1 さて,不信仰な者たちが教会員に加える迫害が非常にひどくなったので,教会員はつぶやき,その件について指導者たちに訴え始めた。そこで,指導者たちはアルマに訴えた。アルマはその件を王であるモーサヤの前に持ち出し,モーサヤは祭司たちに意見を求めた。
2 そしてモーサヤ王は,不信者は神の教会に属している者を迫害してはならないと,周辺の全地に布告を出した。
3 また,すべての教会に次のような厳しい命令が出された。すなわち,教会の中に迫害があってはならない。すべての者は平等でなければならない。
4 高慢あるいは傲慢になって,平和を乱すようなことがあってはならない。すべての者は隣人を自分自身のように尊ばなければならない。また,自分自身の手で働いて生活の糧を得なければならない。
5 また,教会の祭司と教師は皆,病気のときやひどく生活に困ったときのほかは,どのような場合でも,自分自身で働いて生活の糧を得るようにしなければならない,というものであった。彼らはこれらのことを守ったので,神の恵みを豊かに受けた。
6 そして,国内は再び非常に平和になってきた。また,民は非常に多くなり始め,地の面に,まことに,東西南北に広く分散して,その地の全域に大きな町や村を築き始めた。
7 そして,主は彼らを顧み,栄えさせられた。そのため,彼らは裕福で大きな民となった。
8 ところで,モーサヤの息子たちは不信仰な者たちの中に数えられており,アルマの息子の一人もその中に数えられていた。アルマのその息子は,父の名を取ってアルマと名付けられていた。にもかかわらず,彼は非常に邪悪な男で,偶像を礼拝する者になってしまった。また,彼は言葉数の多い男で,民に多くの世辞を述べ,多くの者に自分と同じような罪悪を犯させた。
9 そして彼は,民の心を奪って民の中にひどい不和を生じさせ,神の敵に民を支配する権力を振るう機会を与えたので,神の教会の繁栄にとって大きな妨げとなった。
10 さて,彼が神の教会を滅ぼそうとして歩き回っていたときに,すなわち,彼が神の戒めにも王の命令にも逆らって,教会を滅ぼし,主の民を惑わそうと,モーサヤの息子たちとともにひそかに歩き回っていたときに,
11 わたしが前に述べたように,彼らが神に背いて歩き回っていたときに,見よ,主の天使が彼らに現れた。その天使は,まるで雲に包まれて来たかのように降って来て,さながら雷のような声で語り,その声は彼らの立っていた大地を震わせた。
12 彼らはそのためにひどく驚き,地に倒れた。しかし,彼らには天使の語った言葉が分からなかった。
13 それでも天使は,また大声で言った。「アルマよ,起き上がって立ちなさい。あなたはなぜ神の教会を迫害するのか。主はかつて,『これはわたしの教会である。わたしがこれを設ける。わたしの民の背きのほかに,これを覆すものはない』と言われた。」
14 天使はまた言った。「見よ,主は,御自分の民の祈りと,御自分の僕であり,またあなたの父であるアルマの祈りを聞かれた。あなたの父が,あなたが真理の知識に導かれるように,深い信仰をもってあなたのことを祈ってきたからである。したがって,わたしは神の力と権能が存在することをあなたに認めさせるために来た。神の僕たちの祈りが,彼らの信仰に応じてかなえられるためである。
15 さて見よ,あなたは神の力に抵抗することができるか。見よ,わたしの声は大地を震わせているではないか。あなたには,わたしがあなたの前にいるのが見えないか。わたしは神から遣わされた者である。
16 さて,わたしはあなたに言う。あなたの先祖がヘラムの地とニーファイの地で囚われの状態にあったことを思い出しなさい。また,神があなたの先祖のために,どれほど大いなることを行われたかを思い起こしなさい。あなたの先祖は奴隷の状態にあったが,神が救い出してくださった。アルマよ,わたしはあなたに言う。行きなさい。これからはもう教会を滅ぼそうとしてはならない。たとえあなた自身が捨てられようとも,彼らの祈りが聞き届けられるためである。」
17 そしてこれは,天使がアルマに語った最後の言葉である。そのようにして,天使は去って行った。
18 さて,アルマと,またアルマとともにいた者たちは,ひどく驚いて,再び地に倒れた。それは,自分の目で主の天使を見,天使の声が雷のようであって大地を震わせ,また大地を震わせてそれが引き裂けるほどに揺り動かせるのは,神の力のほかにないことを,知ったからである。
