2000–2009
3つの選び
脚注

Hide Footnotes

テーマ

3つの選び

わたしの自己改善プログラムをご紹介したいと思います。これは3つのステップから成っていて,わたしにはとても効果がありました。

最近わたしは,数多くの自己改善プログラムが周囲にあることに気づきました。よほど需要があるのでしょう。テレビやラジオをつける度に,様々な製品の広告が絶えず流れてきます。減量から増毛に至るまで,あらゆる効果が約束されているのを見たり聞いたりすると,そういった製品を作る人は,わたしのことを個人的に知っているのではないだろうかと考えるときがあります。

今日きょうは,わたしの自己改善プログラムをご紹介したいと思います。これは3つのステップから成っていて,わたしにはとても効果がありましたし,きっと皆さんの助けにもなると確信しています。何よりもいいことに,この自己改善プログラムは無料です。クレジットカードを取り出す必要もありませんし,テレビ画面に,フリーダイヤルの番号と「あと5分で,一生に一度のチャンスを逃してしまいます」という言葉が突然現れることもありません。

恐らく,この原則をお伝えするには,たとえを使うのがいちばんでしょう。

ジョンという名の若者がいました。まだ若いにもかかわらず大変な苦しみと悲しみを経験していました。住む家を失い,アルコールや薬物の中毒になったジョンは,重い病気にかかり,人生に疲れ切っていました。病気と絶望の淵ふちに落ちていくにつれ,もしもすぐに生活を変えなければ,孤独で惨めで無益な最期を迎えるであろう自分の姿がまざまざと胸に迫ってきました。

幼いころ何度か初等協会に通ったことがあったためか,ジョンは近くの教会に行き,監督に会ってもらうことにしました。「わたしは人生を台なしにしてしまいました。」傷ついた心の底からわき出る苦しみの涙にむせびながら,ジョンは話し始めました。自分の犯した過ちと,たどってきた破滅と不幸の道について話したのです。

監督は,悲しい物語を聞きながら,ジョンがほんとうに悔い改めて生活を変えたいと思っていることを感じ取りました。しかし同時に,ジョンには自分が変われるという自信がほとんどないことも感じました。

監督は話すべきことを少し考えてから,顔を上げると次のように言いました。「ジョン,わたしはこれまでの人生で3つの選択をしてきた。わたしにとって価値ある選択だ。きっと君にも助けになると思うよ。」「どうか教えてください。」ジョンは嘆願しました。「何でもやります。もう一度やり直したいんです。前の自分に戻りたいんです。」

監督はほほえんで言いました。「まず君に必要なのは,過去に戻ってやり直すことはできないと理解することだ。でも,すべてをなくしたわけじゃない。今いるところから始めることはできる。今,悔い改めを始めることを選ぶんだ。」

程度の差こそあれ,わたしたちは皆ジョンと似ています。間違いを犯します。でも,もう一度過去に戻ってやり直したいと,どんなに切に望んだとしても不可能です。しかし,悔い改めて,今いるところから始めることはできます。

書の中に,息子アルマの物語があります。偉大な預言者の息子でしたが,父に背き,邪悪な道を選びました。しかしアルマは,天使の訪れにより地に倒れ,口が利けなくなってからは,悔い改め,残りの人生をかけて,それまで自分が与えた悪影響を償いました。その結果,何千という人々の人生を祝福し,豊かにしました。アルマは,過去の過ちのために罪に定められるとは考えませんでした。過去を消し去ることはできないと分かっていましたが,自分には悔い改める力があること,今いるところから新たに始められることも理解していました。

では,どうやって悔い改めを始めればよいのでしょう。

まずは過ちを認め,悔い改めようと決意することです。さらに良くなろう,もっと気高く,思いやり深い生活をし,もっと救い主のようになるために毎日努力しようと,今日きょう,この日に決意するのです。

人の行く末や最終的な結果は,その人の日々の選びにかかっています。

このことを知っていた偉大な旧約の預言者ヨシュアは次のように言いました。「あなたがたの仕える者を,きょう,選びなさい。ただし,わたしとわたしの家とは共に主に仕えます。」1

ヨシュアは,さらに義にかなった者になろうと,即座に決心することがいかに重要かを知っていました。わたしたちも,今,決心しなければなりません。わたしたちの人生は後悔と絶望に満ちたものになるでしょうか。それとも悔い改めて,日々,価値ある意義深い人生となるよう努力するでしょうか。

明日の喜びまたは明日の絶望は,今日する決意に根ざしています。恐らく,次のように考える人もいるでしょう。「自分の生活でいろいろと変えなければならないことは分かっている。でも,もう少し後にしよう。今すぐにではなく。」

