1見よ、わたしモロナイは父モルモンの記録を書き上げる。見よ、わたしが書く事柄はわずかであり、それは父から指示されたものである。
2さて、クモラでの大規模ですさまじい戦いの後、見よ、南方の地方に逃げていたニーファイ人は、レーマン人によって狩り出され、とうとう全員殺されてしまった。
3わたしの父も彼らに殺された。そして、わたしだけが一人生き残り、わたしの民の滅亡の悲話を書き記すことになった。見よ、わたしの民はもう世を去ってしまったので、わたしは父から命じられたことを果たす。わたしはこの後レーマン人に殺されるかどうか分からない。
4そこでわたしは、記録を書き記して、地の中に隠そう。そうすれば、わたしはどこへ行こうとかまわない。
5見よ、父はこの記録を作り、この記録の目的を書いた。そしてまことに、わたしも版に余地があればそれを書きたいが、その余地はない。また、あらがねもない。わたしは孤独である。わたしの父は戦いで殺され、親族も全員殺されてしまった。わたしには友もなく、行く所もない。また、主がわたしをいつまで生かしてくださるか、わたしには分からない。
6見よ、わたしたちの主、救い主の来臨から四百年が過ぎ去った。
7また見よ、レーマン人は、わたしの民ニーファイ人を町から町へ、地方から地方へと追い詰めて、とうとうニーファイ人は一人もいなくなった。その滅亡はひどかった。まことに、わたしの民ニーファイ人の滅亡は、ひどく驚くべきものである。
8そして見よ、それを行われたのは主の手である。また見よ、レーマン人も互いに戦い合っていて、この地の全面が殺人と流血の絶えない有様を見せており、だれも戦争の終わる日を知らない。
9さて見よ、わたしはもうニーファイ人のことについて述べない。地の面にいるのはレーマン人と強盗だけで、ほかにはだれもいないからである。
10イエスの弟子たちのほかに、まことの神を知っている者はだれもいない。イエスの弟子たちは民の悪事がひどくなるまではこの地に住んでいたが、悪事が非常にひどくなったので、主は彼らが民とともにいることをお許しにならなかった。彼らが今この地の面にいるかどうか、だれも知らない。
11しかし見よ、父とわたしはかつて彼らに会い、彼らはわたしたちを教え導いてくれた。
12この記録を受け入れ、この中に不完全なところがあるからといって非難したりしない者は、これらのことよりも大いなることを知るであろう。見よ、わたしはモロナイである。できれば、わたしはあなたがたにすべての事柄を知らせたい。
13見よ、これでこの民について述べるのを終える。わたしはモルモンの息子であり、わたしの父はニーファイの子孫であった。
14わたしは、主に託してこの記録を隠す者である。この記録の版は、主の命令があるので、金銭上の価値はまったくない。利益を得るためにこの記録の版を所有する者はだれもいないと、主が実際に言っておられるからである。しかし、この版の記録は非常に価値がある。これを明るみに出す者に、主は祝福を授けられるであろう。
15これを明るみに出す力は、神から与えられるのでなければ、だれも持つことができない。神は、神の栄光にひたすら目を向けながらこれを明るみに出すように、あるいは長い間散らされている昔の主の聖約の民の幸いのためにこれを行うように望んでおられる。
16この記録を明るみに出す者は幸いである。神の言葉のとおりに、これは暗闇から明るみに出される。まことに、これは地から出され、暗闇から輝き出て、民に知られるようになる。それは神の力によって行われる。
17もし誤りがあるとすれば、それは人の誤りである。しかし見よ、わたしたちはまったく誤りを見いださない。それでも、神はすべてのことを御存じであるので、非難する者は、地獄の火に投げ込まれる恐れのないように用心しなければならない。
18「わたしに見せよ。さもなければ、おまえを打つ」と言う者は、主から禁じられていることを命じないように気をつけなければならない。
19それは見よ、軽率に裁く者は同じように軽率に裁かれ、人の報いは当人の行いに応じるものだからである。したがって、打つ者は同じように主から打たれるであろう。
20見よ、「『人は打ってはならないし、裁いてもならない。裁きはわたしのすることである。報復もわたしのすることである。わたしが仕返しをする』と、主が言われる」と、聖文は述べている。
21主の業に対して、またイスラエルの家である主の聖約の民に対して、怒りと争いの言葉を吐き、「主の業を絶やそう。主はイスラエルの家に立てた聖約を思い出しはしない」と言う者は、切り倒されて火の中に投げ込まれる恐れがある。
22主のすべての約束が果たされるまで、主の永遠の目的は続くからである。
