1さて、ノア王の召し使いたちから逃れたアルマは、自分の罪と不義を悔い改め、人々の中をひそかに巡って、アビナダイの言葉を教え始めた。
2まことに、将来起こる事柄について、また死者の復活について、そしてキリストの力や受難、死、復活、昇天によってもたらされる人々の贖いについて、教え始めた。
3そしてアルマは、自分の言葉を聞こうとする人々すべてに教えた。彼は王に知られることのないように、ひそかに教えた。そして、多くの人がアルマの言葉を信じた。
4そして、アルマの語ったことを信じた人々は皆、モルモンと呼ばれた地へ行った。そこは王がその名を付けた所で、境の地にあり、時節によっては野獣が群れを成していた所である。
5さて、モルモンには水の清らかな泉があり、アルマはそこへ行った。そこには、泉の近くに小さな木の茂みがあり、彼は日中そこに身を隠して王の捜索から逃れた。
6そして、アルマの語ったことを信じた人々は皆、彼の言葉を聞くためにそこへ行った。
7さて、多くの日の後、アルマの言葉を聞くためにモルモンの地に集まった人々は、相当な数に上った。まことに、彼の言葉を信じた人々は皆、彼の語ることを聞くために集まった。そこで彼は、これらの人々を教え、悔い改めと贖いと主を信じる信仰とを説いた。
8そして、アルマは言った。「見よ、ここにモルモンの泉がある。(この泉はこのように呼ばれていた。)あなたがたは神の羊の群れに入って、神の民と呼ばれたいと願っており、重荷が軽くなるように、互いに重荷を負い合うことを望み、
9また、悲しむ者とともに悲しみ、慰めの要る者を慰めることを望み、また神に贖われ、第一の復活にあずかる人々とともに数えられて永遠の命を得られるように、いつでも、どのようなことについても、どのような所にいても、死に至るまでも神の証人になることを望んでいる。
10まことに、わたしはあなたがたに言う。あなたがたが心からこれを望んでいるのであれば、主からますます豊かに御霊を注いでいただけるように、主に仕えて主の戒めを守るという聖約を主と交わした証拠として、主の御名によってバプテスマを受けるのに何の差し支えがあろうか。」
11人々はこの言葉を聞くと手をたたいて喜び、「それこそわたしたちが心から望んでいることです」と叫んだ。
12さて、アルマは、最初この地にやって来た人々の一人であるヘラムを連れて水の中に立ち、祈り願って言った。「おお、主よ、あなたの僕が聖い心でこの務めを果たせるように、僕にあなたの御霊を注いでください。」
13そして彼がこの言葉を語ったとき、主の御霊が彼のうえにあった。そこで彼は言った。「ヘラム、わたしは全能の神から権能を授かっているので、あなたの肉体が死ぬまで全能の神に仕えるという聖約を交わした証拠として、あなたにバプテスマを施す。主の御霊があなたに注がれるように。また全能の神が、世の初めから備えてくださっているキリストの贖いによって、あなたに永遠の命を授けられるように。」
14アルマがこれらの言葉を語り終えると、アルマとヘラムはともに水の中に沈んだ。それから二人は立ち上がると、御霊に満たされて、喜びながら水から出て来た。
15さらに、アルマはまた別の一人を連れて、もう一度水の中に入って行くと、最初のときと同じようにバプテスマを施したが、今度は自分自身は水の中に沈まなかった。
16このようにして、彼はモルモンの地にやって来たすべての人にバプテスマを施した。その数は二百四人ほどであった。そして、これらの人々はモルモンの泉でバプテスマを受けると、神の恵みに満たされた。
17そしてそれ以後、彼らは神の教会、すなわちキリストの教会と呼ばれた。また、神の力と権能によってバプテスマを受けた人々はだれでも、神の教会に加えられた。
18そしてアルマは、神から権能を授かっていたので、祭司たちを聖任した。すなわち、彼は五十人ごとに一人の祭司を聖任して、彼らに教えを説き、また神の王国にかかわる事柄について教えられるようにした。
19またアルマは祭司たちに、自分が教えたことと、聖なる預言者たちの口を通して述べられたことのほかは、何も教えないように指示した。
20まことに、彼は祭司たちに、悔い改めと、御自分の民を贖われた主を信じる信仰のほかは、何も説かないように指示したのである。
21また彼は祭司たちに、決して互いに争うことなく、互いに和合し、愛し合って結ばれた心を持ち、一つの信仰と一つのバプテスマをもって、一つの目で将来を見詰めるようにと指示した。
22彼はこのように祭司たちに、教えを説くように指示した。このようにして、人々は神の子となった。
23また、アルマは彼らに、安息日を守って聖なる日として保つこと、また毎日主なる自分たちの神に感謝することを指示した。
24また、聖任を受けた祭司たちは自分自身の手を使って生活の糧を得るようにすべきであると、アルマは指示した。
25さらに、彼らが人々を教え、また主なる自分たちの神を礼拝するために集まる日を週に一日定めること、またほかにもできるかぎりしばしば集まることとした。
26そして、祭司たちは生活の糧を人々に頼るべきでなく、自分の労働に対して神の恵みを受けるべきであるとされた。それは、彼らが御霊を受けて強くなり、神の知識を得られるようにするため、また神からの力と権能をもって教えることができるようにするためである。
27アルマはまた、教会の人々が各々自分の持っている分に応じて持ち物を分け与えるように、つまり、ほかの人よりも豊かに持っていれば、ほかの人よりも多く分け与えるべきであり、少ししか持っていない人には少ししか求めず、持っていない人には分け与えるべきであると指示した。
28このように、人々は自分の自由意志と神にかかわる善い望みから、自分の持ち物を、それを必要としている祭司たちと、乏しくて着る物のないすべての人に分け与えなければならなかった。
29アルマは神から命じられたので、このように彼らに告げた。そして彼らは、各々の必要と入り用に応じて物質的にも霊的にも互いに助け合い、神の前をまっすぐに歩んだ。
30さて、これはすべてモルモンにおいて、まことにモルモンの泉のそば、つまりモルモンの泉に近い森の中で行われたことである。モルモンの地も、モルモンの泉も、モルモンの森も、自分たちの贖い主を知るようになった人々の目には何と麗しいことか。また、これらの人々は何と祝福されていることか。だから、彼らはとこしえに贖い主を賛美して歌うであろう。
31これらのことは、ノア王に知られることのないように、国の境で行われた。
32しかし見よ、王は民の中に動きがあるのを知り、召し使いたちを遣わして民を見張らせた。そのため、人々が神の言葉を聞こうとして集まった日に、彼らのことが王に知られてしまった。
33そこで王は、アルマが民を扇動して自分に対する謀反を起こしていると言って、アルマと彼に従う人々を滅ぼすために、軍隊を派遣した。
34そこでアルマと主の民は、王の軍隊が来るという知らせを受けたので、天幕を持ち、家族を連れて荒れ野へ旅立った。
35その数はおよそ四百五十人であった。