聖文
ヒラマン書8


第8章

邪じゃ悪あくなさばきつかさたち、民たみをそそのかしてニーファイのことを怒いからせようとする。アブラハム、モーセ、ゼノス、ゼノク、イザイアス、イザヤ、エレミヤ、リーハイ、ニーファイは皆みな、キリストについて証あかしした。ニーファイ、大だいさばきつかさが殺ころされたことを霊れい感かんによって告つげる。紀き元げん前ぜん約やく二十三年ねんから二十一年ねんに至いたる。

1さて、ニーファイがこれらの言こと葉ばを語かたり終おえたとき、見みよ、そこには、さばきつかさでありながらガデアントンの秘ひ密みつの団だんにも所しょ属ぞくしている男おとこたちがおり、彼かれらは怒いかってニーファイに非ひ難なんの声こえを上あげ、人ひと々びとに言いった。「なぜあなたがたはこの男おとこを捕とらえて連つれて来きて、この男おとこが犯おかした罪ざい科かに応おうじて罪つみに定さだめられるようにしないのか。

2なぜあなたがたはこの男おとこに見みとれていて、この男おとこがこの民たみと我われ々われの法ほう律りつを非ひ難なんするのを聞きいているのか。」

3見みよ、ニーファイが、彼かれらの法ほう律りつが腐ふ敗はいしていることについて彼かれらに語かたったからである。まことに、ニーファイはここに書かき記しるせない多おおくのことを語かたった。しかし、神かみの戒いましめに反はんすることは何なに一ひとつ言いわなかった。

4ところが、ニーファイがさばきつかさたちの隠かくれた闇やみの業わざについて、彼かれらにあからさまに語かたったので、さばきつかさたちは、彼かれに対たいして怒いかったのである。それでもさばきつかさたちは、あえて彼かれを捕とらえようとはしなかった。彼かれらは、人ひと々びとが自じ分ぶんたちに非ひ難なんの声こえを上あげるのではないかと恐おそれたからである。

5それで彼かれらは、人ひと々びとに向むかって叫さけんだ。「なぜあなたがたはこの男おとこが我われ々われを非ひ難なんするのを許ゆるしておくのか。見みよ、この男おとこはこの民たみの全ぜん員いんに滅めつ亡ぼうを宣せん告こくしている。そのうえ、これらの偉い大だいな町まちが我われ々われから奪うばわれ、そこに我われ々われの居い場ば所しょがなくなるとも言いっている。

6我われ々われは、このようなことがあり得えないのを知しっている。見みよ、我われ々われは強つよく、町まちは偉い大だいであるので、敵てきは我われ々われを支し配はいする権けん力りょくを持もてないからだ。」

7そして、彼かれらは人ひと々びとを扇せん動どうしてニーファイのことを怒いからせ、人ひと々びとの中なかに争あらそいを生しょうじさせた。というのは、次つぎのように叫さけんだ人ひと々びともいたからである。「この人ひとをそのままにしておけ。この人ひとは立りっ派ぱな人ひとだ。我われ々われが悔くい改あらためなければ、この人ひとの言いうことは必かならず起おこるだろう。

8そして見みよ、この人ひとが我われ々われに証あかしした裁さばきは、すべて我われ々われに下くだるだろう。我われ々われは、この人ひとが我われ々われの罪ざい悪あくについて正ただしく証あかししたのを知しっている。見みよ、我われ々われの罪ざい悪あくは多おおい。この人ひとは、我われ々われの罪ざい悪あくを知しっているように、将しょう来らい我われ々われに起おこるすべてのことも知しっている。

9まことに見みよ、もしこの人ひとが預よ言げん者しゃでなかったならば、それらのことについて証あかしができなかっただろう。」

10そして、ニーファイを殺ころそうとした者ものたちは恐おそれ、彼かれを捕とらえることはどうしてもできなかった。そこで彼かれは、ある人ひと々びとが自じ分ぶんに好こう意いを寄よせ、またそのことでほかの者ものが恐おそれているのを見みて、人ひと々びとに再ふたたび話はなし始はじめた。

11彼かれはもっと話はなすように強つよく促うながされて、人ひと々びとに言いった。「見みよ、同胞はらからよ、あなたがたは神かみが一人ひとりの人ひとモーセに、紅こう海かいの水みずを打うつ力ちからを与あたえられたことを読よんだことがないのか。紅こう海かいの水みずは右みぎと左ひだりに分わかれたので、わたしたちの先せん祖ぞであるイスラエル人じんは、乾かわいた地ちを通とおって出でて来きた。また、その水みずはエジプト人じんの軍ぐん勢ぜいの上うえに閉とじ、彼かれらをのみ尽つくしてしまった。

12そして見みよ、神かみがかつてこのような力ちからをこの人ひとに与あたえられたのであれば、なぜあなたがたは互たがいに論ろんじ合あうのか。あなたがたが悔くい改あらためなければあなたがたに及およぶことになる裁さばきについて、知しることのできる力ちからを、神かみがわたしに与あたえられなかったと言いうのか。

13しかし見みよ、あなたがたは、わたしの言こと葉ばを否ひ定ていしているだけでなく、わたしたちの先せん祖ぞが語かたったすべての言こと葉ばと、このような偉い大だいな力ちからを与あたえられたこのモーセが語かたった言こと葉ば、まことに、彼かれがメシヤの来らい臨りんに関かんして語かたった言こと葉ばをも否ひ定ていしている。

