第29課：イリノイ州ノーブーに神の王国を築く

第29課

イリノイ州ノーブーに神の王国を築く

目的

初期の聖徒たちがノーブーに神の王国を築くためにどのように努力したかを教え，彼らの模範に従うよう生徒を励ます。

準備

以下の聖句とその他の資料を祈りの気持ちで研究する。
1. 教義と聖約124：1－21，87－90，97－110；126
2. 『わたしたちの受け継ぎ』46－47，49－52，55ページ。
『生徒用学習ガイド』（35686　300）の29課の資料に目を通し，レッスンで学習ガイドを参照する方法を計画する。
何人かの生徒に『わたしたちの受け継ぎ』から以下の出来事の概要を発表する準備をしてくるよう依頼する。
1. 「イリノイへの脱出」から，イリノイ州に逃れようとしたジョン・ハマーと家族が経験した試練（46－47ページ）。
2. 「ノーブーの宣教師の犠牲」（49－52ページ）。
3. 「扶助協会」（55ページ）。
扶助協会の会長または顧問に扶助協会の目的について話してもらいたい場合は，前もって招待しておく。1999年中央扶助協会集会で発表された扶助協会の宣言を読んでもらうよう依頼する。この宣言は本書の166ページにとじられている。また，別個に印刷されているのでそれを入手することもできる（36175　300）。

レッスンの展開

導入

適切であれば，以下の活動または教師が考えた活動をレッスンの始めに行う。

以下の文を黒板に書く。

「死者のバプテスマの教義が啓示された。」
「神殿のエンダウメントが初めて執行された。」
「扶助協会が組織された。」

これらの出来事はどこで起きたでしょうか。

これらを含むそのほか多くの大切な出来事がイリノイ州ノーブーで起きたことを説明する。本課では初期のノーブーの聖徒たちが神の王国を築くためにどのように努力したか，またわたしたちが今日，神の王国を築くに当たって彼らの模範にどのように従うことができるかについて話し合う。

話し合いと応用

生徒の必要に最も適した資料を祈りの気持ちで選ぶ。聖句で述べられている原則に関連した経験を紹介するよう生徒に勧める。

1．聖徒たちはイリノイに逃れた

ジョセフ・スミスがミズーリ州リバティーの監獄に収監されていた間，聖徒をミズーリ州から脱出させるおもな責任は，十二使徒定員会会長のブリガム・ヤングに与えられていたことを説明する。1838年の末，聖徒たちは迫害の手から逃れるために，ミシシッピ川を渡ってイリノイ州に移り始めた。本書の274ページと『生徒用学習ガイド』の31ページにある地図3にはミズーリ州を追われた聖徒のたどったルートが示されている。

割り当てておいた生徒に，イリノイ州に逃れようとしたジョン・ハマーと家族が経験した試練について話してもらう（『わたしたちの受け継ぎ』46－47ページ）。

聖徒たちは最初，イリノイ州クインシーに集合した。ジョセフ・スミスがリバティーの監獄から戻ってから，彼らはミシシッピ川を35マイル（約56キロ）北上して，当時コマースと呼ばれていた小さな村へ移動した。聖徒たちは直ちに沼地を灌漑し，作物を植え，家を建て始めた。1839年の夏，預言者はその場所の名をノーブーと改めた。「わたしたちの市の名（ノーブー）はヘブライ語に起源があり，美しい場所を意味します。また，安息という意味も含んでいます」と預言者は述べている（Teachings of the Prophet Joseph Smith，ジョセフ・フィールディング・スミス選〔1976年〕182）。

1840年12月イリノイ州はノーブーに憲章を持つことを許可し，軍隊，市裁判所，大学の設立を認めた。教会が急速に発展し，新しい改宗者が集合したため，ノーブーはイリノイ州で2番目の大都市となった。

1841年1月19日，預言者ジョセフ・スミスは一つの啓示を受けた。主はこの啓示の中でノーブーにおける聖徒の責任に関する戒めを与えられた。この啓示は教義と聖約124章に記録されている。教義と聖約124章と初期のノーブーの聖徒が示した模範を研究することにより，神の王国においてわたしたち一人一人が大切な役割を担っていることをはっきりと理解できることを説明する。

2．ノーブーから派遣された宣教師は数千人の人々を改宗に導いた

ノーブーでは十二使徒定員会会員を含む多くの教会員が宣教師として奉仕する召しを受けたことを説明する。割り当てておいた生徒からノーブーの聖徒の伝道について報告してもらう（『わたしたちの受け継ぎ』55－58ページ）。