生活を変えるべき時を常に待ちながら,ためらい,足踏みしている人は,水の流れが途切れたら乾いた底を渡ろうと,川岸で待っている人に似ています。今日は選びの日です。ジョンは監督の言葉を聞いて,そのとおりにすると約束しました。中毒症状に苦しんでいた彼は,悔い改めて健康状態を改善する必要があると悟りました。施設に入り,回復のための長い道のりを歩み始めました。栄養のある食事を取るようになり,ウォーキングや運動も始めました。

数週間が過ぎ,ジョンは中毒症状から解放されました。自分の健康が次第に改善し,体力もついてきたのを実感しました。でも,まだ心は満たされませんでした。圧倒され落胆してしまうほど,彼の生活には改善すべきことがたくさんありました。

そこでもう一度,監督と面接をしてもらいました。

ジョンはこのとき二つ目の選びについて教わりました。監督は言いました。「ジョン,もし一度に完全になろうとしたら,それはとても大変だよ。最も大切な事柄を選べるようになる必要がある。最も大切な事柄を最初に行うことだ。」

ほとんどの場合,人はゆっくり,一歩ずつ成長するものです。楽器をマスターする,優秀なスポーツ選手になる,ジェット機を操縦するといった事柄に関しては,これは当然のことと理解していますが,こと自分の生活になると,すべてにおいて期待どおりに成長できないと,自分を赦ゆるせなくなってしまいがちです。

偉大な彫刻家や芸術家は,才能を伸ばし完成させるために膨大な時間を費やします。のみや筆やパレットを持つだけで,かんすぐに才能を完壁かんぺきの域にまで伸ばせるとは期待しません。習得していく中でたくさんの間違いをすることを承知していますが,まずは基本的な事柄,最も重要な基礎から始めます。

わたしたちにも同じことが言えます。同じような方法で,すなわち,最も大切なことを最初に行うことで,人生の達人となっていくのです。わたしたちは皆,最も大切な選びとは何かを知っています。それは,生活を改善し,さらに大きな幸福と平安をもたらすような選びです。そこから始めなければなりません。そのことに最大の努力をする必要があります。

毎晩わたしは,寝る前に小さなカードを取り出して,翌日しなければならないことを大切な順に書き出します。

朝,オフィスに着くとカードをチェックし,リストのいちばん上の事柄を果たすために全力を尽くします。それを達成した後は,2番目に移ります。リストに書いたことを全部やり終える臼もあれば,幾つかやり残す日もあります。でも,落胆はしません。なぜなら,最も大切なことにエネルギーを注いでいるからです。

ジョンは,自分の生活の悪いところを一度に全部は直せないけれど,最も大切な事柄を選ぶことはできる,ということを理解し始めました。ジョンは最も大切な事柄に集中できるようになり,やがて生活は改善し始めました。

長老定員会会長の助けを得て,ジョンは住む場所を見つけることができました。自活していく方法を探さなければならないと思った彼は,健康状態と生活態度が良くなると,パートタイムの仕事を見つけました。

毎晩寝る前に,翌日なすべき最も大切な事柄のリストを書き出しました。やがて,安定した収入を得るようになりました。もっと快適な場所に引っ越し,車も買いました。自分の生活や方向性に対して以前よりも自信を持てるようになりましたが,それでもまだ何かが欠けていると感じていました。

そこでジョンは,監督と3度目の面接をしてもらいました。

監督はこう言いました。「心が満たされないのは,君がまだ3つ目の選びをしていないからだよ。」

ジョンは,それは何であるかを尋ねました。

「毎日何かを選び,決心してそれを行うだけでは,十分ではないんだ」と監督は言いました。「実り多い仕事をして,たくさんのことを達成しても,心は満たされていない人が多くいる。そして,人生の最後に,自分の人生は何の意味もなかったと嘆くんだ。」それはまさに,ジョンが感じていたことでした。

監督は続けて言いました。「何かをするだけでは足りない。正しいこと,つまり,天の御父が望んでおられることを行う必要があるんだよ。」

「どうしたら,何が正しいことかが分かりますか。」ジョンは尋ねました。

監督はほほえむと,机の中から聖典を取り出しました。革表紙は擦り切れ,しわが寄っていました。金色の縁も擦り減っていました。

「聖典と末日の預言者の言葉を通して知ることだよ」と監督は答えました。「これこそ,『正しいこと』なんだ。天の御父の戒めは,わたしたちを束縛する厳しいものだと考える人がいる。でもほんとうは,幸福への手引き書なんだよ。天の御父の計画は,人が平安と幸福を得るのを助けてくれるものだ。イエス・キリストの福音は,原則や教義や戒めなど,どれを取ってみても,御父の計画の大切な要素なんだよ。」

