2000–2009
模範になりなさい
2005年4月


模範になりなさい

皆さんが語る言葉,示す模範,生き方など,証 を伝える方法はたくさんあります。

愛する姉妹の皆さん,この壮大なカンファレンスセンターに集まっている方にも,この集会の模様を衛星中継で視聴している方にもお願いします。皆さんにここで話すという責任を立派に果たせるよう, わたしのために祈ってください。

中央若い女性会長会の話と麗しい姉妹たちによって披露された美しい歌,そしてまさにこの集会に注がれる御霊によってわたしたちは高められ,鼓舞されました。預言者ジョセフ・スミスとその生涯に,そしてイエス・キリストの福音が回復されたことに,改めて感謝の念を抱いています。

わたしたち大管長会は,皆さんを愛しています。皆さんとその指導者たちを信頼しています。皆さんは世の中にあって義の模範です。世の人々には皆さんの感化と力がどうしても必要なのです。

恐らく皆さんが掲げるべき標語は使徒パウロが愛するテモテに書き送った次の言葉になるでしょう。「言葉にも,行状にも,愛にも,信仰にも,純潔にも,信者の模範になりなさい。」1

今日,放縦,不道徳,ポルノグラフィー,仲間からの圧力によって,多くの人々は罪という海で翻弄され,チャンスを逃すという暗礁に乗り上げて,祝福を失い,夢を奪われています。

大切な若い女性とその母親の皆さん,若い女性の指導者,アドバイザーの皆さん,わたしは皆さんに,現世から天の御父のおられる日の栄えの王国へと至る道を安全に歩めるよう導いてくれる行動規範をお伝えします。この行動規範には4項目あります。

●皆さんには受け継ぎがあります。それを尊んでください。

●皆さんは誘惑に遭うでしょう。それに耐えてください。

●皆さんは真理を知っています。それを実践してください。

●皆さんには証があります。それを分かち合ってください。

まず,皆さんには受け継ぎがあります。それを尊んでください。シナイ山で次の言葉がはっきりと宣言されました。「あなたの父と母を敬え。」2

両親はどれほど皆さんを愛していることでしょう。どんなに熱烈な祈りを皆さんのためにささげていることでしょう。両親を敬ってください。

両親を敬うとは,どうすることでしょうか。わたしはウィリアム・シェークスピアの次の言葉が好きです。「愛情を示さぬ方は,愛さぬのと同じこと。」3 お父さんとお母さんを心から愛していることを示せる方法は,無数にあります。両親に従順になり,その教えに従ってください。彼らは決して皆さんを間違った道に導くことはないからです。敬意をもって両親に接してください。彼らは皆さんのために多くの犠牲を払ってきましたし,これからも払い続けるのです。

お父さんとお母さんに対して正直になってください。両親に対して正直になると,その好影響の一つとして,両親とのコミュニケーションの度合いが増します。親を無視するような態度を執ってはいけません。暗い夜,遅い時間に大切な娘がまだ帰って来ないとき,気をもむ両親には,時計の音はより大きく聞こえ,時計の針はよりゆっくりと動くように感じられます。すぐに帰れないような事情があるのなら,電話してください。「お母さん,お父さん,わたしたちなら大丈夫よ。何か食べようと思ってちょっと店に寄っただけなの。心配要らないわよ。大丈夫。もうすぐ家に着くわ。」

何年も前,ユタ州クラークストンで開かれていた青少年の活動に参加したときのことです。青少年たちはグループで,モルモン書の三人の証人の一人,マーティン・ハリスの墓碑を見学していました。そのとき別の墓碑が目に留まりました。小さな石に,名前とともにこんな痛ましい言葉が刻まれていました。「我が家から光が去った。わたしたちが愛したあの声はもう聞こえない。心の中のうつろな思いは,何をもってしても満たされることはない。」

