1 さて、モーサヤ王は三年間引き続き平和を保った後、かつてリーハイ・ニーファイの地、すなわちリーハイ・ニーファイの町に住もうとして①出て行った人々のことを知りたいと思った。それは、その人々が②ゼラヘムラの地を去って以来、何の音さたもなかったので、民がうるさく訴えて王を煩わしたからである。
2 そこでモーサヤ王は、十六人の屈強な男たちがリーハイ・ニーファイの地へ出かけて行って、同胞のことを調べるのを許した。
3 そしてその翌日、彼らはアンモンという男とともに出発した。このアンモンは屈強な力の強い男で、ゼラヘムラの子孫であって、一行の統率者でもあった。
4 さて、彼らは、リーハイ・ニーファイの地へ行くのに、荒れ野をどの方向へ旅をしてよいか分からなかったので、荒れ野の中をさまよった。実に、四十日間もさまよった。
5 そして、四十日間さまよった後に、彼らは①シャイロムの地の北方にある丘にたどり着き、そこに天幕を張った。
6 そしてアンモンは、一行の中からアマレカイ、ヘレム、ヘムという名の三人の同僚を連れて、①ニーファイの地へ向かった。
7 すると見よ、彼らは、ニーファイの地とシャイロムの地に住む人々の王に出会った。そして、王の衛兵に取り囲まれて捕らえられ、縛られて牢に入れられてしまった。
8 そして彼らは、牢に二日置かれてから再び王の前に連れて行かれ、縄を解かれた。そして彼らが王の前に立つと、王の問いに答えるのを許された。いや、答えるように命じられた。
9 王は彼らに言った。「見よ、わたしは①リムハイといって、ノアの息子である。ノアはゼニフの息子であり、このゼニフは先祖の土地であったこの地を継ごうとしてゼラヘムラの地から出て来て、民の声によって王となった者である。
10 ところで、わたしが衛兵と町の門の外にいたとき、おまえたちはなぜあえて城壁に近づいて来たのか。
11 わたしはそのことを尋ねるために、おまえたちを生かしておいた。そうでなければ、衛兵に殺させていたであろう。それでは、おまえたちが話すのを許す。」
12 さて、アンモンは話すのを許されたことを知ると、王の前に進み出て身をかがめ、また再び身を起こすと、次のように言った。「王様、わたしは今日、自分がまだ生きていて、話すのを許されたことを、神の御前に深く感謝しています。わたしは思い切って話したいと思います。
13 王様は、もしわたしのことを知っておられたら、きっとわたしを縛ることはなさらなかったでしょう。わたしはアンモンといって、①ゼラヘムラの子孫で、ゼニフがゼラヘムラの地から連れて出た同胞のことを調べるために、その地からやって来た者だからです。」
14 そこでリムハイは、アンモンの言葉を聞いて非常に喜んで言った。「ゼラヘムラの地にいた同胞が、今もなお生きていることが確かに分かった。うれしいことだ。明日、わたしの民にも喜んでもらおう。
15 見よ、我らは今、レーマン人の奴隷となって堪え難い①税をかけられている。しかしながら、見よ、同胞は我らを奴隷の状態から、すなわちレーマン人の手から救い出してくれるであろう。そうしたら、我らは同胞の奴隷になろう。レーマン人の王に貢ぎ物を納めるよりも、ニーファイ人の奴隷になる方がよい。」
16 そこでリムハイ王は衛兵たちに、もうアンモンも彼の同僚たちも縛ってはならないと命じた。そして、アンモンたちをシャイロムの北方にある丘に行かせ、同僚たちを町に連れて来させて、彼らが飲食し、旅の疲れをいやせるようにした。彼らは多くの苦しい目に遭い、飢えと渇きと疲労に苦しんできたからである。
17 そして翌日、リムハイ王はすべての民の中に布告を出し、すべての者が連れ立って①神殿に集まり、王の語る言葉を聞くようにさせた。
18 そして民が連れ立って集まると、リムハイ王は彼らにこのように言った。「おお、わたしの民よ、頭を上げて慰めを得なさい。見よ、我らがもはや敵に隷従しなくて済む時が近づいている。それは遠い先のことではない。これまでの多くの戦いは実を結ばなかったが、実りある戦いがまだ残されていることを、わたしは確信している。