監督はモルモン書を開き,ベニヤミン王の言葉を読みました。「神の戒めを守る者の祝福された幸福な状態について……考えてほしい。見よ,これらの者は物質的にも霊的にも,すべてのことについて祝福を受ける。そして,もし最後まで忠実であり続けるならば,彼らは天に迎えられ,決して終わりのない幸福な状態で神とともに住めるのである。」2

監督の話を聞きながら,ジョンは,自分自身の人生を振り返り,こう思いました。「自分がこれまで手に入れてきたものは,幸福をもたらしてはくれなかった。きっと,監督の言うことは真実だ。幸福はきっと,天の御父の戒めに添った生活から得られるんだ。」

「救い主の言葉を忘れないでほしい。」監督は,ジョンが考えていたことを見抜いたかのように,こう言いました。「人が全世界をもうけても,自分の命を損したら,なんの得になろうか。」3

その日の夜,ジョンは,神の御言葉みことばである聖典を開き,天の御父の戒めと教義を学ぼうと決心しました。以前のように主の御言葉を拒むことはなく,胸に抱だくように大切に味わうようになりました。そうしていくうちに,心の中の空虚な気持ちは薄らぎ,その代わり徐々に,人知ではとうてい計り知ることのできない喜びと平安を見いだすようになりました。

監督から受けた教えで,ほんとうにジョンの人生は変わりました。堕落し,悲しみに満ち,死にかけていた彼が,今はいきいきと輝き,活力と喜びにあふれるようになったのです。

兄弟姉妹の皆さん,愛に満ちた天の御父は,平安と幸福への道を教えるために聖典を与えてくださいました。今日こんにちのわたしたちには,喜ぶべき理由があります。それは,御子がわたしたちすべてに語りかけてくださるということです。主は,天において,だれも入ることのできない壁に囲まれた場所に,静かに座っておられるのではありません。主は,天の御父の指示の下に,聖任された僕しもべたちに導きを与えておられます。そして今この瞬間にも,預言者であるゴードン・B・ヒンクレー大管長が,地上における主の神聖な業を導いているのです。

それに加えて,キリストの光は,すべての人を天の御父とその真理に導きます。主を愛し,隣人を愛するように教えてくれます。

なぜなら,「善悪をわきまえることができるように,すべての人にキリストの御霊みたまが与えられている……」4 からです。

主の道を選ばないことについては,どんな言い訳も通用しません。主は裁きの日に,わたしたちが築いた富や人から受けた評判に対して,ほんの少しでも心にかけられるでしょうか。主は,みもとに来て,御自身に学ぶポうにわたしたちに望んでおられます。そして,キリストの純粋な愛を見いだすようにと願っておられます。その愛は,主の御言葉を受け入れ,主の戒めに従順であることを通して得られるものです。

これこそ,わたしたちの生活から空虚な気持ちを取り除く方法です。言葉に尽くせない喜びで,心を満たすための方法なのです。

皆さんも,これまで自分なりの様々な選択をしながら,無事に人生を歩んできたことと思いますが,もう一度この3つの選びについて申し上げますのでゴよく考えていただきたいと思います。

第1に,今,悔い改めの道を歩むことを選んでください。遅らせてはなりません。集会に出席し,喜んで教会の責任を果たしてください。福音の原則を学び,生活に応用してください。神殿に入れるように,今,始めてください。

第2に,最も大切な事柄を選んでください。家族を最優先しましょう。意義のある家庭の夕べを開いてください。家族と過ごす時問を,家族がいかに大切であるかを示すような時間にしてください。家族を大切にはぐくみ,忙しいスケジュールやストレスのために,皆さんと愛する家族の問に問題を引き起こすことのないようにしてください。

毎日,主の戒めにさらに従順になるように努力しましょう。

第3に,正しいことを選んでください。聖典と今日の預言者ゴードン・B・ヒンクレー大管長の言葉を研究してください。神聖な教えを生活の中で生かしてください。悲しむ人や孤独な人,病気の人や助けの要る人に手を差し伸べましょう。人の苦しみを和らげ,自立を助けるために,自分にできることをしましょう。そのようにするとき,主は喜んでくださいます。

兄弟姉妹の皆さん,わたしは天の御父とその愛する御子が生きておられることを知っています。ジョセブ・スミスがこの時満ちる神権時代に,主の教会を組織するために立てられたことを知っています。わたしはイエス・キリストの特別な証人として,救い主が人のために命をささげらあがなれたことを知っています。主の贖あがないを通して,人類は悔い改めて罪から清められることを知っています。わたしたちは天の御父のみもとに帰り,救い主の最後の犠牲の価値を知ることでしょう。このことをあかし主イエス・キリストの御名みなによって証あかしいたします。アーメン。