1さて見よ、ニーファイがこれらの言葉を語り終えると、彼らの中のある者たちがさばきつかさのいる所へ走って行った。すなわち、五人の者が行き、行く途中で互いに言った。
2「見よ、この男が預言者かどうか、またこのような驚くべきことを我々に預言するように、神がこの男に命じたのかどうか、必ず分かるだろう。見よ、我々は神が命じたとは信じない。まことに、彼が預言者であるとも信じない。しかし、彼が大さばきつかさについて言ったこのことがほんとうで、大さばきつかさが死んでいれば、彼の語ったほかの言葉もほんとうだと、我々は信じよう。」
3そして彼らは力の限り走って、さばきつかさのいる所に入って行った。すると見よ、大さばきつかさが地に倒れ、血の中に横たわっていた。
4さて見よ、彼らはこれを見ると非常に驚き、地に倒れてしまった。彼らはニーファイが大さばきつかさについて語った言葉を信じていなかったからである。
5しかし、彼らは見て信じ、ニーファイの語った裁きがすべて民に下るのではないかという恐れに打たれた。そして、そのために彼らは震えおののき、地に倒れてしまったのである。
6ところで、さばきつかさが殺されるとすぐに、すなわち、彼の兄弟がひそかに彼を突き刺して逃げるとすぐに、従者たちは走って行き、人々に殺害のことを大声で告げ知らせた。
7すると見よ、人々はさばきつかさの席のある場所に集まって来たが、見よ、驚いたことに、五人の者が地に倒れていた。
8さて見よ、人々は、ニーファイの庭に集まっていた大勢の者のことは何も知らなかったので、互いに、「この男たちはさばきつかさを殺した者たちだ。この男たちが我々から逃げられないように、神が打たれたのだ」と言った。
9そして彼らは、この五人を捕らえて縛ると、牢に入れた。それから、さばきつかさが殺され、殺人者たちが捕らえられて牢に入れられたということが広く告げ知らされた。
10そしてその翌日、殺された大さばきつかさの埋葬に当たって、人々は哀悼の意を表し、断食するために集まった。
11そのため、ニーファイの庭にいて、彼の言葉を聞いたさばきつかさたちも、埋葬に集まっていた。
12そして彼らは人々の中で、「大さばきつかさが死んでいるかどうか調べるために遣わされた五人の者はどこにいるだろうか」と尋ねた。すると人々は、「あなたがたが遣わしたと言うその五人については、我々は知りませんが、殺人者である五人の者は牢に入れてあります」と答えた。
13そこでさばきつかさたちは、彼らを連れて来るように求め、彼らは連れて来られた。見よ、それは遣わされた五人の者たちであった。そこで見よ、さばきつかさたちは、その件について彼らに尋ね、彼らは自分たちの行ったことをすべて、さばきつかさたちに話した。
14「わたしたちは走って、さばきつかさのいる所に行きました。そして、ニーファイが証したとおりのことをすべて見たので、驚いて地に倒れてしまいました。そして、驚きが収まって正気に戻ると、まことに、牢に入れられていました。
15この方の殺害に関しては、わたしたちはだれがそれを行ったのか知りません。わたしたちの知っているのは、ただ、あなたがたに求められたとおりにわたしたちが走って行ったところ、まことに、ニーファイの言葉のとおりに、この方が死んでいたことです。」
16そこでさばきつかさたちは、人々にそのことをよく説明し、ニーファイを非難して叫んで言った。「見よ、我々は知っている。そのニーファイという者がだれかと共謀して、さばきつかさを殺したに違いない。そして彼は、その後に我々にそのことを告げ、我々を彼の信仰に転向させて、自分が神の選ばれた偉大な者に、また預言者になろうとしたのだ。
17さて見よ、我々はその男を調べよう。その男は自分の悪事を自白し、このさばきつかさのほんとうの殺害者を我々に告げるだろう。」
18そして五人の者は、埋葬の日に釈放された。しかし彼らは、さばきつかさたちがニーファイを非難して語った言葉のことで、さばきつかさたちをたしなめ、彼らの一人一人と論じ合って、彼らを言い伏せた。
