1さて、わたしはニーファイ人の中に出て行き、彼らをもう助けないと以前に誓った誓いを取り消した。すると彼らは、わたしなら自分たちを苦難から救い出せるであろうと考え、わたしにもう一度ニーファイ人の軍の指揮権を与えた。
2しかし見よ、わたしは主の裁きが彼らに下ることを知っていたので、望みを持っていなかった。彼らが自分たちの罪悪を悔い改めず、自分たちを造られた御方に請い願うことなく、ただ自分たちの命のために戦っていたからである。
3さて、わたしたちがヨルダンの町に逃げていたので、レーマン人はわたしたちを攻めた。しかし見よ、彼らは撃退され、そのときにはその町を奪えなかった。
4そして、彼らはまたわたしたちを攻めたが、わたしたちはその町を守り通した。ほかにもニーファイ人が守り通した町が幾つもあり、レーマン人はそれらの町のとりでに遮られて、わたしたちの先にある地方に入って行って、わたしたちの国の民を滅ぼすことができなかった。
5しかし、わたしたちが素通りしてきた土地と、わたしたちが集めなかった土地に住む者たちは、すべてレーマン人によって滅ぼされ、彼らの集落や村や町は火で焼かれた。このようにして、三百七十九年が過ぎ去った。
6そして第三百八十年に、レーマン人がまた攻め寄せて来たので、わたしたちは勇ましく彼らに立ち向かった。しかし、それはまったく無駄であった。彼らは人数が非常に多く、ニーファイ人の民を足で踏みにじったからである。
7そこで、わたしたちはまた逃げた。そして、逃げ足がレーマン人の追撃よりも速かった者は逃れ、レーマン人より速くなかった者は襲われて殺された。
8さて見よ、わたしモルモンは、自分の目で見たこのような流血と虐殺の恐ろしい光景を人々の前に持ち出して、人々をひどく苦しめたいとは思わない。しかしわたしは、これらのことが将来必ず知らされ、現在隠されているすべてのことが将来屋根の上で明らかにされることを知っており、
9またこれらのことが、将来これらの民の残りの者と異邦人に知らされることも知っている。主は、異邦人がこの民を散らし、この民が彼らの中で価値のない者と見なされるようになると言われた。わたしは以上のことを知っているので、あえて自分がこれまで見てきたことを全部は記録せず、小さな短くまとめた記録を書き記している。それは、そのように命じられたからであり、またあなたがたが、この民の悪事のことであまりひどく嘆くことのないようにするためである。
10さて見よ、わたしはこのことをこの民の子孫と、また異邦人に、すなわち、イスラエルの家を心にかけ、自分たちの祝福がどこから来るかをはっきり自覚して知っている異邦人に述べる。
11わたしは、このような人々がイスラエルの家の災いについて嘆くことを知っているからである。まことに、彼らはこの民の滅亡を嘆き、また、この民が悔い改めをしなかったためにイエスの腕の中にしっかり抱き締められることがなかったことを嘆くであろう。
12わたしは、これらのことをヤコブの家の残りの者に書き伝える。これらのことをこのように書き伝えるのは、邪悪な者がこれらの記録を伝えることはないと、神から知らされているからである。そこで、これらのことが主御自身がふさわしいと思われるときに伝わるように、主に託してこれを隠しておかなければならない。
13これがわたしの受けた命令である。そして見よ、これらのことは、主が御自分の知恵でふさわしいと見なされるときに、主の命令どおりに伝わるであろう。
14そして見よ、これらのことは、ユダヤ人の中の信仰のない者に伝わる。これらのことが伝わる目的は、彼らにイエスが生ける神の御子キリストであられることを信じさせることである。また、ユダヤ人、さらに正確に言えば、イスラエルの家に属するすべての者を、主なる彼らの神がお与えになった受け継ぎの地に連れ戻すという、あの御父の偉大な永遠の目的が、御父のこの上なく愛する御子を通じて成し遂げられ、御父の聖約が果たされるようにすることである。
15またこの民の子孫に、異邦人から伝わる主の福音をさらによく信じさせることである。この民はこの後散らされて、これまでわたしたちの中になかったほど、すなわちかつてレーマン人の中になかったほど、暗い、汚れた、不快な民になる。これは彼らの不信仰と偶像礼拝のためである。
16見よ、主の御霊は、すでにこれらの者たちの先祖を励ますのをやめてしまった。そして彼らは、この世の中でキリストも神もなく生きており、風に吹かれるもみ殻のようにあちらこちらに追いやられている。
17彼らはかつて喜ばしい民であって、キリストを自分たちの羊飼いとし、まことに、父なる神からも導かれていた。
18ところが見よ、彼らは今、サタンによってあちらこちらに誘われている。まるでもみ殻が風に吹かれているようであり、また船が帆や錨のないまま、あるいは舵を取る手段のないまま波間に漂っているようである。彼らは、ちょうどその船のようである。
19見よ、主は、彼らがこの地で受けることのできた祝福を、将来この地を所有する異邦人のために残しておられる。
20しかし見よ、将来この民は異邦人に追われ、散らされるであろう。そして、彼らが異邦人に追われ、散らされた後、見よ、主はアブラハムとイスラエルの家に属するすべての者に立てられた聖約を思い出されるであろう。
21また主は、彼らのためにささげられた義人の祈りも思い出されるであろう。
22おお、異邦人よ、あなたがたは悔い改めて悪の道から離れなければ、どうして神の力の前に立てるであろうか。
23あなたがたは自分が神の手の内にあるのを知らないのか。あなたがたは神が一切の権威を持っておられることと、神の大いなる命令で将来大地が巻き物のように巻かれることを知らないのか。
24だからあなたがたは、悔い改めて神の前にへりくだりなさい。さもなければ、神はあなたがたに罰を下される。すなわち、ヤコブの子孫の残りの者が、ライオンのようにあなたがたの中に出て行って、あなたがたを引き裂くであろう。そして、救う者はだれもいない。