1 さて,わたしは,父の見たことを知りたいと思い,また主がそれを明らかにしてくださると信じて,思いにふけりながら腰を下ろしていたとき,主の御霊に捕らえられて,まことに,非常に高い山へ連れて行かれた。それは,まだ一度も見たことがなく,一度も足を踏み入れたことのない山であった。
2 そして御霊がわたしに,「見よ,あなたは何を望んでいるのか」と言われた。
3 それでわたしは,「父の見たことをわたしも見たいと望んでいます」と言った。
4 すると御霊はわたしに,「あなたは,父の語った木を父が実際に見たと信じるか」と言われた。
5 それでわたしは,「はい,わたしが父の言葉をすべて信じていることは,あなたも御存じです」と答えた。
6 わたしがこれらの言葉を語ると,御霊は声高らかに叫んで言われた。「いと高き神にまします主に,ホサナ。主は全地を支配される神,まことにすべてのものの上にまします神であられる。ニーファイよ,あなたはいと高き神の御子を信じているので幸いである。それゆえ,あなたは望んでいたものを見るであろう。
7 そして見よ,このことが一つのしるしとしてあなたに授けられる。すなわち,あなたは父が味わった実を結ぶ木を見てから,一人の男の人が天から降って来るのを見る。その人をあなたは見る。そしてその人を見た後,あなたはその人が神の御子であることを証する。」
8 そして,御霊はわたしに「見なさい」と言われた。そこでわたしが見ると,一本の木が見えた。その木はちょうど父が見た木のようであって,その木の美しさはほかに比べようがなく,まことにあらゆる美しいものをしのいでいた。またその白さは,風に舞う雪の白さにも勝っていた。
9 そこでわたしは,その木を見てから御霊に言った。「わたしは,あなたがあらゆるものに勝って貴い木を見せてくださったことが分かります。」
10 すると御霊はわたしに,「何を望むか」と言われた。
11 それでわたしは御霊に,「その木の解き明かしを知ることです」と言った。わたしは人が人に語るように御霊に語った。御霊が人の形をしておられるのを見たからである。にもかかわらず,わたしはその御方が主の御霊であられることを知っていた。そして御霊もわたしに,人が人に語るように語られた。
12 さて,御霊がわたしに「見なさい」と言われた。それで御霊を仰ぎ見るように眺めると,その御姿は見えなかった。すでにわたしの前を去っておられたからである。
13 そこでわたしが眺めると,大きな都のエルサレムをはじめ,そのほかのもろもろの町が見えた。またナザレの町も見えた。そしてわたしはナザレの町に一人のおとめを見たが,それはまことに色が白く美しいおとめであった。
14 そしてわたしは,天が開くのを見た。そして,一人の天使が降って来てわたしの前に立ち,「ニーファイよ,何が見えるか」と言った。
15 それでわたしは言った。「ほかのどんなおとめにも勝って美しく,また麗しいおとめが見えます。」
16 すると天使はわたしに,「神が御自身を低くされることがあなたに分かるか」と言った。
17 それでわたしは,「わたしは,神がその子供たちを愛しておられることは知っていますが,すべてのことの意味を知っているわけではありません」と言った。
18 すると天使は言った。「見よ,あなたが見ているおとめは,肉に関して神の御子の母である。」
19 そしてわたしは,そのおとめが御霊に連れて行かれるのを見た。そのおとめが御霊に連れて行かれてからしばらくして,天使がわたしに「見なさい」と言った。
20 それで眺めると,腕に幼子を抱いたおとめが見えた。
21 すると天使がわたしに言った。「神の小羊,まことに永遠の父なる神の御子を見なさい。あなたは父が見た木の意味を知っているか。」
22 それでわたしは答えて言った。「はい,その木は人の子らの心にあまねく注がれる神の愛です。だから,どんなものよりも好ましいものです。」
23 すると天使はわたしに,「そのとおり。それは人にとって最も喜ばしいものである」と言った。
24 天使はこれらのことを言ってから,またわたしに「見なさい」と言った。眺めると,神の御子が人の子らの中に進んで行かれるのが見えた。また多くの人がその足もとに伏して,御子を拝むのが見えた。
25 そしてわたしは,父の見た鉄の棒が生ける水の源すなわち命の木に導く神の言葉であることを知った。その水は神の愛の表れである。そして,命の木が神の愛の表れであることも知った。
26 そして,天使がまたわたしに,「神が御自身を低くされる様子を眺めてみなさい」と言った。
27 それで眺めると,父の語った世の贖い主が見え,また贖い主の前に道を備える預言者も見えた。また神の小羊が進み出て,その預言者からバプテスマを受けられた。バプテスマを受けられると,天が開いて聖霊が鳩の形を取って降って来て,神の小羊のうえにとどまられるのが見えた。
28 またわたしには,小羊が出て行き,力と大いなる栄光をもって人々にお仕えになるのが見えた。また,幾つもの大勢の人々の群れが,その小羊の言葉を聞くために集まるのが見えた。そして,彼らが自分たちの中から小羊を追い出すのが見えた。
29 そして,ほかに十二人の人が小羊に従うのも見えた。すると,この十二人の人は,わたしの前から御霊によって連れ去られ,姿が見えなくなった。
30 そこで,天使がまた「見なさい」と言うので眺めると,天がまた開いて,天使たちが人の子らのもとに降って来て,彼らに仕えるのが見えた。
31 天使がまたわたしに,「見なさい」と言うので眺めると,神の小羊が人の子らの中に出て行かれるのが見えた。また病気の人々や,様々な患いに苦しんでいる人々,悪霊や汚れた霊につかれて苦しんでいる人々の群れが見えた。天使はこれらのことをすべてわたしに語り,また見せてくれたが,これらの人々は神の小羊の力によって癒され,また悪霊や汚れた霊は追い出された。
32 さて,天使がもう一度「見なさい」と言うので眺めると,神の小羊が人々に捕らえられるのが見えた。まことに,永遠の神の御子は世に裁かれた。わたしはこれを見たので,その証をする。
33 わたしニーファイは,神の小羊が世の罪のために十字架につけられて殺されたのを見た。
34 また神の小羊が殺されてから,世の幾つもの大勢の人々の群れが集まって,主の天使が小羊の使徒と呼ぶあの十二人の人々と戦いをしようとするのが見えた。
35 このように,世の大勢の人々が集まっていたが,彼らが,父の見た建物のような大きく広々とした建物の中にいるのが見えた。このとき,主の天使がまたわたしに言った。「世の人々と彼らの知恵を見なさい。まことに,イスラエルの家が小羊の十二使徒と戦うために集まっているのを見なさい。」
36 そこでわたしは,あの大きく広々とした建物が世の人々の高慢であることを見て,その証をする。その建物は崩れて,その崩れ方は非常に甚だしかった。主の天使が再び,わたしに向かって言った。「小羊の十二使徒と戦うすべての国民,部族,国語の民,民族の滅亡は,まさにこのようになるであろう。」