1 さて、さばきつかさの統治第七十二年に、争いが激しくなり、国中至る所ですべてのニーファイの民の中に戦争が起こった。
2 この滅亡と悪の業を行ったのは、あの①秘密強盗団であった。この戦争は年内続き、第七十三年にも続いた。
3 そしてこの年に、ニーファイは主に叫び求めた。
4 「おお、主よ、この民が剣で滅びることのないようにしてください。おお、主よ、むしろ国内に①飢饉があるようにし、彼らに主なる彼らの神を思い起こさせてください。恐らく彼らは悔い改めて、あなたに立ち返るでしょう。」
5 すると、ニーファイの言葉のとおりになった。その地に、すなわちすべてのニーファイの民の中に大飢饉があった。このようにして、第七十四年にも飢饉は続き、剣による滅亡の業はやんだが、飢饉によって滅亡がひどくなった。
6 この滅亡は第七十五年にも続いた。地は打たれて乾き、穀物の実る季節にも穀物を産しなかった。また、全地が打たれて、ニーファイ人の中だけでなくレーマン人にも影響が及んだ。その結果、民は打たれ、ひときわ邪悪な地方では何千もの人々が死んだ。
7 そこで人々は、自分たちがまさに飢饉によって滅びようとしているのを見て、主なる神を①思い起こすようになり、またニーファイの言葉を思い返すようになった。
8 そして人々は、自分たちの大さばきつかさたちと指導者たちに、ニーファイに対して次のように言うよう頼んだ。「まことに、わたしたちはあなたが神の人であることを知っています。ですから、あなたがわたしたちの滅亡について語った①言葉がすべて成就することのないように、主なるわたしたちの神に、この飢饉を遠ざけてくださるよう叫び求めてください。」
9 そこでさばきつかさたちは、人々が望んだ言葉のとおりにニーファイに言った。するとニーファイは、人々が悔い改め、粗布をまとってへりくだっているのを見て、再び主に叫び求めて言った。
10 「おお、主よ、この民は悔い改めています。彼らが自分たちの中からガデアントンの団を一掃したため、団の者たちはいなくなり、彼らは秘密のはかりごとを地中に隠してしまいました。
11 おお、主よ、このように彼らは謙遜になっていますので、あなたの怒りを解いてください。あなたがすでに滅ぼされたあの悪人たちの滅亡をもって、あなたの怒りを和らげてください。
12 おお、主よ、あなたの怒り、まことにあなたの激しい怒りを解いて、この地における飢饉をやませてください。
13 おお、主よ、わたしの祈りをお聴きください。わたしの言葉のとおりになり、地の面に①雨が降り、穀物の実る季節に、地が果実と穀物を産するようにしてください。
14 おお、主よ、わたしが、『飢饉があって、剣による滅亡がやむようにしてください』と申し上げたときに、あなたは①わたしの言葉をお聴きくださいました。また、あなたがかつて、『この民が悔い改めるならば、わたしは彼らの命を助けよう』と言われましたので、わたしはこの度も、あなたがわたしの言葉をお聴きくださることを存じています。
15 まことに、おお、主よ、彼らに起こった飢饉と疫病と滅亡のために、彼らがすでに悔い改めていることを、あなたは御存じです。
16 おお、主よ、あなたの怒りを解き、彼らがあなたに仕えるかどうかもう一度お試しください。もし仕えるならば、おお、主よ、かつて言われた御言葉のとおりに、彼らを祝福してください。」
17 そこで、第七十六年に、主は民から怒りを遠ざけて地に①雨が降るようにされたので、地は果実の実る季節に果実を産した。また、穀物の実る季節に穀物を産した。
18 そこで見よ、民は喜び、神をあがめ、喜びが地の全面に満ちた。そして彼らは、もうニーファイを殺そうとせず、彼を①偉大な預言者として、また神から授けられた大いなる力と権能を持つ神の人として尊んだ。
19 見よ、彼の弟リーハイも、義にかかわることに関しては少しもニーファイに①劣らなかった。
20 さて、ニーファイの民は再びその地で栄えるようになり、荒れ果てた所を建て直し始めた。また彼らは、増えて広がり始め、ついに北方と南方の地の全面を、西の海から東の海に至るまで覆った。
21 そして、第七十六年が平穏に終わり、第七十七年も平穏に始まった。①教会は全地の面に広がり、ニーファイ人もレーマン人も、民の大半が教会に所属し、彼らはその地で非常に大いなる平和を得た。このようにして、第七十七年が終わった。
22 また第七十八年も、預言者たちによって定められた教義の幾つかの点について少し争いがあったほかは、平和であった。
23 ところが第七十九年に、多くの争いが始まった。しかし、ニーファイとリーハイと、彼らの同僚たちの多くは、教義の真の要点について理解し、日々多くの①啓示を受けていたので、人々に教えを説き、その年のうちに争いを鎮めた。
24 さて、何年か前にニーファイの民からレーマン人のもとへ行き、自らレーマン人と名乗った離反者たちがおり、また、その離反者たちによって怒りをかき立てられたレーマン人の実の子孫たちもいて、ニーファイの民のさばきつかさの統治第八十年に、これらの者たちが同胞と戦争を始めた。
25 彼らは殺人と略奪を行っては、山の中や荒れ野や隠れ場に引き揚げて身を隠し、見つからないようにしていた。そして、彼らのもとに行く離反者たちがいたため、日々その人数が増えた。
26 このようにしてついに、何年もたたないうちに、彼らは非常に大きな強盗団になった。そして彼らは、ガデアントンの秘密のはかりごとをすべて探し出し、ガデアントン流の強盗になった。
27 さて見よ、この強盗たちは、ニーファイの民の中に、またレーマン人の民の中にも、ひどい荒廃、まことにひどい滅亡をもたらした。
28 そこで、この滅亡の業をやめさせることが必要であったので、この強盗団を捜し出して滅ぼすために、荒れ野と山に強い兵から成る軍隊が送り込まれた。
29 しかし見よ、その年のうちに、兵はそれぞれの地へ追い返された。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第八十年が終わった。
30 さて、第八十一年の初めに、彼らは再びこの強盗団に向かって出て行き、多くの者を殺した。しかし、彼らもひどい損害を受けた。
31 また、山や荒れ野に群れを成していたその強盗たちの数が非常に多かったので、兵は再び荒れ野と山からそれぞれの地に引き揚げざるを得なかった。
32 そして、このようにしてこの年は終わった。強盗たちは依然として増え続け、強くなったため、ニーファイ人とレーマン人の全軍をものともしなかった。そして、彼らは地の全面で人々をひどく恐れさせた。
33 まことにそれは、彼らが多くの地方を襲って、民にひどい滅亡をもたらしたからである。すなわち、多くの者を殺し、またある者たちを、特に、女たちと子供たちを捕らえて荒れ野へ連れ去ったからである。
34 そこで民は、自分たちの罪悪のために受けたこの大きな災いに促され、再び主なる彼らの神を思い起こすようになった。
35 このようにして、さばきつかさの統治第八十一年が終わった。
36 ところが第八十二年に、彼らはまた主なる神を①忘れ始めた。そして第八十三年に、彼らはさらに罪悪を募らせ、第八十四年にも行いを改めなかった。
37 そして第八十五年には、彼らはますます高慢と悪事を募らせ、そのために再び滅亡の機が熟してきた。
38 このようにして、第八十五年が終わった。