日曜学校―福音の教義
第28課:「おお,神よ,あなたはどこにおられるのですか」


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「おお,神よ,あなたはどこにおられるのですか」

目的

救い主に心を向けることによって逆境を堪え忍べるようにする。

準備

  1. 以下の聖句とその他の資料を祈りの気持ちで研究する。

    1. 教義と聖約121:1-33122章と本課で採り上げられているそのほかの聖句。

    2. 『わたしたちの受け継ぎ』41-48ページ

  2. 『生徒用学習ガイド』(35686 300)の28課の資料に目を通し,レッスンで学習ガイドを参照する方法を計画する。

  3. 前もって一人か二人の生徒に,逆境から何を学び,逆境を通してどのように成長したかについて短く話すよう依頼する。この割り当てを受けることに良い気持ちを感じているか必ず確認する。

  4. 「導入」にある活動を行う場合は,生徒全員に配る紙と鉛筆を用意しておく。

レッスンの展開

導入

適切であれば,以下の活動または教師が考えた活動をレッスンの始めに行う。

生徒全員に紙と鉛筆を配る。これまでに経験した困難な出来事や逆境を一つ書いてもらう。書き終えたら,逆境から何を学び,逆境を通してどのように成長したかを書くように言う。

本課では救い主に心を向けることによって逆境を堪え忍ぶことについて学ぶことを説明する。レッスンの後半で,紙に書いた事柄を紹介する機会があることを告げる。

話し合いと応用

生徒の必要に最も適した資料を祈りの気持ちで選ぶ。聖句で述べられている原則に関連した経験を紹介するよう生徒に勧める。

ミズーリで起きた以下の出来事を簡単に紹介する。『わたしたちの受け継ぎ』41-44ページ153ページの年表,本書の275ページと『生徒用学習ガイド』の30ページにある地図2を参照するとよい。

1833年の末にジャクソン郡を追われた聖徒たちは,近くのクレイ郡に避難する場所を見つけた。そして,1836年に退去を要求されるまで同地にとどまった。クレイ郡を去った聖徒たちは約60マイル(100キロ)北へ移動して,ファーウェストとほかに小規模の定住地を築いた。

しばらくの間教会はミズーリ州北部で繁栄した。人口が急速に増加し,ファーウェストとアダム・オンダイ・アーマンで神殿用地が奉献された。しかし,そこでも一部の聖徒の間で衝突が続いた。オリバー・カウドリとデビッド・ホイットマーを含む数人の指導者が破門された。

教会員同士の衝突に加えて,ミズーリ州北部のほかの住民との間でも衝突が続いた。1838年に入ると,暴徒と軍隊による攻撃は激しさを増した。10月25日,クルックト川で起きた戦いで十二使徒のデビッド・W・パッテンを含む3人の教会員が殺害された。2日後,ミズーリ州のリルバーン・W・ボッグズ知事は「モルモンは敵と見なし,撲滅するか,州外に追放しなければならない」との命令を発した(History of the Church第3巻,175)。

10月30日,ハウンズミルにおいて約200人の暴徒が少年を含む17人の男性を虐殺した。翌日,ジョセフ・スミスと約50人の教会指導者はえんざいによって逮捕された。これらの指導者のほとんどは3週間以内に釈放されたが,ジョセフとハイラム・スミスを含む6人は無罪であったにもかかわらず引き続き拘留された。11月に彼らはまずインディペンデンスに連行され,次いでリッチモンドに移送され,さらにリバティーに移された。それから1839年4月までリバティーの監獄で拘留されることになる。

リバティーの監獄の状態は劣悪だった。囚人は地下の部屋で監禁され,暗く,寒く,不潔でまさに地下牢そのものだった。食物はわずかしか与えられず,そのうえ不潔だった。預言者と同僚たちは石の床の上にわずかなわらを敷き,粗末な毛布をかけて寝るしかなかった。天上は低く,ジョセフとハイラムを含む何人かの兄弟たちはまっすぐに立つことさえできなかった。彼らはさらに死の恐怖に絶えずさらされていた。

預言者が拘留されている間,ミズーリ州の約8,000人の聖徒が知事の撲滅令によって家を放棄しなければならなかった。彼らの多くはイリノイ州へ逃れる途中で,暴徒から略奪され,たたかれ,殺された。預言者は聖徒たちの苦しみを聞かされて,主に助けを願い求めた。主はそれに対して幾つかの力強い啓示を与えられた。預言者はそれらをイリノイ州クインシーにいてミズーリから脱出する聖徒たちを指揮していた教会指導者にあてた手紙の中に書き添えている。これらの啓示の一部は現在,教義と聖約121章,122章,123章となっている。

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Liberty Jail

リバティーの監獄。1838年から1839年にかけてここに不当に拘瑠されていた間,預言者ジョセフ・スミスは現在,教義と聖約121章,122章,123章に記録されげいる啓示を受けた。