19 だから、頭を上げて喜び、①神に頼りなさい。アブラハム、イサク、ヤコブの神に頼りなさい。この神はイスラエルの子らをエジプトの地から②導き出し、乾いた地を歩いて紅海を渡らせ、また彼らが荒れ野で滅びることのないように、③マナで彼らを養われた。そのほか、もっと多くのことをイスラエルの子らのためになさった。
20 さらに、この同じ神は、我らの先祖をエルサレムの地から①導き出し、現在に至るまで御自分の民を守ってこられた。見よ、その神が我らを奴隷の状態に落とされたのは、我らの罪悪と忌まわしい行いのためである。
21 今日、あなたがたは皆、わたしが次に述べることの証人である。かつてこの民を治める王とされたゼニフは、先祖の地を受け継ぎたいという①望みが強すぎたので、レーマン王の悪知恵と悪巧みにだまされてしまった。レーマン王はゼニフ王と条約を結び、国の領土の一部であるリーハイ・ニーファイの町とシャイロムの町、およびその周辺の土地をゼニフ王の手に渡した。
22 レーマン王がこうしたのは、この民を従える、すなわち奴隷の状態に①置くというただ一つの目的があったからである。そして見よ、今我らは貢ぎ物として、とうもろこしの半分と大麦の半分とあらゆる穀物の半分、および大小の家畜の群れの増加分の半分をレーマン人の王に納めている。レーマン人の王は、実に我らの持つ、すなわち所有するすべてのものの半分を、我らから厳しく取り立てる。これを出さなければ、我らの命を求める。
23 これは堪え難いことではないか。我らの受けているこの苦難は、甚だしいではないか。見よ、嘆き悲しんで当然ではないか。
24 まことに、あなたがたに告げる。嘆き悲しんで当然な理由がたくさんある。何と多くの同胞が殺され、血が無駄に流されたことか。これはすべて罪悪の結果である。
25 もしこの民が戒めに背かなかったならば、主はこのように大きな災いが民のうえに及ぶのを許されなかったであろう。ところが見よ、民は主の御言葉に聞き従おうとしなかった。そして、民の中に争いが起こり、それが高じて彼らは血を流し合った。
26 また彼らは主の①預言者、すなわち神の選ばれた人も殺した。まことに、その人は民に彼らの悪事と忌まわしい行いについて告げ、将来起こる多くのこと、まことにキリストの来臨さえ預言した。
27 その人は民に、キリストは万物の父なる①神であられると述べ、またキリストは後に人の形を取られること、そしてその②形は人が初めにそれに倣って造られた形であることを告げた。言い換えれば、人が③神の形に造られたこと、また神が人の子らの中に降って来て血肉を受け、地の面に出て行かれることを、その人は民に告げたのである。
28 さて、その人がそう言ったので、民は彼を殺してしまった。また彼らは、ほかにももっと多くのことを行い、神の怒りを自分たちに招いたのである。だから、この民が現在奴隷の状態にあること、またひどい苦難に打たれていることを不思議に思う者がだれかいるであろうか。
29 見よ、主は言われた。『わたしは、自分の民が戒めに背く日にはこれを①助けず、彼らが栄えないようにその道をふさごう。彼らの行いは、彼らの前に置かれたつまずきの石のようになる。』
30 さらに主は、『わたしの民は、もし①汚れをまくなら旋風の中でその殻を②取り入れることになる。そしてその結果は毒である』と言われる。
31 また、『わたしの民は、もし汚れをまくなら、速やかな滅亡をもたらす①東風を招くことになる』と言われる。
32 さて見よ、主の約束は果たされ、あなたがたは打たれて苦しんでいる。
33 しかし、もしあなたがたが十分に固い決意をもって主に①立ち返り、主に頼り、力の限り主に仕えるならば、もしあなたがたがこのようにするならば、主は御自分の意のまま、思いのままに、奴隷の状態から救い出してくださるであろう。」