1さて、アビナダイがこれらの言葉を語り終えると、王は祭司たちに、彼を捕らえて殺させるように命じた。
2ところが、祭司たちの中にアルマという名の者がいて、彼もまたニーファイの子孫であった。彼は年の若い男で、アビナダイが語った言葉を信じた。アビナダイが彼らに向かって証言した罪悪のことを、彼は知っていたからである。そこで、彼は王に、アビナダイを怒らずに、彼が安らかに去るのを許すように懇願し始めた。
3しかし、王はますます腹を立てて、彼らの中からアルマを追い出させ、そのうえ、召し使いたちに彼の後を追わせて殺させようとした。
4しかし、アルマは彼らの前から逃げ出し、彼らに見つからないように身を隠した。彼は幾日も隠れたままで、その間にアビナダイが語った言葉をすべて書き記した。
5さて、王は衛兵にアビナダイを取り囲んで捕らえさせた。そこで衛兵は彼を縛り、牢に投げ込んだ。
6それから三日後、王は祭司たちと相談した末、アビナダイをもう一度自分の前に連れて来させた。
7そして王は彼に言った。「アビナダイよ、おまえの罪状は確定している。おまえは死に値する。
8神自らが人の子らの中に降って来ると言ったからだ。だから、わたしとわたしの民について災いを述べた言葉をすべて取り消さないかぎり、おまえはこの理由で殺されることになる。」
9すると、アビナダイは王に言った。「わたしは王に申し上げます。わたしがこの民についてあなたに申し上げた言葉は真実ですから、わたしは取り消しません。わたしはその言葉が確かであることをあなたに知っていただくために、自らあなたの手に落ちることにしたのです。
10そして、わたしは死に至るまでも苦しみに耐え、自分の言葉を取り消すことはせず、その言葉はあなたを責める証となるでしょう。わたしを殺すならば、あなたは罪のない者の血を流すことになり、これもまた、終わりの日にあなたを責める証となるでしょう。」
11そこでノア王は、彼の言葉を恐れ、彼を釈放しようとした。神の裁きが自分に下ることを恐れたからである。
12ところが祭司たちは、彼に対して声を上げ、彼のことを訴えて、「この男は王をののしった」と言った。そのため王は、彼に対する怒りをかき立てられ、彼を殺すために引き渡した。
13そこで祭司たちはアビナダイを捕らえて縛り上げ、薪を燃やしてその肌を焼き苦しめ、火あぶりにして殺した。
14さて、炎が体を焼き始めると、彼は祭司たちに叫んで言った。
15「見よ、まことにあなたがたがわたしに行ったように、あなたがたの子孫も多くの人に、わたしが今受けている苦しみ、火あぶりの死の苦しみを与えるであろう。その人々が、主なる彼らの神の救いを信じているという理由でそうするのである。
16そしてあなたがたは、自分の罪悪のために、あらゆる病気で苦しむであろう。
17またあなたがたは、至る所で打たれ、野生の羊の群れが猛獣に追われるように、追われてあちらこちらに散らされるであろう。
18その日にあなたがたは狩り出され、敵の手に捕らえられ、その後、わたしが今受けているように、火あぶりの死の苦しみを受けるであろう。
19このようにして、神は御自分の民を滅ぼす者に報復をされる。おお、神よ、わたしの霊をお受けください。」
20アビナダイはこれらの言葉を述べ終えると、倒れて焼け死んだ。まことに、彼は神の命令を拒もうとしなかったために殺され、自分の言葉が真実であることを死によって確かなものとしたのである。