろいを彼らに下された。まことにひどいのろいを下された。見よ、彼らが主に対して心をかたくなにし、あたかも火打ち石のように硬くなってしまったからである。それで主なる神は、彼らが白い、非常に麗しく喜ばしい者たちであったので、わたしの民に誘惑とならないように、彼らの肌を黒ずんだ肌にされた。
22主なる神はこう言われる。「彼らが自分たちの罪悪を悔い改めなければ、わたしは彼らをあなたの民にとって不快な者としよう。
23彼らの子孫と縁を結ぶ者の子孫はのろわれる。それらの者は同じのろいを受けるからである。」主はそう言われ、そのとおりになった。
24彼らは、自分たちに下されたのろいのために、悪意と狡猾さに満ちた怠惰な民となり、荒れ野で猛獣をあさった。
25主なる神はわたしに言われた。「彼らはあなたの子孫にわたしのことを思い起こさせるため、あなたの子孫にとって鞭となるであろう。そして、あなたの子孫がわたしを覚えて、わたしの言葉に聞き従わなければ、彼らはあなたの子孫を、滅びに至るまで鞭打つであろう。」
26さて、わたしニーファイはヤコブとヨセフを任じ、彼らをわたしの民の地における祭司と教師にした。
27そして、わたしたちは幸福の習わしに従って暮らした。
28そして、わたしたちがエルサレムを去ってから三十年が過ぎた。
29わたしニーファイはこれまで、自分の造った版にわたしの民についての記録を付けてきた。
30そこで、主なる神はわたしに、「ほかに版を造り、あなたの民の益となるように、わたしの目に善しとする多くの事柄をそれに刻みなさい」と言われた。
31それでわたしニーファイは、主の命令に従い、行ってこの版を造り、これらのことを刻んだ。
32わたしは神に喜ばれる事柄を刻んだ。もしもわたしの民が神にかかわる事柄を喜ぶならば、彼らはこの版にわたしが刻んだことも喜ぶであろう。
33また、もしもわたしの民が自分たちの歴史についてもっと詳しく知りたいならば、わたしの造ったほかの版を調べなくてはならない。
34しかし、もう四十年が過ぎ去り、兄たちとの間にすでに戦争や争いがあったと言えば、それで十分であろう。