19 このときアルマは,ひどく驚いたために物が言えなくなった。口を開くことができなくなったのである。また,体の力が弱くなり,手も動かせないほどになった。そこで,身動きができないまま彼と一緒にいた者たちに運ばれて,彼の父の前に置かれた。
20 そして彼らは,彼の父に,自分たちに起こったことをすべて詳しく告げた。すると彼の父は,それが神の力によって起こったことを知って喜んだ。
21 彼は主が自分の息子と,また息子と一緒にいた者たちに行われたことを見せようとして,大勢の人を集めた。
22 また,彼は祭司たちも集めた。そして,彼らは断食して,主なる自分たちの神に祈り始め,アルマの口を開いて物が言えるようにしてくださること,また彼の手足に力が与えられること,そして,それによって民の目が開かれて,彼らが神の慈しみと栄光を見て知るようになることを請い願った。
23 そして,彼らが二日二晩断食して祈ったところ,アルマの手足は力を取り戻した。そして,アルマは立ち上がると,彼らに語り始め,安心するように彼らに言った。
24 彼はこのように述べた。「わたしは自分の罪を悔い改め,主に贖われました。まことに,わたしは御霊によって生まれました。
25 主はわたしに言われました。『全人類,すなわち男女を問わず,すべての国民,部族,国語の民,民族が再び生まれなければならないことを不思議に思ってはならない。まことに,人は神から生まれ,肉欲にふける堕落した状態から義の状態に変わって,神に贖われ,神の息子や娘にならなければならない。
26 このようにして,彼らは新たな者となる。このようにならないかぎり,決して神の王国を受け継ぐことはできない。』
27 わたしは皆様に申し上げます。人は実際にこのような状態にならないかぎり,必ず捨てられます。わたしは一度捨てられそうになったので,このことが分かります。
28 にもかかわらず,多くの艱難を耐え抜いて,死ぬほどの悔い改めをしたところ,主はわたしを憐れんで,永遠に燃える火からわたしを救い出すことがふさわしいとされました。そして,わたしは今,神から生まれたのです。
29 わたしはすでに苦汁と罪悪のかせから贖われました。わたしはかつて,最も暗く深い淵の中にいましたが,今は神の驚くべき光を見ています。わたしはかつて永遠の苦痛に責めさいなまれましたが,今は救い出されており,もう心に苦痛を感じません。
30 わたしはかつて贖い主を拒み,わたしたちの先祖が語ってきたことを受け入れませんでした。しかし今は,贖い主が将来来られるのを全人類が先見できること,また贖い主が御自分の造られたすべてのものを覚えていて,将来すべての人に御自身を現されるということをわたしは知っています。
31 まことに,すべてのひざがかがみ,すべての舌が贖い主の御前で告白します。すべての人が立って贖い主に裁かれる終わりの日に,彼らは贖い主が神であられることを告白します。またそのとき,神に頼らずにこの世の中で生きている者たちは,永遠の罰の裁きが自分たちにとって公正であることを告白します。そして,彼らはすべてのことを見通す贖い主の目の下で震えおののき,縮み上がります。」
32 さて,アルマはこのとき以来,民を教え始めた。また,天使が現れたときにアルマと一緒にいた者たちとともに,全地を旅して回り,自分たちの聞いたり見たりしたことをすべての民に告げ,多くの艱難の中で神の言葉を宣べ伝えた。そして,不信仰な者たちからひどい迫害を受け,彼らの多くから打たれた。
33 しかし,このような目に遭ったにもかかわらず,彼らは教会員に大きな慰めを与え,彼らの信仰を強め,また,ひどい苦労をしながらも,寛容をもって彼らに神の戒めを守るように勧めた。
34 これらの者のうちの四人はモーサヤの息子であり,その名をアンモン,アロン,オムナー,ヒムナイといった。以上はモーサヤの息子たちの名である。
35 そして,彼らはゼラヘムラの全地を旅し,モーサヤ王が治めているすべての民の中を巡って,自分たちがかつて教会に加えたすべての害悪の償いをしようと熱心に努め,自分たちのすべての罪を告白し,自分たちが見たすべてのことを告げ,また自分たちの言葉を聞きたいと望んだすべての人に,預言と聖文について解説した。
36 このようにして,彼らは神の手に使われる者となって多くの人を真理の知識に導き,まことに,贖い主について知らせた。
37 何と彼らは祝福されていることか。彼らは平和を告げて広め,善のよきおとずれを告げて広め,主が統治しておられることを民に告げ知らせたからである。