1 さて、シュールはオメルをもうけ、オメルがシュールに代わって統治した。また、オメルはヤレドをもうけ、ヤレドは息子たちと娘たちをもうけた。
2 そして、ヤレドは父に背き、ヘテの地に行って住んだ。彼は巧みな言葉で多くの人にへつらい、とうとう王国の半分を得るに至った。
3 そして彼は王国の半分を得ると、父を攻め、父を連れ去って囚われの状態に置き、囚われの状態で仕えさせた。
4 オメルは彼の統治の間、生涯の半分を囚われの身で過ごした。それから彼は息子たちと娘たちをもうけ、その中にエズロムとコリアンタマーがいた。
5 この二人は自分たちの兄ヤレドの行ったことを非常に怒り、軍隊を組織してヤレドを攻めた。そして夜に紛れて、二人は彼を攻めたのである。
6 そして彼らは、ヤレドの軍隊を滅ぼしてしまうと、ヤレドも殺してしまおうとした。するとヤレドは、殺さないでほしい、そうすれば王国を父に譲り渡そうと言って懇願した。そこで彼らは彼の命を許した。
7 さて、ヤレドは王国と世の誉れに執着していたので、王国を失ったことを非常に悲しく思った。
8 ところで、ヤレドの娘は非常に利口であったので、父が悲しんでいるのを見て、父のために王国を取り戻す策を講じようとした。
9 ヤレドの娘は非常に美しかった。そこで彼女は父と語って言った。「父上はどうしてそのようにひどく悲しんでおられるのですか。わたしたちの先祖が大いなる深みを渡って持って来た記録を、お読みになったことがないのですか。①秘密のはかりごとによって王位と大きな栄華を得た、昔の人々についての話があるではありませんか。
10 父上、キムノルの息子のエーキシを迎えにやってください。まことに、わたしは美しいので、彼の前で①踊り、彼を喜ばせて、わたしを妻にしたいと思わせるようにしましょう。もし彼がわたしを妻にしたいと父上に願ったら、そのとき父上は、『王であるわたしの父の首をわたしのところに持って来れば娘を与えよう』と言ってください。」
11 オメルはエーキシの友人であった。さて、ヤレドがエーキシを迎えにやると、ヤレドの娘は彼の前で踊って彼を喜ばせたので、彼は彼女を妻にしたいと思った。そして、彼はヤレドに、「あなたの娘をわたしに妻として下さい」と言った。
12 そこで、ヤレドは彼に言った。「王であるわたしの父の首をわたしのところに持って来れば娘を与えよう。」
13 そこでエーキシは、ヤレドの家に自分の親族を皆集めて言った。「わたしがこれから頼むことについて、わたしに忠誠を誓ってくれるだろうか。」
14 そこで彼らは皆、エーキシが求めた援助を行わない者はだれでも首をはねられ、また、エーキシから知らされたことを何事でも漏らす者はだれでも命を失うと、天の神にかけて、また天にかけ、地にかけて、さらに自分の頭にかけて彼に①誓った。
15 そして、彼らはエーキシに同意した。そこでエーキシは、権力を求めて昔の人々が行った①誓いを彼らに立てさせた。これらの誓いは、世の初めから人殺しであった②カインから伝えられてきたものである。
16 この誓いは、民にこの誓いを立てさせて民を暗闇の中にとどめるために、また権力を求める者に権力を得させ、殺人と略奪と偽りと、あらゆる悪事とみだらな行いを犯させるために、悪魔の力によって保たれてきたものであった。
17 ヤレドの心の中に、これらの昔のことを探り出す気持ちを起こさせたのは、ヤレドの娘であった。そして、ヤレドがその気持ちをエーキシの心の中に起こさせたので、エーキシは自分の親族と友人たちに誓いを立てさせ、もっともらしい約束で彼らを惑わして、自分の求めることを何事でも行わせたのであった。
18 そして、彼らは昔の人々のように①秘密結社を作った。この結社は、神の目から見て、どのようなものにも増して最も忌まわしく、邪悪なものである。
19 主は秘密結社によって事を行われることはなく、また主は、人が血を流すことを望まれず、人が造られて以来あらゆることにおいてそれを禁じてこられた。
20 さて、わたしモロナイは、彼らの誓いの方法と結社の様式について書き記さない。これらがあらゆる民の中にあり、レーマン人の中にもあることが、わたしに知らされたからである。
21 これらが、わたしの今述べているこの民の①滅亡を引き起こしたのである。また、ニーファイの民の滅亡も同じである。
22 権力と利益を得るために、このような秘密結社が全地に広がるまで支援する国民は、見よ、どのような国民でも滅ぼされる。なぜならば、秘密結社によって流される主の聖徒たちの①血が、秘密結社への②報復を訴えて地からいつまでも主に叫ぶのに、主が秘密結社に報復なさらないということはあり得ないからである。
23 おお、あなたがた異邦人よ、これらのことがあなたがたに知らされるのは、神の知恵にかなっている。それによってあなたがたが罪を悔い改めることができるようにするためであり、また①権力と利益を得るために築かれるこれらの殺人結社に支配されることのないようにするためであり、その業、すなわち滅亡の業があなたがたに及ばないようにするためである。もしこれらのことが起こるのを許すならば、永遠なる神の罰の剣があなたがたに下り、あなたがたは打ち倒され、滅びるであろう。
24 そこで、主はあなたがたに、これらのものがあなたがたの中に起こるのを見るときに、自分たちがひどい状態にいるという意識に目覚めるようにと命じておられる。この秘密結社があなたがたの中にあるからである。殺された者たちの血のゆえに、秘密結社は災いである。これらの者たちの血が、秘密結社への、また秘密結社を築いた者たちへの報復を訴えて、地から叫ぶからである。
25 さて、秘密結社を築く者はあらゆる地、国民、国々の①自由を覆そうとする。そして、秘密結社はあらゆる民の滅亡をもたらす。それはあらゆる偽りの父である悪魔によって築かれるからである。悪魔はわたしたちの始祖を②だましたあの偽り者であり、また初めから人に殺人を犯させたあの偽り者であり、また人々の心をかたくなにして、初めから人々に預言者を殺させ、石で打たせ、追い出させたあの偽り者である。
26 そこでわたしモロナイは、これらのことを書き記すように命じられている。このことによって、悪がなくなるようにするためであり、またサタンが人の子らの心を①支配する力を持つことなく、彼らが絶えず善を行うように②促されてあらゆる義の源に来て、救われる時が来るようにするためである。