皆さんの家から光が去る前に,慣れ親しんだ声を聞けなくなる前に,言ってください。「お母さん,大好きよ。お父さん,大好き」と。今こそよく考え,感謝を表す時です。皆さんがこの二つのことを実行してくれるものと信じています。皆さんには受け継ぎがあります。それを尊んでください。

次に挙げる行動規範は,「皆さんは誘惑に遭うでしょう。それに耐えてください」です。

預言者ジョセフ・スミスは誘惑に直面しました。示現を見たと宣言したときに彼が繰り返し受けたあざけりやさげすみ,嘲笑ちょうしょうを想像できるでしょうか。少年には耐え難いようなものだったと思います。示現を見たという言葉を撤回して,ただ平凡に暮らしていく方が楽だということはジョセフにもはっきりと分かっていたはずです。しかし,ジョセフは屈しませんでした。彼の言葉はこうです。「わたしは実際に光を見た。その光の中に二人の御方を見た。そして,その方々が実際にわたしに語りかけられたのである。たとえ示現を見たと言ったことで憎まれ,迫害されたとしても,それは真実であった。……わたしは示現を見た。わたしはそれを知っていた。神がそれを御存じであるのを,わたしは知っていた。わたしはそれを否定でき……なかった。」4 ジョセフ・スミスは模範を通して勇気を教えてくれました。彼は,誘惑に遭っても,それに耐えたのです。

「キャメロット」というミュージカルを知っている人は皆さんの中にも多いことでしょう。この作品の中からわたしの好きな言葉を引用します。アーサー王とランスロット卿,ギネビア女王の間の確執が深まる中,アーサー王はこんな警告を与えます。「激情にわたしたちの夢を壊させてはならない。」今晩この言葉を皆さんに贈ります。激情に流されて夢を失ってはなりません。誘惑に耐えてください。

モルモン書にある次の言葉を思い起こしてください。「悪事は決して幸福を生じたことがない。」5

皆さんが人生で成功を収め,幸福になるために欠かすことのできない助言は,「友達を慎重に選びなさい」です。わたしたちは自分のあこがれる人のようになっていく傾向がありますが,あこがれる人は,たいてい友達です。当座の都合で計画を立てたり,どうでもいいようなことを目標にしたり,本筋でないことに情熱を燃やしたりするような人ではなく,わたしたち教会員のように最も重要なことを大切にし,永遠の目標を内に抱いている人とつきあうようにするべきです。

永遠の観点から物を見るようにしてください。ふさわしい生活をして将来神殿で結婚できるようにしてください。結婚をする特別な日ほど幸せな経験も神聖な瞬間もほかにはありません。そのとき皆さんは日の栄えでの喜びをかいま見るのです。気をつけてください。誘惑に屈してこの祝福を失ってはなりません。

決断を下すときにはいつも,次のことを自問してください。この決断はわたしのためになるのだろうか。「ほかの人はどう思うだろうか」という基準で自分の取るべき行動を決めてはなりません。「わたしは自分のことをどう考えるようになるだろうか」という基準で行動するべきです。静かな細い声に従ってください。確認の儀式のとき,権能を持つ人が皆さんの頭の上に手を置いて「聖霊を受けなさい」と言ったことを思い出してください。心を開き,魂の扉を開いて真理を証するこの特別な声を聞くことができるよう努めてください。預言者イザヤが約束したように,「『これは道だ,これに歩め』という言葉を耳に聞く」のです。6

今日世の中に蔓延しているのは自由奔放な生き方です。映画に出てくるアイドル,スポーツ界のヒーローなど,多くの若者たちの目標にしたがる人々が,神の律法を軽んじ,罪深い行いを正当化して,何の悪い結果も生じないかのように見せているのをあちこちで目にします。信じてはいけません。その報いを受ける時は来ます。清算する時が来るのです。シンデレラに午前0時が訪れるように,現実を直視しなければならない「裁きの日」と呼ばれる時がだれにも訪れます。言ってみれば「人生の大きな試験」です。準備はできていますか。自分の成し遂げたことに満足しているでしょうか。

