1 さて、それから二年後、アビナダイは人に分からないように姿を変えてやって来て、人々の中で預言し始めた。「主はわたしに次のように命じられた。『アビナダイよ、行ってわたしのこの民に預言しなさい。彼らは、わたしの言葉に対して心をかたくなにしており、まだ自分たちの悪い行いを悔い改めていない。それゆえ、わたしは怒って彼らを①罰する。まことに、彼らの罪悪と忌まわしい行いに対して、わたしは激しく怒って彼らを罰しよう。
2 まことに、この時代の人々は災いである。』主はまたわたしに言われた。『あなたの手を伸ばし、次のように預言しなさい。主はこのように言われる。この時代の者たちは罪悪のために①奴隷にされ、②頬を打たれ、人々に追われて殺される。また、空を飛ぶはげたかと、犬と、野獣がその肉を食う。
3 そして、ノア王の①命は、熱い②炉の中の衣ほどの値打ちもなくなる。彼はわたしが主であることを知るであろう。
4 そして、わたしはこの民をひどい苦難で、また飢饉と①疫病で打とう。彼らは終日②泣きわめくであろう。
5 また、わたしは、彼らが①重荷を背に負わされ、物を言えないろばのように追い立てられるようにしよう。
6 また、わたしは、彼らの中に雹を降らせ、彼らを打たせよう。彼らは①東風にも悩まされるであろう。また、②昆虫が彼らの地を襲い、穀物を食うであろう。
7 また、彼らはひどい疫病に悩まされるであろう。わたしは、彼らの①罪悪と忌まわしい行いのゆえに、すべてこのように行おう。
8 そして、彼らが悔い改めなければ、わたしは彼らを地の面からことごとく①滅ぼし去ってしまおう。しかし彼らは②記録を後に残すであろう。わたしはその記録を将来、この地を所有するほかの国民のために残そう。わたしがこのように行うのは、この民の忌まわしい行いをほかの国民に明らかにするためである。』」アビナダイはこのほか、この民に災いとなる多くの事柄を預言した。
9 そこで人々は彼のことを怒り、彼を捕らえて縛り上げ、王の前に連れて行った。そして、王に言った。「御覧ください。あなたの民について災いを預言し、神がこの民を滅ぼすと語った男を御前に連れてまいりました。
10 この男はまた、あなたの命についても災いを預言し、あなたの命は火の燃える炉の中の衣のようになると言っています。
11 この男はまた、あなたが草の茎、それも獣に踏まれて足で踏みにじられる、野の枯れた茎のようになると言っています。
12 この男はまた、あなたのことを、満開のときに風が吹けば地面に吹き散らされてしまうあざみの花のようになると言っています。そしてこの男は、主がそのように語ったと主張しています。またこの男は、あなたが悔い改めなければ、このことはすべてあなたに起こる、あなたの罪悪のためにこのことが起こると言っています。
13 王様、あなたがどのような大きな悪事をなさり、またあなたの民がどのような重大な罪を犯したので、わたしたちは神から罪に定められ、またこの男から裁かれなければならないのでしょうか。
14 王様、わたしたちには罪はありません。王様、あなたもこれまで罪を犯してはこられませんでした。ですから、この男があなたについて語ったことは偽りであり、ありもしないことを預言したのです。
15 まことに、わたしたちは強いので、これから先、奴隷になることも、敵に捕らえられることもありません。そして、あなたはこの地で栄えてこられましたし、今後も栄えられることでありましょう。
16 御覧ください。ここにいるのがその男です。わたしたちはこの男をあなたの手にお渡ししますので、お好きなようになさってください。」
17 そこでノア王は、アビナダイを牢に投げ込ませた。そして、①祭司たちに集まるように命じ、アビナダイをどのようにするかについて、彼らと協議するための会合を開いた。
18 そこで祭司たちは王に、「その男をここへ連れて来て、わたしたちが尋問できるようにしてください」と言った。そこで王は命令を下して、アビナダイを祭司たちの前に連れて来させた。
19 そこで祭司たちは彼に尋問し始め、彼に矛盾したことを言わせて、彼を訴える口実を得ようとした。しかし、アビナダイは大胆に答え、まことに祭司たちが驚くほど、彼らのすべての問いを論破した。アビナダイはすべての問いについて彼らを①論破し、彼らのすべての言葉について彼らを言い負かした。
20 そこで、祭司の中の一人がアビナダイに言った。「記録に記されていて、わたしたちの先祖から教わってきた次の言葉はどういう意味か。
21 ①『よきおとずれを伝え、平和を告げて広め、善のよきおとずれを伝え、救いを告げて広め、シオンに向かって「あなたの神が統治しておられる」と言う者の足は、山の上にあって何と麗しいことであろう。
22 あなたの見張り人は声を上げ、声を合わせて歌う。主がシオンを元に戻されるとき、彼らはそれを目の当たりに見るからである。
23 エルサレムの荒れた所よ、喜びの声を上げ、ともに歌え。主が御自分の民を慰め、エルサレムを贖われたからである。
24 主はその聖なる①腕を、すべての国民の目の前に現された。地の果てに至るすべての人は、わたしたちの神の救いを見るであろう』とある。」
25 そこでアビナダイは彼らに答えた。「あなたがたは①祭司であり、また自分たちはこの民を教えており、預言の霊に通じていると主張していながら、これらのことが何を意味するかをわたしから聞いて知りたいと言うのか。
26 わたしはあなたがたに言う。主の道を曲げているあなたがたは災いである。あなたがたはこれらのことを理解しているかもしれないが、それを民に教えてこなかったので、主の道を曲げてきたことになる。
27 あなたがたは心を注いで①理解しようとしてこなかった。したがって、あなたがたは賢明ではなかった。あなたがたはこの民に何を教えているのか。」
28 すると彼らは、「我々はモーセの律法を教えている」と言った。
29 そこでアビナダイはまた彼らに言った。「もしあなたがたが①モーセの律法を教えているのならば、なぜそれを守らないのか。なぜあなたがたは富に執着するのか。なぜ②みだらな行いをし、娼婦と過ごして精力を費やすのか。また、なぜこの民に罪を犯させるのか。それゆえ主はこの民に対して預言を、まことにこの民に対して大きな災いの預言を述べるために、わたしを遣わされたのである。
30 あなたがたは、わたしが真実を語っているのを知らないのか。いや、あなたがたは、わたしが真実を語っているのを知っている。だからあなたがたは、神の御前で震えおののかなければならない。
31 そしてあなたがたは将来、自分の罪悪のために打たれるであろう。あなたがたはモーセの律法を教えていると言っているからである。モーセの律法についてあなたがたが知っているのは何か。①モーセの律法によって救いが与えられるのか。あなたがたは何と答えるか。」
32 すると彼らは、モーセの律法によって救いが与えられると答えた。
33 そこでアビナダイは彼らに言った。「あなたがたが神の戒めを守れば救われることを、わたしは知っている。まことに、主が①シナイの山でモーセに告げられた戒めを守るならば、あなたがたは救われる。その戒めは次のとおりである。
34 ①『わたしは主なるあなたの神であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から②連れ出した者である。
35 あなたは①わたしのほかに、何ものをも神としてはならない。
36 あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるものの、どのような形をも造ってはならない。』」
37 そしてアビナダイは彼らに言った。「あなたがたはこれをすべて守ってきたか。いや、守ってこなかったとわたしはあなたがたに言う。あなたがたはこの民に、これらのことをすべて守るように①教えてきたか。いや、教えてこなかったと、わたしはあなたがたに言う。」