1わたしの先祖が住んでいたカルデヤ人の地において、わたしアブラハムは、別の居住の地を得ることが自分にとって必要であるのを知った。
2また、わたしのためにさらに大いなる幸福と平安と安息があるのを知り、わたしは先祖の祝福と、わたしが聖任されるべきそれらの祝福をつかさどる権利とを得ようと努めた。わたしは自分自身が義に従う者であったので、また、多くの知識を持つ者となり、義に従うさらに大いなる者となることを望み、もっと多くの知識を持ち、多くの国民の先祖、平和の君となることを望み、また数々の指示を受け、神の戒めを守ることを望んだので、先祖に属する権利を持つ正当な相続人、大祭司となった。
3それは先祖からわたしに授けられた。それは先祖から、時の初めから、まことに初めから、すなわち地が造られる前から現在まで伝わったものである。それは長子、すなわち最初の人、すなわちアダム、すなわち最初の先祖の権利であり、先祖たちを通してわたしに至ったものである。
4わたしは、子孫に関して先祖に与えられた神の定めに従って、神権に任じられることを求めた。
5わたしの先祖は、彼らの義と主なる彼らの神が与えられた聖なる戒めから離れて、異教徒の神々を礼拝し、わたしの言葉を聴くのをまったく拒んだ。
6彼らは悪を行うことをその心に留め、エルケナの神と、リブナの神と、マーマクラの神と、コラシの神と、エジプトの王パロの神にすっかり頼り切っていたからである。
7そこで、彼らは異教徒の犠牲にその心を向けて、これら口の利けない偶像に彼らの子供たちをささげ、わたしの声を聴こうとせず、エルケナの祭司の手によってわたしの命を取ろうとした。エルケナの祭司はまた、パロの祭司であった。
8さて当時、カルデヤの地に築かれた祭壇上でこれら異国の神々への犠牲として男女や子供をささげることが、エジプトの王パロの祭司の習わしであった。
9そして、祭司はエジプト人の流儀に従って、パロの神にささげ物をし、またシャグレールの神にもささげ物をした。ところで、シャグレールの神は太陽であった。
10パロの祭司は、オリシェムの平野の奥にあるポテパルの丘と呼ばれた丘のそばにあった祭壇上で、子供を感謝のささげ物としてささげることさえ行った。
11さて、この祭司は、かつてこの祭壇上で三人のおとめをささげた。このおとめたちは、ハムの直系の王家の一人であるオニタの娘たちであった。このおとめたちはその節操のゆえにささげられたのである。彼女たちは木や石の神々をひれ伏して拝もうとしなかったために、この祭壇上で殺された。そして、それはエジプト人の流儀に従って行われた。
12さて、祭司たちはわたしに暴力を振るい、この祭壇上でそのおとめたちを殺したように、わたしも殺そうとした。この祭壇について知るために、この記録の初めにある絵図を参照してほしい。
13それはカルデヤ人の間で用いられたような寝台の形に倣って造られ、エルケナ、リブナ、マーマクラ、コラシの神々の前、およびエジプトの王パロの神に似た神の前に置かれていた。
14あなたがたがこれらの神々について理解できるように、わたしは冒頭の図形中にそれらの型を示した。このような種類の図形を、カルデヤ人はラーレーノスと呼ぶ。それは象形文字という意味である。
15彼らがわたしをささげて命を取るために、その手をわたしの上に振り上げたとき、見よ、わたしは主なる神に声を上げた。すると、主は耳を傾けて聞いてくださり、全能者の示現でわたしを満たしてくださった。そして、主の前の天使がわたしの傍らに立ち、直ちに縄を解いてくれた。
16そして、主の声がわたしに及んだ。「アブラハム、アブラハム、見よ、わたしの名はエホバである。わたしはあなたの声を聞いた。そして、あなたを救い出し、あなたを父の家から、すべての親族からあなたの知らない異国の地へ連れ出すために降って来た。
17これは、彼らがその心をわたしから背けて、エルケナの神と、リブナの神と、マーマクラの神と、コラシの神と、エジプトの王パロの神を礼拝したためである。そこでわたしは、彼らに報いを下し、わたしの子であるあなたアブラハムの命を取ろうとして手を振り上げた者を滅ぼすために、降って来たのである。
18見よ、わたしはわたしの手によってあなたを導こう。わたしはあなたを受け入れて、わたしの名、すなわちあなたの父の神権を与えよう。わたしの力はあなたのうえにあるであろう。
19それはノアとともにあったように、あなたとともにあるであろう。しかし、あなたの働きによって、わたしの名はとこしえにこの世に知られるであろう。わたしはあなたの神だからである。」
20見よ、ポテパルの丘は、カルデヤのウルの地にあった。主はエルケナの祭壇とその地の神々の祭壇を壊し、それらを完全に破壊し、祭司を打たれたので、彼は死んだ。そして、カルデヤに、またパロの宮廷に大きな嘆きがあった。パロとは、王族の血統による王を意味する。
21さて、このエジプトの王は、ハムの腰から出た子孫であり、生まれはカナン人の血統を引いた者であった。
22この家系からすべてのエジプト人が出て、カナン人の血がその地に残されたのである。
23エジプトの地は最初に一人の女によって発見された。この女はハムの娘であり、エジプタスの娘であった。エジプタスとは、カルデヤ語でエジプトを意味し、禁じられたものという意味である。
24この女がその地を発見したとき、それは水の下にあったが、後に彼女はそこに息子たちを定住させた。このようにして、ハムから、その地にのろいをとどめた人種が出たのである。
25さて、エジプトの最初の政府は、ハムの娘であるエジプタスの長男パロによって設けられた。それはハムの政府に倣い、族長制であった。
26パロは義にかなった人であり、王国を設立して、生涯賢明かつ公正に民を治め、最初の世代、最初の族長統治の時代、すなわちアダムやノアの治世に先祖たちによって設けられた制度を模倣しようと熱心に努めた。ノアは彼の先祖であり、彼に地の祝福と知恵の祝福を授けたが、神権に関しては彼をのろった。
27さて、パロは神権の権利を持つことのできない血統の出であったが、パロたちは、ハムを通してノアからそれを受けたと自ら主張した。そのために、わたしの父は彼らの偶像礼拝に惑わされたのである。
28しかし、わたしはこの後、わたし自身から創造の初めまでさかのぼって年代記を書くようにしよう。数々の記録がわたしの手に入り、わたしは現在までそれを所有しているからである。
29さて、エルケナの祭司が打たれて死んだ後、その地に飢饉があるであろうとカルデヤの地についてわたしに言われたことが成就した。
30このために、飢饉がカルデヤの全地に広がった。すると、わたしの父はその飢饉のためにひどく苦しみ、わたしの命を取ろうとわたしに対して企てた悪事を悔いた。
31しかし、神権の権利に関する先祖すなわち族長たちの記録を、主なるわたしの神は、わたしの手の中に残された。したがって、創造の始まりと、もろもろの遊星と、もろもろの星の知識を、それらが先祖に知らされたとおりに、わたしは今日まで保持してきたのである。そこで、わたしの後に来る子孫の益のために、わたしはこれらの事柄の多くをこの記録に書くようにしよう。