1さて、エテルとコリアンタマーは同時代の人である。このコリアンタマーは、全地を治める王であった。
2エテルは主の預言者であった。そこで、エテルはコリアンタマーの時代に出て行って、民に預言し始めた。彼の内に主の御霊があったために、そうせずにはおれなかったからである。
3彼は朝から日の沈むまで大声を上げ、滅ぼされることのないように、神を信じて悔い改めることを民に勧め、また信仰によってすべてが成就することを彼らに告げた。
4さて、神を信じる者はだれであろうと、もっと良い世界を、まことに神の右に一つの場所を、確かに望むことができる。この望みは信仰から生じ、人々にとってその心をしっかりとした不動のものにする錨となる。そしてそのような人々はいつも多くの善い行いをし、神をあがめるようになる。
5そして、エテルは数々の大いなる驚くべきことを民に預言した。しかし彼らは、現実にそれらのことを見なかったので信じなかった。
6さて、わたしモロナイはこれらのことについて少々述べたい。信仰とは待ち望んでいながらまだ見ていないものであることを、世の人々に示したい。あなたがたは、自分が見ていないからということで疑ってはならない。信仰が試されてからでなければ、証は得られないからである。
7キリストが死者の中からよみがえられた後、わたしたちの先祖に御自身を現されたのは、信仰による。先祖がキリストを信じてからでなければ、キリストは先祖に御自身を現されなかった。したがって、キリストを信じていた人々がいたに違いない。キリストは、俗世の人々には御自身を現されなかったからである。
8しかし、人々が信じたので、キリストは世の人々に御自身を現し、御父の名の栄光を表し、さらに、ほかの人々が天の賜物にあずかる者となれるように、また、彼らがまだ見ていないものを待ち望むことができるように、道を備えられた。
9したがって、あなたがたも信仰を持ちさえすれば、望みを持つことができ、賜物にあずかる者となれるのである。
10見よ、昔の人々が神の聖なる位に従って召されたのは、信仰による。
11それで、信仰によってモーセの律法が与えられた。しかし神は、御子を送ることによってもっとすばらしい方法を備えられた。そして、信仰によって、モーセの律法が成就したのである。
12もしも人の子らの中にまったく信仰がなければ、神は人の子らの中で何の奇跡も行うことがおできにならない。したがって、彼らが信じてからでなければ、神は御自身を現されなかった。
13見よ、牢を地に倒したのは、アルマとアミュレクの信仰であった。
14見よ、レーマン人に変化を生じさせて、彼らに火と聖霊によるバプテスマを受けさせたのは、ニーファイとリーハイの信仰であった。
15見よ、レーマン人の中であのように大きな奇跡を行ったのは、アンモンと彼の同僚たちの信仰であった。
16そして、奇跡を行った者は皆、キリスト以前にいた者でも、キリスト以後にいた者でも、信仰によって奇跡を行った。
17三人の弟子たちが死を味わわないという約束を得たのは、信仰によるものであった。しかし彼らは、信じてからでなければ、その約束を得なかった。
18どのようなときでも、信じてからでなければ奇跡を行った者はいない。したがって、奇跡を行った者はまず神の御子を信じたのである。
19キリストが来られる以前にも、非常に深い信仰を持っていた人々が多くおり、これらの人は幕の内側を見るのを禁じられなかったので、彼らは実際に自分の目で様々なものを見た。それらのものは、彼らがすでに信仰の目で見ていたものである。そして、彼らは喜んだ。
20見よ、この記録で分かるように、これらの人の中の一人がヤレドの兄弟であった。神を信じる彼の信仰が非常に深かったので、神は御自分の指を差し伸べられたときに、ヤレドの兄弟の目からその指を隠すことがおできにならなかった。神が以前に彼に言われた御言葉があったからである。その御言葉は、ヤレドの兄弟が信仰によって得たものである。
21また、主の指を見た後、ヤレドの兄弟には信仰によって得た約束があったので、主は彼の目から何も隠すことがおできにならなかった。そこで、主は彼にすべてのものをお見せになった。彼はもはや幕の外側にとどめられなかったからである。
22また、これらのことが異邦人を通じて同胞に伝わるという約束をわたしの先祖が得たのも、信仰による。そのために、主は、すなわちイエス・キリストは、わたしに命じられたのである。
23わたしは主に言った。「主よ、わたしたちの物を書き記す力が弱いので、異邦人はこれらのことをあざけるでしょう。主よ、あなたはわたしたちを、信仰によって言葉に力のある者とされましたが、物を書き記す力のある者とはされませんでした。あなたはこの民に聖霊をお授けになり、聖霊のためにすべての者が大いに語れるようにされました。