19にもかかわらず、さばきつかさたちはニーファイを捕らえて縛らせ、群衆の前に連れて来させた。そして彼らは、いろいろな方法で彼を尋問し、彼に矛盾したことを言わせて、死刑にする訴えを起こせるように謀った。
20そして、彼らは彼に言った。「おまえは共謀者だ。この殺害を行った当人はだれだ。我々に話して、おまえの悪事を認めよ。」また言った。「見よ、ここに金がある。もしおまえが我々に話して、おまえが殺人者と取り決めを結んだことも認めるならば、我々はおまえの命を許してやろう。」
21しかし、ニーファイは彼らに言った。「おお、愚かな者、心に割礼のない者、盲目な者、強情な民よ。あなたがたがこの罪の道を歩き続けるのを、主なる神がいつまで許されるか、あなたがたは知っているのか。
22おお、あなたがたは悔い改めなければ、今あなたがたを待ち受けているひどい滅亡のために、泣きわめき、嘆き悲しむようになるに違いない。
23見よ、わたしがある男と共謀して、わたしたちの大さばきつかさであるセゾーラムを殺させたと、あなたがたは言う。しかし見よ、あなたがたに言うが、あなたがたがそう言うのは、あなたがたがこのことについて知ることができるように、わたしが証したためである。すなわち、あなたがたの中にある悪事と忌まわしい行いを知っている証拠として、あなたがたに証したためである。
24ところが、わたしがこのようにしたので、あなたがたは、わたしがある男と共謀してこのことを行わせたと言う。また、わたしがこのしるしをあなたがたに示したので、あなたがたはわたしのことを怒り、わたしの命を取ろうとしている。
25さて見よ、わたしはもう一つのしるしをあなたがたに示し、あなたがたがこのことで、わたしを殺そうとするかどうかを見よう。
26見よ、あなたがたに言う。セゾーラムの兄弟であるセアンタムの家に行き、彼に、
27『この民について非常に多くの災いを預言している、自称預言者のニーファイがあなたと共謀し、それであなたがたが兄弟のセゾーラムを殺したのですか』と言いなさい。
28見よ、彼は、『そうではない』とあなたがたに言うだろう。
29そこで、あなたがたは彼に、『あなたが兄弟を殺したのですか』と言いなさい。
30すると彼は恐れて立ち尽くし、言葉に詰まる。そして見よ、彼はあなたがたの言葉を打ち消し、驚いたふりをするだろう。それでも、自分は潔白であるとあなたがたに告げるだろう。
31しかし見よ、彼をよく調べなさい。そうすれば、彼の外套のすそに血が見つかるだろう。
32あなたがたはこれを見たら、『この血はどこでついたのですか。これはあなたの兄弟の血ではないですか』と言いなさい。
33すると彼は震えおののき、まるで死んだように蒼白になる。
34そこであなたがたは、『このように恐れ、また顔色が蒼白になったからには、見よ、あなたが罪を犯したのだろう』と言いなさい。
35すると彼は、ますます恐れて、やがてあなたがたに自白し、自分がこの殺害を行ったことをもはや否定しないだろう。
36それから彼は、神の力によってわたしニーファイにそれが示されたのでなければ、そのことについて分かるはずがないと、あなたがたに告げるだろう。そのときあなたがたは、わたしが正直な男であり、あなたがたのもとに神から遣わされていることを知るだろう。」
37そこで彼らは行って、ニーファイから言われたとおりにした。するとまことに、彼の言った言葉はほんとうであった。セアンタムはその言葉のとおりに否定し、またその言葉のとおりに自白した。
38そして、彼自身がまさにその殺害者であることが立証されたので、五人の者は釈放され、ニーファイも釈放された。
39ニーファイの言葉を信じた者がニーファイ人の中に何人もおり、また五人の者が証したことで信じた者も何人もいた。五人の者は、牢の中にいた間に改心していたからである。
40そして、ニーファイは預言者であると言う者が、民の中に何人もいた。
41また、「神でなければすべてのことを知ることができないので、まことに、この人は神だ。まことに、この人はわたしたちの心の思いを告げ、またいろいろなこともわたしたちに告げてきた。わたしたちの大さばきつかさのほんとうの殺害者さえも教えてくれた」と言う者たちもいた。