皆さんの助けとなるものはいろいろなところにあります。その一つは,祝福師の祝福です。祝福師の祝福には,皆さんの永遠の可能性について書かれた書物の中から様々な部分が示されているのです。自分の祝福文を頻繁に読んでください。綿密に研究してください。そこに書かれている注意に従ってください。その約束にふさわしく生活してください。

さて,旅の途中でつまずいた人がいれば,引き返す方法があります。悔い改めと呼ばれる方法です。わたしたちにこのすばらしい賜物を与えるために救い主はお亡くなりになりました。道は険しくとも,次の約束は確かです。「たといあなたがたの罪は緋ひのようであっても,雪のように白くなるのだ。」7「もはやその罪を思わない。」8 皆さんは誘惑に遭うでしょう。それに耐えられるよう祈っています。

次の行動規範は,「皆さんは真理を知っています。それを実践してください」です。

聖なる森で示現を受けた後,ジョセフ・スミスは3年間,聖なる交わりを受けることはありませんでした。父なる神とその御子イエス・キリストに会い,キリストから話しかけられて,その後3年間,何の言葉も交流もなかったらどう感じるでしょうか。想像できますか。疑いを持ち始めるでしょうか。なぜだろうと戸惑ったり,疑念を抱いたりするでしょうか。預言者ジョセフ・スミスは戸惑いませんでした。疑念を抱くこともありませんでした。主を疑うことがなかったのです。真理を受け入れ,それに従った生活をしました。

愛する若い友人である皆さん,皆さんはイエス・キリストの福音が地上に回復されるこの特別な時代に生を受けるよう取っておかれました。福音と証について,ゴードン・B・ヒンクレー大管長はこう言っています。「わたしたちが証と呼ぶこの確信は……この地上にある様々な力と同様に,現実に存在し,しかも,強力なのです。……〔証は,〕若い人も年老いた人も同じように持っています。……証は,人生には目的があり,ほかよりはるかに大切な事柄が存在するということを,そして,わたしたちは永遠の旅路の途中にあり,また,わたしたちは神に報告する責任があるということを,確信させてくれます。」9

皆さんは両親や教会の教師から福音が真実だということを教わってきました。これからも聖文や預言者の教え,また,ひざまずいて神の助けを求めるときに得られる霊感を通して真理を見いだしていくことでしょう。

疑いと信仰は,同じ人の心の中に同時には存在し得ないことを忘れないでください。一方が他方を排斥するからです。疑いを追い払い,信仰を養ってください。山をも動かし,心と家庭を天国に近づけることのできる,子供のような信仰をいつでも持てるよう努めてください。

福音や救い主,天の御父に対する証は,しっかりと根を下ろしていれば,生涯にわたって皆さんに影響を与えます。時間をどう使うか,だれとつきあうか決めるとき,助けになります。家族に対する態度にも,人への接し方にも影響を与えます。皆さんの生活に愛と平安,喜びをもたらします。昨今,教会の一部の若い女性の服装が激変してきていることにわたしたちは気づいています。ファッションは移り変わり,流行は移ろいます。しかし,大切なのは,慎みのない服装がはやっていたら,若い女性の皆さんはそれを避けなければならないということです。慎み深い服装をするということは,天の御父と自分自身を大切にしていることを示しています。今日,今をときめく映画スターや音楽界のアイドルが身に着けている露出度の高いファッションに倣ならって服は生産されていますから,店で慎み深い服を購入するのは難しいかもしれません。しかし,それは可能ですし,重要なことです。使徒パウロは宣言しました。「あなたがたは神の宮であって,神の御霊が自分のうちに宿っていることを知らないのか。……神の宮は聖なるものであり,そして,あなたがたはその宮なのだからである。」10 皆さんは真理を知っています。それを実践してください。

行動規範の最後は,「皆さんには証があります。それを分かち合ってください」です。皆さんの証が及ぼす影響力を過小評価してはなりません。皆さんはお互いに強め合うことができます。皆さんには目立たない人や友達があまりいない人の長所に気づいてあげる能力が備わっています。目をよく見開き,耳を澄まし,感受性を研ぎ澄ますなら,同年代の人に手を差し伸べ,救いの道に導くことができるでしょう。

