1さて、わたしニーファイが兄たちに教え終えてから、父のリーハイもまた多くのことを兄たちに話し、主が彼らをエルサレムの地から連れ出すに当たり、どれほど大いなることをなさったかを彼らに語った。
2父はまた、彼らが海の上で背いたことや、神が彼らを憐れんで、海にのみ込まれないように命を助けてくださったことについて、彼らに語った。
3さらに父は、彼らが得た約束の地について話し、また、エルサレムの地から逃れるように警告してくださった主がいかに憐れみ深い御方であるかを、彼らに語った。
4見よ、父は言った。「わたしは示現を受け、エルサレムがすでに滅びてしまったことを知っている。エルサレムに残っていたら、わたしたちもまた滅びていたであろう。」
5父は言った。「しかし、わたしたちはいろいろな苦難に遭ったにもかかわらず、約束の地を手に入れた。これはほかのあらゆる地に勝ったえり抜きの地であって、主なる神がわたしの子孫の受け継ぎの地としてわたしに聖約してくださった地である。まことに、主はこの地を、わたしやわたしの子孫にとこしえに下さると聖約され、また主の御手によってほかの国々から導かれて来るすべての人にも与えると聖約された。
6それでわたしリーハイは、わたしの内にある御霊の働きによって預言する。すなわち、主の御手によって導かれて来るのでなければ、だれもこの地に来ることはない。
7したがって、この地は主が連れて来られる者のために聖別されている。もしこの人々が主から与えられた戒めに従って主に仕えるならば、ここは彼らにとって自由の地となり、彼らは決して囚われの身に陥ることがないであろう。もし囚われの身に陥るならば、それは罪悪のためである。罪悪がはびこるとき、地は罪悪を犯す人々のためにのろわれるが、義人のためにはとこしえに祝福されるからである。
8見よ、この地を今なおほかの国民に知られないようにしておくのは、賢いことである。見よ、多くの国民が群がって来て、受け継ぎの地がなくなってしまうからである。
9それで、わたしリーハイは約束を受けている。すなわち、主なる神によってエルサレムの地から連れて来られる人々は、主の命令を守るかぎりこの地の面で栄え、またほかのすべての国民からも離されて、この地を自分のものとして所有する。そして彼らは、主の命令を守るならばこの地で祝福を受け、彼らを苦しめる者はなく、またその受け継ぎの地を取り上げる者もなく、とこしえに安全に暮らせるのである。
10しかし見よ、彼らが主の御手から非常に大きな祝福を受けた後、すなわち、彼らが地とすべての人の創造についての知識を得、世の創造以来の主の大いなる驚くべき業を知り、信仰によってすべてのことを行う力を与えられ、世の初めからの戒めをことごとく授かり、しかも主の限りない慈しみによってこの貴い約束の地へ連れて来られた後に、不信仰に陥る時が来ると、見よ、わたしは言うが、もし彼らがまことのメシヤ、彼らの贖い主、彼らの神であるイスラエルの聖者を拒む日が来れば、見よ、公正な神の裁きが彼らにとどまるであろう。
11まことに主は、彼らのもとにほかの国民を連れて来て力を授けられる。そして、彼らは所有している地を取り上げられ、散らされ、打たれる。
12まことに、世代が移るにつれて、彼らの中に流血があり、大きな刑罰が下る。だから息子たちよ、覚えておいてほしい。まことに、わたしの言葉に聞き従ってほしい。
13おお、あなたがたは目を覚ましていてもらいたい。深い眠りから、すなわち地獄の眠りから目覚めて、あなたがたを縛っている恐ろしい鎖を振り払いなさい。その鎖は人の子らを縛って、不幸と災いの永遠の淵に連れ去る鎖である。
14目を覚ましなさい。そして地から立ち上がり、おののく父の言葉を聞きなさい。あなたがたは間もなく父の体を冷たい無言の墓に横たえなければならない。そこからはどんな旅人も決して戻って来ることができない。あとわずかで、わたしは世のすべての人のたどる道を行く。
15しかし見よ、主はわたしを地獄から贖ってくださった。わたしは主の栄光を見た。そして、主の愛の御腕に永遠に抱かれている。
16わたしは、あなたがたが主の掟と裁決を忘れずに守ることを願っているが、見よ、これは、初めからわたしの心配していたところである。