23イザヤの預言を調べなさい。見よ、わたしはそれを書き記すことはできないが、まことに見よ、あなたがたに言っておく。この地を所有していて、わたしよりも前に世を去った聖徒たちは叫ぶ。まことに、彼らは地から主に叫ぶ。そして、主が生きておられるように、主は彼らと交わした聖約を思い出されるであろう。
24主は、同胞のためにささげられた聖徒たちの祈りを御存じである。また主は、彼らの信仰も御存じである。彼らは、主の名によって山々を移すことができた。彼らは、主の名によって地を揺り動かすこともできた。また、主の言葉の力によって牢を地に倒した。まことに、主の言葉の力のために、火の燃える炉も彼らを害することができず、猛獣も毒蛇も危害を加えることができなかった。
25また見よ、彼らの祈りは、将来これらのものを世に出すことを主から許される者のためにもささげられた。
26だれも、これらのものは出て来ることはないと言ってはならない。主が言われたので、これらのものは必ず出て来るからである。これらのものは主の手によって地から出て来る。だれもそれを妨げることはできない。それは、奇跡がやんでしまったと言われる時代に出て来る。あたかも人が死者の中から語るかのようにそれは出て来る。
27聖徒たちの血が秘密結社と闇の業のことで主に叫んで訴える時代に、それは出て来る。
28まことに、神の力が否定され、もろもろの教会が汚れたものとなり、教会の者たちが高慢な心で高ぶる時代に、それは出て来る。まことに、教会の指導者たちと教師たちが心を高慢にして、彼らの教会に属する者たちさえねたみの目で見るようになる時代に、それは出て来る。
29まことに、ほかの国々の火と暴風雨と立ち込める煙のことを伝え聞く時代に、それは現れ出る。
30またそのとき、様々な地における戦争と戦争のうわさと地震のことも伝え聞くであろう。
31まことに、地の面にひどい汚れがあり、殺人と強盗と偽りと欺きとみだらな行いとあらゆる忌まわしい行いがある時代に、また、「これを行え。あれを行え。それをしてもかまわない。主は終わりの日に弁護してくださる」と言う者が多くいる時代に、それは出て来る。しかし、このように言う者は災いである。彼らは苦汁の中におり、罪悪の縄目を受けているからである。
32まことに、「わたしのところに来なさい。金銭と引き換えにあなたがたの罪は赦される」と言う教会が設けられている時代に、それは出て来る。
33おお、邪悪でよこしまで強情な民よ、なぜあなたがたは利益を得ようとして自分自身のために教会を設けたのか。なぜあなたがたは神の聖なる言葉を変えて、自分に罰の定めを招くようにしたのか。見よ、神の啓示に頼りなさい。見よ、これらのことがすべて必ず成就する時が、その時代に来るからである。
34見よ、これらのことがあなたがたの中に起こるその時代に、間もなく必ず出て来るものについて、主は大いなる驚くべきことをわたしに示してくださった。
35見よ、わたしはあなたがたがここにいるかのように語っているが、あなたがたはまだこの世にいない。しかし見よ、イエス・キリストがわたしにあなたがたを見せてくださったので、わたしはあなたがたが行うことを知っている。
36わたしは、あなたがたが心を高慢にして歩くことを知っている。心を高慢にして高ぶることをしない者はわずかしかいない。高慢な者は、非常に華やかな衣服を着て、ねたみや争い、悪意、迫害、またあらゆる罪悪に染まる。また、あなたがたの教会、まことにすべての教会は、あなたがたの心が高慢なために汚れたものになってしまった。
37見よ、あなたがたは、貧しい人と乏しい人、病人と苦しんでいる人を愛する以上に、金銭や財産、華やかな衣服を愛し、あなたがたの教会を飾ることを大切にする。
38おお、腐食するもののために自分自身を売る汚れた者たちよ、偽善者たちよ、教師たちよ、なぜあなたがたは神の聖なる教会を汚したのか。なぜあなたがたは、キリストの名を受けるのを恥じるのか。なぜあなたがたは、無窮の幸福が、決して尽きないあの不幸な状態よりも大きな価値があることを考えないのか。それは世の誉れのためである。
39なぜあなたがたは、命のないもので自分自身を飾りながら、飢えている人や乏しい人、着る物のない人、病人、苦しんでいる人を見過ごしにし、彼らに注意を払わないのか。
40まことに、なぜあなたがたは、利益を得るために秘密の忌まわしい行いを企て、やもめを主の前で嘆き悲しませ、みなしごも主の前で嘆き悲しませ、彼らの父と夫の血があなたがたの頭に報復が及ぶよう訴えて、地の中から主に叫ぶようにさせるのか。
41見よ、報復の剣があなたがたに迫っている。主はもはや聖徒たちの嘆願をそのままにしておかれないので、主があなたがたに彼らの血のために報復される時がすぐに来るであろう。