14まことに彼かれは、神かみの御おん子こが将しょう来らい来こられることを証あかししなかったか。彼かれが荒あれ野ので青せい銅どうの蛇へびを上あげたように、将しょう来らい来こられる神かみの御おん子こも上あげられるであろう。

15また、その蛇へびを仰あおぎ見みる者ものが皆みな生いきたように、悔くいる霊れいを抱いだいて、信しん仰こうをもって神かみの御おん子こを仰あおぎ見みる者ものは皆みな、生いきることができ、永えい遠えんであるあの命いのちにあずかるであろう。

16さて見みよ、これらのことを証あかししたのはモーセだけではない。彼かれの時じ代だいからアブラハムの時じ代だいにさかのぼる聖せいなる預よ言げん者しゃたちも皆みな、証あかしした。

17そして見みよ、アブラハムは、神かみの御おん子この来らい臨りんを見みて、喜よろこびに満みたされ、うれしく思おもった。

18見みよ、あなたがたに言いうが、これらのことを知しっていたのはアブラハムだけではない。アブラハムの時じ代だい以い前ぜんにも、神かみの位くらいに従したがって、すなわち神かみの御おん子この位くらいに従したがって召めされた人ひと々びとが多た数すういた。これは、神かみの御おん子この来らい臨りんに先さき立だつ何なん千ぜん年ねんも前まえに、将しょう来らい贖あがないが与あたえられるということを民たみに示しめすためであった。

19またあなたがたは、アブラハムの時じ代だい以い降こうにもこれらのことを証あかしした預よ言げん者しゃが多おおくいたということを知しってほしい。見みよ、預よ言げん者しゃゼノスは大だい胆たんに証あかしし、そのために殺ころされた。

20また見みよ、ゼノクも、イザイアスも、イザヤも、エレミヤもいた。(エレミヤとは、エルサレムの滅めつ亡ぼうについて証あかししたあの預よ言げん者しゃである。)そしてわたしたちは、エルサレムがエレミヤの言こと葉ばのとおりに滅ほろぼされたことを知しっている。おお、それならば、どうして彼かれの言こと葉ばのとおりに神かみの御おん子こが来こられないことがあろうか。

21あなたがたはエルサレムが滅ほろぼされたという事じ実じつに反はん論ろんするつもりか。あなたがたは、ゼデキヤの息子むすこたちがミュレクのほか皆みな殺ころされたのに、殺ころされなかったと言いうつもりか。ゼデキヤの子し孫そんがエルサレムの地ちを追おわれ、今いまわたしたちとともにいるのを、あなたがたは見みていないのか。しかし見みよ、これだけではない。

22わたしたちの先せん祖ぞリーハイは、これらのことを証あかししたためにエルサレムから追おい出だされた。ニーファイもこれらのことを証あかしし、現げん在ざいに至いたるまでの先せん祖ぞたちもほとんど皆みな、証あかしした。彼かれらはキリストの来らい臨りんについて証あかしし、将しょう来らいを見み通とおし、将しょう来らい来くるキリストの日ひを喜よろこんだ。

23見みよ、キリストは神かみであり、今いまわたしたちの先せん祖ぞとともにおられる。また、キリストは彼かれらに御ご自じ身しんを現あらわし、彼かれらがキリストによって贖あがなわれることを告つげられた。そこで彼かれらは、将しょう来らい起おこることのために、キリストに栄えい光こうを帰きした。

24あなたがたはこれらのことを知しっており、偽いつわりを言いうのでなければこれらのことを否ひ定ていできないので、このことにおいてあなたがたは罪つみを犯おかした。あなたがたは、このように多おおくの証しょう拠こを与あたえられてきたにもかかわらず、これらのことをすべて受うけ入いれなかったからである。まことに、あなたがたはこれらのことが真しん実じつであるという証しょう拠ことして、万ばん物ぶつを、すなわち天てんにあるものと地ちにある万ばん物ぶつを、ともに与あたえられてきた。

25しかし見みよ、あなたがたは真しん実じつを受うけ入いれず、聖せいなる神かみに背そむいてきた。そして、今いまでさえあなたがたは、何なにものも朽くちない、また清きよくないものは何なに一ひとつ入はいれない天てんに、自じ分ぶん自じ身しんのために宝たからを蓄たくわえるのではなく、裁さばきの日ひに対たいして自じ分ぶん自じ身しんのために激はげしい怒いかりを積つみ重かさねている。

26まことに、今いまでさえあなたがたは、殺さつ人じんと不ふ貞ていと悪あく事じのために永えい遠えんの滅ほろびの機きを熟じゅくさせつつある。悔くい改あらためなければ、それは間まもなくあなたがたに及およぶであろう。

27まことに見みよ、それは今いままさにあなたがたの戸と口ぐちにある。さばきつかさのいる所ところへ行いって調しらべてみなさい。見みよ、あなたがたのさばきつかさは殺ころされており、血ちの中なかに横よこたわっている。彼かれはさばきつかさの職しょくに就つくことを求もとめている自じ分ぶんの兄きょう弟だいに殺ころされたのである。

28見みよ、彼かれらは二人ふたりとも、あなたがたの秘ひ密みつの団だんに所しょ属ぞくしている。その秘ひ密みつの団だんの創そう設せつ者しゃは、ガデアントンと、人ひと々びとの霊れいを滅ほろぼそうとしている悪あしき者ものである。」