1さて見みよ、わたしは、言こと葉ばで民たみに多おおくのことを教おしえてきた。（しかし、わたしたちの言こと葉ばを版はんに刻きざむのは難むずかしいので、わたしは自じ分ぶんの言こと葉ばを少すこししか書かき記しるすことができない。）わたしたちは、版はんに書かき記しるすことは必かならず残のこることを知しっている。

2しかしながら、版はんでないほかのものに書かき記しるすことは、すべて朽くちて消きえ去さってしまうに違ちがいない。しかし、わたしたちは子し孫そんと愛あいする同胞はらからに、わたしたちについて、すなわち彼かれらの先せん祖ぞについて少しょう々しょう知しらせるために、版はんにわずかばかりの言こと葉ばを書かき記しるすことができる。

3さて、このことをわたしたちは喜よろこんでいる。わたしたちは、愛あいする同胞はらからとわたしたちの子し孫そんが感かん謝しゃの心こころをもってこれらを受うけ、またこれらを見みて、自じ分ぶんたちの最さい初しょの先せん祖ぞのことを悲かなしみや侮あなどりではなく、喜よろこびをもって知しるようになることを望のぞみながら、これらの言こと葉ばを版はんに刻きざむことに励はげんでいる。

4わたしたちがこれらのことを書かき記しるしてきたのは、わたしたちがキリストのことを知しっていたということと、キリストの来らい臨りんの何なん百びゃく年ねんも前まえにキリストの栄えい光こうを待まち望のぞんでいたこと、また、わたしたちばかりでなく、前まえの時じ代だいの聖せいなる預よ言げん者しゃもすべてキリストの栄えい光こうを待まち望のぞんでいたことを、彼かれらが知しることができるようにするためである。

5見みよ、預よ言げん者しゃたちはキリストを信しんじ、キリストの名なによって御おん父ちちを拝はいした。また、わたしたちも、キリストの名なによって御おん父ちちを拝はいしている。モーセの律りっ法ぽうは、わたしたちの心こころをキリストへ向むけるものであるから、わたしたちは今いまそれを守まもっている。そして、そのためにわたしたちは聖きよめられ、義ぎとされているのである。それはまさに、息子むすこイサクをささげるようにとの神かみの命めい令れいに従じゅう順じゅんであった、荒あれ野ののアブラハムが義ぎとされたのと同どう様ようである。アブラハムがイサクをささげようとしたことは、神かみと神かみの独ひとり子ごの相そう似じであった。

6それゆえ、わたしたちは預よ言げん者しゃの書しょを調しらべている。また、わたしたちには多おおくの啓けい示じがあり、また預よ言げんの霊れいがある。このように証あかしするものが数かず々かずあるので、わたしたちは希き望ぼうを抱いだいており、わたしたちの信しん仰こうは揺ゆるぎないものになっている。実じっ際さいにイエスの名なによって命めいじれば、木き々ぎも山やま々やまも海うみの波なみも従したがうほどである。

7にもかかわらず、主しゅなる神かみはわたしたちの弱じゃく点てんを示しめされる。それは、このようなことを行おこなう力ちからがわたしたちにあるのは、神かみの恵めぐみと人ひとの子こらに対たいする神かみの大おおいなるへりくだりによるということを、わたしたちに分わからせるためである。

8見みよ、主しゅの業わざは大おおいなる驚おどろくべきものである。主しゅの奥おく義ぎの深ふかさは何なんと計はかり知しれないことか。主しゅの道みちを知しり尽つくすことは、とても人ひとにできることではない。主しゅの道みちは、啓けい示じされないかぎりだれも知しることはできない。それゆえ同胞はらからよ、神かみの啓けい示じを侮あなどってはならない。

9見みよ、神かみの言こと葉ばの力ちからによって人ひとは大だい地ちの面おもてに現あらわれ、その大だい地ちも神かみの言こと葉ばの力ちからによって創そう造ぞうされた。したがって、神かみが御み言こと葉ばを発はっして世せ界かいが存そん在ざいするようになり、また、御み言こと葉ばを発はっして人ひとが造つくられたとするならば、おお、どうして神かみは御ご自じ分ぶんの意いのまま、思おもいのままに、大だい地ちやその面おもてにある神かみの手てにより造つくられたものに、命めい令れいをお下くだしになれないことがあろうか。

