1ニーファイの死後、ニーファイの弟ヤコブがニーファイの民に語った言葉。
2「さて、わたしの愛する同胞よ、わたしヤコブは、まじめに自分の務めを尊んで大いなるものとするという責任を神から受けており、また、わたしの衣からあなたがたの罪を取り除きたいので、今日こうして神殿に来て、あなたがたに神の御言葉を告げる。
3あなたがたも知っているように、わたしは召された職務にこれまで努め励んできた。しかし今日のわたしは、あなたがたの幸いを願う気持ちと心配がこれまでよりも大きいので、心が沈んでいる。
4見よ、あなたがたは、今までわたしが宣べてきた主の御言葉に従ってきた。
5しかし見よ、わたしの言うことをよく聴きなさい。そして、わたしが天地の全能の創造主の助けによって、あなたがたの思いについて告げることができるということを知りなさい。それはどういうことかといえば、あなたがたが、わたしにとって非常に忌まわしく、また神にとっても忌まわしく思われる罪を犯し始めていることである。
6まことに、あなたがたの心が邪悪であることをあなたがたに証言しなければならないのは、わたしにとって悲しいことであり、またわたしはこのために、造り主の御前で恥じて縮み上がる思いである。
7また、あなたがたの妻子の前で、あなたがたのことをひどくあからさまに話さなければならないのは、わたしにとって悲しいことである。あなたがたの妻子の多くは、神の御前にあって非常に感じやすく、清く、繊細である。これは神にとって喜ばしいことである。
8そしてあなたがたの妻子は、喜びをもたらす神の御言葉、まことに傷ついた心を癒す御言葉を聞こうとして、ここに来たことと思う。
9それゆえ、わたしの心は重い。というのは、神から受けた厳しい命令があるので、どうしてもあなたがたの罪悪についてあなたがたを戒めなければならず、そのようにすることで、すでに傷を負っている者たちを慰め、その傷を癒す代わりに、ますますその傷を深くすることになってしまうからである。また、傷を負っていない者たちに対しても、喜びをもたらす神の御言葉を味わわせる代わりに、短刀で彼らの心を刺し貫き、繊細な心を傷つけることになってしまうからである。
10しかし、この務めが大変であっても、わたしは神の厳しい命令に従ってこれを果たし、心の清い者と打ち砕かれた心を持つ者の前で、また全能の神が鋭い目で御覧になる所で、あなたがたの悪事と忌まわしい行いについて、あなたがたに告げなければならない。
11したがって、わたしは神の御言葉の率直さのまま、あなたがたに事実を告げなければならない。見よ、わたしが主に尋ねたところ、主の御言葉がわたしに下って、『ヤコブよ、明日神殿に行き、わたしがあなたに授ける言葉をこの民に告げ知らせなさい』と言われた。
12さて見よ、わたしの同胞よ、わたしがあなたがたに告げ知らせる言葉は次のとおりである。あなたがたと子孫のための約束の地であるこの地に非常に豊富にある金や銀、そのほかあらゆる貴重なあらがねを、あなたがたの多くは探し求めるようになってきた。
13このようにしてあなたがたは、神の御心の御手があなたがたにほほえんで、たくさんの富を手に入れた。ところがある者たちは、ほかの者より豊かに富を得たことで心が高慢になり、また自分の衣服が高価なことで強情になって高ぶり、さらに、自分はほかの者よりも優れていると思って同胞を苦しめている。
14さて、わたしの同胞よ、あなたがたはこのようなことを行っていて、神から義とされると思うか。見よ、わたしはあなたがたに言う。そうではない。かえって神はあなたがたを罪に定められる。このようなことを続けるならば、神の裁きが速やかに下るに違いない。
15おお、神があなたがたを刺し貫き、一目であなたがたを地に打ち倒すこともおできになることを、あなたがたに示されるように。
16おお、神があなたがたを、この罪悪と忌まわしい行いから解き放してくださるように。おお、あなたがたが神の命じられる御言葉を聴き、心の高慢によって霊に滅びを招かないように。