ウィルフォード・ウッドラフ長老はイギリスに到着してから数か月のうちに，多くの人々にバプテスマと確認の儀式を施した。その後に彼は次のような経験をしている。

「わたしは聖徒たちとそれに初めて会う人々が大勢集まっている集会に出席した。最初の賛美歌を歌っている間に主の御霊がわたしにとどまり，神の声があった。『あなたはこの集会を最後に，長い間彼らと会うことができない。』わたしはこの言葉に驚いた。その地区で多くの約束を取り付けていたからである。わたしは人々に話すために立ち上がると，この集会を最後に，長い間会うことができないと告げた。彼らもわたしと同じくらい驚いた。集会が終わると4人の人々がバプテスマを受けるために進み出た。わたしたちは水に入り，彼らにバプテスマを施した。

翌朝，わたしは一人で主の前へ行き，主の御心をうかがった。わたしが受けた答えは，南へ行かなければならないというものだった。主はそこで偉大な業を用意しておられ，多くの人々が主の言葉を待っているからだった。」

それから2日間，ウッドラフ長老は南へと旅を続けて，ヘリフォードシャーのジョン・ベンボウの農場までやって来た。ベンボウ氏と妻のジェーンは彼を大喜びで迎え，600人を超える男女がユナイテッドブレズレンと名付けたグループを作っていることを話した。ウッドラフ長老はこう語っている。

「ユナイテッドブレズレンと呼ばれるこの集団は光と真理を探し求めて，その時点で彼らが知り得る限界まで来ていた。彼らは自分たちの前に道が開かれて光と知識が与えられ，救いを得る正しい道が示されるよう絶えず主に願い求めていた。これらのことを聞いたとき，わたしがハンリーの町で働いているときにその場所を離れて南へ行くよう命じられた理由をはっきりと知った。ヘリフォードシャーには神の王国に多くの聖徒を集合させるための大きな収穫の畑があったからである。」

イギリスのこの地域におけるウッドラフ長老の努力により，また「神の祝福を通して，8か月の間に一人の例外を除いて600人のユナイテッドブレズレン全員を含む1,800人以上の人々を教会に導く」ことができたのである（Wilford Woodruff: History of His Life and Labors，マシアス・F・カウリー編〔1909年〕116－119）。

わたしたちはウッドラフ長老の経験から何を学ぶことができるでしょうか。

イギリスで伝道した宣教師たちの犠牲と努力によって教会が強められたことを指摘する。ハロルド・B・リー長老はこの注目すべき時期に起きた事柄を次のように要約している。

「1840年から1841年の1年間で，正確に言えば1年と14日で，十二使徒のうち9人が英国伝道部で働く召しを受けました。皆さんが〔ノーブーの〕歴史を記憶しているならば，当時は教会が現在の神権時代で最も過酷な迫害を受けていた時期でした。その1年と14日の間に十二使徒のうち9人が同僚とともに大英帝国のあらゆる著名な都市と町で教会を確立したのでした。彼らは7,000から8,000人の改宗者にバプテスマを施しました。モルモン書を5,000冊，賛美歌集を3,000冊，パンフレットを5万部印刷し，……そして，1,000人をアメリカに移民させたのでした。」（Conference Report，1960年4月，108）

3．ノーブーの聖徒の模範は義にかなって終わりまで堪え忍ぶことの大切さを示している

教義と聖約124章にはノーブー時代に生きていた個人に対して与えられた多くの指示と約束が含まれていることを説明する。以下の聖句を生徒とともに読んで，どのような指示と約束が与えられたかを明らかにする。

教義と聖約124：12－14（ロバート・B・トンプソンに与えられた）。
教義と聖約124：16－17（ジョン・C・ベネットに与えられた）。
教義と聖約124：18－19（ライマン・ワイトに与えられた）。
教義と聖約124：87－90，97－102（ウィリアム・ローに与えられた）。
教義と聖約124：103－10（シドニー・リグドンに与えられた）。

ノーブー時代のほとんどの聖徒は忠実であり，豊かな祝福を受けた。しかしながら，ジョン・C・ベネット，ライマン・ワイト，ウィリアム・ロー，シドニー・リグドンは背教して，自分たちが受けた祝福の多くを失った。

あなたは義にかなって終わりまで堪え忍ぶ努力をする中で，どのような助けを受けてきましたか。
教義と聖約124：15を生徒とともに読む。主はハイラム・スミスのどのような特質を褒めておられるでしょうか（以下の引用参照）。心の高潔さを養うにはどうすればよいでしょうか。正しいことを愛する気持ちを養うにはどうすればよいでしょうか。