17わたしの心は時々、悲しみに押しつぶされるようであった。それは、あなたがたの心がかたくななために、主なるあなたがたの神が満ちみちる激しい怒りを下されて、あなたがたが絶たれ、とこしえに滅ぼされてしまうのではないかと恐れてきたからである。
18あるいは、多くの代にわたってのろいがあなたがたに及び、剣や飢饉に見舞われ、忌み嫌われ、また悪魔の意志に惑わされ、捕らえられはしないかと恐れてきたからである。
19おお、息子たちよ、これらのことがあなたがたに及ぶことなく、あなたがたが主に選ばれた愛される民となるように願っている。しかし見よ、主の道はとこしえに義であるから、御心が行われるように。
20主は『あなたがたはわたしの命令を守るかぎり地に栄える。しかし、わたしの命令を守らなければ、わたしの前から絶たれる』と言われた。
21さて、わたしの霊があなたがたにあって喜びを得て、あなたがたのことを喜びながらこの世を去ることができるように、また、わたしの心が憂いや悲しみを抱いて墓に入ることのないように、息子たちよ、地から立ち上がって、男らしくありなさい。そして思いを一つにし、心を一つにして決意を固め、あらゆることに結束しなさい。これはあなたがたが囚われの身に陥らないためである。
22また、ひどいのろいをもってのろわれないためであり、公正な神の不興を自分に招いて、滅びを、まことに霊と体の両方の永遠の滅びを受けることのないようにするためである。
23目を覚ましなさい、息子たちよ。義の武具を身に着けなさい。あなたがたを縛っている鎖を振り払い、暗闇を抜け出て、地から立ち上がりなさい。
24これからはもう、あなたがたの弟に背かないようにしなさい。彼の見た示現は荘厳なものであって、彼はわたしたちがエルサレムを出たときから神の命令を守り、神の御手に使われる者としてわたしたちを約束の地へ導いて来た。もし彼がいなかったなら、わたしたちはきっと荒れ野で飢え死にしていたであろう。にもかかわらず、あなたがたは彼の命を奪おうとした。そして、彼はあなたがたのためにひどく憂い悲しんだ。
25わたしは、この後またニーファイが苦しむのではないかと、見よ、あなたがたのことで非常に恐れおののいている。それはあなたがたが、彼があなたがたを支配する権力と権能を求めたと言って彼をひどく責めてきたからである。しかしニーファイは、あなたがたを支配する権力と権能を求めたのではなく、神の栄光とあなたがた自身の永遠の幸いを求めてきたのである。わたしはそのことを知っている。
26あなたがたは、彼がはっきり言ったのでつぶやいた。あなたがたは、彼が厳しかった、自分たちに対して怒ったなどと言う。しかし見よ、彼の厳しさは、彼の内にある神の御言葉の力の厳しさであって、またあなたがたの言う怒りとは、神の内にある真理にほかならない。それをニーファイは自ら抑えることができなくて、あなたがたの罪悪について大胆に明らかにしたのである。
27神の力が彼とともにあるのは必要なことであって、彼が命じたことにあなたがたは従わなければならない。しかし見よ、彼が口をつぐむことができないほど彼の口を開いて語らせたのは、彼自身ではなく、彼の内にある主の御霊であった。
28さて、わたしの息子レーマン、それにレムエル、サム、ならびにイシマエルの息子であるわたしの息子たちよ。見よ、あなたがたがニーファイの声に聞き従うならば、滅びないであろう。そして彼に聞き従うならば、わたしはあなたがたに祝福を、それも第一の祝福を残そう。
29しかし、もしあなたがたが彼に聞き従わないならば、わたしは第一の祝福、まことにわたしの祝福を取り上げて、それをニーファイに授けよう。
30さて、ゾーラムよ、わたしはあなたに告げる。見よ、あなたはラバンの僕であったが、エルサレムの地から連れて来られた。わたしはあなたが息子ニーファイにとって、とこしえに真の友であることを知っている。
31したがって、あなたが忠実であったので、あなたの子孫はニーファイの子孫とともに祝福を受けて、長くこの地の面に住んで栄えるであろう。そしてあなたの子孫の中で罪悪が行われないかぎり、この地の面で栄えるのを損なったり阻害したりする者は、とこしえにないであろう。
32それで、あなたがたが主の命令に従うならば、主はこの地を聖別し、あなたの子孫をわたしの息子の子孫とともに、安全に守ってくださるであろう。」