1「主なる神であるわたしが彼らを追い出した後、アダムは、主なるわたしが命じたように、地を耕し、野のすべての獣を治め、額に汗してパンを食べることを始めた。彼の妻エバも彼とともに働いた。
2アダムはその妻を知り、彼女は彼に息子、娘たちを産んだ。そして、彼らは増えて、地を満たし始めた。
3そのときから、アダムの息子、娘たちは二人ずつ地に分かれて、土地を耕し、家畜の群れを飼い始めた。そして、彼らもまた、息子、娘たちをもうけた。
4アダムとその妻エバは主の名を呼び、エデンの園の方向から彼らに語る主の声を聞いた。しかし、主を目にすることはなかった。彼らは主の前から締め出されていたからである。
5主は彼らに、主なる彼らの神を礼拝し、主へのささげ物として群れの初子をささげるようにと戒めを与えた。アダムは主の戒めに従順であった。
6多くの日の後、主の天使がアダムに現れて言った。『あなたはなぜ主に犠牲をささげるのか。』そこで、アダムは彼に答えた。『わたしには分かりません。ただ、主がわたしに命じられたのです。』
7すると、天使は語って言った。『これは、御父の、恵みと真理に満ちている独り子の犠牲のひながたである。
8したがって、あなたが行うすべてのことを御子の御名によって行いなさい。また、悔い改めて、いつまでも御子の御名によって神に呼び求めなさい。』
9その日、御父と御子のことを証する聖霊がアダムに降り、そして言った。『わたしは初めから、また今から後とこしえに、父の独り子である。あなたは堕落したので、贖いを受けることができる。全人類、まことにそれを望むすべての者も同様である。』
10その日、アダムは神をたたえ、満たされて、地のすべての氏族について預言し始めて言った。『神の御名がたたえられるように。わたしの背きのゆえに、わたしの目は開かれた。わたしはこの世で喜びを受け、再び肉体にあって神にまみえるであろう。』
11彼の妻エバは、これらすべてのことを聞き、喜びながら言った。『わたしたちの背きがなかったならば、わたしたちは決して子孫を持つことはなく、また善悪も、贖いの喜びも、神がすべての従順な者に与えてくださる永遠の命も、決して知ることはなかったでしょう。』
12アダムとエバは神の名をたたえ、息子、娘たちにすべてのことを知らせた。
13すると、サタンが彼らの中にやって来て、『わたしもまた、神の子だ』と言い、『そのことを信じてはならない』と彼らに命じて言った。そこで、彼らはそれを信じることなく、神よりもサタンを愛した。人々はそのときから、肉欲や官能におぼれ、悪魔に従う者となり始めた。
14主なる神は至る所で聖霊によって人々に呼びかけ、悔い改めるように命じた。
15また、『御子を信じて自分の罪を悔い改めるすべての者は救われる。しかし、信じないで悔い改めないすべての者は、罰の定めを受ける。御言葉は堅い定めとして神の口から出たので、それらは成就しなければならない』と告げた。
16アダムとその妻エバは、神に呼び求めることをやめなかった。また、アダムはその妻エバを知り、彼女は身ごもってカインを産み、『わたしは主から男子を得ました。ですから、この子は神の御言葉を拒まないでしょう』と言った。しかし見よ、カインは耳を傾けずに言った。『わたしが知るべき主とはだれですか。』
17彼女はまた身ごもり、弟アベルを産んだ。アベルは主の声に聞き従った。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
18カインは神よりもサタンを愛した。サタンは彼に命じて、『主にささげ物をせよ』と言った。
19時がたって、カインは地の産物を持って来て、主へのささげ物とした。
20アベルもまた、自分の羊の群れの初子の中から肥えたものを持って来た。主はアベルとそのささげ物に目を留めた。
21しかし、主はカインとそのささげ物には目を留めなかった。サタンはこれを知って喜んだ。カインは大いに憤って、顔を伏せた。
22そこで、主はカインに言った。『なぜ憤るのか。なぜ顔を伏せるのか。
23あなたは正しいことをしていれば、受け入れられる。もし正しいことをしていなければ、罪が門口で待ち伏せており、サタンはあなたを得ることを望んでいる。あなたがわたしの戒めに聞き従わなければ、わたしはあなたを引き渡し、彼の望みどおりになる。そして、あなたは彼を治めるであろう。
24これから先、あなたは彼が言う偽りの父となる。あなたは滅びと呼ばれる。あなたもまた世に先立って存在していた。
25そして将来、「これらの忌まわしい行いはカインから出た。彼は神から出たさらに大いなる勧告を拒んだからである」と言われるであろう。これが、あなたが悔い改めなければ、わたしがあなたに与えるのろいである。』
26カインは憤って、もはや決して主の声にも、主の前を聖く歩んだ弟アベルの声にも耳を傾けなかった。
27アダムとその妻は、カインとその兄弟たちのゆえに主の前に嘆き悲しんだ。
28さて、カインはその兄弟の娘の一人を妻とし、彼らは神よりもサタンを愛した。
29サタンはカインに言った。『おまえののどにかけてわたしに誓え。それを話せば、おまえは死ぬのだ。また、おまえの兄弟たちに、その頭と生ける神とにかけて、それを話さないと誓わせよ。それを話せば、おまえの兄弟たちは必ず死ぬだろう。おまえの父に知られないためにこのようにせよ。そうすれば、今日、弟アベルをおまえの手に渡そう。』
30そして、サタンはカインに、彼の命じるとおりに行うことを誓った。これらのことはすべてひそかに行われた。