一例として,何年も前,モンソン姉妹が転んで入院したときに体験したことを話しましょう。モンソン姉妹に頼まれて,わたしはスーパーマーケットにちょっとした買い物に行きました。それまで,わたしはこのようなことをしたことがありませんでした。持って行った買い物リストの中に,ジャガイモが入っていました。すぐにショッピングカートを見つけると,ジャガイモをその中にたくさん入れました。買った物は普通ビニール袋に入れるものだということをまったく知らなかったのです。カートを動かすとジャガイモが床の上にこぼれ落ちました。カートには手前に大きな穴が二つ開いており,そこからすり抜けてしまったのです。責任感の強い女性店員がわたしを助けるために駆けつけて,大きな声で言いました。「どうぞわたしにお任せください。」このカートは不良品だと言おうとしました。しかし,そのとき初めて,カートには皆,手前に穴が二つあって,小さい子供がそこから足を出せるようにしてあるのだと説明されたのです。

次にその店員はわたしが持っていた買い物リストを手に取り,品物を見つけるのを手伝ってくれました。つきっきりで助けてくれたのです。そして,最後にこう尋ねてきました。「モンソン監督ではありませんか。」

確かにだいぶ前に監督をしていましたと答えました。すると,その店員はこう言うのです。「あのころわたしはモンソン監督のワードが管轄するゲール街に住んでおり,教会員ではありませんでした。モンソン監督は,教会員の女の子が毎週わたしに連絡を取ってミューチャルやそのほかの活動に連れて行くように割り当ててくださいました。皆感じのよい若い女性たちで,その人たちが示してくれた友情と親切にわたしは心を打たれました。わたしに友情を示すよう割り当ててくださったおかげで,わたしはバプテスマを受け,教会員になれたのです。教会員になったことで,わたしの人生にすばらしい祝福がもたらされました。監督の親切に感謝しています。」

皆さんが語る言葉,示す模範,生き方など,証を伝える方法はたくさんあります。預言者ジョセフ・スミスの偉大な模範に倣いましょう。彼は真理を教え,真理に従って生活し,真理を伝えました。皆さんには証があります。それを分かち合ってください。

愛する姉妹の皆さん,神が皆さんを祝福されますように。わたしたちは皆さんを愛しています。皆さんのために祈っています。皆さんは独りではないということを忘れてはなりません。主は皆さんに約束しておられます。「わたしはあなたがたに先立って行こう。わたしはあなたがたの右におり,また左にいる。わたしの御霊はあなたがたの心の中にある。また,わたしの天使たちはあなたがたの周囲にいて,あなたがたを支えるであろう。」11

明日は復活祭です。この復活祭の前夜,わたしたちの罪を贖い,真の生き方と祈りの方法を示し,わたしたちが行うべきことを自らの行いで示してくださった御方に心を向けることができますように。馬屋で生まれ,かいばおけに寝かされていた神の御子は,御自身に従うよう,わたしたち一人一人を招いておられます。「ああ,喜びの言葉『主は生けりと知る』」。12 主の御霊が常に皆さんのうえにありますよう,主イエス・キリストの聖なる御名によって祈ります。アーメン。

  1. .1 テモテ4:12

  2. . 出エジプト20:12

  3. .三神勲訳「ヴェロナの二紳士」『シェークスピア全集1』111,第1幕,第2場,筑摩書房刊

  4. .ジョセフ・スミス―歴史1:25

  5. .アルマ41:10

  6. .イザヤ30:21

  7. .イザヤ1:18

  8. .エレミヤ31:34

  9. .「証」『聖徒の道』1998年7月号,73‐74

  10. .1コリント3:16-17

  11. .教義と聖約84:88

  12. .サミュエル・メドレー,「主は生けりと知る」『賛美歌』75番