1さて見よ、イエスはこれらの御言葉を語り終えると、再び群衆を見回して言われた。「見よ、わたしの時は近づいた。
2あなたがたは弱く、あなたがたに今告げるようにと父から命じられているわたしの言葉を、すべては理解できないことを、わたしは知っている。
3だから、自分の家に帰り、わたしが述べたことを深く考えなさい。そして、理解できるように、また明日のために心が備えられるように、わたしの名によって父に願いなさい。わたしはもう一度あなたがたのところに来るであろう。
4しかし、わたしは今は父のみもとに帰り、またイスラエルの行方の知れない部族にもわたし自身を現そう。彼らは父にとっては行方知れずではない。父は彼らを導いた先を御存じだからである。」
5さて、イエスはこのように言うと、もう一度群衆を見回して、彼らが涙を流しながら、もうしばらくとどまっていてほしいと願うかのように、イエスをじっと見詰めているのを御覧になった。
6そこで、イエスは彼らに言われた。「見よ、わたしの心は、あなたがたに対する哀れみに満たされている。
7あなたがたの中に病気の者がいるか。彼らをここに連れて来なさい。足の不自由な者、目の見えない者、足の悪い者、手の不自由な者、重い皮膚病にかかっている者、体のまひしている者、耳の聞こえない者、あるいはどんなことでも苦しんでいる者がいるか。彼らをここに連れて来なさい。癒してあげよう。わたしはあなたがたのことを哀れに思い、わたしの心は憐れみに満たされている。
8あなたがたは、わたしがエルサレムにいるあなたがたの同胞に示したことを、自分たちにも示してほしいと思っている。わたしはそのことを知っている。また、あなたがたの信仰がわたしから癒しを受けるのに十分であることも、わたしは知っている。」
9さて、イエスがこのように言われると、群衆はこぞって、病気の者、苦しんでいる者、足の不自由な者、目の見えない者、口の利けない者、そのほかどんなことでも苦しんでいる者たちを伴って前に進み出た。するとイエスは、御自分のところに連れて来られた者をことごとく癒された。
10そこで、彼らは皆、癒された者も健康な者も、イエスの足もとにひれ伏して、イエスを拝した。また、群衆の中を近づくことのできた者はイエスの足に口づけし、涙でイエスの足をぬらした。
11さて、イエスは、幼い子供たちを連れて来るように命じられた。
12そこで、彼らは幼い子供たちを連れて来て、イエスの傍らに降ろした。イエスはその真ん中に立っておられた。また、群衆は道を譲って、幼い子供たちが皆、イエスのもとに来られるようにした。
13さて、幼い子供たちが皆連れて来られると、イエスはその真ん中に立ち、地にひざまずくように群衆に命じられた。
14そして、彼らが地にひざまずくと、イエスは心の中で苦悩され、「父よ、イスラエルの家に属する民の悪事のために、今わたしは心が騒いでいます」と言われた。
15そして、イエスはこのように言われると、御自分も地にひざまずき、見よ、御父に祈られた。イエスが祈られた事柄を書き記すことはできないが、イエスの祈りを聞いた群衆はそのことを証した。
16彼らは次のように証した。「わたしたちはイエスが御父に話されるのを見聞きしたが、それは目がまだ見たこともなく、耳がまだ聞いたこともないほど、大いなる驚くべきことであった。
17わたしたちはイエスが話されるのを見聞きしたが、それはどんな舌も語ることができず、どんな人も書き記すことができず、人々の心が想像できないほど、大いなる驚くべきことであった。またわたしたちは、イエスがわたしたちのために御父に祈ってくださるのを聞いたが、そのときにわたしたちの心に満ちた喜びは、だれも想像することができない。」
18さて、イエスは御父に祈り終えると、立ち上がられた。しかし、群衆は喜びが非常に大きかったので力を失っていた。
19そこで、イエスは彼らに語り、立ち上がるように命じられた。
20そこで、彼らは地から立ち上がった。すると、イエスは彼らに、「あなたがたは信仰があるので、幸いである。見よ、わたしの喜びは満ちている」と言われた。
21そして、イエスはこれらの御言葉を語ると、涙を流された。群衆はそのことを証した。また、イエスは幼い子供たちを一人一人抱いて祝福し、彼らのために御父に祈られた。
22そして、イエスはこれを終えると、また涙を流された。
23また、イエスは群衆に語って、「あなたがたの幼い子供たちを見なさい」と言われた。
24そこで彼らは、見ようとして天に目を向けたとき、天が開くのを見た。そして、天使がまるで火の中にいるかのような有様で天から降って来るのを見た。天使は降って来ると、幼い子供たちを取り囲み、幼い子供たちも火に包まれた。そして、天使は幼い子供たちに恵みを施した。
25群衆はそれを見聞きして、証した。彼らは皆、自分自身で見聞きしたので、その証が真実であることを知っている。群衆の人数はおよそ二千五百人であり、男と女と子供から成っていた。