10それゆえ、同胞はらからよ、主しゅに助じょ言げんしようとしないで、主しゅの手てから助じょ言げんを受うけるようにしなさい。見みよ、あなたがたは、主しゅが、造つくられたすべてのものに知ち恵えと公こう正せいと深ふかい憐あわれみをもって助じょ言げんを与あたえられることを知しっているからである。

11それゆえ、愛あいする同胞はらからよ、神かみの独ひとり子ごキリストの贖しょく罪ざいを通つうじて神かみと和わ解かいしなさい。そうすれば、あなたがたはキリストの内うちにある復ふっ活かつの力ちからによって復ふっ活かつすることができる。またあなたがたは信しん仰こうを持もち、キリストが肉にくにあって御ご自じ身しんを現あらわされる前まえに、キリストにある栄えい光こうを確かっ固ことして待まち望のぞんでいたので、キリストの初はつ穂ほとして神かみのためにささげられるのである。

12さて、愛あいする人ひと々びとよ、わたしがこれらのことをあなたがたに述のべているのを驚おどろいてはならない。キリストの贖しょく罪ざいについて語かたるのに、また復ふっ活かつと来きたるべき世よについての知ち識しきを得えるのと同おなじように、キリストについて完かん全ぜんな知ち識しきを得えるのに、何なんの差さし支つかえがあろうか。

13見みよ、わたしの同胞はらからよ、預よ言げんする者ものには、人ひと々びとが理り解かいできるように預よ言げんさせなさい。御み霊たまは真しん実じつを語かたり、偽いつわりを言いわれることがない。したがって、御み霊たまは現げん在ざいのことをありのままに示しめし、未み来らいのこともまた、ありのままに述のべられる。それゆえ、これらのことはわたしたちの救すくいのために、わたしたちに分わかりやすく示しめされているのである。しかし見みよ、これらのことについての証しょう人にんは、わたしたちだけではない。神かみは昔むかしの預よ言げん者しゃにもこれらのことを語かたっておられる。

14しかし見みよ、ユダヤ人じんは強ごう情じょうな民たみであって、彼かれらは分わかりやすい言こと葉ばを侮あなどり、預よ言げん者しゃたちを殺ころし、自じ分ぶんたちの理り解かいできないものを求もとめた。それゆえ、彼かれらは的まとのかなたに目めを向むけたために盲もう目もくとなり、盲もう目もくのために堕だ落らくしなければならなかった。神かみが分わかりやすいことを彼かれらから取とり去さり、彼かれらが理り解かいできないことを多おおく伝つたえられたからであり、彼かれらがそれを望のぞんだためである。彼かれらが望のぞんだので、神かみはそのように行おこなわれ、彼かれらはつまずいた。

15そして今いま、わたしヤコブは、預よ言げんするように御み霊たまに促うながされている。わたしは、わたしの内うちにある御み霊たまの働はたらきによって、ユダヤ人じんが、自じ分ぶんたちがつまずいたためにそのつまずいた石いしを拒こばむことを知しっている。その石いしは、その上うえに建たて物ものを建たてることのできる安あん全ぜんな土ど台だいであった。

16しかしながら見みよ、聖せい文ぶんによると、その石いしは、ユダヤ人じんがその上うえに建たて物ものを建たてることのできる、偉い大だいな、最さい後ごの、しかも唯ゆい一いつの堅けん固ごな土ど台だいとなるものである。

17さて、わたしの愛あいする人ひと々びとよ、これらの者ものがその堅けん固ごな土ど台だいを拒こばんだ後のちに、どうしてそれを隅すみのかしら石いしとして、その上うえに建たて物ものを建たてることができるであろうか。

18見みよ、わたしの愛あいする同胞はらからよ、もしわたしが何なにかによって強つよい御み霊たまを失うしなったり、あなたがたを心しん配ぱいするあまり口くちごもったりするようなことがなければ、わたしはあなたがたにこの奥おく義ぎを明あきらかにしよう。