1さて見よ、ニーファイの民のさばきつかさの統治第四十年の初めに、ニーファイ人の民の中に一つの重大な問題が起こった。
2見よ、パホーランが死んで、世のすべての人の行く道を行ってしまったので、だれがさばきつかさの職に就くべきかについて、パホーランの息子たちである兄弟の中で深刻な争いが起こったからである。
3さばきつかさの職のために争って、民をも争わせたこの兄弟たちの名は、パホーラン、パアンカイ、パクメナイという。
4パホーランの息子はこの三人だけではない。(彼には多くの息子がいた。)しかし、さばきつかさの職のために争ったのはこの三人であり、彼らは民を三つの集団に分裂させてしまった。
5それでも、パホーランが民の声によって大さばきつかさとなり、ニーファイの民を治める総督となるように任命された。
6そしてパクメナイは、自分がさばきつかさの職を得られないことを知ると、民の声に同意した。
7しかし見よ、パアンカイと、彼が総督になることを願った民の一部の者たちは、非常に怒った。そのため彼は、その人々にへつらって、同胞に対して謀反を起こさせようとした。
8そして彼は、まさにそれを実行しようとしたときに、見よ、捕らえられ、民の声によって裁かれ、死刑を宣告された。彼が謀反を起こし、民の自由を損なおうとしたからである。
9ところが、彼が総督になることを願った者たちは、彼に死刑が宣告されたことを知って怒った。そして見よ、彼らは、キシクメンという者をさばきつかさの職にあるパホーランのもとに遣わし、さばきつかさの席に着いているパホーランを殺した。
10パホーランの従者たちはキシクメンを追いかけたが、見よ、キシクメンの逃げ足が非常に速かったので、だれも彼に追いつけなかった。
11そして、彼は自分を行かせた者たちのところに帰り、彼らは全員誓いを立てた。すなわち、彼らはキシクメンがパホーランを殺したことをだれにも話さないと、自分たちの永遠の造り主にかけて誓ったのである。
12そのためキシクメンは、パホーランを殺したときに姿を変えていたので、ニーファイの民に知られることはなかった。そしてキシクメンも、彼と誓った仲間も、見つかることのないように民の中に交じっていたが、見つかった者は皆、死刑を宣告された。
13さて見よ、パクメナイが民の声によって大さばきつかさとなり、民の総督となるように任命され、彼の兄弟パホーランに代わって治めることになった。それは彼の権利にかなっていた。これはすべてさばきつかさの統治第四十年にあったことであり、この年は終わった。
14さて、さばきつかさの統治第四十一年に、レーマン人はおびただしい数の兵を集めて、剣と三日月刀、弓、矢、かぶと、胸当て、それにあらゆる盾で武装させていた。
15そして彼らは、ニーファイ人と戦うためにまたもややって来た。彼らはコリアンタマーという名の男に率いられていた。この男はゼラヘムラの子孫であり、ニーファイ人からの離反者であって、大きな強い男であった。
16それで、アモロンの息子で名をツバロスというレーマン人の王は、コリアンタマーが強い男であり、彼の力と深い知恵でニーファイ人に立ち向かえると思ったので、彼を行かせてニーファイ人を支配する権力を得ようとした。
17そこでツバロスは、レーマン人を扇動して怒らせ、自分の軍隊を集め、コリアンタマーを軍隊の指揮官に任命して、ニーファイ人と戦うために彼らをゼラヘムラの地へ進軍させた。
18さて、ニーファイ人は、政府内に多くの争いと多くの問題があったので、ゼラヘムラの地に十分な見張りの兵を配置していなかった。彼らはレーマン人があえて自分たちの地の中央部に入って来て、この大きな町ゼラヘムラを攻撃することはないと思っていたからである。
19ところが、コリアンタマーは大軍を率いて進み、その町に住む者を襲ったのである。しかも、彼らの進軍が非常に速かったので、ニーファイ人は軍隊を集める暇がなかった。
20そのためコリアンタマーは、町の入り口の近くで警備兵を切り倒し、全軍を率いて町に入った。そして、彼らは手向かう者をすべて殺し、町全体を占領した。
21さて、大さばきつかさであったパクメナイは、コリアンタマーから逃れて町の城壁の所まで行った。しかし、そこで城壁に寄りかかった状態でコリアンタマーに討たれ、死んだ。このようにして、パクメナイの生涯は終わった。
22コリアンタマーは、ゼラヘムラの町が手に入ったのを見て、またニーファイ人がレーマン人の前から逃げ出し、殺され、捕らえられ、牢に入れられなどして、自分が全地で最も堅固なとりでの占領を終えたのを見て、心が奮い立ち、全地に向かって出て行こうとした。
23そして、彼はゼラヘムラの地に長居せず、大軍を伴ってバウンティフルの町に向かって進軍した。それは、進んで行って剣で道を切り開き、国の北部も手に入れようと決意していたからである。
24また彼は、ニーファイ人の軍隊の主力が国の中央部にいると思っていたので、ニーファイ人が幾つかの小さな軍隊に集まる以外に集まる暇のないように進軍した。このようにして、彼らはニーファイ人を攻め、地に切り倒したのであった。
25しかし見よ、国の中央部を通ったこのコリアンタマーの進軍は、殺されたニーファイ人がおびただしい数に上ったにもかかわらず、彼らに対してモロナイハを非常に有利な立場に置くことになった。
26見よ、モロナイハは、レーマン人があえて国の中央部に入って来ることはなく、これまで行ってきたように、境の地の方々の町を攻撃して来るであろうと思い、ニーファイ人の強い軍隊に境の地の方々を守らせていたからである。
27しかし見よ、レーマン人は彼の願ったようには恐れず、国の中央部に入って来て首府であるゼラヘムラの町を奪い、国の最も重要な地方を経由して進みながら、男、女、子供の区別なく民を大勢殺し、多くの町と多くのとりでを占領した。
28モロナイハはこれを知ると、彼らがバウンティフルの地へ達する前に遠回りして彼らの進路を断つため、すぐにリーハイを軍隊とともに派遣した。
29そして、リーハイはそのように行った。彼はレーマン人がバウンティフルの地に達する前に、彼らの進路を断って攻撃したので、彼らはゼラヘムラの地へ向かって退却し始めた。
30そこでモロナイハも、退却中の彼らの退路を断って攻撃した。そのため、非常に血なまぐさい戦いになった。まことに、多くの者が殺され、殺された者たちの中にコリアンタマーもいた。
31さて見よ、レーマン人はあらゆる方向からニーファイ人に取り囲まれたので、北にも、南にも、東にも、西にも、どの方向にも退却できなかった。
32このように、コリアンタマーがレーマン人をニーファイ人のただ中へ突入させたので、彼らはニーファイ人の手中に落ちて、コリアンタマー自身も殺されてしまった。そして、レーマン人はニーファイ人に降伏した。
33そこでモロナイハは、ゼラヘムラの町を取り返し、捕虜になったレーマン人を安らかに国外へ去らせた。
34このようにして、さばきつかさの統治第四十一年が終わった。