1.リバティーの監獄におけるジョセフ・スミスの祈りと主の答え

  • 教義と聖約121:1-6を生徒とともに読む。これらの節によれば,ジョセフ・スミスは当時どのような気持ちを味わい,どのように考えていたでしょうか。ジョセフは主に何を願い求めていたでしょうか。これらの節でジョセフ・スミスが主に願い求めている事柄を読んで,あなたは何を考え,何を感じたでしょうか。

  • ジョセフ・スミスの祈りに対する主の答えは教義と聖約121:7-33教義と聖約122章に記されています。教義と聖約121:7-10を生徒とともに読む。主はこれらの節でジョセフに何を教えておられるでしょうか。もしこれらの言葉があなたに告げられたとしたら,あなたはどのように感じるでしょうか。この答えから主についてどのようなことを学べるでしょうか。

次のことを指摘する。これらの啓示は「一時,指導の本拠地となっていたリバティーの監獄で与えられた。主の言葉である励ましと勧告が発せられる場所となったその監獄に聖徒たちは目を注ぐ。預言者がいるかぎり,そこは監獄ではなく神殿だった。瞑想と祈りの場所であった。……ジョセフ・スミスはこの粗末な監獄で神を呼び求め,そして神を見いだした。」(B・ H・ロバーツ,A Comprehensive History of the Church第1巻,526)

2.救い主はわたしたちの苦難と逆境を完全に理解しておられる

  • 一人の生徒に教義と聖約122:5-8を読んでもらい,その間ほかの生徒に自分が受けた試練について考えてもらう。救い主はどのようにして「すべての下に身を落と」されたのでしょうか(アルマ7:11-12教義と聖約19:16-19参照)。

    救い主はすべての下に身を落とされたので,わたしたちのすべての試練を完全に理解しておられることを説明する。救い主の受けられたこの上ない苦しみについて十二使徒定員会のニール・A・マックスウェル長老はこのように述べている。

    「永遠の贖いの一要素として,イエスは……すべての罪や悲しみを背負われ,すべての男性,女性,子供たちの苦痛をその身に受けられたとヤコブは語っています(2 ニーファイ9:21参照)。わたしたちに完全な愛を注いでくださっている主には,わたしたちをどのように助けたらよいかが分かっておられるのです。……主の贖いの力やすべてを取り巻く主の愛に勝るものはほかにありません。いばらの冠をかぶられた御方のことを思えば,わたしたちの生活が必ずしも幸福でないからと言って不平をならすことはできないはずです。」(「わたしが勝利を得たと同様に勝利を得なさい」『聖徒の道』1987年7月号,79-80)

  • わたしたちは救い主の慰めの力が及ばないような試練を経験するでしょうか(ヘブル4:15参照)。救い主の受けられた苦しみを知ることは,試練に遭っている間もわたしたちが忠実であるためにどのような助けとなるでしょうか。

  • イエスが贖罪を通して差し出しておられる慰めと強さをもっと多く受けるにはどうしたらよいでしょうか(ヘブル4:161 ペテロ5:6-11参照)。祈り,謙遜,イエス・キリストを信じる信仰は,わたしたちが逆境に置かれているときに,どのように強さを与えてくれるでしょうか。

3.逆境の目的

死すべき世においてわたしたちを試し,成長させるために逆境が神の計画に含まれていることを説明する。わたしたちは苦痛や試練,そのほかの困難を経験することをあらかじめ知ったうえで,地上に来た。

預言者ジョセフ・スミスは非常に多くの苦難を経験したため,それらの苦難は「生涯を通じてわたしの日常のことで〔あり〕……そして,わたしはパウロのように艱難を誇りと感じています」と述べた(教義と聖約127:2)。主はリバティーの監獄に収監されていた間の預言者に慰めと勧告を与えただけでなく,ほかにも多くの機会をとらえて逆境について預言者に教えられた。本課では残る時間を使って,教義と聖約に記されたこれらの教えを検討する。

  • 主は教義と聖約の中で逆境の目的についてどのようなことを明らかにしておられるでしょうか(以下の聖句を生徒とともに読む。明らかになった事柄を簡潔に黒板に書き出す)。

    1. 教義と聖約98:12,14-15101:4136:31(主は逆境がわたしたちの生活に及ぶままにしておかれる。それによってわたしたちを試し,わたしたちが主の聖約を守るかどうかを確認するためである)。主はなぜ主の民が「すべてのことにおいて試みを受け」ることを求めておられるのでしょうか。