17同胞を自分自身のように思いなさい。そして、すべての人と親しくし、あなたがたのように彼らも豊かになれるよう、所有物を惜しみなく与えなさい。
18しかし、富を求める前に神の王国を求めなさい。
19キリストに望みを抱いてから富を求めるならば、富は得られるであろう。しかし、富を求める目的は、裸でいる者に着せ、飢えている者に食物を与え、束縛されている者を自由にし、病人や苦しんでいる者を救うなど、善を行うことである。
20さて、わたしの同胞よ、わたしは高慢についてあなたがたに語った。神から与えられたものを心の中で誇って、隣人を苦しめ悩まし、虐げてきた者よ、あなたがたは今そのことをどのように考えているか。
21このようなことは、すべての人を造られた御方にとって忌まわしいことであるとは思わないか。神の目には、人は皆等しく貴い存在である。すべての人はちりから造られている。そして、神の戒めを守り、とこしえに神をあがめるという同一の目的をもって、神により造られたのである。
22わたしはこれで、高慢についてあなたがたに語ることを終わりにするが、もっとひどい罪悪について話さなくてよかったならば、あなたがたのことで心に非常に大きな喜びを感じたであろう。
23しかし、あなたがたのもっとひどい罪悪のために、神の御言葉がわたしに重くのしかかっている。見よ、主はこう言われる。『この民の罪悪はますますひどくなっている。彼らは聖文を理解しておらず、ダビデとその息子ソロモンについて書き記されていることをもって、自分たちがみだらな行いをしていることの言い訳にしようとしている。
24見よ、ダビデとソロモンは事実、多くの妻とそばめを持ったが、それは、わたしの目に忌まわしいことであった。』
25そして、主は言われる。『それゆえわたしは、わたしの腕の力によってこの民をエルサレムの地から連れ出し、ヨセフの腰から出た者の中から一本の義にかなった枝をわたしのために起こせるようにした。
26それゆえ主なる神であるわたしは、この民が昔の者たちのような行いをするのを許さない。』
27したがって、わたしの同胞よ、わたしの言うことを聞き、主の御言葉に耳を傾けなさい。万軍の主はこう言われる。『あなたがたの中のどの男も、妻は一人しか持ってはならない。また、そばめは一人も持ってはならない。
28主なる神であるわたしは、婦人たちの貞節を喜ばしく思う。みだらな行いは、わたしの目に忌まわしいことである。
29さて、この民は、わたしの戒めを守らなければならない。さもなければ、地は民のためにのろわれるであろう。』
30万軍の主は言われる。『将来わたしのために子孫を起こしたいと思う時が来れば、わたしは民に命じよう。その命令がない間は、民はこれらのことに聞き従わなければならない。
31見よ、主なるわたしは、エルサレムの地に住むわたしの民の娘たちと、わたしの民が住む全地の娘たちが、夫の悪事と忌まわしい行いのために悲しむのを見、嘆くのを聞いた。
32わたしがエルサレムから導き出したこの民の美しい娘たちの叫びが、わたしの民の男たちのことをわたしに訴えるのを、わたしはほうっておくことはできない。
33男たちは、わたしの民の娘たちを、彼女たちの優しさに付け込んで奴隷のようにしてはならない。さもなければ、わたしは男たちにひどいのろいを下し、彼らを滅ぼしてしまうであろう。男たちは昔の者のようにみだらな行いをしてはならない。』万軍の主はこのように言われる。
34さて見よ、わたしの同胞よ、あなたがたは父リーハイにもこの戒めが与えられたことを知っている。したがって、あなたがたは以前からこの戒めを知っていた。にもかかわらず、あなたがたは、行ってはならないこれらのことを行ったので、重い罪の宣告を受けたのである。
35見よ、あなたがたは、同胞であるレーマン人よりもひどい罪悪を犯した。あなたがたは妻子の前に良くない手本を示して、感じやすい妻の胸を張り裂けさせ、子供たちの信頼を失った。彼らの心のむせび泣きが神のみもとに上って、あなたがたを訴えている。また、あなたがたを責める神の御言葉が厳しいために、多くの心が深い傷を負って死んでしまった。」