1さて、わたしは主に命じられたので、民の記録を刻むためにあらがねで版を造った。そして、その版に父の記録と荒れ野での旅のこと、父の預言、またわたし自身が語った多くの預言を刻んだ。
2わたしがその版を造ったときには、後に主から、別にこの版を造るように命じられるとは知らなかった。したがって、父の記録や先祖の系図、それに荒れ野での行動の大部分は、わたしが先に述べた最初の版に刻んである。それで、わたしがこの版を造る前に起こったことは、まことにいっそう詳しく最初の版に述べられている。
3主の命令によってこの版を造った後で、わたしニーファイは、務めと預言、すなわちそれらの中で分かりやすくて貴重な部分を、この版に書き記すように命じられた。また、これからこの地を所有するわたしの民を教えるために、それにまた主が御存じである賢明な目的のために、この版に書き記されたことを保存するようにとの命を受けた。
4それでわたしニーファイは、民の戦争と争いと滅亡のいきさつをいっそう詳しく述べる話を、ほかの版に記録した。わたしはこれを行ってから、わたしの死んだ後になすべきことを民に命じ、また主が後に命じられるまでは、これらの版を代々譲り伝え、また預言者から預言者へ譲り伝えるように命じた。
5わたしはまた、後にこの版を造ったいきさつを述べるので、見よ、今はわたしがこれまで話したことに従って書き進める。わたしがこうするのは、より神聖な事柄が保存されて、それが民にとって知識となるようにしたいと思うからである。
6それでもわたしは、神聖であると思うことでなければ、何事も版に書き記さない。そのようにすることで、もしもわたしが誤りを犯すなら、昔の人でも誤りを犯したのであるが、他人の例を引いて申し開きをするのではなく、ただ、肉においてのわたしの弱さのためであると申し開きをしよう。
7ある人々が肉体にも霊にも大いに価値があると思うことを、ほかの人々が何とも思わないで足の下に踏みつけることがある。まことに、イスラエルのまことの神ですら人々は足の下に踏みつける。足の下に踏みつけると言ったが、言い換えれば、彼らは神を取るに足りない者とし、その勧めの声に聞き従わないということである。
8そして見よ、天使の言葉によれば、イスラエルの神は、父がエルサレムを去ってから六百年後においでになる。
9しかし、世の人々は自分たちの罪悪のために、この御方を取るに足りない者と判断する。それで彼らはこの御方を鞭打つが、この御方はそれに耐えられる。また彼らはその御方を打つが、この御方はそれにも耐えられる。まことに、彼らはこの御方につばきを吐きかけるが、この御方はそれにも耐えられる。それは、この御方が人の子らに対して愛にあふれた優しさと寛容に富んでおられるからである。
10わたしたちの先祖の神、すなわち、わたしたちの先祖を奴隷の状態から救って、エジプトから導き出し、荒れ野の中で彼らを守られた神、まことに、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神は、あの天使の言葉のように一人の人として悪人たちの手に身をゆだねて、ゼノクの言葉のように上げられ、ニアムの言葉のように十字架につけられ、ゼノスの言葉のように墓に葬られるのである。ゼノスは三日間の暗闇について語ったが、それはこの御方が亡くなられるときのしるしであって、海の島々に住む者たち、特にイスラエルの家に属する者に与えられるしるしである。
11預言者ゼノスは言った。「その日、主なる神は必ずイスラエルの家に属するすべての者に臨み、ある者には、彼らの義のゆえに御声をもって臨んで大きな喜びと救いを与え、またほかの者には、御力の起こす雷鳴と稲妻をもって、暴風雨、火、煙、暗黒の霧、地割れ、盛り上がる山々をもって臨まれる。」
12預言者ゼノスはさらに言う。「これらのことは、すべて必ず起こる。そして地の岩は必ず裂ける。また大地がうなりを起こすので、海の島々にある多くの王は神の御霊に動かされて、『万物の神が苦しみに耐えておられる』と叫ぶ。」
13またその預言者は言う。「エルサレムにいる者たちについて言えば、彼らはイスラエルの神を十字架につけ、自分たちの心を背けて、しるしも不思議も、またイスラエルの神の力と栄光をも顧みないために、すべての民から鞭打たれる。」
14その預言者はまた言う。「彼らは心を背けて、イスラエルの聖者をさげすむので、肉にあってさまよい、滅びうせ、すべての国民の中であざけられ、笑いぐさとなり、憎まれる。」
15その預言者はさらに言う。「それでも、彼らがもはやイスラエルの聖者に心を背けなくなる日が来れば、イスラエルの聖者は彼らの先祖と交わした聖約を思い起こされる。」
16まことにそのときに、イスラエルの聖者は海の島々を思い起こされる。そして主は、預言者ゼノスの言葉のように、「わたしはイスラエルの家に属する民を、すべて地の四方から集めよう」と言われる。
17その預言者は、「全地の人々は主の救いを見るようになり、すべての国民、部族、国語の民、民族が祝福される」と言う。
18わたしニーファイがこれらのことを民に書き記してきたのは、主なる彼らの贖い主を覚えるように彼らを説得できると思ったからである。
19したがってわたしは、イスラエルの家のすべての者がこれらの記録を手に入れたときのために、イスラエルの家のすべての者に向かって語るのである。
20見よ、エルサレムにいる人々のために、わたしの心は大いに立ち騒いでおり、全身の関節が緩むほど、わたしは疲れ果てている。もし主が、昔の預言者たちに示されたように、わたしを憐れんで、エルサレムにいる人々のことをわたしにも示されなかったら、わたしもまた滅びてしまっていたからである。
21主は確かに、昔の預言者たちに、エルサレムにいる人々についてすべてのことを示され、またわたしたちについても多くの預言者に示された。それでこれらのことは、真鍮の版に書き記されているので、当然のことながら、わたしたちは彼らについて知っているのである。
22さて、わたしニーファイは、兄たちにこれらのことを教えた。そして、主がほかの地で昔の人々の中で行われたことを、兄たちも知ることができるように、真鍮の版に刻まれている多くのことを読んで聞かせた。
23わたしはまた、モーセの書に書き記してある多くのことを読んで聞かせたが、主なる贖い主を信じるようさらに十分に勧めるために、預言者イザヤが記したことを彼らに読んで聞かせた。すべての聖文を自分たちに当てはめて、それが自分たちの利益となり、知識となるようにするためであった。
24それでわたしは兄たちに言った。「この預言者の言葉を聞いてください。イスラエルの家の残りの者であって、元木から折られた一本の枝である兄さんたち、イスラエルの家のすべての者に向けて書き記された預言者の言葉を聞いてください。そしてあなたがたの同胞、すなわちあなたがたはその同胞から折り取られた者ですが、その同胞と同様に望みを抱くことができるように、その言葉を自分自身に当てはめてください。この預言者はそのように書き記しているからです。」