    2. 教義と聖約101:1-2(一部の逆境はわたしたちの背きの結果としてもたらされる)。

    3. 教義と聖約122:7(主はわたしたちに経験を与え,成長を助けるために逆境を許しておられる)。

  • わたしたちが逆境の目的を理解していることは,どのように「それをよく堪え忍ぶ」ための助けとなるでしょうか(教義と聖約121:8)。

  • ある人々はすべての苦難は神から与えられた罰であると信じているが,それは間違いです。そう信じることにはどのような危険性があるでしょうか。義人にも逆境が及ぶのはなぜでしょうか。

    背罪は逆境がもたらされる一つの原因ではあるが,唯一の原因ではないことを強調する。「すべての事物には反対のものがなければならない」ので(2 ニーファイ2:11),義人に対しても逆境はもたらされる。一部の逆境は死すべき体が持つ欠点やもろさの自然の結果として来る。また,事故や,必ずしも背きではないわたしたち自身の選択によってももたらされる。そして,ほかの人々の選びによってももたらされる。神はわたしたちを守ることがおできになるが時々そうなさらないのは,「選択の自由と永遠の進歩が福音の基本となる律法である」ためである(スペンサー・W・キンボール,Faith Precedes the Miracle〔1973年〕96)。さらに,逆境は「わたしたちの人生において主御自身が目的を達成しようとしておられることから来るものです。試練を通してわたしたちをさらに鍛えようという目的です。」(リチャード・G・スコット「主を信頼する」『聖徒の道』1996年1月号,17)

    十二使徒定員会会員時代にハロルド・B・リー長老は次のように述べている。「イエス・キリストの福音に従っているからといって,逆境がわたしたちの生活には来ないという保証はありません。福音に従うことによって,強さと信仰を与えられ,その逆境を超越し,苦難を強いられている現在よりも輝く未来に目を向ける力を与えられるのです。」(A・セオドア・タトルによる引用,Conference Report,1967年10月,15;またはImprovement Era1967年12月号,47)

逆境の目的に関する聖句の教えとして,2 ニーファイ2:11アルマ32:5-662:41ヒラマン12:1-3を参照してもよい。

4.逆境を経験している人々に対する主の勧告

  • わたしたちが逆境を経験しているときの助けとして,主は教義と聖約の中でどのような勧告を与えておられるでしょうか(以下の聖句を生徒とともに読む。明らかになった事柄を簡潔に黒板に書き出す。幾つかの質問を選んで話し合いを展開する)。

    1. 教義と聖約24:831:954:10121:7(苦難の中で忍耐強くありなさい。その苦難は「つかの間にすぎない。」アルマ17:11も参照)。試練を堪え忍ぶ力を増し加えるにはどうすればよいでしょうか。ジョセフ・スミスの苦難はどのような意味から「つかの間」だったでしょうか。わたしたちはどうすれば主のように永遠の見地から逆境を理解することができるでしょうか。

    2. 教義と聖約98:1(喜び,感謝しなさい)。試しを受けている間もわたしたちはなぜ神に感謝すべきでしょうか。この上なく過酷な逆境にあっても,なお変わらずに受けている祝福にはどのようなものがあるでしょうか。

    3. 教義と聖約98:11(従順であって,「すべての善を固く守らなければならない」)。逆境を経験しているときに,従順でありにくいのはなぜでしょうか。

    4. 教義と聖約101:36-38(体ではなく霊を心にかけ,主を求めなさい)。わたしたちはこの勧告をどのように応用することができるでしょうか。

    5. 教義と聖約122:9(人が行うことを恐れてはならない。神はとこしえにわたしたちとともにおられるからである。教義と聖約98:13も参照)。

  • ある人たちは試練を通して成長し,強められているのに,ほかの人たちは試練に対して悪感情を抱くのはなぜでしょうか(アルマ62:49-51参照)。あなたは逆境に遭ったときにどのような聖文によって助けられたり,聖文から霊感を受けたりしたことがあるでしょうか。

  • 周りの人々は逆境を克服しようと努力しているあなたをどのように助けてくれたでしょうか。わたしたちは,どのように試練にあるほかの人を助けられるでしょうか。ほかの人々を助けるために,あなたが試練において経験したことをどのように役立てることができるでしょうか。わたしたちは自分が試しに遭っているさなかに,ほかの人々に仕えることによってどのような恵みを受けることができるでしょうか(ルカ9:24ガラテヤ6:2参照)。

  • 逆境のために絶望を感じるようなことがあった場合に,何をしたらよいでしょうか(アルマ36:3参照)。将来襲ってくるかもしれない大きな逆境に備えて力をつけておくには,今何をすべきでしょうか。

5.逆境にあっても忠実な人々に与えられる主の約束

  • 逆境にあっても忠実であり続ける人々に対して,主は教義と聖約の中でどのような約束をしておられるでしょうか。(以下の聖句の幾つかを生徒とともに読む。明らかになった事柄を簡潔に黒板に書き出す。幾つかの質問を選んで話し合いを展開する)。