預言者ジョセフ・スミスは兄のハイラムについてこのように述べている。「わたしはすべての兄弟がわたしの愛する兄ハイラムのようであってほしいと祈りたい。彼は子羊の柔和さと，ヨブのごとき高潔さ，簡潔に言えばキリストの柔和さと謙遜さを持ち合わせている。わたしは死をしのぐ愛をもって彼を愛している。わたしは彼の中に非難すべき何ものも見たことがない。彼もまたわたしに対してそうである。」（M・ラッセル・バラードによる引用，「預言者ジョセフ・スミスの家族」『聖徒の道』1992年1月号，7）

4．ノーブーにおいて扶助協会が組織された

聖徒たちはノーブーで生活していたとき，新しい教会を組織して祝福されたことを説明する。預言者ジョセフ・スミスは神権の権能により，扶助協会を組織した。割り当てておいた生徒に『わたしたちの受け継ぎ』から「扶助協会」の項の概要を発表してもらう（55ページ）。

扶助協会の目的を強調するために，1999年中央扶助協会集会で発表された以下の宣言を読む。扶助協会の会長か顧問にこの提示を依頼していれば，ここで行ってもらう。

「わたしたちは神に愛されている神の霊の娘であり，わたしたちの人生には意味と目的と方向性があります。世界中の姉妹のきずなの中で，わたしたちは一つとなって，救い主であり，模範者であるイエス・キリストに献身します。わたしたちは信仰と徳とビジョンと慈愛を持った女性として，以下のことを行います。

祈りと聖文の研究を通して，イエス・キリストへの証を増し加えます。

聖霊の導きに従うことにより，霊的な強さを求めます。

結婚生活や家族，家庭を堅固なものとするために，自らをささげます。

母親としての務めに気高さを，女性であることに喜びを見いだします。

奉仕や善に喜びを見いだします。

人生と学問を愛します。

真理と義を守ります。

神権を地上における神の権能として支持します。

神殿の祝福を喜び，わたしたちの神聖な行く末を理解し，昇栄に向かって努力します。」（メアリー・エレン・スムート「シオンの娘よ，喜び歌え」『リアホナ』2000年1月号，110－111）

扶助協会はどのようにして信仰を築き，証を強めているでしょうか。扶助協会はどのようにして夫婦や家族の関係を強めているでしょうか。扶助協会は援助を必要としている人々をどのように助けているでしょうか。
あなたは扶助協会を通してどのような祝福を受けてきたでしょうか。

結び

ノーブーの初期の聖徒は伝道活動を通して，そのほか多くの方法によって神の王国を築くために自らの生活をささげたことを強調する。わたしたちは彼らの模範に従うことによって，神の王国の建設を助けるためにもっと忠実に奉仕することができる。

本課で話し合った事柄が真実であることを御霊に導かれるままに証する。

教えるためのそのほかのアイデア

以下の資料はレッスンの概要を補足するためのものである。この中の幾つかをレッスンに取り入れてもよい。

1．初期の聖徒はミズーリ州に神殿を建てる責任を免除された

主はインディペンデンスとファーウェストに神殿を建てるよう命じられたが，聖徒たちはミズーリで神殿を建てなかった（教義と聖約57：1－3；97：10－12；115：7－12）。主は教義と聖約124：49－53でどのような原則を教えておられるでしょうか。今日のわたしたちにとってこの原則はどのように適用されるでしょうか。

2．主の言葉を成就するための使徒たちの働き

教義と聖約118章には，十二使徒に「大海を越えて」福音を宣べ伝えるようにとの主の指示が記されている。十二使徒は1839年4月26日にミズーリ州ファーウェストの神殿用地から出発することになっていた。しかし，1839年3月にほとんどの聖徒はミズーリ州からイリノイ州に逃れていた。暴徒たちはファーウェストに戻ったすべての指導者を威嚇していた。

これらの威嚇を受けていたにもかかわらず，ブリガム・ヤングと4人の使徒，さらに数人の指導者は1839年4月26日が明けての朝にファーウェストの神殿用地に戻って来た。彼らはそこで2人の使徒，ウィルフォード・ウッドラフとジョージ・A・スミスを聖任した。彼らは歌い，祈ってから，大きな石を転がして神殿予定地の隅まで運んだ。それから間もなく，彼らはイギリスへの伝道に出発した。

3．世界への宣言

教義と聖約124：1－7を生徒とともに読む。主は預言者ジョセフ・スミスに何を書くように命じられたでしょうか。

預言者ジョセフ・スミスとほかの人々は預言者が1844年に殉教するまでこの宣言の作成に携わっていたことを説明する。十二使徒定員会はその後に文書を完成させて，1845年4月6日に正式に出版した。

この宣言は世界の王，合衆国大統領，あらゆる国家の支配者と国民に向けられたものである。教会の指導者は，神が再び天より語られたこと，救い主の再臨の道を備えるために神の王国と神権が回復されたことを宣言した。さらに，以下の事柄を宣言した。

