1さて、さばきつかさの統治第四十二年に、モロナイハはニーファイ人とレーマン人の間に再び和平を成立させていたが、見よ、さばきつかさの職に就く人はだれもいなかった。そのため、だれがさばきつかさの職に就くべきかについて、民の中に再び争いが起こった。
2そして、ヒラマンの息子であるヒラマンが、民の声によって選ばれ、さばきつかさの職に就いた。
3しかし見よ、以前にパホーランを殺したキシクメンは、ヒラマンをも殺そうとして待ち伏せした。彼は自分の仲間に支援され、その仲間はだれにもキシクメンの悪事を知らせないという誓いを立てていた。
4多くの言葉を非常に巧みに操り、またひそかに殺人と強盗を行う悪知恵にも非常にたけていたガデアントンという者がいた。この男はこのように巧みな者であったので、キシクメンの団の首領になった。
5そこで彼は、仲間とキシクメンとをおだてて、もし自分をさばきつかさの職に就かせてくれるならば、団に所属する者たちを民の中で権力と権威のある地位に就かせようと言った。そこでキシクメンはヒラマンを殺そうとしたのである。
6さて、キシクメンがヒラマンを殺すためにさばきつかさのもとへ向かっていたとき、見よ、ヒラマンの僕に会った。この僕は、前に夜出て行って姿を変えてこの団に紛れ込み、この団がヒラマンを殺すために企てた計画を知っていた。
7そこで彼は、キシクメンに会うと合図を送った。それでキシクメンは自分がしようとしていることを打ち明け、ヒラマンを殺せるように自分をさばきつかさの席に案内してもらいたいと言った。
8ヒラマンの僕はキシクメンの心がすべて分かった。人を殺すことが彼の目的であり、また人を殺し、盗み、権力を得ることが彼の団に所属しているすべての者の目的であった。(これが彼らの陰謀であり、彼らの結社である。)ヒラマンの僕はこのことを知ると、キシクメンに、「さばきつかさの席へ行こう」と言った。
9キシクメンはこれを非常に喜んだ。自分の企てを遂げられると思ったからである。ところが見よ、さばきつかさの席へ行く途中、ヒラマンの僕がキシクメンを心臓まで突き刺したので、キシクメンはうめき声さえ立てずに死んで倒れた。そこで、ヒラマンの僕は走って行き、自分が見たこと、聞いたこと、行ったことをすべてヒラマンに告げた。
10そこでヒラマンは、この強盗団の者たちを法律によって処刑するために、人々を送って彼らを捕らえようとした。
11しかし見よ、ガデアントンは、キシクメンが帰って来ないのを知ると、自分が殺されることになるのではないかとひどく心配になり、仲間に自分について来るように告げた。そして彼らは、間道を通ってその地から荒れ野へ逃げ出した。したがって、ヒラマンが彼らを捕らえるために人々を送ったときには、彼らはどこにもいなかった。
12このガデアントンのことは、後でもっと述べることにする。このようにして、ニーファイの民のさばきつかさの統治第四十二年が終わった。
13そして見よ、あなたがたはこの書の終わりで、このガデアントンがニーファイの民を覆す、まことにほとんど完全に滅ぼしてしまう元になることを知るであろう。
14見よ、わたしが言うのは、ヒラマン書の終わりではなく、わたしがこれまで書いてきたすべての話の基であるニーファイの書の終わりのことである。