    1. 教義と聖約3:824:8112:13122:4(主は,苦難を受けているわたしたちとともにおられ,傍らに立ち,癒してくださる。モルモン書ヤコブ3:1モーサヤ24:13-14アルマ36:27参照)。わたしたちが苦難を受けている間,主がともにいてくださることを知るのはなぜ大切でしょうか。あなたは試練を受けているときに主がともにおられたことを示すような経験をしたことがあるでしょうか。それはどのような経験でしたか。

    2. 教義と聖約58:2-4101:35-36103:12121:29127:4136:31(試練にあっても忠実な人々は栄光と喜び,そのほかの祝福を受ける)。

    3. 教義と聖約98:3122:7(すべてのことはわたしたちの益と主の栄光のために働く。教義と聖約90:24100:152 ニーファイ2:2ローマ8:28も参照)。逆境はどのようにわたしたちの益となるでしょうか。

       割り当てておいた生徒に逆境から何を学び,逆境を通してどのように成長したかについて短く話してもらう(「準備」3参照)。「導入」にある活動を行っていれば,ほかの生徒から紙に書いた事柄を話してもらう。「導入」にある活動を行っていなければ,逆境から何を学び,逆境を通してどのように成長したかについてほかの生徒たちに体験を話してもらう。

      ジェームズ・E・ファウスト長老は十二使徒定員会時代に,このように述べている。「わたしたちは金を吹きわける者の火を通り抜けるのである。そして人生の中で意味もなく重要でないものはかすのように溶かされて,わたしたちの信仰は輝きのある完全な強いものとなるのである。……これは神を身近に知ろうとする人々に要求される清めの代価の一部である。人は苦痛のさなかにあるとき,いっそう神の羊飼いの小さなささやきに耳を傾けようとするものである。」(「金を吹きわける者の火」『聖徒の道』1979年10月号,78)

      十二使徒定員会のマリオン・G・ロムニー長老はこのように語っている。

      「試練のさなかに神をのろって,霊的に死んだ人々が深い後悔と絶望の生活を過ごしているのをわたしは目にしてきました。一方では,とても耐え切れないと思われる重荷を背負いながら高きに上った人々も見てきました。

      最終的に,わたし自身も苦しみの中で主を求め,逆境と苦難によってひざまずかざるを得なくなったときに自分がこの上ない成長を遂げたことを知りました。」(Conference Report,1969年10月,60;またはImprovement Era1969年12月号,69)

    4. 教義と聖約121:8127:2(苦難のさなかで忠実な人々は高められる)。

  • 試練のさなかに置かれているときに,主が教義と聖約121:7で言われた平安をより多く感じるにはどうすればよいでしょうか(教義と聖約19:23も参照)。

結び

1839年4月,預言者をはじめとする兄弟たちはリバティーの監獄に5か月近く閉じ込められた後,裁判にかけられるためデイビーズ郡へ,その後にブーン郡へ連行された。一行がブーン郡へ向かう途中,一部の役人が告訴は成立しないという結論を出したため,護衛は彼らを釈放した。そこでジョセフ・スミスと兄弟たちはイリノイ州へ向かい,家族やほかの聖徒たちと合流した。

逆境のさなかにあったリバティーの監獄で与えられた啓示を読むよう生徒に勧める。イエス・キリストは贖罪によってわたしたちの悲しみを背負っておられることを証する。わたしたちは大きな苦難を受けているときであっても,主に心を向けるならば,主はわたしたちを慰め,苦難を軽くしてくださる。逆境に立ち向かうに当たってジョセフ・スミスが模範を示してくれたこと,逆境に耐え,逆境から学ぶようにキリストがわたしたちを助けようとしておられることについて感謝を表す。

教えるためのそのほかのアイデア

1.自分の確信を擁護する勇気

ジョセフ・スミスはリバティーの監獄に収監される前にほかの兄弟たちとともに鎖でじゅずつなぎにされて,護衛の監視の下,ミズーリ州リッチモンドの古い空家に2週間監禁された。『わたしたちの受け継ぎ』49ページの第1段落から第6段落までに記されている,口汚くののしる看守に対してジョセフ・スミスが立ち上がったリッチモンドでの物語を紹介する。

  • どうすれば困難な状況に立ち向かう勇気を養うことができるでしょうか。日常生活のどのような場面で勇気が必要とされるでしょうか(福音の原則を擁護するために勇気を示した生徒自身の経験または生徒が知っている人の経験を話してもらう)。

2.アマンダ・スミスは息子のアルマを助けるために霊感を受けた

『わたしたちの受け継ぎ』にはアマンダ・スミスが,ハウンズミルの虐殺で重傷を負った息子のアルマを助けるために霊感を受けた物語が記されている(43-44ページ)。15課でこの話を採り上げていなければ,本課で採り上げるとよい。