1 さて、ゼニフが王位を息子の一人ノアに譲ったので、ノアが父に代わって統治を始めた。しかし、彼は父の道を歩まなかった。
2 見よ、ノア王は神の戒めを守らず、自分の心の望むままに歩んだ。彼は多くの妻と①そばめを持ち、また民にも罪を②犯させ、主の目から見て忌まわしいことを行わせた。そして彼の民は、③みだらなこととあらゆる悪事とを行った。
3 また彼は、民が所有するすべてのものに五分の一の税をかけた。すなわち、民の金と銀の五分の一を、そして①ジフと銅と真鍮と鉄の五分の一を、また民の肥えた若い家畜の五分の一を、それに穀物の五分の一を徴税した。
4 そして彼は、この税をすべて、自分自身と妻たちとそばめたち、また祭司たちとその妻たちとそばめたちの生活を支えるために取り立てた。このようにして彼は、王国の政務を変えてしまった。
5 彼はかつて父が任命した祭司たちをすべて辞めさせ、代わりに高慢な、心の高ぶっている新しい祭司たちを任命した。
6 このようにして、祭司たちは怠惰に暮らして、偶像を拝し、みだらな行いをしながら、ノア王が民に課した税で養われた。このように、民は罪悪を支えるために、非常な骨折りをしたのであった。
7 そして民はまた、王や祭司たちのむなしいへつらいの言葉にだまされ、彼らも偶像を礼拝するようになった。王や祭司たちが民にへつらい事を語ったからである。
8 そしてノア王は、風雅で広々とした建物をたくさん建て、それらの建物を見事な木細工と、金や銀、また鉄や真鍮やジフや銅などのあらゆる貴重な品から造った見事な細工で飾った。
9 彼はまた、自分のために大きな宮殿を建ててその中に王座を設けたが、それらはすべて上等な材木で作り、金や銀や貴重な品で飾った。
10 彼はまた職人たちに、上等な材木と銅と真鍮で、神殿内にあらゆる見事な細工をさせた。
11 そして彼は、ほかのすべての座よりも高い、大祭司たちのために設けられた座を純金で飾った。そして、大祭司たちがむなしい偽りの言葉を民に述べるときに、体と腕をもたせかけることができるように、台を作らせた。
12 そして彼は、神殿の近くに一つの①塔、つまり非常に高い塔を建てた。それはきわめて高く、その上に立てば、シャイロムの地と、レーマン人の所有しているシェムロンの地と、付近一帯の地を見渡すことができた。
13 そして彼は、シャイロムの地にも多くの建物を建てさせ、シャイロムの地の北方の丘の上にも一つの大きな塔を建てさせた。そこはかつてニーファイの子らが、この地から逃げ出したときに集合場所とした所であった。ノア王は民に課税して得た富でこのように行った。
14 さて、王は富に心を寄せ、妻たちやそばめたちとの放埒な生活に時を過ごした。また、王の祭司たちも娼婦たちと時を費やした。
15 そして彼は、国内の至る所にぶどう園を設け、ぶどうの搾り場を設けてぶどう酒をたくさん造った。そのために、彼も民も①大酒飲みになってしまった。
16 そこで、少数でいるノア王の民を、畑にいるときや家畜の群れの世話をしているときに、レーマン人が襲いかかって殺すようになった。
17 そこでノア王は、レーマン人の来襲を防ぐために見張りの兵を国の周囲に送った。しかし、彼が十分な数の兵を送らなかったので、レーマン人は民を襲って殺し、この国から家畜の群れをたくさん連れ去った。このようにして、レーマン人は彼の民を滅ぼし始め、また彼らに憎しみをあらわにするようになった。
18 そこでノア王は軍隊を送り、彼らを撃退した。すなわち、ノア王の軍は一時レーマン人を撃退した。そこで彼らは分捕り品を得たことを喜びながら帰って来た。
19 さて、この大勝利のために、ノア王の民は高慢な心を募らせ、①おごり高ぶりながら、自分たちの五十人は数千人のレーマン人に立ち向かうことができると言って、血を見ることと同胞の血を流すことを喜んだ。これは、王や祭司たちの悪事がもたらしたものである。
20 さて、ノア王の民の中に、①アビナダイという名の一人の男がいた。彼は人々の中に出て行って、預言して言った。「見よ、主は次のように言われ、次のようにわたしに命じられた。『出て行って、この民に主が次のように言われると告げなさい。この民は災いである。わたしはこの民の忌まわしい行いと、悪事と、みだらな行いを見たからである。悔い改めなければ、わたしは怒って彼らを罰しよう。
21 彼らが悔い改めて主なる神に立ち返らなければ、見よ、わたしは彼らを敵の手に渡そう。彼らは①奴隷になり、敵の手によって苦しめられるであろう。
22 そして彼らは、わたしが主なる神であり、わたしの民の罪悪を罰する①ねたむ神であることを知るようになる。
23 そしてこの民は、悔い改めて主なる神に立ち返らなければ、奴隷になるであろう。そのときには、主なる全能の神のほかに、だれも彼らを救うことができない。
24 そして、彼らがわたしに叫び求めても、わたしはその叫びを聞き届けることを①遅くし、彼らが敵に打たれるままにしよう。
25 彼らが粗布をまとい、灰をかぶって悔い改め、主なる神に熱烈に叫び求めなければ、わたしは彼らの祈りを①聞き届けず、彼らを苦難から救い出すこともしない。』主はこのように言われ、このようにわたしに命じられた。」
26 さて、アビナダイが人々にこれらの言葉を語り終えると、人々は彼に腹を立てて、彼の命を奪おうとした。しかし主は、アビナダイを彼らの手から救い出された。
27 ノア王はアビナダイが人々に語った言葉を伝え聞くと、彼もまた腹を立てて言った。「わたしとわたしの民を裁くアビナダイとは何者か。そのようにひどい苦難をわたしの民にもたらす主とは①何者か。
28 わたしが殺すことのできるように、アビナダイをここに連れて来るよう、おまえたちに命じる。その男はわたしの民を扇動して互いに怒らせ、民の中に争いを生じさせようとして、これらのことを述べた。だからわたしはその男を殺そう。」
29 さて、人々は①目をくらまされていたので、アビナダイの言葉に対して②心をかたくなにした。それで彼らは、そのときからアビナダイを捕らえようとした。またノア王は、主の言葉に対して心をかたくなにし、自分の悪い行いを悔い改めなかった。