1 さて、第十八年の末に、強盗たちの軍勢は戦いの準備をし、方々の丘や山、荒れ野、とりで、隠れ場から下って出撃して来た。そして彼らは、南の地と北の地の両方で方々の土地を占領し始め、ニーファイ人が①捨てた土地と、荒れ果てるに任せた町をすべて占領し始めた。
2 しかし見よ、ニーファイ人が捨てた土地には、まったく野生の獣がおらず、獲物となる動物もいなかった。荒れ野の中でなければ強盗たちの食糧になる鳥獣はいなかった。
3 そして強盗たちは、食糧がないために、荒れ野でなければ暮らせなかった。それは、ニーファイ人が土地を荒れ果てるに任せて、自分たちの大小の家畜の群れとすべての持ち物を集め、一団となっていたからである。
4 そのため強盗たちには、ニーファイ人に向かって公然と攻め上るほかに略奪して食べ物を得る機会はなかった。一方、ニーファイ人は一団となっていて、その数は非常に多く、食糧や馬や家畜やあらゆる家畜の群れを蓄えとして持っており、七年間暮らすことができたので、彼らはその間に地の面から強盗たちを滅ぼしてしまいたいと思っていた。このようにして、第十八年が過ぎ去った。
5 そして第十九年に、ギデアンハイはニーファイ人に向かって攻め上ることが必要であることを知った。彼らは略奪し、強奪し、人殺しをする以外に生きていく方法がなかったからである。
6 また彼らは、ニーファイ人に襲われて殺されるのではないかと恐れ、思い切って地の面に広がって穀物を作ることもできなかった。そこでギデアンハイはこの年に、ニーファイ人に向かって攻め上る命令を自分の軍隊に下した。
7 そして、彼らは攻め上った。それは六月のことであり、彼らが攻め上った日は、見よ、大変な恐ろしい日であった。彼らは強盗風の装いをしており、腰に子羊の皮を巻き、体を血で染め、頭髪を刈り込み、かぶとをかぶっていた。ギデアンハイの軍隊はよろいをまとい、体を血で染めていたので、ひどい、恐ろしい姿であった。
8 さて、ニーファイ人の軍隊はギデアンハイの軍隊の姿を見ると、全員地に伏して、主なる神に、命を助けて敵の手から救ってくださるように叫んだ。
9 そこで、ギデアンハイの軍隊はこれを見て、ニーファイ人が自分たちの恐ろしい姿に恐れをなして倒れたのだと思い、喜んで、大声を上げて叫び始めた。
10 しかし、彼らのこの期待は外れた。ニーファイ人は彼らを恐れたのではなかったからである。ニーファイ人は神を①畏れ、守護を叫び求めたのである。そこで、ギデアンハイの軍隊が突撃して来たときには、ニーファイ人は彼らと戦いを交える用意ができており、主の力をもって彼らを迎えた。
11 戦いはこの六月に始まり、その戦いは大変な恐ろしいものであった。まことに、その戦いでの殺戮は大変な恐ろしいものであって、リーハイがエルサレムを去って以来、これほどひどい殺戮はリーハイの民の中にまったく知られていない。
12 そして、ギデアンハイの①脅迫や誓いにもかかわらず、見よ、ニーファイ人が彼らを打ち負かしたため、彼らはニーファイ人の前から退いた。
13 さて、①ギドギドーナイは自分の軍隊に、荒れ野の境まで彼らを追撃するように、そして途中でニーファイ人の手に落ちる者はだれも容赦しないようにと命じた。そこで彼の軍隊は、荒れ野の境まで彼らを追撃して殺し、ギドギドーナイの命令を果たした。
14 そして、立ち向かって勇ましく戦っていたギデアンハイも、ついに逃げ出して追撃された。そして、激しく戦って疲れていたので、追いつかれて殺されてしまった。強盗ギデアンハイの最期はこのようであった。
15 さて、ニーファイ人の軍隊は自分たちの防御の地へ引き返した。そして、この第十九年が過ぎ去り、強盗たちはもう攻めて来なかった。また、第二十年にも彼らはやって来なかった。
16 第二十一年に、彼らは攻めることはなかったものの、ニーファイの民を包囲するためにあらゆる方面から上って来た。彼らは、もしニーファイの民を彼らの土地から遮断して、あらゆる方面で彼らを閉じ込めれば、また、外で活動する特権をすべて差し止めれば、自分たちの望みどおりに彼らを降伏させることができると思ったからである。
17 ところで彼らは、ゼムナライハという名の別の首領を選んでいた。したがって、この包囲を行わせたのはゼムナライハであった。
18 しかし見よ、これはニーファイ人にとって有利であった。強盗たちがニーファイ人に何らかの影響を及ぼすほど、十分に長く包囲を続けることは不可能であったからである。というのは、ニーファイ人は多くの食糧を蓄えており、
19 強盗たちの食糧は乏しかったからである。見よ、彼らには命をつなぐための肉、すなわち荒れ野で手に入れた肉のほかには何もなかった。
20 そして、①野生の鳥獣は荒れ野に少なくなったので、強盗たちはまさに飢えて死にそうになった。
21 しかも、ニーファイ人は昼も夜も絶えず出撃して敵を攻め、何千人も、何万人も殺した。
22 それで、ゼムナライハの民は昼も夜も大勢の人が殺されたため、自分たちの企てを取りやめたいと思うようになった。
23 そして、ゼムナライハは自分の民に、包囲を解いて、北方の地の最も遠い地方へ行くように命令を下した。
24 ところがギドギドーナイは、彼らの企てを知り、また食糧の不足とそれまでに受けた大きな殺戮のために彼らが弱っているのを知っていたので、夜の間に軍隊を送って彼らの退路を断ち、また彼らの退路に軍隊を配置した。
25 彼の軍隊は夜の間にこれを行い、強盗たちを追い越して進軍した。そして翌日、強盗たちが行軍を始めると、ニーファイ人の軍隊は前方と後方の両面から彼らを攻撃した。
26 また、南方にいた強盗たちも彼らの待避所で絶たれた。これらのことはすべて、ギドギドーナイの命令によって行われたことである。
27 そして、ニーファイ人に降伏して捕虜になった者は何千人にも上り、ほかの者たちは殺された。
28 また、彼らの首領であったゼムナライハは捕らえられ、木に、すなわち木の頂につるされて死んだ。ニーファイ人は彼をつるし、彼が死んでしまうと、その木を地に倒して大声で叫んで言った。
29 「どうか主よ、義にかなった、心の清い民をお守りくださり、この男が地に倒されたように、権力と秘密結社のために主の民を殺そうとするすべての者を地に倒れさせてくださいますように。」
30 また、彼らは喜び、再び声を合わせて、「どうか①アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神よ、義にかなったこの民を、この民が守護を求めて神の御名を②呼ぶかぎりお守りくださいますように」と叫んだ。
31 そして彼らは、神が大いなることを自分たちのために行い、敵の手に落ちないように守ってくださったので、皆一斉に声を放って歌い、神を①ほめたたえた。
32 まことに彼らは、「いと高き神に、①ホサナ」と叫び、また、「いと高き神、②全能の主なる神の御名はほむべきかな」と叫んだ。
33 そして、敵の手から救ってくださった神の深い慈しみのために、彼らの心は喜びにあふれ、多くの涙を流した。また彼らは、自分たちが永遠の滅亡から救われたのは、悔い改めて謙遜であったためであることを知ったのである。