「わたしたちはいと高き所より与えられた権能によってあなたがたに警告の言葉を送ります。すべての人は聖なる御方の尊厳の前に悔い改め，幼子のようにへりくだり，打ち砕かれた心と悔いる霊をもってイエスのもとへ行き，罪の赦しのためにキリストの御名によってバプテスマを受けるよう命じます。……するとあなたは，人類に対する憐れみに満ちたこの偉大にして最後の神権時代の使徒と長老の按手によって聖なる御霊の賜物を受けるでしょう。

この御霊はわたしたちの証が真実であることをあなたに証することでしょう。また，あなたの思いを照らし，あなたにとって預言と啓示の霊となるでしょう。それは過去の出来事について理解と記憶を与え，また未来のことを明らかにするでしょう。

また，偉大にして栄えある数々の賜物，すなわちイエスの御名による按手によって病を癒す賜物，病を癒される賜物，悪魔を追い出す賜物，さらには示現を受け，目に見えない世界から遣わされた天使や霊と語り合う賜物などが与えられるでしょう。

聖なる使徒職と神権の力と権能によって，つまり儀式を受けることにより与えられるこの御霊の光を通して，あなたは理解の力を授けられ，光の子となるでしょう。このようにして，あなたは地上に降りかかるあらゆることから逃れて，人の子の前に立つ用意をするのです。

わたしたちは以上の教義がイエス・キリストの完全な教義すなわち福音であり，唯一真の永遠不変の福音であること，人が救いを得るために地上に明らかにされた唯一の計画であることを証します。」（ジェームズ・R・クラーク編，Messages of the First Presidency of The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints，全6巻〔1965－1975年〕第1巻，252－254）

1975年，十二使徒定員会のエズラ・タフト・ベンソン会長は総大会においてこの文書の一部を引用し，教会が再びこれらの真理を世界に宣言することを言明した。

「それゆえ，わたしたちは主の謙遜な僕として，国々の指導者たちに向かい，神の御前にへりくだるよう，また神の霊感と導きを求めるよう勧めます。また，統治者と民に対しても，その邪悪な行いを悔い改めるよう勧めます。主に心を向け，主の赦しを求め，へりくだって主の王国のもとに結束してください。ほかに道はありません。もしこのように行うならば，あなたがたの罪は消され，平安がもたらされ，そしてそれが持続されることでしょう。またキリストの再臨に備えて，神の王国の一員となるでしょう。けれども，もし悔い改めることを拒み，神の霊感の下に語る使いたちの証を受け入れず，神の王国のもとに結束しなければ，邪悪な人々に約束されたあの恐るべき裁きと災難があなたがたに下ることでしょう。」（「世に与えるメッセージ」『聖徒の道』1976年2月号，60）

4．「心と進んで行う精神」ビデオ・プレゼンテーション

ビデオカセット『教義と聖約および教会歴史からの教え』（53933　300）を利用できるならば，「心と進んで行う精神」（8分）を見せるとよい。このプレゼンテーションは福音を宣べ伝えることを通してヒーバー・C・キンボール長老の主に仕えることへの熱心さを描写したものである。また，イギリスで主に仕えるためにカートランドとノーブーを出発するキンボール長老を支援する妻と子供たちの献身が描かれている。

本課2で，このプレゼンテーションを実施するとよい。プレゼンテーションについて生徒と話し合う際に以下の質問を活用する。

教義と聖約64：33－34を生徒とともに読む。キンボール長老は主の業に心を傾けていることをどのように示していたでしょうか。キンボール長老は「進んで行う精神」を持っていることをどのように示していたでしょうか。単に従順であることと，従順で進んで行う精神を持っていることとの間にはどのような違いがあるでしょうか。
キンボール長老と家族はシオンの大義を前進させるために進んで犠牲を払う気持ちを示しました。今日，主の業で奉仕するために必要とされる犠牲にはどのようなものがあるでしょうか。わたしたちの犠牲とキンボール長老の家族の犠牲にはどのような違いがあるでしょうか。わたしたちの犠牲とキンボール長老の家族の犠牲にはどのような類似点があるでしょうか。

5．預言者ジョセフ・スミスの赤れんが作りの店

預言者ジョセフ・スミスの赤れんが作りの店はノーブー時代を通じて，教会で最も大切な建物の一つであったことを説明する（以下の写真参照）。この建物は商店としての機能を持つほかに，宗教と社交，市民活動の拠点となっていた。聖徒たちはそこに公立の学校を設置した。また教会や市民の集会，若人の集いのためにこの建物を使った。1842年3月17日にはこの店で扶助協会が組織された。神殿が完成されるまでは，この建物の2階が儀式の部屋として使用された。現在の神権時代の最初のエンダウメントはここで授けられた。