24また、わたしたちの手が不器用であったために、わたしたちがわずかしか書けないようにされました。まことに、あなたはわたしたちを、ヤレドの兄弟のように物を書き記す力のある者とはされませんでした。あなたはヤレドの兄弟を物を書き記す力のある者とされたので、彼の書き記したことはあなた御自身のように力強く、それを読む者を圧倒するほどのものとなりました。
25あなたはまた、わたしたちの言葉を力強くまた大いなるものとし、わたしたちがそれを書き記せないほどのものとされました。そのため、わたしたちは書き記すときに、わたしたちの弱さを知り、またわたしたちの言葉の用法を誤ってしまいます。ですから、異邦人がわたしたちの言葉をあざけるのではないかと心配です。」
26わたしがこのように言うと、主はわたしに言われた。「愚か者はあざけるが、後に嘆き悲しむ。わたしの恵みは柔和な者に十分であり、彼らがあなたの弱さに付け込むことはない。
27もし人がわたしのもとに来るならば、わたしは彼らに各々の弱さを示そう。わたしは人を謙遜にするために、人に弱さを与える。わたしの前にへりくだるすべての者に対して、わたしの恵みは十分である。もし彼らがわたしの前にへりくだり、わたしを信じるならば、そのとき、わたしは彼らの弱さを強さに変えよう。
28見よ、わたしは異邦人に彼らの弱さを示し、また信仰と希望と慈愛が彼らをわたしのもとに、すなわち、あらゆる義の源に導くことを彼らに示そう。」
29わたしモロナイは、これらの御言葉を聞くと慰めを得て言った。「おお、主よ、あなたの義の御心が行われますように。わたしはあなたが人の子らのために、彼らの信仰に応じて働かれることを存じています。
30ヤレドの兄弟がゼリン山に向かって、『移れ』と言うと、移りました。もし彼に信仰がなかったならば、移らなかったでしょう。ですから、人々が信仰を持った後に、あなたは働かれます。
31このようにあなたは、弟子たちに御自身を現されました。彼らが信仰を持ち、あなたの御名によって語った後に、あなたは大いなる力をもって彼らに御自身を現されました。
32わたしはまた、あなたの言われたことを覚えています。あなたは御父の住まいの中に、人のために住む所を用意したと言われました。人がもっと大きな希望を持てるようにするためでした。ですから、人は希望を持たなければなりません。さもなければ、あなたの用意してくださった場所に受け継ぎを得ることができません。
33さらに、わたしはあなたの言われたことを覚えています。あなたは、世のために御自分の命を捨てるほどこの世を愛したと言われました。あなたは再び御自分の命を得て、人の子らのための場所を用意するために、御自分の命を捨てられたのです。
34あなたが人の子らに対して抱いておられたこの愛が慈愛であることを、わたしは存じています。ですから、人は慈愛を持たなければ、あなたが御父の住まいに用意してくださった場所を受け継ぐことができません。
35ですから、あなたの言われたこのことから、もし異邦人がわたしたちの弱さを見て慈愛を持たなければ、あなたは彼らを試し、彼らのタラントを、彼らがすでに得ているものまでも取り上げて、もっと豊かに持っている者たちに与えられるということが分かります。」
36そしてわたしは、異邦人が慈愛を持てるように、主が彼らに恵みを授けてくださることを主に祈った。
37そこで主はわたしに言われた。「たとえ彼らに慈愛がなくても、あなたにとっては問題ではない。あなたは忠実であったので、あなたの衣は清くされるであろう。また、あなたは自分の弱さを認めたので、強くされて、わたしが父の住まいに用意した場所に座せるようになるであろう。」
38さて、わたしモロナイは、キリストの裁きの座の前で会うときまで、異邦人とわたしの愛する同胞に別れを告げる。その裁きの座の前で、すべての人は、わたしの衣があなたがたの血で汚れていないことを知るであろう。
39またそのとき、あなたがたはわたしがイエスにまみえたことと、イエスが顔と顔を合わせてわたしと話をされたことと、人が人に語るようにまったく謙遜に、イエスがわたしの言語でわたしにこれらのことについて話されたことを知るであろう。
40しかし、わたしは物を書き記す力が弱いので、少ししか書き記さなかった。
41わたしは、預言者たちと使徒たちが書き記してきたイエスを求めるように、あなたがたに勧めたい。そうすれば、父なる神と主イエス・キリストと、この御二方のことを証される聖霊の恵みが、とこしえにあなたがたの内にとどまるであろう。アーメン。