31カインは言った。『実に、わたしはこの大いなる秘密の主マハンであり、人を殺して利を得ることができる。』それで、カインは大マハンと呼ばれ、自分の悪事を誇った。
32カインは野に行き、弟アベルと語った。そして、野にいたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
33そして、カインは自分がしたことを誇って言った。『わたしは自由だ。弟の羊の群れは必ずわたしの手に入る。』
34主はカインに言った。『弟アベルは、どこにいるのか。』カインは答えた。『知りません。わたしは弟の番人でしょうか。』
35主は言った。『あなたは何をしたのか。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいる。
36今あなたはのろわれて、この土地を離れなければならない。この土地が口を開けて、あなたの手から弟の血を受けたからである。
37あなたが土を耕しても、土はもはやあなたのために実を結ばない。あなたは、地上をさまよい歩く放浪者となるであろう。』
38すると、カインは主に言った。『サタンが、弟の羊の群れのゆえにわたしを誘惑したのです。また、わたしも憤っていました。あなたが弟のささげ物を受け入れて、わたしのものを受け入れてくださらなかったからです。わたしの罰は重くて負い切れません。
39あなたは今日、わたしを御前から追い出されました。わたしは御顔から隠されて、地上をさまよい歩く放浪者とならなければなりません。わたしを見つける者は、わたしが罪悪を犯したので、わたしを殺すでしょう。これらのことは主から隠されていません。』
40そこで、主なるわたしは彼に言った。『だれでもあなたを殺す者は、七倍の復讐を受けるであろう。』そして、主なるわたしは、カインを見つける者がだれも彼を殺すことのないように、彼にしるしを付けた。
41カインは主の前から締め出され、その妻および多くの兄弟たちとともに、エデンの東、ノドの地に住んだ。
42カインはその妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。彼はまた、多くの息子、娘たちをもうけた。カインは町を建て、その町を息子の名にちなんでエノクと名付けた。
43エノクには、イラデと、ほかの息子、娘たちが生まれた。イラデは、メホヤエルと、ほかの息子、娘たちをもうけた。メホヤエルは、メトサエルと、ほかの息子、娘たちをもうけた。メトサエルはレメクをもうけた。
44レメクは二人の妻をめとった。一人の名はアダといい、もう一人の名はチラといった。
45アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住む者の先祖であり、彼らは家畜を飼う者であった。その弟の名はユバルといい、竪琴と笛を奏するすべての者の先祖となった。
46チラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅と鉄の工作をするすべての者の教師であった。トバル・カインの妹はナアマといった。
47レメクはその妻たち、アダとチラに言った。『わたしの声を聞け、レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしは受けた傷のために人を殺し、受けた打ち傷のために若者を殺した。
48カインのための復讐が七倍ならば、レメクのための復讐は七十七倍であろう。』
49レメクはカインに倣ってサタンと契約を結び、それにより彼は、サタンによってカインに授けられた大いなる秘密の主、大マハンとなった。ところが、エノクの息子イラデは彼らの秘密を知り、アダムの子らにそれを暴き始めた。
50そこで、レメクは怒って彼を殺した。利を得るために弟アベルを殺したカインのようではなく、彼は誓いのために殺したのである。
51カインの時代から秘密結社があり、彼らの業は闇の中にあって、彼らは自分の同胞を知っていた。
52そこで、主はレメクとその家族、ならびにサタンと契約を結んだすべての者をのろった。彼らが神の戒めを守らなかったからである。神は彼らが戒めを守らないことを不快に思い、彼らを教え導くことをしなかった。彼らの業は忌まわしいものであって、すべての人の子らの中に広がり始めた。それは人の息子たちの中にあった。
53人の娘たちの中では、これらのことは語られなかった。レメクがその妻たちにその秘密を語り、彼女たちが彼に背いてこれらのことを広く告げ知らせ、同情を寄せなかったからである。
54そのためにレメクはさげすまれ、追い出され、そして死ぬことを恐れて人の子らの中に出て来なかった。
55このように、闇の業はすべての人の子らの中に広がり始めた。
56神はひどいのろいをもって地をのろい、悪人を、また神が造ったすべての人の子らを怒った。
57彼らが神の声に聞き従おうとせず、またその独り子、すなわち、時の中間に来ると神が宣言した者、創世の前に備えられた者を信じようとしなかったからである。
58このように、福音は最初から宣べ伝えられ、神の前から遣わされた聖なる天使たちによって、神自身の声によって、また聖霊の賜物によって告げ知らされた。
59このようにして、すべてのことが聖なる儀式によってアダムに確かにされ、福音が宣べ伝えられ、世の終わりまで福音が世にあるようにという定めが出されたのである。このとおりであった。アーメン。」