1 さて、さばきつかさの統治第六十二年が終わったときには、これらのことがすべて起こり、レーマン人はその大半が義人になっていたので、レーマン人の①義はニーファイ人の義をしのいでいた。彼らは確固として揺るぎない信仰を抱いていたからである。
2 見よ、ニーファイ人の多くは①かたくなになり、悔い改めをせず、非常に邪悪になっていたので、神の言葉と彼らの中で行われた宣教と預言を少しも受け入れなかった。
3 にもかかわらず、教会の人々は、レーマン人が改宗したことと、レーマン人の中に神の教会が設立されたことで大きな喜びを得た。そして両者は互いに親しく①交わり、またともに喜び、大きな幸せを得た。
4 そして、多くのレーマン人がゼラヘムラの地にやって来て、自分たちが①改宗した次第をニーファイ人の民に告げ知らせ、信仰をもって悔い改めるように勧めた。
5 そして、多くの者が非常に大きな力と権能をもって教えを説き、ニーファイ人の多くを心底謙遜にへりくだらせ、神と小羊に謙遜に従う者とした。
6 そして、多くのレーマン人が北方の地へ行き、ニーファイとリーハイも民に教えを説くために①北方の地へ行った。このようにして、第六十三年が終わった。
7 見よ、全地が平和であったので、ニーファイ人はニーファイ人の中であろうとレーマン人の中であろうと、自分が行きたい所へはどこへでも行った。
8 そしてレーマン人も、レーマン人の中であろうとニーファイ人の中であろうと、自分の行きたい所へはどこへでも行った。このようにして、彼らは互いに自由に交流し、自分たちの思いのままに売買をして利益を得た。
9 そしてレーマン人もニーファイ人も、ともに非常に豊かになった。また、南の地でも北の地でも、彼らは非常にたくさんの金と銀とあらゆる貴い金属を持っていた。
10 ところで、南の地はリーハイと呼ばれ、北の地はゼデキヤの息子にちなんで①ミュレクと呼ばれた。主がミュレクを北の地へ導き、リーハイを南の地へ導いてこられたからである。
11 見よ、これらの地には両方とも、あらゆる金と銀、あらゆる貴いあらがねがあった。また、あらゆるあらがねを加工し精錬する、技量の優れた職人たちもおり、そのために彼らは豊かになった。
12 彼らは北でも南でも豊かに穀物を栽培し、北でも南でも非常に栄えた。また、彼らは増えて、その地で非常に力をつけた。そして、多くの大小の家畜の群れ、多くの肥えた若い家畜を飼育した。
13 見よ、女たちは骨折って働き、糸を紡ぎ、裸にまとうためにあらゆる織物を、すなわち、より糸で織った亜麻布とあらゆる織物を作った。このようにして、第六十四年が平穏に過ぎ去った。
14 第六十五年も、大きな喜びがあり、平和であって、まことに多くの宣教が行われ、将来起こることについて多くの預言が述べられた。このようにして、第六十五年が過ぎ去った。
15 さて、さばきつかさの統治第六十六年に、①セゾーラムが、さばきつかさの席に着いていたときに何者かによって殺された。また、同じ年に、彼に代わって民によって任じられた彼の息子も殺されてしまった。このようにして、第六十六年が終わった。
16 第六十七年の初めに、民はまた非常に悪くなり始めた。
17 見よ、主が長い間、世の富を彼らに恵んでこられたので、彼らは扇動されて怒ることも、戦うことも、流血を起こすこともなかった。そのため、彼らは富に執着するようになり、互いに相手の上に立てるように、利益を得ようと求め始めた。その結果、彼らは①暗殺や強盗や略奪をして利益を得始めたのである。
18 さて見よ、そのような殺人者たちと略奪者たちは、キシクメンと①ガデアントンが作った団に所属していた。そして、ニーファイ人の中にさえガデアントンの団に所属している者が大勢おり、レーマン人の中の悪い者たちの中にはもっと多くの者がいた。そして彼らは、ガデアントンの強盗および殺人者と呼ばれた。
19 大さばきつかさセゾーラムとその息子を、さばきつかさの職にある間に殺したのは彼らであったが、殺人者は見つからなかった。
20 さて、レーマン人は自分たちの中に強盗がいることを知ると、非常に嘆いた。そして彼らは、できるかぎりあらゆる手段を使って、地の面から強盗たちを滅ぼし去ろうとした。
21 ところが見よ、ニーファイ人の大半はサタンにひどく心をあおり立てられ、それらの強盗の団に加わった。そして彼らは、どのような困難な状態に置かれても、自分たちの殺人や略奪や盗みのために苦しみを受けることのないように、互いに保護し、守り合うという誓約と誓いを交わした。
