1さて、リムハイ王は民に多くのことを語ったが、わたしはその中からわずかな事柄だけをこの書に書き記した。王は民に語り終えると、ゼラヘムラの地にいる同胞についても、すべてのことを彼らに告げた。
2そして彼はアンモンを群衆の前に立たせて、ゼニフがゼラヘムラを立ち去ったときからアンモン自身がゼラヘムラを出るときまでに同胞に起こったことを、すべて詳しく語らせた。
3そこでアンモンはリムハイ王の民に、ベニヤミン王がゼラヘムラの民に教えた最後の言葉についても詳しく語り、またリムハイ王の民がベニヤミン王の語った言葉をすべて理解できるように、その言葉を解説した。
4そして、アンモンがこれをすべて終えると、リムハイ王は群衆を解散させ、一人残らず各自の家に帰らせた。
5そして王は、彼の民がゼラヘムラの地を出たときからの記録が載っている版をアンモンの前に持って来させ、彼がそれを読めるようにした。
6さて、アンモンがその記録を読み終えるとすぐに、王は彼に外国の言葉を翻訳できるかどうか尋ねた。アンモンはできないことを王に告げた。
7そこで王はアンモンに言った。「わたしは民の苦難を見て悲しく思い、民の中から四十三人の者を荒れ野へ旅立たせた。彼らがゼラヘムラの地を見つけ、我らを奴隷の状態から救い出してくれるように同胞に頼めると思ったからである。
8ところが彼らは、幾日もの間荒れ野の中で迷ってしまった。それでも彼らは熱心に探したので、ゼラヘムラの地は見つからなかったものの、またこの地に戻って来た。その間、彼らは多くの水のある地方を旅し、人間と獣の骨が辺り一帯に散乱しており、またあらゆる建物の廃虚が一面に散在している地を発見した。すなわち、イスラエルの大群ほどに数多くの人が住んでいた地を発見した。
9そして彼らは、自分たちの語ることが真実であるという証拠として、文字が一面に刻んである二十四枚の版を持ち帰った。その版は純金でできている。
10また見よ、彼らは幾つかの大きな胸当ても持ち帰ったが、それらは真鍮と銅でできており、まったく傷んでいない。
11さらに彼らは、剣も何本か持ち帰ったが、その柄は朽ち、刃はさびで腐食していた。ところで、その言葉、すなわちその版に刻まれている事柄を解釈できる者はこの地に一人もいない。だからあなたに、翻訳できるかと尋ねたのである。
12わたしはもう一度言うが、あなたは翻訳のできる人をだれか知っているか。わたしはこの記録をわたしたちの言葉に翻訳してもらいたい。そうすればこの記録から、この記録を残して滅びた民の残りの者のことが恐らく分かるであろう。あるいは、滅びてしまったこの民そのものについて、分かるかもしれない。わたしは、彼らが滅びた訳を知りたい。」
13そこでアンモンは王に言った。「王様、わたしはその記録を翻訳できる人を確かにお教えできます。その方は、あるものを持っていて、それを使って見れば、昔の記録でもすべて翻訳することができます。それは神から授けられた賜物です。それは解訳器と呼ばれており、神から命じられないかぎり、だれもそれをのぞいて見ることはできません。求めてはならないものを求めて滅びることのないためです。また、それをのぞいて見るように命じられる人は、聖見者と呼ばれます。
14まことに、ゼラヘムラの地にいる民の王が、これらのことを行うように命じられた方で、神からこの貴い賜物を授かっています。」
15すると王は、「聖見者は預言者よりも偉大である」と言った。
16そこでアンモンは言った。「聖見者は啓示者であり、預言者でもあります。だれ一人として持つことのできないこの神の力を備えていなければ、これより大いなる賜物をだれも持つことはできません。しかし、大きな力が神から授けられることもあります。
17聖見者は過去のことも将来のことも知ることができます。解訳器によってすべてのことが示されるのです。というよりむしろ、秘密のことが明らかにされ、隠れたことが明るみに出るのです。知られていないことが解訳器によって知られるようになり、またほかの方法では知ることのできないことが、解訳器によって知られるようになります。
18このように、神は人が信仰によって偉大な奇跡を行うことができるように、一つの手段を与えてくださいました。それでその人は、同胞に大きな利益をもたらすようになるのです。」
19さて、アンモンがこれらの言葉を語り終えると、王は非常に喜び、次のように言いながら神に感謝した。「これらの版には疑いもなく大いなる奥義が載っている。そしてその解訳器は、このようなすべての奥義を人の子らに明らかにするために備えられたものである。
20おお、主の業は何と驚くべき業であろう。主は何と長い間、民のために耐えてこられたことか。人の子らは何と理解力がなく鈍感なことか。人の子らは知恵を求めようとせず、また知恵に支配されるのを望まない。
21まことに人の子らは、羊飼いから逃げて散り散りになり、森の獣に追われてえじきになる野生の羊の群れのようだ。」