22 そして、彼らには合図、すなわち①秘密の合図と秘密の言葉があった。これは、仲間がどのような悪事を働いても、その仲間から、すなわちこの誓いを立てて団に所属した者たちから害を受けることのないように、誓いを立てた仲間を確認できるようにするためのものであった。
23 したがって彼らは、国の法律にも神の律法にも背いて人を殺し、略奪し、盗み、みだらな行いをし、あらゆる悪事を行うことができた。
24 また、団に所属している者はだれであろうと、彼らの①悪事と忌まわしい行いを世の人々に漏らしたならば、国の法律によってではなく、ガデアントンとキシクメンが定めた、彼らの邪悪な掟によって裁かれることになっていた。
25 さて見よ、これらの秘密の①誓いの言葉と誓約こそ、アルマが息子に、民を滅亡に至らせる手段とならないように世の人々に公にしてはならないと命じたものである。
26 見よ、それらの①秘密の誓いの言葉と誓約は、ヒラマンに渡された記録からガデアントンに伝わったのではない。それらは、禁断の実を食べるようにわたしたちの始祖を②そそのかした者によって、ガデアントンの心に植え付けられたのである。
27 まことにその者は、弟のアベルを殺しても、世の人々には分からないと、①カインとはかりごとを巡らしたその者である。その者は、そのとき以来、カインおよび彼に従う者たちとはかりごとを巡らしてきた。
28 また、十分に①高い塔を建てて天に達することができるようにしようという思いを、民の心に与えたのも、その者である。その塔からこの地に来た人々を惑わし、闇の業と忌まわしい行いを地の全面に広め、ついに民を②完全に滅ぼし、永遠の地獄に引きずり落としてしまったのも、その者である。
29 まことに、闇の業と暗殺の業をなお続けようという思いを①ガデアントンの心に与えたのも、その者である。彼は人類の始まりから現在に至るまで、それを続けてきた。
30 見よ、彼こそ、あらゆる罪の①根源である。見よ、彼は、人の子らの心を支配できるかぎり代々闇の業と暗殺の業を続け、カインと彼に従う者たちのはかりごとと、誓いの言葉と、誓約と、恐ろしい悪事の策を伝えている。
31 さて見よ、彼は、すでにニーファイ人の心を大いに支配しており、そのために、彼らは非常に邪悪になっていた。彼らの大半はすでに義の道を離れており、神の戒めを足の下に①踏みつけ、自分勝手な道に向かい、自分のために金と銀で偶像を造っていた。
32 そして、これらの罪悪はすべて、①わずかな年数で彼らに起こった。しかもそのほとんどは、ニーファイの民のさばきつかさの統治第六十七年に彼らに起こったのであった。
33 そして彼らは、第六十八年にもますます罪悪を募らせ、義人の深い悲しみと嘆きを誘った。
34 このことから分かるように、ニーファイ人は不信仰に陥って、ますます悪事と忌まわしい行いをするようになった。一方レーマン人は、神をますます深く知るようになった。まことに、彼らは神の掟と戒めを守り、神の前を真理にかなってまっすぐに歩み始めたのであった。
35 またこのことから、ニーファイ人の心が邪悪でかたくなであったので、主の御霊が彼らから①去り始めたことが分かる。
36 またこのことから、レーマン人が主の言葉を容易に喜んで信じたので、主が彼らに主の御霊を注ぎ始められたことも分かる。
37 そしてレーマン人は、ガデアントンの強盗団を捜し、強盗団の中のひときわ悪い者たちの中で神の言葉を宣べ伝えたので、この強盗団はレーマン人の中から完全に絶えてしまった。
38 そして、他方ニーファイ人は、強盗団の中のひときわ悪い者たちをはじめとして、強盗団を盛り上げ、彼らを支援した。そのため、ついに強盗団はニーファイ人の地の全体に広がり、義人の大半を惑わしてしまった。そしてついには、これらの者たちも強盗団の行うことを信頼し、奪ったものの分け前をもらうようになり、彼らと暗殺を共にし、彼らの秘密結社に加わるようになった。
39 このようにして、強盗団は政府のすべての管理権を手に入れ、①貧しい者と柔和な者と神に謙遜に従う者を足の下に踏みつけ、打ち、裂き、また彼らを無視した。
40 このことから、彼らが恐ろしい状態にあり、永遠の滅びの機が①熟してきたことが分かる。
41 そして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第六十八年が終わった。